僕らの恋愛経過記録

藤宮りつか

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Final Season

    ケジメ、つけさせてもらいます(2)

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「それは罪悪感があるからじゃない?」
 そう言ったのは悠那だった。
 湊がうちで四日目の朝を迎えたその日。早朝から仕事に出掛けた律と海以外の三人は昼過ぎからの仕事だったため、午前中はわりとのんびりした時間を過ごすことができていた。
 俺と湊がとっくに朝飯を食べ終わり、そろそろ昼飯でも作ろうかという頃になって起きてきた司と悠那は、お決まりとも言える朝風呂に入った後、ダイニングで湊を交えた雑談を始めた。
 俺は台所に立っていたから、会話そのものにはあまり参加していなかったのだが、湊は司にひとしきり元カノについての話を聞き出してから――悠那がいる手前、司は進んで元カノの話をしたがらなかった――、俺と夏凛のことまで司と悠那に相談し始めたのである。
『陽平と夏凛の間にケジメが付いていない気がする』
 と言った湊に対する返事が、先程の悠那の一言だったというわけだ。
「罪悪感?」
 司と悠那が起きてきたことで、二人分の予定だった昼飯の材料を四人分に増やした俺は、自分に関係のある話になると口を挟まずにはいられなくなって、思わず悠那に聞き返してしまった。
「うん。だって陽平、夏凛ちゃんとは自分の都合で別れただけで、夏凛ちゃんのことが嫌いになったわけでも、恋人としてやっていけなくなったわけでもないんでしょ? だから、陽平の中では夏凛ちゃんに対する“申し訳ない”って気持ちが残ったままなんだよ。それで、夏凛ちゃんとの関係にケジメが付いていないように感じるんじゃない?」
「あー……なるほどな」
 悠那の言葉に俺より先に納得する湊だった。
 どうしてうちのメンバーの中で恋愛に関しては一番遅咲きだったはずの悠那が、恋愛のスペシャリストみたいに説得力のある発言を口にすることができるんだろうか。今の悠那の発言は俺にも腑に落ちるところがあった。
「多分、夏凛ちゃんにも似たような気持ちがあると思うんだよね。夏凛ちゃんには罪悪感じゃなくて後悔かな? 陽平に別れ話を切り出された時、陽平の気持ちを優先して、自分がどうしたいのかを言わなかったんでしょ? その時の後悔を引き摺っているから、陽平にも未練が残ってるんじゃないかな」
「そう……なのか?」
「俺の想像だけどね。本当のところは本人に聞いてみなくちゃわからないよ」
「そっか……」
 以前、俺、司、悠那、湊と、夏凛やありすと一緒に御飯を食べた席で、そのへんの話は悠那も詳しく聞かされて知っているところではある。
 それにしても、実際に俺と夏凛が付き合っていた頃を知らない悠那が、話を聞いただけでここまで的確とも思える推測を立てられることには、正直舌を巻いてしまう。
「まあ、そういう罪悪感や後悔なんて、吹っきっちゃえばそれまでなんだけどね。二人とも変に真面目で律儀そうだから、自分一人で解決することができないんじゃないの?」
「うーん……そう言われると、俺もそんな気がしてきたな」
 ハッキリとした確信があるわけじゃないが、悠那の言葉を受け、悠那の言っていることが正解であるような気がしてきた。
 確かに、俺の中には夏凛に対して“申し訳ない”と思う気持ちが常にある。普段の生活の中では忘れてしまっていることも多いけれど、夏凛に会うとその気持ちを思い出さされるって感じだ。
「凄いね、悠那。俺、全然そんな風に考えたことなんてなかったし、陽平が湊さんと付き合うことにした時点で、陽平さんと夏凛さんの関係は完全に完結したものだと思ってたよ」
 自分の恋人の解釈に心底感心したような顔の司は、これみよがしに悠那を褒めた。
 まあ、司は悠那とイチャイチャすることしか頭にないような奴だからな。人の色恋沙汰なんて基本的にはどっちを向いていてもいいんだと思う。自分に害さえなければ。
 しかし、悠那のほうは他人の色恋沙汰にも興味津々で、何かと首を突っ込みたがる性格でもあるから、そのぶん他人の恋愛に関する観察眼も磨かれているのかもしれない。
 余計なお節介を焼かれるのは困るけど、こうしてたまには役に立つ発言をしてくれることもある悠那だから、海なんかは悠那(ついでに司)に恋愛相談をしたくなるのかもしれないよな。
「本当だね。俺もその発想はなかった。お互いに罪悪感やら後悔の気持ちを残したままじゃ、そりゃケジメも付かないって話か」
 湊までが悠那を称賛し、何やら完全に悠那の言っていることが正しいことになってしまっているような流れだ。
 そのことで得意気な顔になる悠那を見ていると、反論の一つや二つでも返してやりたくなるのだが、言い返す言葉が何一つ思い浮かばない俺は悔しい。
「ってことは、二人が別れ話の続きをすれば、二人の中でもケジメが付くってことなのかな?」
「え」
 それでも、何か悠那に言い返す言葉を探していた俺は、俺と夏凛の関係に終止符を打てる希望を見つけたと言わんばかりの湊の発言に、激しく動揺してしまった。
(い……今更?)
