異世界で僕…。

ゆうやま

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一章 19話

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一章19話

無統治区域に入ってから半日が経ってから僕達は魔物に囲まれて足止めされてしまった。

「なんだこの数だ…」

「やっと出番が来たと思ったが…こりゃ多過ぎだな」

「逃げて振り切るのは無理そうね…撃退するしかないわ」

サーベルタイガーの群約30体とオーガー4体にサイクロプスまで出て逃げ切る事は難しいと判断したマリーヌは護衛達に命令を出した。

「総員守りを固めろ!馬車には決して近づけるな!」

「はいっ!」

護衛達はマリーヌの命令に速やかに馬車を囲んで守りを固めた。

彼女達は緊張はしていたが、怖気付いた表情はかけらも見せない…。

きっとかなりの練度が高い精鋭だと思って心配は要らなさそうだった。

「おい!ハルト!ちょっと出てこい!」

「ん?なぁに?クイル兄」

「こんな森奥で馬に何かあれば厄介な事になる…あれを魔物の真ん中にやってくれるか?」

「ん……わかった!気をつけてね?破片でも当たったら痛いだけで済まないからね」

「お…おう…」

アレとは最近覚えた無属性魔法で、前にクイル兄達と依頼を受けた時、大量の魔物に襲われて使った事があった。

僕が魔物達の正面に立つとクイル兄とネイビー姉は速やかに岩の後ろに身を潜めた。

「マ、マリーヌ!全員下がれっと伝えろ!」

「よ、よく分からないが…ぜ、全員下がれ!」

マリーヌの命令でみんなは僕から下がって盾をかざした。


「ハルト様?!危ないです!戻って下さい!」

「大丈夫です、馬車の中でじっとしててください、すぐ済みます」

依頼主は僕を心配してくれているが…僕も護衛任務を受けた冒険者…報酬に見合った働きをしないといけない。

「さてさて、震え上がれ!大地に眠りし力よ…舞い上がれ」

「マリーヌ!皆んな!衝撃に備えて!」

「わ、わかった!全員前方の防御に集中しろ!」

彼女達も危険だと直感し、盾て身を隠した。

「弾け、噴き飛ばせ!大地の憤怒、イラップション!」

その瞬間、地鳴りがなって魔物の群の下から爆発と噴火が起きた。

そこから真っ赤な溶岩が吹き出して魔物を飲み込んだ。

地下の溶岩の熱を利用した…無属性爆発魔法イラップション。

中位魔法だが…僕の魔力量に反応して威力は普通の四倍ほどあってオーガ4体は溶岩に焼けて死んで、サーベルタイガーも5体以外は爆風に吹き飛ばされ破裂した。

「こんな子供が無属性の中級魔法を…それになんだこの威力は…」

「バブバブー♪」

「ひぃ!ごめんなさいごめなさい!」

マリーヌを含めて護衛達は目の前の光景に目を疑ってる固まっていた。

「あっ!い、今だ!残りのサーベルタイガーを3人一組で確実に始末しろ!クイル!ネイビー!私とデカブツをやるぞ!」

「おうよ」

「お先にーー」

ネイビー姉は素早い動きで撹乱しながら双短剣で鋭い急所を狙うと、イライラしたサイクロプスは振り払おうと大振りをした。

「今だ!行くぞ!マリーヌ!」

「わかってる!気を抜くなよ、クイル!」

その隙を逃さずマリーヌは足首を切りつけて体勢を崩しクイル兄は渾身の一撃で首を斬り飛ばした。

そのだった10秒で大型魔物サイクロプスを仕留めた。

さすが上級冒険者であると…特にクイル兄さんの剣筋は目を離さないほど綺麗だった。

それに一瞬で隙を突き足首を狙うマリーヌの判断力には感心した。

護衛達もサーベルタイガーの始末を終えて、負傷者無しで最初のアクシデントは終わったが、近くで変な魔力を感じた。

間違いない…これは悪意を持った襲撃だと確信した。

「久しぶりの連携だね…」

「まだ腕は鈍ってないみたいだな…マリーヌ」

「ふっ…そういう貴様はちょっと鈍ったな」

「あっ?ガキンチョにボロボロにやられたやつがよく言うね…バフゥー?」

「な、なに!クイル貴様ぁぁ!」

「キャハハ」

戦いが終わると3人から妙によそよそしい感じは何処にも無かった。

「お前の言った通り…あれは化け物だな…」

聞こえてるよ?夜道気をつけ下さい…マリーヌさん。

「だろ…」

だろ…じゃない!

「ハルト君に聞かれたらまたバフられるよ」

「ひぃ!ごめんなさいごめんなさい」

「あ…これ一生トラウマになるかもな…」

「だね…」

二人はマリーヌを哀れな目で見ていた。

「しかし…妙じゃないか?」

「ああ……これは偶然に遭遇したわけじゃない」

「そうね、絶対群れないサーベルタイガーや魔物も食い散らかすサイクロプス…この地には生態に適してないオーガー」

「マリーヌ…」

「わかったわ…この周辺を調べてくれ」

それに気付いたクイル兄達は調査に行って、馬車は森を抜けた。

日が落ちて暗くなり、そろそろ移動が難しくなった。

森の中で野営にならずに済んたのは幸いだった。

夜の森だと夜襲し放題になって一睡もできなくなる。

睡眠不足は肌の敵!良かった良かった。

近くに川が見えて見晴らしもいいため、そこを野営をすると決めて準備を始めた。

一時間後、クイル兄さん達が戻ってマリーヌは報告を聞いていた。

僕はそれより大事な食事準備をしに行った。

それに報告内容は大体わかっている。

「数多い召喚陣があった…姫を狙った何処の貴族の仕業だろうな…」

「き、気づいてたか…」

「この時期にラーズ王国で聖都に行くと言ったら誰でもすぐ気付くわ…」

「たから、君達に頼んだ、黙っててすまん…」

「まあいいさ…しかし、失敗してからには益々過激になるだろ…」

「そうだろうね……」

「心配ない、近衛も優秀だし…あいつもいる」

「ああ、敵に回したくないね…」

僕はクイル兄さんのリクエストに応じて肉を焼きはじめた。

「ふんふん♪焼肉焼肉♪ジューシーな肩肉♪タレつけて~コンガリ焼いて~ママの味♪♪きゃっほー♩あっ!ロールケーキも切っておこう!」

お料理をする時は歌う癖があって、

「緊張感などカケラもない専業主婦の鏡のような姿だな…」

「ある意味…頼もしいわ」

「なんかうちらバカみたいじゃん…」

三人は急に笑い出してクイル兄さんとネイビー姉さんはいつも通り食事の催促をした。

「ハルト…俺はお前を実の弟だど…」

「うっせ!黙れ筋肉ダルマ…それもう飽きた」

「は、はい…」

焼きあがるとクイル兄さんはまるで猛獣のように肉にがっついた。

肉も高評価だったが、デザートのロールケーキがメインの肉より沢山売れて…3日分を全部完食、依頼主のお姉さんからロールケーキのリピートの要請がきた。
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