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鍛冶屋ベニート
鍛冶屋ベニート⑤
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ホウキであらゆる場所を掃いていく。棚も壁も、薄暗い中ではそれほど汚くは感じなかったが手をつくと手形が残るほど汚れていた。髪と口を布地で覆うと、ひたすらホウキを動かしていく。
カルロが持って帰ってきてくれた服の中古の方を身に纏っていてよかった。この分だと、直ぐに洗ったほうが良さそうだ。この部屋の掃除が終わったら、刺繍の入った服共々一緒に洗おうと決めた。そうなると服の汚れを気にすることもなくなるので、より一層仕事に力が入る。
(お母さんは泣くかしら。こんな私を見て……)
部屋の掃除などしたことがなかった。それに、一度だけ煙突掃除を手伝い煤だらけになったら「掃除を手伝うのは感心だけれど、レディはそのような汚れたりすることはしないものよ」と、たしなめられた。
アデリーは汚いものがどんどんキレイになったりする、目に見えて成果が現れることが気に入っていた。だから、もし母がああ言わなかったらその後も屋敷中の煙突掃除に参加していたことだろう。
(でも生きていくにはなんだってしなきゃ。会いに行けたらお母さんだって喜んでくれるわ)
ホコリ舞う中、一心不乱に掃き掃除をし、既に痛み始めた二の腕や腰を伸ばしてから、次は拭き掃除に取り掛かった。頑張って労働し、火照った体に冷たい桶の水が心地良い。布を水に浸すとよく絞り、手当たり次第に拭き始めた。
「ロセ? そこに居るのはロセだよな」
一人きりだと思って油断していたのに、突然背後から声を掛けられて飛び上がった。
「誰?」
聞いたこともない声だ。布を丸めて棒のようにしてから振り向いた。とてつもなく貧弱な武器だが、ないよりマシだ。
「ロセ……じゃ、ないのか?」
振り向いても相手は確信が持てないようだ。確かに背格好は似ているし、顔は暗くて見えず、一番の特徴である髪の毛も今は布で覆われている。
「あなたは誰ですか?」
ダグマは今どこに居るのだろうか。
アデリーは逆行で何一つ判別出来ない男に恐怖を覚えていた。ロセを知っているようだが、ここで安易にロセがここに住んでいると言って問題ないのかどうかもわからない。
「ロセじゃないのか。ロセって子を知らないか? 君と同じくらいの背丈なんだが」
男は若そうな声をしていた。そして、アデリーの質問には答えるつもりがないのか、ロセのことばかり聞いてくる。
「もう一度聞きますが、あなたは誰なんですか。そのロセという方のお知り合いですか?」
アデリーはしらばっくれて、ロセを知らないように装った。アデリーだってイリーヤ領主ゴートンに追われる身だ。いや、もう追われていないかもしれないが、見つかったらどうなるかわからない。だから、あまり仲良くできていないとはいえロセを売るようなことはできないのだ。
「君がロセを知らないならもう行くよ」
アデリーの問いにはとことん答えようとしない。自分からここに来たのに質問に答えなんて失礼だ。
「いいや、お前は名乗らなければここから出ることは出来ないな」
さらに入り口の方から声がした。どっしりと落ち着いたダグマの声だ。アデリーは一気に緊張が解けて安堵していた。
「なぜ? 俺は人を探していて、その人が居ないならここには用がない。どいてくれ」
「どこの誰だがわからない輩が勝手に入ってきて何か嗅ぎ回っていたのに、はいそうですかと解放するわけがないだろう」
「嗅ぎ回るもなにも、ただロセって子を探してるだけだ。薬師をしている子で、暫く姿が見えないんだよ!」
これは本格的にロセ本人のことで間違いなさそうだった。アデリーはダグマがどう出るのか固唾をのんで見守っていた。
カルロが持って帰ってきてくれた服の中古の方を身に纏っていてよかった。この分だと、直ぐに洗ったほうが良さそうだ。この部屋の掃除が終わったら、刺繍の入った服共々一緒に洗おうと決めた。そうなると服の汚れを気にすることもなくなるので、より一層仕事に力が入る。
(お母さんは泣くかしら。こんな私を見て……)
部屋の掃除などしたことがなかった。それに、一度だけ煙突掃除を手伝い煤だらけになったら「掃除を手伝うのは感心だけれど、レディはそのような汚れたりすることはしないものよ」と、たしなめられた。
アデリーは汚いものがどんどんキレイになったりする、目に見えて成果が現れることが気に入っていた。だから、もし母がああ言わなかったらその後も屋敷中の煙突掃除に参加していたことだろう。
(でも生きていくにはなんだってしなきゃ。会いに行けたらお母さんだって喜んでくれるわ)
ホコリ舞う中、一心不乱に掃き掃除をし、既に痛み始めた二の腕や腰を伸ばしてから、次は拭き掃除に取り掛かった。頑張って労働し、火照った体に冷たい桶の水が心地良い。布を水に浸すとよく絞り、手当たり次第に拭き始めた。
「ロセ? そこに居るのはロセだよな」
一人きりだと思って油断していたのに、突然背後から声を掛けられて飛び上がった。
「誰?」
聞いたこともない声だ。布を丸めて棒のようにしてから振り向いた。とてつもなく貧弱な武器だが、ないよりマシだ。
「ロセ……じゃ、ないのか?」
振り向いても相手は確信が持てないようだ。確かに背格好は似ているし、顔は暗くて見えず、一番の特徴である髪の毛も今は布で覆われている。
「あなたは誰ですか?」
ダグマは今どこに居るのだろうか。
アデリーは逆行で何一つ判別出来ない男に恐怖を覚えていた。ロセを知っているようだが、ここで安易にロセがここに住んでいると言って問題ないのかどうかもわからない。
「ロセじゃないのか。ロセって子を知らないか? 君と同じくらいの背丈なんだが」
男は若そうな声をしていた。そして、アデリーの質問には答えるつもりがないのか、ロセのことばかり聞いてくる。
「もう一度聞きますが、あなたは誰なんですか。そのロセという方のお知り合いですか?」
アデリーはしらばっくれて、ロセを知らないように装った。アデリーだってイリーヤ領主ゴートンに追われる身だ。いや、もう追われていないかもしれないが、見つかったらどうなるかわからない。だから、あまり仲良くできていないとはいえロセを売るようなことはできないのだ。
「君がロセを知らないならもう行くよ」
アデリーの問いにはとことん答えようとしない。自分からここに来たのに質問に答えなんて失礼だ。
「いいや、お前は名乗らなければここから出ることは出来ないな」
さらに入り口の方から声がした。どっしりと落ち着いたダグマの声だ。アデリーは一気に緊張が解けて安堵していた。
「なぜ? 俺は人を探していて、その人が居ないならここには用がない。どいてくれ」
「どこの誰だがわからない輩が勝手に入ってきて何か嗅ぎ回っていたのに、はいそうですかと解放するわけがないだろう」
「嗅ぎ回るもなにも、ただロセって子を探してるだけだ。薬師をしている子で、暫く姿が見えないんだよ!」
これは本格的にロセ本人のことで間違いなさそうだった。アデリーはダグマがどう出るのか固唾をのんで見守っていた。
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