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三峰山の山犬
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昨日、秩父の三峰山に雪が降りました。埼玉県長瀞町に住む小学一年の男子タケルは、先生の言葉を思い出していました。
「皆さんの家の近くには、秩父の三峰神社というお社があります。そこの神様はイザナギノ尊、イザナミノ尊と言う名前で、日本の国や民族をお産みになられたご夫婦の神様です。お使いの山犬がいて、実はオオカミですが不思議な力を持つとされています。山犬も犬だから、雪が大好きです。雪の日に行くと、会えるかもしれませんね」
日曜日、タケルは思い切ってお父さんにお願いをしてみました。
「お父さん。僕ね。先生が言っていた三峰神社へ行って見たいんだ。不思議な力を持っているお使いの山犬がいるかも知れないって」
タケルは、一人っ子だったせいか、大人しい子です。父親のシンジは考えました。
最近タケルの家では一つ事件が起きていました。タケルのお母さんのミツコは二人目の子の妊娠が分かった所でした。
ある日タケルは川べりをお母さんと歩いていました。春が近いのか紫スミレが一輪土手に咲いていて、タケルは母に上げようと土手に降りて川に落ちそうになったのです。
ミツコはビックリして手をだし、引き上げたとたん、川に落ちてしまいました。
水で冷えたのか、夜中に激しい腹痛に襲われ救急車で病院にかつぎこまれたのです。幸いお腹の赤ちゃんもお母さんも無事だったのですがタケルは泣きじゃくって謝り、ますます無口になっていったのです。
「よし、今日三峰神社まで登ろう。その山犬とやらに会えるようにふもとから、歩いてゆこうじゃないか。タケル大丈夫か」
「うん。もう小学生だもの。ちゃんと登れるよ。僕頑張るから」
歩いて二十分くらい経ったでしょうか。風のせいか、道案内が傾いていて、二人は道に迷ったらしいのです。
「ここで待って居なさい。道を探してくるから。お前はまだ携帯電話は上手く使えないだろうが、母さんからかかって来るかも知れないし、置いてゆく。すぐ戻って来るから心配しないで待っていなさい」
タケルはおにぎりを一つたべました。チョコレートも水ものんだりたべたりしました。急に怖くなりソワソワと落ち着かなくなりました。
「探しに行って見よう。お父さんケガをしたのかもしれないし」
タケルがソロソロと歩き出すと、ワォーンという山犬の遠吠えのような声が聞こえました。
生暖かい風がヒュルルーンと吹いて、甘酸っぱいミカンの香りもしてきました。スウーと吸い込んでいると、突然綿あめのような白いしっぽをした子犬が現れました。
「コッチ。コッチ」
シッポを振って、止まっては歩き、歩いては止まって、道案内をしてくれるのです。
しばらくすると、タケルの歩いている道の下のほうから叫ぶ声がきこえます。
「オーイ、オーイ」
覗くとシンジでした。シンジが崖のところでうずくまっているのです。
「お父さーん。僕だよ。どうしたのー」
「オッ。タケルか、良かった。足を滑らしちゃってくじいたのか動けないんだ。携帯電話を置いて行って失敗しちゃったよ。まず携帯を投げてくれ。消防署にかけて助けを呼ぶから」
救助の人達がやってきてシンジは助け出されました。
消防署の人がタケルにいいました。
「坊や、よくお父さんがここで倒れているってわかったね。お手柄だよ」
「白い子犬が道案内をしてくれたの」
「白い子犬。三峰神社のお使いの山犬の子かもしれないな。坊や、きっと優しい子なんだね。山犬様が助けてくれたんだもの。山犬様はあれでけっこう人を見るからね。さて、その子犬様はどこにいらっしゃるのかな」
姿も形もないのでした。
タケルは白い子犬の夢をよく見ました。退院してきたお父さんに夢の事を話しました。
