小料理屋”化野”は今夜も営業します

ブラックウォーター

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02

人妻風美人妖狐社長の悩みは

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 01
 大都会の中にある、小さいが活気のある小料理屋”化野”は今日もにぎわっていた。
 以前は妖怪ばかりが集まる場所だったが、人間である甲斐田洋一が偶然にも訪れたことで、良くも悪くも変わりつつある。
 妖狐の女性である、九重時雨も変わりつつある一人だった。
 「いやあ、やっぱ生ガキは秋の味覚ですねえ」
 「そうだね」
 洋一は期間限定である生ガキを堪能していたが、隣に座る時雨は心ここにあらずと言うところだ。
 「酢醤油もいいけど、やっぱりポン酢が最高だ」
 「うん...そうだよね」
 「冷酒もいいけど、焼酎ロックも合うと思いません?」
 「うん...いいね」
 「社長は熱燗の方が好きでしたっけ?」
 「そうね...」
 洋一が話を振っても、社長こと時雨は考え事をしているのか、全く上の空だ。
 「社長!九重さん!聞いてます!?」
 「え...ああ、ごめん...。ちょっと考え事をね...」
 洋一に大きな声で呼ばれて、時雨はやっと戻って来る。
 「言っちゃなんですが、そんなに上の空じゃ酒と肴に失礼なんじゃないですか?」
 「あ...ああ。そうだよね...確かに」
 酔っているせいもあるか、いつもより押しが強い洋一の言葉に、時雨はそれもそうかと思う。
 確かに、今日の生ガキは格別だ。短い期間しか味わえないものをちゃんと味わわないなど、つまみに対する冒涜だ。志乃の作る酢醤油は、生ガキの味をうまいこと引き立てているのに、それすらスルーしていた。
 逆に言えば、今夜の時雨はそれほど余裕がなかったのだ。
 「その、酔ったなら早めに帰った方がいいんじゃ?」
 「いや、そういうことじゃないんだ...」
 そう言った時雨は、また何か考え込む顔になると、意を決したように女将である志乃に声をかける。
 「志乃さん、悪いけど、二階と甲斐田君ちょっと借りるよ!」
 「え...」
 さらりと時雨はとんでもないことを言う。
 ”化野”の二階は簡易的な宿泊施設になっている。昔の小料理屋や居酒屋では、折り合いのついた男女が一夜を過ごす場として普通に見られた構造だが、今日ではいろいろな法令に引っかかる可能性があるのでめったに見られない。
 要するに、時雨は洋一とセックスをすると志乃に向かって宣言したのだ。
 洋一は恐怖した。志乃がどんな反応をするか予想もつかなかったのだ。怒るだろうか、泣き出すだろうか?
 「ええ。いいですよお。ごゆっくり」
 だが志乃は、これまたさらりと笑顔で許可を出した。
 「ちょ...志乃さん、いいんですか?これって...」
 浮気することになるんじゃ。という言葉を洋一は口にすることができなかった。志乃の意思が読めなかったのだ。
 「そりゃ、やきもち焼いてないって言ったらうそになりますよ。
 これがつまらない女の人だったら絶対に許してません。
 でも、私は時雨さんも洋一さんも大好きだから。特別に許してあげます」
 志乃はにこやかにそういう。
 俺、確か志乃さんと本気で愛し合ったはずだよな?