 俺が夏凛と別れて何年経っていると思ってんだよ。今は夏凛と別れて新しい恋人までいるっていうのに、今更夏凛と別れ話の続きをしろってか? 俺としては全く気が進まない展開なんだけど。
「俺の想像が当たっていれば、その可能性は高いんじゃないかと思う」
「だってさ、陽平」
「って言われても……」
 仮にそうだとして、今更どうやって別れ話の続きをすればいんだよ。どう考えても切り出しにくい話だし、どのタイミングで蒸し返せばいいのかがわからないじゃん。
 そもそも、俺の中に夏凛に対する罪悪感があることは事実でも、夏凛の中に俺への後悔があるかどうかはわからねーじゃん。
「そうだよね。陽平にそんなことを言っても、陽平からしてみれば今更言い出しにくい話ではあるよね」
 明らかに困惑する俺の顔を見て、悠那は「うんうん」と頷いている。
 なんだろうな。悠那に訳知り顔をされるとやたらに悔しいわ。悠那の言っていることが当たっている時は尚更に。
「いっそのこと、司の元カノみたいに夏凛ちゃんのほうから蒸し返してくれればいいんだけど、夏凛ちゃんも陽平と似たようなタイプっぽいから、自分からそういう話は言い出さないだろうな」
「で、二人して勝手にもやもやしてるんだよね」
「そうそう」
「おい」
 俺のことはさておき、夏凛のことまでわかったような気になるのはやめてもらいたい。湊ならまだしも、悠那は言うほど夏凛と深く関わっちゃいないだろ。
「だったら、陽平が湊さんと付き合ってることを夏凛さんに打ち明ければいいんじゃないの? その話の流れで、陽平が夏凛さんに感じている罪悪感の話もして、謝罪しちゃえば良くない?」
「えー……」
 あまり出る幕がなさそうな顔をしていた司だったのに。会話に全くの不参加でいるつもりでもないらしかった。
 結果としては湊が喜ぶだけの提案をする司に、俺はあからさまに嫌な顔をしてみせた。
「でしょ? やっぱそれが一番だよねっ!」
 対する湊は司の提案に大喜びである。
 全く……なんだかんだと湊の味方をする形になるんだよな、司は。それを言ったら悠那もだけど。
「俺もそう言ってるんだけど、陽平は夏凛に俺との関係を明かしたがらないんだよね。俺としては、隠すほうが良くないって思うのに」
 ここぞとばかりに自分の意見に賛同して欲しがる湊を叱りつけてやりたい気分にもなったが、結局、湊との関係を夏凛に打ち明けるか否かは俺次第になるから、ここはあえて無視を決め込むことにした。ちょうど今は手が離せないし。
「湊さんって、夏凛ちゃんとはよく会うの?」
「ん? まあね。俺と夏凛って同じテレビ局での仕事があるし、収録日が重なることも多いからさ。夏凛とは結構顔を合わせてるし、話だってしてるよ」
「夏凛ちゃんと陽平の話をすることもあるの?」
「陽平がどうしているのかってことはよく聞かれるな。夏凛は俺が陽平の家にしょっちゅう遊びに行ってることも知ってるから」
「おいーっ!」
 炒め物が完成し、コンロの火を切ったばかりの俺は、相変わらず夏凛に余計な情報を提供しているらしい湊に黙ってはいられなかった。
 俺のことが好きで、俺にキスまでした湊が、俺の家にしょっちゅう遊びに行っている話を聞かされた夏凛が、俺達のことをどう思うと思っているんだよ。
『やっぱり陽平って湊君と付き合ってるのかな?』
 って思うんじゃね? 俺、夏凛に湊との関係について聞かれた時、「知らねーよ」の一言で済ませたままなのに。
