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第二話 有明(ありあけ)の月
しおりを挟む「何だか変な世界に入り込んじまったな」
「……何だろう? この世界は何かが足りない感じがする。……すごく気持ちわるい」
「大丈夫か!? 今、休める場所に……。って、ルイ!?」
ルイは急に意識を失い、モクの背中から落ちてしまいました。
「あれっ?」
ルイが目を覚ますと、見知らぬ誰かの家にいました。フワフワのタオルの上に寝かされていて、すぐ横でモクが心配そうに見ています。
「ルイ! 気がついたか。よかった~」
「モク? あっ、お外が真っ暗。私、いっぱい寝てた?」
「お前、オレの背中から落っこちて気絶してたんだよ。幸い下が花畑で、花びらがクッションになったからケガはないみたいだが、どこも痛くないか?」
「うん、痛くないよ。心配かけてごめんね。ところでここはどこ?」
「銀色の髪の兄ちゃんの家。ちょうど花畑にいたみたいで、オレたちに気付いて助けてくれたんだ。なんか不思議な感じの人間だったな。俺の言葉が通じるし、ルイを見ても驚かないし……」
「……そのお兄さんに会ってみたい。お礼も言いたい」
「ああ、行こう! 確か、さっきの花畑に戻るって言ってたな」
モクとルイが花畑に行くと、空には有明の月が浮かんでいて、月明かりに照らされた花々が静かに揺らめいていました。
花畑の真ん中に、手のひらほどの小さな鏡を持って月を見上げている長い銀髪の十代後半くらいの少年がいました。
銀髪の少年は、モクとルイに気付くと笑顔で手をふりながら近付いてきます。
「おっ! 小さなお嬢さんが目を覚ましたんだな。よかったな鳥!」
「本当にありがとよ。あと、鳥じゃねえよ。オレの名前はメジロのモクだ」
「私はルイ。助けてくれてありがとう。ところでお兄さんは何者?」
「ボクはヨウ。太陽の光って意味で陽。そういう君らも、ただのメジロと小さな女の子じゃないだろ? ……まあ、せっかくの美しい月夜だし、お互いの素性の詮索はやめて今は一緒に月を眺めないか?」
「……そうだな。ヨウは月が好きなのか?あと、その鏡は何だ?」
「あ~、この鏡は一人で月見が寂しいから。ちなみに月はきらいだよ。特に有明の月は一番きらいだな。夜が明けても、まだ空に有る月って意味だろ。なんか、ボクにはイヤな響きなんだよね」
「……今まで出会ってきたヤツらの例にもれず、お前も何か変なヤツだな。イヤなら何で月見なんてしてるんだよ」
「……お兄さんって見た目は、なんか月みたいな雰囲気だけど太陽を意味する名前だもんね。だから月がイヤなの?」
「おお、するどいね。勘がよいルイに、とっておきの情報をあげるよ。この花畑は、十九年に一度の満月の夜にだけ銀色の花を咲かせるんだ。どうしても記憶の手がかりが見つからなかったら来てみるといいぞ……」
「十九年に一度の満月? なんだそりゃ?」
「……それは、いつなの? 何かが起きるの?」
「さてね? ボクにも分からない。まあ、縁があったら、その満月に引き寄せられるはずだよ」
翌日、ヨウの家で一晩ゆっくり休んだモクとルイは別れを惜しみながら旅に戻りました。
「せっかくヨウと友達になれたのに、もうお別れなんて残念」
「しょうがねえよ。この世界はルイを弱らせる何かがあるみたいだし長居はできないからな。なあに、遊びに来ようと思えば会えるんだから、また来ようぜ」
「うん、そうだね。今度はモクの背中から落ちないようにしないと。それにしても、昨日のお月見とても楽しかったね。お団子も美味しかった」
「たしかに美味かったな。ヨウは月がきらいって言ってたわりには、月見団子まで用意してて楽しそうだったよな。しかも、けっこう量もあったし、オレたちが来なかったら一人で食うつもりだったのか?」
「不思議な人だったね。私が記憶喪失だってことも知っていたみたいだし。モクが話したわけじゃないんでしょ?」
「話してねえよ。まあ、今度会う時があれば聞いてみようぜ」
「……うん、そうだね」
(月と鏡)
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