「今はむりだけど、お母さんの赤ちゃんが生まれて落ち着いたら二人で会いに行こうか」
秋が近づいて、台風がやって来ました。夜の大雨で川は大洪水です。
今、川の流れに沿って、シンジとタケルはミツコのいる病院に自転車の二人乗りで急いでいます。
夕べ、ミツコは破水(赤ちゃんが生まれる前兆)して、入院しました。安産らしいということで、いったん二人は家に帰されました。今朝、電話でお母さんの陣痛が始まり、赤ちゃんの首にへその緒が巻きついていて、大変危険なのですぐ来てくれと連絡があったのです。
ふと自転車から川を見下ろしたタケルが、叫びました。
「見て。お父さん。太い木の枝が流れてくる。その上に、あの子が、あの白いチビ犬が乗っているー」
激流の中を一本の太い流木が流れてきます。流木には白い子犬が四足で凛と立っているではありませんか。二人は自分の目をうたがいました。大きくはなっていますが、間違いなく、あの子犬が綿あめシッポを振り振り仁王立ちにして流木の上にいるのです。その眼の澄んで清々しいこと。二人は急いで川べりに降りました。
流木は目の前でピタリと止まりました。タケルが子犬を抱き上げると、
「クウーン」
と言って子犬はタケルの頬をなめました。不思議なことに、子犬の首には三峰神社の安産のお守りがぶら下げられていました。
すぐ分娩室に通されました。
お母さんは、苦しそうに涙を流しながら
「ウーんウーン」
とうなっています。
タケルが子犬のお守りを、お母さんの手に握らせると、今までの苦しみから解放されたようにスルリと赤ちゃんが生まれました。かわいい女の子です。
タケルはお兄ちゃんになりこの頃とても活発になりました。学校ではで生き物係りを引き受け、ウサギや亀の面倒を見ています。世話が済むと走って帰ります。妹のナミ、弟分になった子犬、もう大人の犬位の大きさですが、犬のイザが待っているからです。
さてナミが三才になった頃、お祖父ちゃんが一緒に住むようになり、タケルの家は五人と一匹になりました。とても元気なお祖父ちゃんで、イザの散歩の時トレーニング姿になりタケル、イザと一緒に走ります。
その内タケルはサッカーの朝練で、イザのお散歩はお祖父ちゃんの役目になりました。いつもお祖父ちゃんとイザはマラソンで町内を一周します。気が付くと二人の周りには人がいっぱい集まるようになりました。勿論犬も何匹か連れて来る人がいて、皆常連になりました。
そのうち体操を公園でやろうと言う話がまとまって朝食前に子供やお年寄り、奥さん達等たくさんの人が集まってラジオ体操をやったり、太極拳を教える人も出てきました。帰りには公園の掃除を皆でします。誰という事はなく、町内中の掃除も皆で交代でやろうという話になり、何だか皆仲良くワイワイ色々な事をやりはじめました。
ある時タケルのクラスでイジメがあり、一人不登校の男の子が出てしまいました。前はとてもやんちゃな子だったのに、お母さんが病気になって不安気になったとたん、標的にされてしまったのです。タケルは近所だし、仲良しなのでとても心配でした。担任の先生から、連絡帳を預かったタケルはその子の家をイザと一緒にたずねました。顔色の悪いお母さんが出てきて
「タケル君。これからは時々ミネのところに遊びにきてね」
といいました。
「この犬はタケル君の犬?触ってもいいかしら」
「いいよ。イザっていうんだ」
「僕もイザと一緒に遊びたい。タケル君一緒に遊んでもいい?」
タケルのお友達はミネ君といいます。毎日タケルとイザと遊ぶうちドンドン元気になっていきました。不思議なことにミネ君のお母さんも顔色が少しずつ良くなってゆくようです。ミネ君は自分も雌犬を飼うようになり、イザとミネ君の雌犬ナナはとっても仲がいいようでした。
