恋の居場所

桜庭 葉菜

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放課後の楽しみ 3

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「ニャー」

 メロがいつのまにか足元にいてスリスリしてきた。

 私はメロを抱きかかえてリビングに向かった。

「お母さんただいまー」

「おかえりー!」

 案の定、お母さんはキッチンで料理をしていた。

 いつもはおろしている髪を料理の時だけは後ろで結わいている。

 ショートカットの私はお母さんの腰の長さまである髪には多少の憧れを抱く。

 もちろん伸ばす気は無いのだけど。

「ゲーム、大丈夫だった? お父さんずっと心配してたから」

「大丈夫、さっきお父さんにも言ったよー」

 お母さんは心配性なお父さんに代わって頼もしい存在である。

 これはこれでお似合いの夫婦なのだと娘ながら思う。

 自室に行き、カバンを置き、部屋着に着替える。

 それからリビングの隣の部屋に入る。

 そこには数日前に届いた、普通のゲーム機より大きな機械が置いてある。 

 ゲーム機本体はソフトの発売日よりも1週間前に発売されたため、先に家に届けてもらった。

 そのゲーム機を隅々まで眺める。

 流石にこれを歩いて持って帰ってくることは無理だと改めて思った。

 すると突然、ポケットに入れていた携帯が鳴る。

「あれ? あきら?」

 もう準備終わった、という連絡が来た。

 早すぎ。

 まだ30分しか経っていないというのに……

 とはいえ、あまりあきらを待たせるのも悪い。

 私は素早く返事をして、再びゲームの準備に取りかかった。

「ふぅ……できた!」

 時計を見ると約束の時間の10分前。

 私は急いであきらに連絡した。

『ごめん! おまたせ!』

『やっと終わったか。それじゃキャラ作り終わったら最初の場所で集合しよう』

『りょーかい』

 既読が付いたのを確認して携帯を伏せる。

 目の前には大きなゲームの機械。

 そこから伸びているコードの先にあるのは頭につけるヘッドギア。

 ずっと待ってた。

 やっと出来る。

 私はゲームの電源を入れ、ヘッドギアをかぶった。
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