 妖怪だから些末なことにはこだわらないのか、それとも志乃の奔放な性格ゆえか。志乃は時雨と仲が良いようだし、傷ついて欲しくないという気持ちもあるのかもしれない。
 まあ、とにかく、志乃がいいというからには時雨の誘いを断ることはできない。
 「甲斐田君、いつぞやの貸し、返してもらうよ」
 と時雨が言っているから。
 「わ...わかりました...」
 そう応じた洋一は、時雨に続いて二階への階段を上がるのだった。


 02
 人妻っぽい美人。
 それが、洋一が時雨に対して抱いている印象だった。
 一見した年格好は、志乃より若く、洋一よりやや年かさ。20代後半というところか。
 見事なボリュームのある金髪をポニーテールにして、化粧もアクセサリーもきれいで、おしゃれでできる女という風体だ。
 赤いルージュやマニキュアなど、かなりレベルの高いおしゃれをしているにもかかわらず、けばけばしい感じなど微塵もない。むしろ華やかで上品な感じさえするのはさすがと言えた。
 背が高く、肩幅も広い、美しいがややきつめの化粧を好むなど、華奢で控えめな美人という印象の志乃と並ぶと好対照という感じがする。
 もっとも、服装はおしゃれでありながらも家庭的な感じさえするもので、そこが洋一が時雨を人妻っぽいと感じる所以だった。
 丈の短いジーンズに白のVネックのニットシャツ。そして空色のカーディガンという組み合わせは、センスのいいチョイスだと思う。だが、同時に非常にあざとくも感じてしまうのだ。
 ”主婦”ではなく”人妻””近所の奥さん””団地妻”という、なにやらいかがわしいものを連想せずにはいられないのだ。まあ、これは余計だが。
 時雨の職業は株式会社九重食品の代表取締役社長。
 この九重食品は知る人ぞ知る調達、販売網を誇る食品卸売の会社で、”化野”も食材を仕入れている。
 信用と品質をなによりも重んじ、できないことはできないとはっきり言う堅実さが資本になってさえいる。
 これは当然と言えば当然の話で、食材で偽装や不正が行われれば、信用の失墜どころか、下手をすれば食中毒で多くの人間に迷惑をかけることになる。だが、悲しいかな、食品業界では目先の利益や面子、見栄のために不正を働くものが絶えないのが現実だった。
 できて当たり前、必要条件さえこなせないものが、それほど多いのが、忸怩たるものがあるが現実なのだ。
 食材に対する目利きも鋭く容赦がない。いい加減な仕事をする取引先は誰であろうとも咎め、裁判沙汰になることさえいとわない冷徹さと仕事に対するプライドは、業界でも一目置かれているらしい。
 それらの果断でタフな社風は、このできる女である時雨のカリスマ性によるところが大きいらしい。
 業績のいい中小企業は社長のカリスマ性で動いているところが多いのは、行政書士である洋一にはよくわかっていた。
 だが、時雨が醸し出すカリスマ性と”できる女”ぶりは、別次元のレベルと言えた。
 だから、こうして交代でシャワーを使い、布団の上で肩を寄せて座っても恐縮してしまうのだ。かたや少しばかり名のある法務事務所の下っ端補助者に過ぎない行政書士。かたや、年商億単位で業界でも一目置かれる企業の社長。
 まして、時雨は妖狐だ。妖怪たちの例に漏れず長く生きている。人生経験ではまだ若造の洋一がかないようがない。
 どうにも恐縮してしまうのだ。
 「その...社長、触ってもいいんですよね...?」
 「も...もちろんじゃない?そのために来てもらったんだしね...」
 洋一はふと訝しむ。自分だけでなく、時雨も恐縮し、緊張している気がするのだ。
 「じゃあ、失礼して...」
 「あん...♡なんだかすごく優しいな...♡モテるわけだ...」
 洋一が時雨をぎゅっと抱きしめると、時雨は嬉しそうになる。
 「社長、おっぱい揉みますよ...?」
 「いいよ、好きにして...♡
 それと、社長はやめてよ。時雨でかまわないから...♡あああん...♡」
 白い湯巻越しに洋一が時雨の豊かな胸の膨らみに触れると、時雨が甘い声を上げる。
