異世界で僕…。

ゆうやま

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2章53話

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イリヤ…リリヤ…。

双子との過ごした時間が僕の頭の中からゆっくりと浮かんできた…。

双子と初めて会った日から…一緒に様々な依頼を受けて冒険した事…。

初めて足を踏み入れたイビルゲートの中層で迷い三日も出れなかった事…。

何週間前の事なのに…何十年前の事のように懐かしく感じる…。

そして最後に双子のその綺麗な笑顔を思い出した瞬間…僕の心にヒビが入ったように…何かが壊れたような感じがした。

それから…得体知らない何かが僕に入って来て…オーディンに対して憎悪と殺意…。

そして破壊衝動が体の全身に走った。

倒せ、壊せ、刃向かう者は許すなと…囁く声が聞こえて僕の細胞一つ一つに怒りが染み渡る感じがした。

「イリヤを…返せ!リリヤを…返せぇぇ!僕の初めて出来た仲間…大切な友達なんだよ!お前なんかに、お前なんかに!殺される理由などないんだ!返せぇぇぇ!!」

怒りに耐えきれずオーディンに向かって叫び出した。

その瞬間、聞き覚えがない女の声が聞こえた。

[[ふふふ…やっとパスが繋がった…]]

それは念話とは違う感じでまるで自分と話しているいやな違和感がした。

誰だ…うるさい、黙ってろ!

[[ふーん…只ならぬ怒りを感じる]]

黙れと言ったはずだ…奴を……殺す!

[[へぇ…まぁいっか!やるなら確実にやらないとつまらんぞ?]]

ああ…奴の仲間も殺す!奴らの居場所全て壊す!この世界なんか…消えてしまえ!

[[あははは!いいね!いいわ!それが出来るように私が手を貸そう…素晴らしい光景を見せてくれ!破滅の光景を…]]

その囁きが聞こえなくなってから…抑えきれない力が湧いてきた。

「魂こと消えろ…オーディン!僕の前から永遠に消えろ…この世界から消えろ…お前の全て…存在すら消えろ!」

「主様!何をなさるお考えですか!えっ?その目…くあっー!」

「きゃあー!」

僕がその得体知らない力を解放した衝撃でバムとレヴィが吹き飛ばされた。

それにの左目の視野が真っ赤になって激痛を感じた。

でも…そんな事はもうどうでもよかった。

地が揺れ大気は乱れ海が荒れて、乱れた上空には巨大な魔法陣が現れて空を埋め尽した。

「これは…!こんな魔法は見た事ないぞ……ユグドラシルの具現言語魔法でもない、それ以上だ!」

危険と感じたオーディンは最後の力を絞り出してグングニールを僕に投げた。

だが…グングニールは近づく事すら出来ず弾かれた。

「バカな…!」

そして…巨大な魔法陣が回り始めた。

始まる…この世の終わりが…。

「最初の光であった…輝く汝の名はヘーメレー…その無慈悲な光で全てを包み込んで滅ぼせ…」

魔法陣から光の塊のような物が現れて雨雲で暗くなった空と大地の闇を一瞬で払い眩しく照らした。

その光りに晒された大地や森は徐々に生気が消えて荒地から乾いた砂漠のように変わっていく。

「これは…まさか原始の光?」

「初めの闇であった…全てに安らぎを与え終わりを告げる夜…汝の名はリュクス…その闇で絶望と恐怖に染めろ!」

真昼が一瞬で夜に変わって周りは暗くなった。

「あ、主様?そ、それは!いけません!くっ!この私が近づく事すら出来ないとは!」

僕の周りにバムすら破れない結界が張られていた。

「ばーーちゃん…なんか…凄く嫌な気分だよ!何なの?この状況は?」

「これはまずい!このままではこの世界どころか…幾千の天体が狂い…終わる」

「えっ?主様に何が起きているの?」

「あのお方に…魅入られてしまったようだ…私達だけでは止められない」

「あのお方?」

バムとレヴィだけでなく…地上に生きている全ての生物が不安感を感じて騒ぎ出した。

「原始の空であった…澤かやかな大気の高天の気…汝の名はアイテール!激しく燃える炎となれ!」

今までの空気が別のもののように入れ替わった。

「息が苦しくなった…この空気、酸素量が高すぎる!」

そして…互いに受け入れない光と闇が衝突して天文学の熱量エネルギーを発生した。

そして原始の大気はそのエネルギーによって着火して炎の空に変わった。

その莫大な熱量が僕の前に集まって来た。

「最初の死であった!全てを廃にした浄化の器よ…汝の名は幽冥のエレボス!

大地が真っ黒に染まって僕の前に巨大な盃が現れた。

その盃に光と闇と大気が激突しながら発生した炎が収まっていた。

がーーーーーん      がーーーーーん

空から重くて長い音の鐘音が世界に鳴り響いた。

「これは終末の危機の警報…ナイアーラトテップ…余の命はくれてやる!これで貴様の居場所は永遠になくなる!孤独にその罪を味わって消えるがいい!」

「さあ…滅亡の歌を奏でよう…鳴き叫べ…デ…」

「辞めるんだ…ハルト君!それに惑わされるな!自分に負けてはいけない…」

誰だ?

その声の人はバムすら破れなかった結界を破って僕の背中を優しく抱きしめてた。

ああ…暖かく柔らかい…。

そして春の森のような香りと、この透き通ったような声…。

僕はこの人を知ってる…。

忘れるはずがない…僕の大切な人。

ルル姉…。
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