「お前はなんでそう余計なことばっか夏凛に言うんだよっ! お前が俺の家にしょっちゅう遊びに来てる話を夏凛にする必要ってある⁈」
「だって、事実じゃん」
「事実だからって馬鹿正直に言う必要はねーんだよっ!」
 ったく……マジで余計なことしかしねーな。
 夏凛と最後に会ったのは、毎年夏に行われる生放送の音楽番組の時だった。あの時も既にお互いにちょっとぎこちない感じがしたけれど、あれから更に二ヶ月の間で、湊は俺と夏凛が益々ぎこちなくなるような話を夏凛にしていそうだよな。
「それも陽平が夏凛ちゃんに湊さんとの関係を打ち明けちゃえばいいだけの話じゃん。隠すから色々と面倒臭いことになるんだよ?」
「お前らと一緒にすんなっ! 俺は自分がどこの誰と付き合っているのかなんて話、できれば人に話したくねーんだよっ!」
「別に悪いことしてるわけでもないのに。なんでそんなに秘密にしたがるのかが理解できな~い」
「なんでって……」
 なんだよ。ここでも俺が夏凛に湊との関係を話したがらないことがいけない流れなわけ?
 そりゃさ、司との関係を隠す気がないどころか、むしろ言い触らしたいくらいのスタンスの悠那はそう思うだろうが、俺は知られたくない派なんだよ。
「人にはそれぞれ秘密にしておきたいことがあるからだよ。嘘ついてるわけじゃないし、騙してるわけでもなくて、ただ知られたくないから黙っていることの何が悪いんだよ」
「それはまあ、そうなんだけどぉ……」
 俺の言っていることは間違っていないはずだ。おそらく、悠那もそう思っているから、今度はすぐさま俺に反論なんてものをしてこなかった。
 悠那は俺や律のことを“秘密主義”だと思っているから、俺が自分の話を人に話さない、言いたくないと思う言動を受け止めることはできるのだろう。
 もっとも
「言ったほうが楽なのに」
 受け止めることはできても共感することはできないが。
「でもさ、それだと陽平が夏凛さんとのケジメを付けられないままになりそうだけど。それはいいの?」
「う……」
 不満そうに唇を尖らせる悠那に味方をしたいのか、司にそう言われてしまった俺は、またしても困った顔になり、言葉に詰まってしまった。
 確かに、そういう打ち明け話でもした流れじゃないと、夏凛との別れ話を蒸し返すのは難しそうではあるんだよな。
 仮に、夏凛との別れ話を先に蒸し返したとしても、俺と湊の関係が気になる夏凛は、最終的に俺と湊がどうなっているのかを聞いてくるだろうし。
 もし、別れ話を蒸し返した後の夏凛に
『湊君とはどうなってるの?』
 なんて聞かれてしまったら、前のように
『知らねーよ……』
 とは返せない。それはあまりにも誠実さに欠けるし、そう答えてしまうことで、また新しい罪悪感が生まれてしまい、ケジメが付くものも付かなくなってしまうだろう。
「って言うかさ、そもそも陽平と湊さんの関係を知ってる人間って少な過ぎるよね。うちのメンバーと湊さん、玲司さんしか知らないんだよね? マネージャーにすら隠したままなんだもん。もうちょっと周りの人間に打ち明けてくれないと、俺達だってちょっと困るよ」
「なんでだよ。別に迷惑掛けてねーと思うんだけど?」
 司と悠那、律と海のことはマネージャーも知っている。だが、その更に後から湊と恋人同士になってしまった俺のことまでは、マネージャーもまだ知らないことだった。