 「すごい、時雨さんのおっぱい、柔らかいのにこんなに張りがあって...」
 「も...もう...♡恥ずかしいこと言わないで♡やん...!♡
 だいたい、誰と比べてるのさ...?あああん!♡」
 時雨の言葉に洋一はギクッとなる。志乃と比べていることを見抜かれてしまったからだ。
 比較するのは非常に失礼なこととは思いながらも、おっぱいにもいろいろあるのだと洋一は思わずにはいられなかった。
 志乃の胸の膨らみはひたすら柔らかく、ややたれ気味なのがむしろいやらしくそそられるものがあった。
 対して、時雨のそれは、志乃に負けず劣らず豊かにもかかわらず、張りを保っているのだ。釣鐘型と言うのだろうか、こうして座っていると、ツンと上を向いているのだ。
 その見事さに、洋一は感動さえ覚えていた。
 「あああああっ!♡おっぱい...おっぱいが気持ちいい...!♡
 もっと揉んで!撫でて!乳首転がしてえっ!♡やああああああん♡」
 時雨の緊張は、胸の膨らみへの愛撫ですっかりとけたらしい。
 「時雨さん、こっちも触っていいですよね?」
 「う...うん♡好きにして♡」
 気分が乗って来たらしい時雨は、洋一の求めに応じて股を開く。
 洋一は湯巻の前を開けて、時雨の女の部分に指を這わせていく。まずはヘアをじょりじょりとなぞることから。しだいに大胆に、大陰線、そして充血してぱっくりとなった小陰唇に指を進めていく。
 「時雨さん、気持ちいいの?お〇んこ汁が垂れてきてるよ?」
 「ば...ばかあ♡恥ずかしいこと言わないでよ...♡あんっ!♡
 洋一君の指...気持ちいいよ...♡洋一君に触れられたところ...全部熱くなっちゃう♡」
 洋一の指が敏感なところをまさぐるたびに、時雨が全身をびくびくと反応させる。
 「時雨さん、今度は仰向けになって股を開いてください」
 「ああ...♡こんなかっこう...恥ずかしいよ...♡」
 恥ずかしがりながらも、時雨は素直に布団に仰向けになると、股を開いて恥ずかしい部分を全て洋一にさらす。
 「なんだか...すごくちょこんとしてかわいいお〇んこですねえ...」
 「うう...♡ばかばかあ!♡なんで恥ずかしいことばかり言うのさ...?」
 洋一はつい素直な感想を口にしてしまう。
 時雨の女の部分は、体が大きい時雨のそれとは思えないほど慎ましく、ちょこんとしていたのだ。
 そもそもからして、ヘアが非常に薄い。処理をしているのではなく、もともと薄いようだ。
 大陰唇にはほとんど肉がついていない。小陰唇も非常に慎ましやかで、色も桜色できれいだった。クリトリスも皮を被っていて、もしかするとまだむけていないのではないかと思えるほど慎ましい。
 蜜壺から愛液がとろりと溢れていることを差し引いても、まるで年端もいかない少女の女の部分かと見まがうような慎ましさだったのだ。
 「時雨さん、舐めますよ...ちゅっ...れろれろ...」
 「やん!♡そんな...いきなりお〇んこ舐めないでえ...!♡
 やだ...!♡変...変だよ...自分で触るよりずっと気持ちいい!♡あああああん!♡」
 洋一の下が小陰唇を、会陰部を、そしてクリトリスを這いまわる感触に反応して、時雨の蜜壺からはこんこんと愛液が湧き出て来る。
 洋一は時雨の反応に荒々しく勃起して、すぐにでも挿入したい気分だったが、そこは我慢だと了解した。女は男に比べて感じることも、絶頂を得ることも難しいのだ。濡れたら即挿入では、男だけが満足して終わってしまう。
 「あああ...?♡だめだめっ...♡私イきそう...!クンニでイっちゃうの...?♡
 だめ...♡だめえええええええええええええええええっ!♡」
 洋一の下がクリトリスを激しくパイブレーションした瞬間、時雨はオーガズムに達していた。シーツをつかみ、体をブリッジのようにぐっとのけぞらせて硬直する。
 「時雨さんて感じやすいんだ...」
 「ち...違うよ...♡洋一君がとても上手だから...♡あはあ...♡」
