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いつもどこでも
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イヴの布団からイヴのにおいがあまりしない。
いつもいいにおいがするのに、俺がいない間この家に帰って来ていなかったのか?
でも、掃除はしてあったし……俺の部屋からイヴのいいにおいがしていた。
もしかして、俺がいないからって部屋を間違えて寝ていたのかもしれない。
たまにイヴは天然な時があるからなぁ…ありえない話ではない。
少しすると、イヴが部屋に入ってきて上半身を起こす。
「ユーリ、無理しないで」
「無理じゃないよ、起きないと食べられないから」
「辛いなら寝ててもいいよ、俺が口移ししてあげるから」
「くちっ!?」
イヴがとんでもない事を言って、俺は開いた口が塞がらなかった。
必死に首を横に振ると、イヴは「無理しちゃダメだよ」と言ってベッド横のサイドテーブルに小さな鍋を置いた。
イヴは体の消化にいい野菜を柔らかくして、薬草を入れて苦くないように調味料で食べやすい味にしたらしい。
凄い、イヴが騎士ではなく料理人に見えてきた…俺に作ってくれる料理も美味しいし…
イヴはフォークで野菜を刺して、フーフーと熱いのを冷ましてくれて口元に持ってくる。
一口食べると、野菜の甘さと調味料がいい味を出していて美味しい。
何度かそれを繰り返して、あっという間に全て食べ終わった。
「明日は掃除とかしなくていいから、大人しく寝てるんだよ」
「……でも」
「給料が欲しいなら休んでる間にあげるよ」
「そんなっ……貰えない、俺はちゃんと働いた分の給料を貰いたいから」
「ユーリは強情だね、俺達恋人同士なのに」
「……それとこれとは違うから」
恋人でも、俺はイヴに雇ってもらっている立場だ…その境界線を越えたらイヴに給料を一切貰えない。
俺は自分で稼いだ金を両親に送って、早く平民街に戻ってきてほしい。
貧民堕ちした事により、なんでも屋もやめてしまって…俺は直接見たわけではないが迷惑を掛けたかもしれない。
そんなところに今更戻れない、他の仕事を考える前にイヴに再び拾われた。
今更やめるなんて言えないし、俺を雇いたいと言ってくれたなら、それに応えるだけだ。
なのに戻って早々風邪を引いて迷惑掛けて…イヴに申し訳ない。
「治ったら、休んだ分を取り戻すように頑張ります」
「ユーリは充分頑張ってくれたよ、いつもありがとう」
イヴに頭を撫でられて、また熱が顔に集まってきたみたいにクラクラする。
本当に今はダメだ、立ち上がる元気がない…このまま仕事をしても余計な仕事を増やすだけだ。
明日は大人しく寝ていよう、イヴがベッドに座り俺の頭を撫でる。
「おやすみ、ユーリ」と俺の目を片手で覆われるとプツンと糸が切れたように意識がなくなる。
どのくらい寝ていただろうか、変な時間に目が覚めてしまった。
横を見るとイヴがベッドに背を向けていた。
眠っているのかもしれない、起こさないようにこっそりとベッドから起き上がる。
俺の額に氷が入った袋が膝に落ちて、イヴの魔術で作ったのかなとサイドテーブルに置いた。
すっかり熱は下がっているが、きっと仕事をするって言ったらイヴに止められるんだよな。
一日くらい、休みを貰うかな…住み込みの仕事だから休みという感覚を忘れてしまいそうになる。
俺の実家でやっている事と何にも変わらないからかもしれないな。
トイレに行くために部屋を出て、真っ暗な廊下を歩いていた。
今は深夜くらいかな、体温調節してくれる魔導機があるのか寒さは感じなかった。
体温調節をしてくれる魔導機はクーラーとかだが、消費する魔力も多いから強い魔導士ぐらいしか使わない。
友人から聞いた話によると、釜に水を溜めて炎の魔術で煮込んで暖を取る人もいるらしい。
まるでおとぎ話の魔女みたいだなと思った記憶がある。
この世界の魔導士はいろいろと進化しているから、あまりおとぎ話の魔女みたいな人はいない。
俺が一人暮らしをしていた時は体温調節の魔導機なんてあるわけないし、そもそも一人暮らしの期間はそんなに長くなかったから必要もなかった。
でももし一人暮らしする事になったら、ライターサイズの火しか出せない俺は釜の暖の生活しか出来ないかもな。
貧困街の時は母さんが炎の魔術の球体で暖めてくれたな。
昔のような暖かさを感じた、今はイヴの暖かさを感じる。
「ユーリ」
「ひっ!!あ…イヴ、ど…どうしたの?」
トイレから出て、暗いところからイヴが音も立てずに近付いてきたから本当に怖かった。
トイレ行ったばかりだっていうのに、ちびってしまいそうだった。
イヴは俺に近付いて、優しくしっかりと抱きしめられた。
もしかして寝ぼけているのか?それともさっき寝ていたと思って確認しなかったが起きていたのか?
