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冬到来
冬到来②
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ロセに色々言われた翌日、アデリーはパンの仕込みをしている最中、横で玉ねぎとリンゴを塩漬け肉と一緒に炒めていたベッラにこんな話を持ちかけられた。
「ねぇ、アデリー。この前、ロセから相談されたんだけどね」
昨日の今日だったこともあり、アデリーには話の内容に目星がついていた。
「他の誰かと初めて寝るよりも、ダグマに打ち明けて抱いてもらったほうが良いと思うのよ。ロセには少し慣れたほうが良いんじゃないかと主張されたけど──」
あわあわとしながらも平静を装おうと、アデリーは小麦粉を力いっぱい捏ねていく。
「ロセったらそんな話をするなんて」
ベッラは笑って「案外お節介よね」と、楽しそうだ。
「私から言わせてもらうと、好きな人とするのは格別なの。だから、初めてするのもダグマがいいと思うわ。ダグマが処女を嫌がるかなんてわからないし、あの人結構優しいから大丈夫なんじゃないかな」
パンにはライ麦の粒があって、掌で捏ねていると手応えがある。ポコポコと凹凸を感じられるのだ。
「す、好きな人とするのは別格なのですか」
好奇心が勝って顔が赤らむようなことを聞き返していた。
「ええ。トニと抱き合った時なんて天国に居るみたいだったわよ」
どちらも知っている人なので、顔が浮かんでやはりどうにも居心地が悪い。というか、トニがここに来たのもつい最近のようだし、ベッラがトニを好きだと聞いたのだってまだそう日数が経っていないように思われた。
「あ、もう、そういう関係なのですね」
ゴニョゴニョと言うアデリーにクスっとベッラが笑った。
「大人ですもの。お互いに独身だし、何も躊躇することはないからね。私が気持ちを打ち明けたら喜んでくれたわ」
玉ねぎとりんごを炒めると甘くいい香りがするのだが、ベッラの表情も甘く溶けてしまいそうだった。
「緊張しませんか? その、初めて愛を伝えることや、は、は、初めて体を重ねることは」
どもってしまう方が恥ずかしいのに、どうも滑らかに言葉が出てこない。羞恥心がアデリーの口を動かさないように抵抗しているらしい。
「答えはイエスでノーよ。愛を告白するのは断られることもあるから確かに緊張したけれど、体を重ねることは自然なことだもの。愛していれば欲しいと思うものだわ」
大人の世界だ。確かにダグマに抱き寄せてもらえばずっとそのままで居たいと願うが、そこで裸になって……となると、想像しただけで緊張してきた。
「あらあら、真っ赤になっちゃって。何を凄いことを想像しているの?」
「いえ、いえ、あの、いえ、なんにも考えてません!」
「嘘だわー、絶対にちょっと明るいところでは話せないような邪なことを考えていたくせに。教えて頂戴」
こねていたパン生地を放り投げて逃げてしまいたかった。皆、赤裸々に性の話をするが、これは普通のことなのだろうか。アデリーは知識として家庭教師に習ったこと以外は知らないし、男性の全裸すら見たことがなかった。
「いえ、私は本当に何も知らなくて、男性の裸も見たこともないので」
ベッラはうなずいて「さすがお嬢様ね。悪い意味ではないのよ、ただそう思っただけ。今度浴場をこっそり二人で覗いてみましょうか?」と、至って真面目に返してきた。
「駄目です、駄目です! そんな勝手に見て良いものではないです」
「じゃあ、トニに頼んでみる? 彼はとっても綺麗な体をしているの。引き締まっていて──きっとダグマとそのあたりは似ているかも」
真摯に考えてくれているのか、からかわれているのかわからないが、終始アデリーは恥ずかしさでいっぱいだった。
「なんにせよ、あなたの気持ちをきちんとダグマに告げるべき。彼は魅力的な人よ。いつ何時、女性の移住者が来て言い寄ってくるかわからないじゃない?」
アデリーは思わず捏ねていたパン生地を握っていた。
「そうですね。でも、ダグマさんは大人で私とは釣り合わないと思うんです」
「そう? あれくらいの歳でアデリーくらいの子を貰うことなんてままあることよ。男は経済力がないと家庭なんて持てないから。だから、気にすることじゃないわ。当たって砕けろ。砕けたら私がアデリーを慰めてあげるから任せておいて」
それより、パン生地をこね過ぎじゃないかと言われてアデリーはパッと手を開いて生地を離した。確かにいつもよりこねてしまっている。そっと形を整えると布巾をかぶせて息をついた。
「ねぇ、アデリー。この前、ロセから相談されたんだけどね」
昨日の今日だったこともあり、アデリーには話の内容に目星がついていた。
「他の誰かと初めて寝るよりも、ダグマに打ち明けて抱いてもらったほうが良いと思うのよ。ロセには少し慣れたほうが良いんじゃないかと主張されたけど──」
あわあわとしながらも平静を装おうと、アデリーは小麦粉を力いっぱい捏ねていく。
「ロセったらそんな話をするなんて」
ベッラは笑って「案外お節介よね」と、楽しそうだ。
「私から言わせてもらうと、好きな人とするのは格別なの。だから、初めてするのもダグマがいいと思うわ。ダグマが処女を嫌がるかなんてわからないし、あの人結構優しいから大丈夫なんじゃないかな」
パンにはライ麦の粒があって、掌で捏ねていると手応えがある。ポコポコと凹凸を感じられるのだ。
「す、好きな人とするのは別格なのですか」
好奇心が勝って顔が赤らむようなことを聞き返していた。
「ええ。トニと抱き合った時なんて天国に居るみたいだったわよ」
どちらも知っている人なので、顔が浮かんでやはりどうにも居心地が悪い。というか、トニがここに来たのもつい最近のようだし、ベッラがトニを好きだと聞いたのだってまだそう日数が経っていないように思われた。
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どもってしまう方が恥ずかしいのに、どうも滑らかに言葉が出てこない。羞恥心がアデリーの口を動かさないように抵抗しているらしい。
「答えはイエスでノーよ。愛を告白するのは断られることもあるから確かに緊張したけれど、体を重ねることは自然なことだもの。愛していれば欲しいと思うものだわ」
大人の世界だ。確かにダグマに抱き寄せてもらえばずっとそのままで居たいと願うが、そこで裸になって……となると、想像しただけで緊張してきた。
「あらあら、真っ赤になっちゃって。何を凄いことを想像しているの?」
「いえ、いえ、あの、いえ、なんにも考えてません!」
「嘘だわー、絶対にちょっと明るいところでは話せないような邪なことを考えていたくせに。教えて頂戴」
こねていたパン生地を放り投げて逃げてしまいたかった。皆、赤裸々に性の話をするが、これは普通のことなのだろうか。アデリーは知識として家庭教師に習ったこと以外は知らないし、男性の全裸すら見たことがなかった。
「いえ、私は本当に何も知らなくて、男性の裸も見たこともないので」
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アデリーは思わず捏ねていたパン生地を握っていた。
「そうですね。でも、ダグマさんは大人で私とは釣り合わないと思うんです」
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