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第七話 記憶と呪い
しおりを挟む「何だ? あれは……」
「木にぶら下がってるヘビさんの口の中に女の子がいて手をバタバタと動かしているね」
ルイの説明そのままの状況を目撃して固まっていたモクが、我に返った様子で慌てます。
「おいおい、もしかして食われそうになってんじゃないか。助けるべきだよな!」
「でも、女の子がぜんぜん平気そうだよ。遊んでいるだけじゃないかな?」
「ヘビの口の中に入るって、どんな遊びだよ!?」
その時、モクとルイに気付いた女の子が声をかけてきます。
「ねえ! そこの鳥くん。わるいんだけど、そこに生えているヘビイチゴの実を採ってきてくれない?」
「はあ? いきなり何だ。……と言うか、やっぱり食われてたわけじゃないのか。よ、よかった」
「ねえ~! お願い! ヘビ先輩と協力して採ろうとしたんだけど届かなくて」
「わ、分かったよ。ヘビ先輩って、あのデカいヘビのことだよな? まったく紛らわしい状態でいるなよ。心配して損したぜ」
モクは言われた通りに、ヘビイチゴの実を採ってくると女の子に渡しました。
「ありがとう! 助かったよ。ああ、それと私は花で、こっちがヘビ先輩。よろしくね」
「オレはモク。背中に乗っているのはルイだ。ところで、何でヘビイチゴを採ることに苦労してたんだ? 普通に地面に下りればいいだけだろ」
「アレがいるのよ」
「アレ?」
ハナが指差している方向を見てみると、茂みの方でカッパたちがキュウリを握りしめながら待ち構えていました。
「……カッパウイルス。また、あいつらか」
「本当にしつこいのよ。キュウリは好きだけど、アイツらに無理やり突っ込まれるのがイヤなの」
「気持ちは分かるぜ。なあ、ルイ。……ルイ?」
ルイは、モクの背中にしがみつきながらグッタリしています。
「ル、ルイ!? まただ。……どうして?」
ハナが慌てて、ルイを両手で抱えあげます。
「ヘビ先輩……。この子、もしかして」
ヘビ先輩も、ゆっくりとルイに近付くと何かを確認するように舌をチロチロと出しています。
「やっぱり、水神の呪いね」
「水神? ルイは記憶を失くしてるんだ。オレたちは、その記憶を取り戻すために旅をしてるんだけど、そいつの呪いが原因なのか?」
「おそらく。……ところで、あなたの方は?」
「えっ?」
「だから、あなたのことよ。モクこそ記憶があるの?」
「えっ? だってオレは、ただのメジロで……」
「あ~、これは両方か。ヘビ先輩どうします?」
ヘビ先輩は、とぐろを巻いて顔を伏せてしまいました。
「やっぱりダメか。お手上げね……」
ハナは、ルイをそっとモクの背中に乗せると、憐れむ表情を浮かべました。
モクは、ハナが伝えたいことを察すると力なくたずねます。
「オレたちがどっちも、その水神の呪いにかかっていて簡単に消えないことは分かったよ。でも、何も分からないし思い出せないんだよ。……どうすればいいんだ?」
「水神に会うしかない。言いづらいけど、ルイが苦しんでいる時に彼が近くにいる。それを手がかりにするしか……」
「じゃあ、今も!?」
「今はいないわ。私もヘビ先輩も、水神と似たような存在だからルイが反応したのかもしれない」
「……そうか、でも、ようやく手がかりが見つかった。ルイ、やっと旅を終わらせることができるかもしれない……」
モクは、そう独り言のように呟くと、ぐったりとしたルイを乗せたまま、どこかへ飛んでいきました。
「待って、モク! まだ話が……」
ハナの制止する声も届いていない様子で、モクとルイの姿があっという間に見えなくなりました。
二人が去ってしまった空を眺め続けるハナに、ヘビ先輩が静かに話しかけます。
「太古の昔から、あらゆる生き物たちを癒し続けてきた泉だった。あれほど美しく澄んでいたのに……。人間の業は深すぎたのだ」
(花と蛇)
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