「イヴ、部屋に戻ろう」と背中を撫でると、俺から少し離れた。
灯りが何もないからイヴの表情は暗がりで全く見えない。
貧困街の神殿に閉じ込められていた時、イヴの声真似をする奴がいたから心配になる。
「イヴ?」
「ユーリ、いなくなったと思って心配した」
「トイレ行ってて、起こしたら悪いと思って黙って部屋を出たんだ、ごめん」
「今度からは何処に行く時でも俺に言って」
「わ、分かった」
イヴの顔が見えないから、声だけで少し怒っていると感じて落ち込む。
でもやっぱりいちいちトイレの度に起こすのは悪いから置き手紙でも書こうと思った。
イヴに頬を両手で包み込まれて、上を向かされる。
お互い顔が分からない状態で、口付けされた。
いや、イヴは分かっていたのかもしれない…俺を暗闇から見つけ出したんだし…
いつもいいにおいがするのに、俺がいない間この家に帰って来ていなかったのか?
でも、掃除はしてあったし……俺の部屋からイヴのいいにおいがしていた。
もしかして、俺がいないからって部屋を間違えて寝ていたのかもしれない。
たまにイヴは天然な時があるからなぁ…ありえない話ではない。
少しすると、イヴが部屋に入ってきて上半身を起こす。
「ユーリ、無理しないで」
「無理じゃないよ、起きないと食べられないから」
「辛いなら寝ててもいいよ、俺が口移ししてあげるから」
「くちっ!?」
イヴがとんでもない事を言って、俺は開いた口が塞がらなかった。
必死に首を横に振ると、イヴは「無理しちゃダメだよ」と言ってベッド横のサイドテーブルに小さな鍋を置いた。
イヴは体の消化にいい野菜を柔らかくして、薬草を入れて苦くないように調味料で食べやすい味にしたらしい。
凄い、イヴが騎士ではなく料理人に見えてきた…俺に作ってくれる料理も美味しいし…
イヴはフォークで野菜を刺して、フーフーと熱いのを冷ましてくれて口元に持ってくる。
一口食べると、野菜の甘さと調味料がいい味を出していて美味しい。
何度かそれを繰り返して、あっという間に全て食べ終わった。
「明日は掃除とかしなくていいから、大人しく寝てるんだよ」
「……でも」
「給料が欲しいなら休んでる間にあげるよ」
「そんなっ……貰えない、俺はちゃんと働いた分の給料を貰いたいから」
「ユーリは強情だね、俺達恋人同士なのに」
「……それとこれとは違うから」
恋人でも、俺はイヴに雇ってもらっている立場だ…その境界線を越えたらイヴに給料を一切貰えない。
俺は自分で稼いだ金を両親に送って、早く平民街に戻ってきてほしい。
貧民堕ちした事により、なんでも屋もやめてしまって…俺は直接見たわけではないが迷惑を掛けたかもしれない。
そんなところに今更戻れない、他の仕事を考える前にイヴに再び拾われた。
今更やめるなんて言えないし、俺を雇いたいと言ってくれたなら、それに応えるだけだ。
なのに戻って早々風邪を引いて迷惑掛けて…イヴに申し訳ない。
「治ったら、休んだ分を取り戻すように頑張ります」
「ユーリは充分頑張ってくれたよ、いつもありがとう」
イヴに頭を撫でられて、また熱が顔に集まってきたみたいにクラクラする。
