花鳥見聞録

木野もくば

文字の大きさ
2 / 20

第二話 有明(ありあけ)の月

しおりを挟む

「何だか変な世界に入りんじまったな」

「……何だろう? この世界は何かが足りない感じがする。……すごく気持ちわるい」

「大丈夫か!? 今、休める場所に……。って、ルイ!?」

 ルイは急に意識を失い、モクの背中せなかから落ちてしまいました。

「あれっ?」

 ルイが目を覚ますと、見知らぬ誰かの家にいました。フワフワのタオルの上にかされていて、すぐ横でモクが心配そうに見ています。

「ルイ! 気がついたか。よかった~」

「モク? あっ、お外が真っ暗。私、いっぱいてた?」

「お前、オレの背中せなかから落っこちて気絶きぜつしてたんだよ。さいわい下が花畑で、花びらがクッションになったからケガはないみたいだが、どこもいたくないか?」

「うん、いたくないよ。心配かけてごめんね。ところでここはどこ?」

「銀色のかみの兄ちゃんの家。ちょうど花畑にいたみたいで、オレたちに気付いて助けてくれたんだ。なんか不思議な感じの人間だったな。俺の言葉が通じるし、ルイを見てもおどろかないし……」

「……そのお兄さんに会ってみたい。お礼も言いたい」

「ああ、行こう! 確か、さっきの花畑に戻るって言ってたな」

 モクとルイが花畑に行くと、空には有明ありあけの月が浮かんでいて、月明かりに照らされた花々が静かにらめいていました。

 花畑の真ん中に、手のひらほどの小さな鏡を持って月を見上げている長い銀髪ぎんぱつの十代後半くらいの少年がいました。
 銀髪ぎんぱつの少年は、モクとルイに気付くと笑顔で手をふりながら近付いてきます。

「おっ! 小さなおじょうさんが目を覚ましたんだな。よかったな鳥!」

「本当にありがとよ。あと、鳥じゃねえよ。オレの名前はメジロのモクだ」

「私はルイ。助けてくれてありがとう。ところでお兄さんは何者?」

「ボクはヨウ。太陽の光って意味でヨウ。そういう君らも、ただのメジロと小さな女の子じゃないだろ? ……まあ、せっかくの美しい月夜だし、お互いの素性すじょう詮索せんさくはやめて今は一緒に月をながめないか?」

「……そうだな。ヨウは月が好きなのか?あと、その鏡は何だ?」

「あ~、この鏡は一人で月見がさびしいから。ちなみに月はきらいだよ。特に有明の月は一番きらいだな。夜が明けても、まだ空にる月って意味だろ。なんか、ボクにはイヤなひびきなんだよね」

「……今まで出会ってきたヤツらの例にもれず、お前も何か変なヤツだな。イヤなら何で月見つきみなんてしてるんだよ」

「……お兄さんって見た目は、なんか月みたいな雰囲気ふんいきだけど太陽を意味する名前だもんね。だから月がイヤなの?」

「おお、するどいね。かんがよいルイに、とっておきの情報をあげるよ。この花畑は、十九年に一度の満月の夜にだけ銀色の花を咲かせるんだ。どうしても記憶の手がかりが見つからなかったら来てみるといいぞ……」

「十九年に一度の満月? なんだそりゃ?」

「……それは、いつなの? 何かが起きるの?」

「さてね? ボクにも分からない。まあ、えんがあったら、その満月に引き寄せられるはずだよ」

 翌日よくじつ、ヨウの家で一晩ゆっくり休んだモクとルイは別れをしみながら旅に戻りました。

「せっかくヨウと友達になれたのに、もうお別れなんて残念」

「しょうがねえよ。この世界はルイを弱らせる何かがあるみたいだし長居ながいはできないからな。なあに、遊びに来ようと思えば会えるんだから、また来ようぜ」

「うん、そうだね。今度はモクの背中せなかから落ちないようにしないと。それにしても、昨日のお月見つきみとても楽しかったね。お団子も美味おいしかった」

「たしかに美味うまかったな。ヨウは月がきらいって言ってたわりには、月見団子まで用意してて楽しそうだったよな。しかも、けっこう量もあったし、オレたちが来なかったら一人で食うつもりだったのか?」

「不思議な人だったね。私が記憶喪失そうしつだってことも知っていたみたいだし。モクが話したわけじゃないんでしょ?」

「話してねえよ。まあ、今度会う時があれば聞いてみようぜ」

「……うん、そうだね」




(月と鏡)

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

二十五時の来訪者

木野もくば
ライト文芸
とある田舎町で会社員をしているカヤコは、深夜に聞こえる鳥のさえずりで目を覚ましてしまいます。 独特でおもしろい鳴き声が気になりベランダから外を眺めていると、ちょっとしたハプニングからの出会いがあって……。 夏が訪れる少し前の季節のなか、深夜一時からの時間がつむぐ、ほんのひと時の物語です。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

愚かな貴族を飼う国なら滅びて当然《完結》

アーエル
恋愛
「滅ぼしていい?」 「滅ぼしちゃった方がいい」 そんな言葉で消える国。 自業自得ですよ。 ✰ 一万文字(ちょっと)作品 ‪☆他社でも公開

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

処理中です...