 Five Sのデビューが決まった時から散々俺達に良くしてくれて、未だにお世話になりっぱなしでもなるマネージャーに湊とのことを黙っているのは気が引けるのだが、既に五人中四人のメンバーが男同士――それも、同じグループ内で付き合っているという事実を知っているマネージャーに、俺まで
『湊と付き合ってます』
 なんて言う勇気はない。
 いくらマネージャーが同性同士の恋愛に寛大だと聞かされていても、自分が担当しているタレントが全員男同士で付き合っているとなると
『なんでそうなるの⁈ やってられないわよっ!』
 ってなるかもしれないじゃん。
 まあ、五人中四人が男同士で付き合っていれば
『どうせなら全員男と付き合ってくれてもいいけどね』
 と思っているのかもしれないが。
 でも、他のメンバーのことはどうだか知らないけど、マネージャーも俺が同性を恋人に選ぶとだけは思っていない気がする。
 マネージャーは俺と湊の仲がいいことを知っているし、以前、湊は俺のスケジュールを俺達のマネージャーから聞き出していたくらいだから、俺が湊とプライベートで頻繁に会っていることも知っている。
 が、俺はマネージャーから湊との関係を疑われたことは一度もない。つまり、マネージャーの目に俺と湊の関係は“ただの友達”としか映っていないということだ。
 だったら、俺はマネージャーにずっとそう思っていて欲しいと思う。
「そりゃ確かに、迷惑は掛けられていないんだけど……」
「だったら別にいいじゃん。何が問題なんだよ」
「うーん……それはまあ、話の流れでついうっかり喋っちゃいそうになることもあってさ。慌てて誤魔化さなくちゃいけないのがちょっと面倒臭い」
「は⁈ そりゃお前の都合だろっ! どういう話の流れになれば、マネージャーに俺と湊の関係をうっかり喋りそうになるんだよっ! こっちが迷惑だわっ!」
 ひょっとして、俺がマネージャーに湊との関係を話していないことによって、何かしらの不都合や迷惑をメンバーに掛けてしまっているのかと思いきや……。
 ただ司が不注意なだけだった。
「だってぇ~……俺や司、律や海の話なら心置きなくマネージャーにも話せるのに。陽平のことだけ話せないのって結構気を遣うんだよね」
 それは悠那も同じらしい。悠那は基本がお喋りだから、俺と湊の関係をマネージャーが知らないことを、司以上に面倒臭いと思っているのかもしれない。
 面倒臭い云々の前に、いくら自分達のマネージャーだからって、究極のプライベートでもある恋人の話をぺらぺらと喋っているお前達のほうがよっぽど面倒臭い。と思ってしまうのは俺だけか?
 しかも、自分達のことだけじゃなく、律と海のことまで喋ってるのかよ。律が聞いたら怒りそうな話だな。
「ほんと、夏凛ちゃんの前にマネージャーに話して欲しいくらい。マネージャーだって陽平が自分に内緒で湊さんと付き合ってるって知ったらショックだと思うよ?」
「うるせーなっ! そのうち話すかもしんねーけど、今はまだ言いたくねーのっ!」
「そのうち……ね」
「んだよ。何か問題でも?」
「ううん。別に」
 ああもう……無駄に疲れる。よくよく考えてみれば、今ここにいるメンバーって全員俺の手を焼かせる奴らばっかりであることを、今思い出したわ。
 今日は早朝から仕事に出掛けてしまった律と海……特に律が恋しい。
「で、話は戻るんだけど、夏凛ちゃんにはいつ話すつもり?」
「はあ⁈」
 おいおい。なんでもう俺が夏凛と話をすることが決定事項になってるんだよ。そこはまだ考える時間があっても良くない?
