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「商売も順調だな」
良い商品が安く入手できるとなれば商人が集まるのは当然だ。
「だって無税だからな」
税金が庶民の暮らしをどれだけ苦しめているのかを考えれば税金なんて無いほうがいい。
そんな当たり前なことをできない他の国王たちは無能でしかない。
「やはり俺のような優れた統治者がいなければ庶民は苦しむことになる」
「さすがユータね」
「当然だ」
「さすがユータね」
「まあな」
「さすがユータね」
「そうだろう?」
「さすがユータね」
「うむ」
だが商売が活発になるということは金に群がる亡者も集めることになる。
「犯罪者には厳罰を処す。盗みは死刑、俺への不満は死刑、暴行は死刑、あとは…まあ問題だと思ったら死刑だな」
「さすがユータね」
「これくらい当たり前だろう?」
「それができない無能が多いじゃない。平然とやれるユータがすごいのよ」
「まあな」
俺くらいになればこれくらいは簡単だ。
俺がルールだしルール違反には適切に対処する。
俺は当たり前のことをしているだけだ。
「盗賊とかも近寄らないようにしたいな」
「どうするの?」
「軍隊を作って巡回させるか」
「さすがユータね」
「まあな。でも無能な兵士ばかりだとどれだけ役に立つか不明だ」
「ユータでも難しいの?」
「そうか、俺がどうにかしてやればいいんだ」
「さすがユータね」
「まあな」
兵士は俺の命令を忠実に遂行できるよう隷属の魔法をかけた。
身体能力は強化しなくても盗賊や弱い魔物相手なら問題ないだろう。
「これで無能が使い物になるぞ」
「さすがユータね」
「これくらい当然だな」
これにより盗賊の被害も減った。
俺の国から出たらどうなるかは保障できない。
そういえばどこまでが俺の国なのか国境がはっきりしていなかったな。
まあ実効支配できているところが国内ということでいいか。
国内の安全は保障できるけど国外までは責任を持てない。
商人は利益を得るのだから何があってもいいよう覚悟を決めリスクも覚悟すべきだ。
まあ俺の活躍を知れば盗賊どももそのうちいなくなるだろう。
そこまでの知能が無い場合は…まあそのうち殺して綺麗にしておけばいいか。
「でも盗賊なんていくらでもいるでしょう?」
「それだよな」
いくら俺が正しく国を運営しても他の国で盗賊を作られたら堪ったものじゃない。
無能の尻拭いなんて嫌だけど誰かがやらないといけないからな。
「食べるものに困らなければ犯罪も減るだろう」
「さすがユータね」
「他の国に安く食料を供給してやろう」
そのために無税で食料を商人どもに売ってやっているんだ。
だが商人は適切な価格で売るのか?
「売るはずないよな」
金の亡者だから暴利をむさぼるに決まっている。
それだと俺の慈悲が他国の貧民まで届かないじゃないな。
「俺が間違っていた」
商人に隷属の魔法を使って安く売るよう命令しておいた。
「さすがユータね」
「これで貧民が飢えることもないだろう」
「さすがユータね。歴史に名を残しそうね」
「まあな」
これくらいのことをしただけで偉人になってしまうとはな。
別に特別なことなんてしていないのにな。
まあ普通ができない支配者が多いのだろう。
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