恋の居場所

桜庭 葉菜

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アキラとユリ 1

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「そろそろパーティ組んでストーリー進めようか」

 アキラがそう言って、何やらウィンドウを触り始めた。

 アキラのウィンドウが閉じたと思うと、今度は私の目の前に新しいウィンドウが開いた。

『アキラさんからパーティに誘われました』

 その文の下に〈 承認 〉〈 拒否 〉の選択肢が現れる。

 もちろん、拒否する理由はない。

 迷わず承認に触れる。

 すると、アキラの名前が黄色に変わった。

 どうやらパーティメンバーの名前は黄色で表示されるらしい。

 他にも、フレンドはピンク、ギルドメンバーは緑で表示されるようになっている。

 色で判断できるのはとても便利だ。

 私はずっと開きっぱなしだったウィンドウを閉じる。

 閉じる時も開く時と同じことをする。

 パチンと綺麗な音が鳴り、ウィンドウと名前の表示が消えた。

「まずはあの赤いビックリマークの人に話しかけよう。そうすれば進むらしい」

 らしい、ということはアキラもまだ何も進めていないのだろう。

 早速2人でその赤いビックリマークの人のところへ向かった。

 可愛いピンクのワンピースを着た女性。

 その頭の上にはしっかりとメインクエストをくれる人である証、赤いビックリマークがある。

 しかし……

「これ、どうすれば進むのかな?」

 普通のゲームなら近づけば話しかけるマークが出るのだが、どうやらこのゲームにその機能はないようだ。

「あ、あのー……」

 そう声をかけてみるとその女性が反応した。

「ルーネシア王国で9匹の竜を倒してくれる人を探しているそうです。もし興味がありましたらここを出て北に進むと着きますよ」

 なるほど。

 話しかけるマークがあるわけではなく、本当に話しかければいいってことなのね。

「じゃあ言われた通り北に行こうか」

 先に歩きだしたアキラの腰を見る。

 横向きの小さな鞘。

 あれは──短剣?

「これが気になるのか?」

「ふえっ……?」

 びっくりして間抜けな声を出してしまった。

 アキラがゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。

「俺、短剣にしたんだ。短剣はさ、ただ戦うだけじゃなくて相手に毒を与えたりとかできるんだよ。そういうのあった方が面白いかと思って」

 立ち止まって右手を後ろに回し、短剣を手に持って見せてくれた。

「ユリはなんの武器にしたの?」

 出した短剣をしまいながら私に聞いてくる。

「私? 私は弓だよ」

 くるりと一瞬だけ背中を見せて言った。

「そっか。近距離と遠距離とでちょうどいいかもな」

「確かに」

 今度こそ行こうか、そう言われて私はやっと歩き出した。
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