ひねくれぼっちが異世界転生したら雑兵でした。~時には独りで瞑想したい俺が美少女とイケメンと魔物を滅すらしい壮大冒険譚~

アオイソラ

文字の大きさ
39 / 123
第一部ヴァルキュリャ編  第一章 ベルゲン

お前はもう酔っている

しおりを挟む
 ド ド ド ド ド
 僥倖っ……! なんという僥倖……!
 ド ド ド
 幸せだ! ソルベルグ家最高だ!
 ド ド ド ド ド ド
 
 海鮮は新鮮でぷりっぷり! 生臭さのするものなんて一つもない。
 なんだか分からない魚だけど、どれもほのかな甘味があって、とろけるように胃袋に吸い込まれていく。
 タクミさんのところでも堪能して驚いたけれど、ここの料理も、比較的香辛料が多用されていた。
 魚も肉も塩漬けとか香辛料たっぷりの薫製加工とか、セウダ周辺の内陸町とは全然違う。
 旨い。なんだよ! こーゆー美味いのがあるなら、みんな広めろよ!
 俺の中で香辛料の価値は爆上がりだ。
 スパイス・ロードだっけ? 香辛料が貴重な交易品だとか言ってた世界史を実感する。
 
 俺は黙々と飲食に興じた。
 昼に続いて、贅沢すぎる日だ。
 何より、ビールだぞ! ビール!
 キンっキンに冷えてはないがな!
 角杯は飲みかけでテーブルに置くことが出来ない。
 片手で持ち続けるか、即座飲み干しなのだが、一杯あたりの量がちょうど一~ニ口に調整されている。
 飲み干した空の杯を置いておくと、新しい杯を持ってきてくれる。
 完全飲み放題じゃねぇか!!
 ヒャッハーッ
 
 
「エルドフィン殿、そろそろ少し、控えては」
 
 
 ドォォォーーーンッ
 新しい杯を受け取った俺の右腕を、誰かが掴んで止めた!
 ゴッゴッゴッゴッゴッ……
 俺の腕を止めたのはお前か・・・ジトレフ・・・・ゥ!
 ブワァァァッッッ!!
 振り払おうとするが、振り払えねぇ。
 見れば、スゲー腕筋ッ。敵う気がしねぇッ!
 ズズズズズ
 だが断る!!
 ど素人の小僧が、この『エルドフィンおれさま』に意見するのかねッ!
  
 
「うるっせぇな、んだょ」
 
「この晩餐は相当の御厚意だ。しばらく滞在するのだし、こちらも気遣いすべきではないか」
 
「はぁ?」
 
「ずっと食べ飲み通しだ」
 
 
 食事が始まってから、アセウスは誰かしらと喋っていた。
 当然席を離れることも多く、飲み食いもゆっくりペースになっていた。
 飲み会あるあるで、アセウスから上座側のテーブルの上には、まだまだ豪華な食事が十分に残っている。
 
 親族側もジトレフから下座側も歓談しながらのペースのようだ。
 次の料理が出されるタイミングに、ちょうどいい具合で皿が片付く、そんな感じだった。
 ジトレフのやつも、こんな時には社交性を見せられるらしく、話しかけてきたソルベルグ家の面々との会話をそつなくこなしていた。
 ジトレフの癖に。すっげー気に入らねぇ。
 
 俺はご馳走最優先だ。
 周りの人間には目もくれず、食べたいものをひたすら食いまくる。
 話しかけられても、面倒だからテキトーに流した。
 そのうち皆きづく。あぁ、こいつは話しかけても無駄だ。
 そして、俺はますます食べ飲みに集中できるというわけだ。
 俺の前のテーブルの皿だけ、何回転かしている。
 
 
「歓迎の宴だってぇいってたじゃねぇか。遠慮する方が失礼んじゃねぇか?」
 
「だから今まで止めずにいた」
 
「じゃぁいまさら止めんなよ。さすがに俺も腹いっぺぇだょ」
 
「それならいい。これ・・は私が貰おう」
 
「はぁあ? てめぇ飲みてぇなら自分で貰ぇばいーだろ? 人の酒、んんなっっ」
 
 
 角杯を奪い取ろうとするジトレフの右手に負けじと、俺は両手で角杯を握りしめた。
 ジトレフのやつ、珍しく困った表情してやがる、ざまぁみろ! ぜってぇやんねぇっっ。
 角杯を全力で自分の方に引き寄せると、ジトレフのイケメンまで付いてきた!
 要らねぇわ! ちけぇよ! 手ぇ放せっっ!
 偉そうな低音ボイスで俺の頬まで揺れんだろーがぁっ。
 
 
「エルドフィン殿、自分では分からないのかも知れないが……多分、酔っている」
 
「ぶぁーっかかお前ぇ? 『たぶぅん、酔っているー』って自信のないケンシロウかよ。『お前はー、たぶぅんんー、酔っているー』っアいタタタタタタ! ってチャラケンじゃんっ! チャラケンジトレフぅーっ」
 
「エルドフィン殿、落ち着いて欲しい。騒ぎを起こす訳にはいかない」
 
 
 ばっかじゃねーの? こいつ。
 ぶぁーか、ぶぁーか!
 酔っ払い相手に落ち着けぇー、騒ぎはいや~ん、困っちゃったぁーって顔してさ。
 俺ぁおとなしく飲みたがってるだけじゃん、好きに飲ませてさっさと潰しちまえば静かになるんだよ。
 それをさぁ……
 
 
「あぁあ、そかー。おまぇ、酒とか、酔っ払いとか、知らねぇんだ? だろ?」
 
「……酒を何杯も飲んだことはない。酔ったこともない」
 
「だーぃせーいかいー! ぶぁっかだなーっなぁんも知らねぇでよぉ! でもいっかー、俺やっさしぃーしー? 気分ょくなってきたから、教えてやんょー」
 
 
 わんこビール状態で量がわかんなくてぇー、
 やっっぱっペース早過ぎたんかなぁ?
 さっき全身に力振り絞ったせいで回ったかぁー?
 がーっと飲んで飲むの止めると、吸収始まるのかとたんに酔い回ったりもするんよなぁー。
 えぇーっしないー? 俺はするぉー?
 でも、どぉでもいいわぁ!
 ふふふぅんっ。ふわふわしてきたぁっ!!
 
 
「優しぃーやっさすぃーい俺様が、酒の飲み方についておせぇてゃるおっっ」
 
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

処理中です...