「早いほうがいいと思うんだよね。もう10月も下旬だし。みんなこれから忙しくなる一方だから、今月中にでも夏凛ちゃんと話し合う時間を作ったら?」
「ちょっ……ちょっと待てよ。なんでそんなに早急なの?」
「え? だって、今年中にスッキリさせておきたくない?」
「そ……それはそうかもしれないけど……」
 確かに、この問題は早く片を付けたほうがいいような気もする。夏凛が俺に対する湊の気持ちを知ったのって、今から一年以上も前の話だし。
 その時からずっと夏凛が俺と湊の関係を気にし続けているのであれば、いい加減、何かしら話してやったほうがいいと思ってしまう。
 しかし、そう思いはするものの、いきなり“今月中”とか“今年中”と期限を設けられてしまうと、これまでなんのアクションも起こしてこなかった俺としては、心の準備ができていなくておたおたしてしまうのである。
「話し辛いことは期限を決めて即行動したほうがいいよ? そうしないと、いつまでも同じところで足踏みしちゃうだけになっちゃうから。陽平と湊さんが付き合うまでに時間が掛かったのと一緒になっちゃうよ」
「うぅ……それとこれとを一緒にして欲しくねーんだけど」
 何故そこで俺と湊が付き合うまでに至った期間を例として挙げられたのかは謎だけど、おそらく、俺の問題解決に至るまでに有する時間の長さを指摘されたんだろう。
 嫌な例を挙げるものだ。どうせなら他の例にして欲しかったという気持ちになる。
「あ、そうだ。またみんなでご飯でも食べに行ったらいいんじゃない? あの時、酔った夏凛ちゃんが陽平と別れた時の話を自分から口にしたりもしたんだよね? またそういう展開になるかもしれないじゃん。それに、そこで実際に夏凛ちゃんに話をするかどうかは別としても、夏凛ちゃんに会うことで、夏凛ちゃんの気持ちを確かめることはできそうじゃん」
 なかなか踏ん切りがつかない俺と違って、行動派の悠那はすぐに新しい提案を出してきた。
「お。それいいね。二人きりじゃないほうが重苦しい感じにならないし、その場のノリで話せることもあるもんね」
「でしょでしょ♡」
 そして、悠那と同じく行動派である湊が、すぐさま悠那の提案に乗っかってしまう。
 この二人がその気になると、あれよあれよという間に予定が立っちゃったりするんだよな。
「え? みんなで、ってことは……この四人プラスありすさんと夏凛さんってこと?」
 夏凛はさておき、プライベートでありすと会うことを極力控えたい司は、ちょっとだけ困った顔になっていた。
 まあ、今回は最初から悠那が一緒にいるだろうから、司もありすを警戒する必要はないと思うけどな。
 最初はありすに敵対心剥き出しだった悠那も、今ではすっかりありすと仲良くなってるみたいだし。
「うん、そう。みんな年末は忙しいと思うから、早めの忘年会的な感じで」
「忘年会って……」
 今何月だと思ってんだよ。悠那は忘年会の意味がわかってんのか? これから忙しくなるっていうのに、その前に忘年会なんかしてどうするんだよ。
「そうと決まれば、早速夏凛とありすちゃんに都合のいい日を聞いてみるね」
 俺と司があまり乗り気になっていないというのに、湊の手には既にスマホが握られていた。
 いつも思うんだけど、どうして俺と夏凛の問題なのに、湊が積極的に動くんだろうか。俺に早く夏凛との間にケリを付けて欲しいからか?
「二人とも多分仕事してるだろうから、とりあえずメッセージを送っておいた」
「後は俺達のスケジュールだよね。湊さんはいつなら大丈夫そ?」
「そうだなぁ……」
 スケジュール帳なんてものを持ち歩いていない湊は、仕事のスケジュールは全てスマホのスケジュール管理アプリに入れているから、今みたいに突然スケジュールを聞いてこられても、スマホさえあればすぐに確認できてしまうのである。
 あっという間に話が進んでしまう状況に唖然としてしまう俺の隣りで、司も俺と同じような顔をしていた。


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