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MAIN STORY

time02 契約

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そして、翌日の朝。

いつもより少し早めに目が覚め、朝飯を作ろうと部屋の机に目をやると、とある紙が置いてあった。

もちろん、新川にはこの紙が何の紙かの記憶は全くない。

「何だこれ...?」

新川は何か分からず、紙に書いてある文字を読み進めていく...。

「この度はわが社の新プランへのご契約ありがとうございます。このプランは、あなたの大切なお時間を私たちが買い取るというプランになっております。ですが、私たちが買い取った時間は、結局はご契約者様が体感することになりますため、犯罪を起こす等の心配はございません。会員料はずっと無料です。お値段は1時間1000円、買取のお電話はこの番号まで電話をし、このセリフをおっしゃって下さい。アドール社」

そしてその文章の一番下には電話番号と指定されたセリフが書いてあった...。

そしてその瞬間、新川は...。

あぁーーー!!
また僕、怪しすぎる契約結ばされてるー!!

酔っ払っていたので何も怪しく感じなかったようだ。
それこそ詐欺に遭いそうで恐いのだが。

実は新川、過去には酔っ払った勢いで、効くはずもない健康食品の怪しすぎるセールスにサインをしてしまったことがある。
そのときは多額の請求が来そうになったものの、何とかクーリングオフ出来た。

しかし今回の場合、これも怪しいが、“会員料はずっと無料”ーーー。

無視をしておけばどうにかなるのでは?
そう新川は考えた。



その日は気にせず、会社へと出社することにした。

いつも通り、朝の満員電車、上司との付き合いによる精神的疲労、パソコン作業による眼精疲労...。

夕方6時、定時が近くなり、今日こそ残業なしで帰れると思っていたら...

「ちょっとこれお願い」

上司から書類を押し付けられた。
それもかなりの量。30分や1時間では片付きそうにはない。

そのとき偶然にも、“あの”紙を会社に持ってきていた。

そう。“あの”紙だ。

何日もの連続した残業で、心は悲鳴をあげる直前まで追い込まれていた。

この残業を体験せずに済む方法ーーー。
その方法は一つ。


タイムスリップしかない!


新川はとっさにあの紙と自分のスマホだけを持ち、お手洗いへと走る。

お手洗いにたどり着き、指定された番号に電話をする。


「こちら、アドール社タイムスリップ課です。ご用件は何でしょうか」

指定されたセリフ、これを言えば残業の苦痛から逃れられる。しかも怪しいが、お金が手に入るーーー。


「タイムスリップを、お願いします」


to be continued...
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