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最終話 二十五時の来訪者
しおりを挟む『キョッ、キョキョキョキョ。ホッ、キョキョキョキョ』
その鳴き声に、カヤコとアオキが目を覚ます。二人は眠たそうに目をこすりながら時計を確認した。
「二十四時、五十五分か……」
「二十五時じゃなかったね」
二人は少しだけ、ガッカリした様子になる。
「明日、このアパートから引っ越すから、最後に聞きたかったな。二十五時ぴったりに……」
「本当に不思議な体験だったよな。あの鳴き声に起こされなかったら、カヤコさんと仲良くなることなく、このアパートにずっと住んでたんだろうし」
「……私も。でも、ホトトギスが鳴かなくても、違うきっかけで恋人になってたかもしれないって運命を信じたい気持ちもあるかな」
「俺も同じく信じたい気持ちだよ。……ホトトギスと関係ない運命といえば、ロクタさんとミヤコさんがそうなのかな?」
「たしかに私たちやハギちゃんたちと違って、ホトトギスが直接的に関わってないか。あれ? でも、けっきょく間接的には……」
「あー、たしかに。……でも、もうどっちでもいいか。出会えたなら」
「うん、そうだね。……それにしても、やっぱりミヤコさんの好きな人が叔父さんだったなんて複雑」
「なんで? どっちも長い間、好きな人を想い続けてたわけで、再会しても想いが変わらないって誰よりも強い縁でステキだと思うけど」
「……そこじゃなくて。ミヤコさんの話では、若い頃の叔父さんの性格って、私に似ていたみたいで」
「なるほど、カヤコさんが六十代になった時、ロクタさんみたいになる可能性があるのか……」
「やめてー! 私、あんな大雑把でデリカシーのない人間になりたくない」
「あははは。俺はロクタさんのこと好きだし、全然かまわないけど。今から楽しみだな~。六十代のカヤコさん」
当たり前のように、そう話したアオキの言葉を聞いて、ふいにカヤコの瞳からポロッと涙がひと粒だけ流れ落ちた時だった。
『トッキョキョカキョク』
『ピピピピピピピピピ』
すぐ近くで、ホトトギスの大きな鳴き声が聞こえてきた。
「今、ベランダの方で鳴かなかった!?」
「うん! 鳴いたよね。アオキさん、見て見て! しかも二十五時ぴったりだよ」
二人は慌ててベランダに出てみたが、ホトトギスの姿はなかった。
「うわっ!?」
「ど、どうしたの!? アオキさん」
「なんか、踏んづけそうになって……。何だ?」
そう言いながらアオキが確認してみると、それは指輪だった。
「その指輪。もしかして……」
「俺がカヤコさんに贈った指輪だ」
「うそ、まさかベランダで落としてたなんて。でもあれ? あの時、ベランダに出たっけ!? でもでも、かなり慌ててたから。アオキさん、ごめんね。私が裏山で落としたって言ってたから、ずっと探すの手伝ってくれてたのに」
混乱気味のカヤコをよそに、アオキは指輪を優しげに見つめると、誰かに思いを馳せているようだった。
「カヤコさん、違うよ。やっぱり、指輪は裏山で落としてたんだ」
「えっ?」
「きっと、二十五時の来訪者が届けてくれたんだよ」
「どういうこと?」
「今はまだ秘密。そういう約束なんだ」
「約束?」
「そう。カヤコさんが俺と結婚した後に教えてあげるようにって……」
アオキが不思議そうな顔をしているカヤコの左手の薬指に指輪をはめた。
「秘密を知りたい?」
「知りたいよ」
「だったら、もう俺と結婚するしかないわけですよ。また結婚に不安だから指輪を返すとか言ったら知ることができないよ~?」
「うっ、いじわる。もう絶対に言わないから教えてください。約束ね!」
「あははは。分かってるよ。ホトトギスに誓って約束するよ」
『テッペンカケタカ』
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