タケルはお祖父ちゃんとも相談して、いじめた子も呼んで一緒にミネ君、イザやナナと遊びました。数日もすると、誰も怒ったりいじめたりは考えられないほど仲良くなり、自然にミネ君の不登校も直っていました。
三年後の事です。今まで元気で病気一つしたことがないイザが突然動かなくなってしまいました。食欲もなく病院に連れて行っても
「もう若くないので寿命かもしれませんね。一応覚悟をしておいてください」
イザは弟です。タケルにとってただの犬ではありません。タケルはそろそろ受験勉強もしなければならないのに、何日も眠れない日が続いたある夜、不思議な夢を見ました。夢の中に、もうすっかり忘れていたあの三峰山の大きな山犬が出てきました。
「私達の息子はもう年をとった。お山に帰しておくれ。三峰の守り神様もイザに会いたがっている。イザももう役目を終えここへ帰りたいそうだ。お願いだ。連れてきておくれ。」
翌朝お祖父ちゃんがとても不思議な夢を見たと言ってタケルの枕元にやってきました。全く同じ夢だったのです。
三峰山に初めての雪が降った朝、お父さんの車で家族全員で三峰山にやってきました。山頂につき、タケルが毛布にくるんだイザをそっと降ろすと、イザは力なくヨロヨロと立ち上がりました。ところが神社の本殿から出てきたとしか思われない大きな二ひきの山犬が現れると、イザは転げるようにそこへと走りだしたのです。イザの身体はずっと前に見た姿に瞬く間に戻っていくようでした。あの真っ白な綿あめシッポの小さな小さな子犬の姿です。山犬の父母に抱きかかえられるようにして、幸せそうにイザは真っ白な雪の中に消えてゆきました。イザは一度だけタケルを振り返ると
「ワォーン」
と可愛い遠吠えをし次の瞬間、姿はもう見えませんでした。
タケルはただボォーと生きていました。
ある夜また夢をみました。
「タケル君。元気をだして。お勉強も頑張って。僕またタケル君とこへいくよ。ずっと一緒だよ」
イザの夢でした。
翌日ミネ君が綿あめシッポの小さな子犬を抱いてやってきました。
「タケル君みて。ナナが産んだの、二匹。ほら、イザそっくりでしょ。一匹あげるよ」
おわり
「皆さんの家の近くには、秩父の三峰神社というお社があります。そこの神様はイザナギノ尊、イザナミノ尊と言う名前で、日本の国や民族をお産みになられたご夫婦の神様です。お使いの山犬がいて、実はオオカミですが不思議な力を持つとされています。山犬も犬だから、雪が大好きです。雪の日に行くと、会えるかもしれませんね」
日曜日、タケルは思い切ってお父さんにお願いをしてみました。
「お父さん。僕ね。先生が言っていた三峰神社へ行って見たいんだ。不思議な力を持っているお使いの山犬がいるかも知れないって」
タケルは、一人っ子だったせいか、大人しい子です。父親のシンジは考えました。
最近タケルの家では一つ事件が起きていました。タケルのお母さんのミツコは二人目の子の妊娠が分かった所でした。
ある日タケルは川べりをお母さんと歩いていました。春が近いのか紫スミレが一輪土手に咲いていて、タケルは母に上げようと土手に降りて川に落ちそうになったのです。
ミツコはビックリして手をだし、引き上げたとたん、川に落ちてしまいました。
水で冷えたのか、夜中に激しい腹痛に襲われ救急車で病院にかつぎこまれたのです。幸いお腹の赤ちゃんもお母さんも無事だったのですがタケルは泣きじゃくって謝り、ますます無口になっていったのです。
「よし、今日三峰神社まで登ろう。その山犬とやらに会えるようにふもとから、歩いてゆこうじゃないか。タケル大丈夫か」
「うん。もう小学生だもの。ちゃんと登れるよ。僕頑張るから」
歩いて二十分くらい経ったでしょうか。風のせいか、道案内が傾いていて、二人は道に迷ったらしいのです。
「ここで待って居なさい。道を探してくるから。お前はまだ携帯電話は上手く使えないだろうが、母さんからかかって来るかも知れないし、置いてゆく。すぐ戻って来るから心配しないで待っていなさい」