本当に今はダメだ、立ち上がる元気がない…このまま仕事をしても余計な仕事を増やすだけだ。
明日は大人しく寝ていよう、イヴがベッドに座り俺の頭を撫でる。
「おやすみ、ユーリ」と俺の目を片手で覆われるとプツンと糸が切れたように意識がなくなる。
どのくらい寝ていただろうか、変な時間に目が覚めてしまった。
横を見るとイヴがベッドに背を向けていた。
眠っているのかもしれない、起こさないようにこっそりとベッドから起き上がる。
俺の額に氷が入った袋が膝に落ちて、イヴの魔術で作ったのかなとサイドテーブルに置いた。
すっかり熱は下がっているが、きっと仕事をするって言ったらイヴに止められるんだよな。
一日くらい、休みを貰うかな…住み込みの仕事だから休みという感覚を忘れてしまいそうになる。
俺の実家でやっている事と何にも変わらないからかもしれないな。
トイレに行くために部屋を出て、真っ暗な廊下を歩いていた。
今は深夜くらいかな、体温調節してくれる魔導機があるのか寒さは感じなかった。
体温調節をしてくれる魔導機はクーラーとかだが、消費する魔力も多いから強い魔導士ぐらいしか使わない。
友人から聞いた話によると、釜に水を溜めて炎の魔術で煮込んで暖を取る人もいるらしい。
まるでおとぎ話の魔女みたいだなと思った記憶がある。
この世界の魔導士はいろいろと進化しているから、あまりおとぎ話の魔女みたいな人はいない。
俺が一人暮らしをしていた時は体温調節の魔導機なんてあるわけないし、そもそも一人暮らしの期間はそんなに長くなかったから必要もなかった。
でももし一人暮らしする事になったら、ライターサイズの火しか出せない俺は釜の暖の生活しか出来ないかもな。
貧困街の時は母さんが炎の魔術の球体で暖めてくれたな。
昔のような暖かさを感じた、今はイヴの暖かさを感じる。
「ユーリ」
「ひっ!!あ…イヴ、ど…どうしたの?」
トイレから出て、暗いところからイヴが音も立てずに近付いてきたから本当に怖かった。
トイレ行ったばかりだっていうのに、ちびってしまいそうだった。
イヴは俺に近付いて、優しくしっかりと抱きしめられた。
もしかして寝ぼけているのか?それともさっき寝ていたと思って確認しなかったが起きていたのか?
「イヴ、部屋に戻ろう」と背中を撫でると、俺から少し離れた。
灯りが何もないからイヴの表情は暗がりで全く見えない。
貧困街の神殿に閉じ込められていた時、イヴの声真似をする奴がいたから心配になる。
「イヴ?」
「ユーリ、いなくなったと思って心配した」
「トイレ行ってて、起こしたら悪いと思って黙って部屋を出たんだ、ごめん」
「今度からは何処に行く時でも俺に言って」
「わ、分かった」
イヴの顔が見えないから、声だけで少し怒っていると感じて落ち込む。
でもやっぱりいちいちトイレの度に起こすのは悪いから置き手紙でも書こうと思った。
イヴに頬を両手で包み込まれて、上を向かされる。
お互い顔が分からない状態で、口付けされた。
いや、イヴは分かっていたのかもしれない…俺を暗闇から見つけ出したんだし…
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