上 下
8 / 14
MAIN STORY

time08 もう一人の被験者

しおりを挟む
「ちょっといいかい、君ですよ、君」 

また一人、あのプランへの契約者が増える。
あのときはそれぐらいにしか思っていなかったーーー。

「君...今11時だけど親御さんとか...大丈夫なの?」

「大丈夫です。だって、親なんて僕のこと心配もしてないですから。明日まで帰らなくたって別に構わないんです」

「...で、君いくつなの?」

「16歳...高校一年です」

そう、呼んだのは高校生の男の子だった。
夜11時に、高校の制服でこんなオフィスが並ぶ町を出歩いていた。

そしてその黒ずくめの男は、そこでも巧みな会話術を使い、新川のときと同じように、契約を迫ろうとしている...。

「君さ...学校で心配なことがあるんじゃない?」

「だ、大丈夫ですよ。あなたも何で僕を呼び止めたりしたんですか?」

「実はね...うちの会社の新プランで、こういうプランがあるんだよ...」


“あのとき”と同じように、黒ずくめの男は、新プランの説明を続けていく...。


「名前はなんて言うんだい?」

「た、高宮といいます...。電車で少し行ったところの高校に通ってるんです...」


そして結局、黒ずくめの男の巧みな術に引っ張られ、高宮はこのタイムスリップのプランを契約したのだった...。


僕は大丈夫なんだ。
そう心に言い聞かせて、惰性で生きている高宮。

翌日の朝、いつも通りの時間の電車に乗り、学校に行くと、机には大きく、こう落書きがしてあった。


「消えろ」「来るな」


その他にも机には、心ない言葉が並んでいた...。

高宮の朝は、これをひたすら消すことから始まる。

まだ不幸中の幸いなのか、油性ペンでは書かれていないのでなんとか消えた。


そしてそれからは何も変化はなく1時間目が終わった。

お手洗いに行き、教室に戻ろうとすると、廊下にバナナの皮が置かれていた。

高宮は寸前のところで気付いたので避けた。
そうすると...

「おいおいおい、避けんなよ!面白くねぇだろ」

そしてその言葉と一緒に、腹や顔を数発殴られた。


その後の休み時間もいつも通り、他の人から無視され、そして時が進んで行く...。


昼休みは、持ってきた弁当を食べる前にひっくり返された。



その日は、アドール社の言っていたことなんて、ただの騙し文句、そんなことできるはずがない、と思っていた...。

しかし、その翌日、ずっと我慢していた心が
張り裂け、ついに学校に足が向かなくなってしまった。


そこで高宮は、あの番号を、ダメ元で試してみることにしたという...。

「はい、こちらアドール社です」


to be continued...
しおりを挟む

処理中です...