タケルはおにぎりを一つたべました。チョコレートも水ものんだりたべたりしました。急に怖くなりソワソワと落ち着かなくなりました。
「探しに行って見よう。お父さんケガをしたのかもしれないし」
タケルがソロソロと歩き出すと、ワォーンという山犬の遠吠えのような声が聞こえました。
生暖かい風がヒュルルーンと吹いて、甘酸っぱいミカンの香りもしてきました。スウーと吸い込んでいると、突然綿あめのような白いしっぽをした子犬が現れました。
「コッチ。コッチ」
シッポを振って、止まっては歩き、歩いては止まって、道案内をしてくれるのです。
しばらくすると、タケルの歩いている道の下のほうから叫ぶ声がきこえます。
「オーイ、オーイ」
覗くとシンジでした。シンジが崖のところでうずくまっているのです。
「お父さーん。僕だよ。どうしたのー」
「オッ。タケルか、良かった。足を滑らしちゃってくじいたのか動けないんだ。携帯電話を置いて行って失敗しちゃったよ。まず携帯を投げてくれ。消防署にかけて助けを呼ぶから」
救助の人達がやってきてシンジは助け出されました。
消防署の人がタケルにいいました。
「坊や、よくお父さんがここで倒れているってわかったね。お手柄だよ」
「白い子犬が道案内をしてくれたの」
「白い子犬。三峰神社のお使いの山犬の子かもしれないな。坊や、きっと優しい子なんだね。山犬様が助けてくれたんだもの。山犬様はあれでけっこう人を見るからね。さて、その子犬様はどこにいらっしゃるのかな」
姿も形もないのでした。
タケルは白い子犬の夢をよく見ました。退院してきたお父さんに夢の事を話しました。
「今はむりだけど、お母さんの赤ちゃんが生まれて落ち着いたら二人で会いに行こうか」
秋が近づいて、台風がやって来ました。夜の大雨で川は大洪水です。
今、川の流れに沿って、シンジとタケルはミツコのいる病院に自転車の二人乗りで急いでいます。
夕べ、ミツコは破水(赤ちゃんが生まれる前兆)して、入院しました。安産らしいということで、いったん二人は家に帰されました。今朝、電話でお母さんの陣痛が始まり、赤ちゃんの首にへその緒が巻きついていて、大変危険なのですぐ来てくれと連絡があったのです。
ふと自転車から川を見下ろしたタケルが、叫びました。
「見て。お父さん。太い木の枝が流れてくる。その上に、あの子が、あの白いチビ犬が乗っているー」
激流の中を一本の太い流木が流れてきます。流木には白い子犬が四足で凛と立っているではありませんか。二人は自分の目をうたがいました。大きくはなっていますが、間違いなく、あの子犬が綿あめシッポを振り振り仁王立ちにして流木の上にいるのです。その眼の澄んで清々しいこと。二人は急いで川べりに降りました。
流木は目の前でピタリと止まりました。タケルが子犬を抱き上げると、
「クウーン」
と言って子犬はタケルの頬をなめました。不思議なことに、子犬の首には三峰神社の安産のお守りがぶら下げられていました。
すぐ分娩室に通されました。
お母さんは、苦しそうに涙を流しながら
「ウーんウーン」
とうなっています。
タケルが子犬のお守りを、お母さんの手に握らせると、今までの苦しみから解放されたようにスルリと赤ちゃんが生まれました。かわいい女の子です。
タケルはお兄ちゃんになりこの頃とても活発になりました。学校ではで生き物係りを引き受け、ウサギや亀の面倒を見ています。世話が済むと走って帰ります。妹のナミ、弟分になった子犬、もう大人の犬位の大きさですが、犬のイザが待っているからです。
さてナミが三才になった頃、お祖父ちゃんが一緒に住むようになり、タケルの家は五人と一匹になりました。とても元気なお祖父ちゃんで、イザの散歩の時トレーニング姿になりタケル、イザと一緒に走ります。
その内タケルはサッカーの朝練で、イザのお散歩はお祖父ちゃんの役目になりました。いつもお祖父ちゃんとイザはマラソンで町内を一周します。気が付くと二人の周りには人がいっぱい集まるようになりました。勿論犬も何匹か連れて来る人がいて、皆常連になりました。
そのうち体操を公園でやろうと言う話がまとまって朝食前に子供やお年寄り、奥さん達等たくさんの人が集まってラジオ体操をやったり、太極拳を教える人も出てきました。帰りには公園の掃除を皆でします。誰という事はなく、町内中の掃除も皆で交代でやろうという話になり、何だか皆仲良くワイワイ色々な事をやりはじめました。
ある時タケルのクラスでイジメがあり、一人不登校の男の子が出てしまいました。前はとてもやんちゃな子だったのに、お母さんが病気になって不安気になったとたん、標的にされてしまったのです。タケルは近所だし、仲良しなのでとても心配でした。担任の先生から、連絡帳を預かったタケルはその子の家をイザと一緒にたずねました。顔色の悪いお母さんが出てきて
「タケル君。これからは時々ミネのところに遊びにきてね」
といいました。
「この犬はタケル君の犬?触ってもいいかしら」
「いいよ。イザっていうんだ」
「僕もイザと一緒に遊びたい。タケル君一緒に遊んでもいい?」
タケルのお友達はミネ君といいます。毎日タケルとイザと遊ぶうちドンドン元気になっていきました。不思議なことにミネ君のお母さんも顔色が少しずつ良くなってゆくようです。ミネ君は自分も雌犬を飼うようになり、イザとミネ君の雌犬ナナはとっても仲がいいようでした。
タケルはお祖父ちゃんとも相談して、いじめた子も呼んで一緒にミネ君、イザやナナと遊びました。数日もすると、誰も怒ったりいじめたりは考えられないほど仲良くなり、自然にミネ君の不登校も直っていました。
三年後の事です。今まで元気で病気一つしたことがないイザが突然動かなくなってしまいました。食欲もなく病院に連れて行っても
「もう若くないので寿命かもしれませんね。一応覚悟をしておいてください」
イザは弟です。タケルにとってただの犬ではありません。タケルはそろそろ受験勉強もしなければならないのに、何日も眠れない日が続いたある夜、不思議な夢を見ました。夢の中に、もうすっかり忘れていたあの三峰山の大きな山犬が出てきました。
「私達の息子はもう年をとった。お山に帰しておくれ。三峰の守り神様もイザに会いたがっている。イザももう役目を終えここへ帰りたいそうだ。お願いだ。連れてきておくれ。」
翌朝お祖父ちゃんがとても不思議な夢を見たと言ってタケルの枕元にやってきました。全く同じ夢だったのです。
三峰山に初めての雪が降った朝、お父さんの車で家族全員で三峰山にやってきました。山頂につき、タケルが毛布にくるんだイザをそっと降ろすと、イザは力なくヨロヨロと立ち上がりました。ところが神社の本殿から出てきたとしか思われない大きな二ひきの山犬が現れると、イザは転げるようにそこへと走りだしたのです。イザの身体はずっと前に見た姿に瞬く間に戻っていくようでした。あの真っ白な綿あめシッポの小さな小さな子犬の姿です。山犬の父母に抱きかかえられるようにして、幸せそうにイザは真っ白な雪の中に消えてゆきました。イザは一度だけタケルを振り返ると
「ワォーン」
と可愛い遠吠えをし次の瞬間、姿はもう見えませんでした。
タケルはただボォーと生きていました。
ある夜また夢をみました。
「タケル君。元気をだして。お勉強も頑張って。僕またタケル君とこへいくよ。ずっと一緒だよ」
イザの夢でした。
翌日ミネ君が綿あめシッポの小さな子犬を抱いてやってきました。
「タケル君みて。ナナが産んだの、二匹。ほら、イザそっくりでしょ。一匹あげるよ」
おわり
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