 時雨は戸惑っていた。舌だけでこんなに気持ちいいなんて...。この男、間違いなくジゴロ、女泣かせだ...。本人は自覚ないかも知れないけれど、洋一に抱かれた女はみんな夢中になってしまう...。そんな気がしていた。
 「時雨さん、もう入れてもいい?」
 「う...うん♡君のも...苦しそうだし、仕方ないよね...♡」
 時雨はそう言って、仰向けになった自分にのしかかってくる洋一の首に手を廻す。
 だが、緊張してしまって体に力が入ってしまう。
 「あの...時雨さん、入れてもいいんだよね?」
 「うん。だから大丈夫だって...」
 全く大丈夫でない時雨の様子に、洋一は一度体を離し、指で時雨の蜜壺をまさぐってみる。
 「よ...洋一君...何をして...?やんっ!♡」
 洋一は慎重に指で目的の場所を探す。その場所は案外簡単にみつかった。慎重に指を沈めていき、蜜壺の中まで指を侵入させると、第一関節を曲げて中を探ってみる。
 「ここかな?」
 「ひいいいっ!♡だめだめっ!待って...!♡出ちゃう...なんか出ちゃうううっ!♡
 ああひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ!♡」
 ぶしゃぶしゃあああああああああっ
 引き裂くような声を上げて、時雨はオーガズムに達し、盛大に潮を吹いた。ぶしゅぶしゅと小刻みに、時雨の女の部分から透明な飛沫がほとばしって布団に降り注ぐ。
 洋一は考察する。なかなか指が蜜壺に入って行かなかったこと。時雨のやたら乙女な反応。ついでに、下世話ながら、時雨の蜜壺をまさぐった指からする、少しすえたにおい...。
 「やっぱり...時雨さん、処女なんですね?」
 「うう...ばかばかあああっ!♡恥ずかしいじゃないかあ...♡」
 Gスポットで絶頂に押し上げられて潮まで吹いてしまった恥ずかしさで真っ赤になった時雨が、幼子のように顔を両手で隠していやいやをする。
 「その...時雨さん、怖いなら無理にしなくても...」
 「だめ!こうなったら意地でもセックスしてもらうよ!洋一君、女に恥かかせないでよ!」
 涙目になりながら言う時雨に、洋一もいじらしい気分になる。
 しかしどうしたものか?処女っていうのはこじらせると厄介なものだしな...?
 
 03
 「こ...こんなかっこうでするの...?♡」
 「初めてはこの方が楽だって言いますから」
 いろいろ考えた末に、洋一は時雨とバックでセックスをすることに決めた。まあ個人差はあると思うが、”交尾”とは本来バックからするもの。
 下品な言い方をすれば”ワンワンスタイル”でセックスをするのは自然なことなのである。
 「ねえ、洋一君!最後までしてね!私がどれだけ泣き叫んでも、途中でやめないで!」
 「そんなに痛くするつもりもないんだけどな...。でも、覚悟は受け取りました!」
 そう言った洋一は、時雨にバックからのしかかる。狙いが定まらないと痛いだろうから、亀頭の先端を時雨の蜜壺の入り口に軽く出し入れして、一気に貫く。
 「ああっ...!い...痛いっ!痛いいいいいっ!」
 時雨の引き裂くような悲鳴が部屋に響く。
 「し...時雨さん、大丈夫?」
 「大丈夫...!いいから...そのまま続けて...!」
 どう見ても時雨は大丈夫ではない。
 洋一は、徹底して優しく、ゆっくりとセックスを進めていくことにする。
 「時雨さんの肌、きれいだね...。ちゅっちゅっ...」
 「あん...♡もう...悪戯しないで...♡」
 洋一が時雨の白くきめ細かい首筋と背中にキスの雨を浴びせると、時雨の体から緊張が抜けていくように思えた。
 「おっぱいは感じる?どうかな?」
 「やん!♡おっぱいもみもみされてるよお...♡」
 洋一は時雨を感じさせていることが出来ていると確信する。乳首をころころと転がすたびに、時雨の蜜壺が反応して洋一の陰茎を締め付けるからだ。
 洋一は、あえて時雨の意識を陰茎と蜜壺から離すことにしていく。
 「やだ...♡なんだかすごく気持ちいい♡感じちゃう...♡洋一君...洋一君...♡」
 時雨の首筋に舌を這わせ、片手で乳首をまさぐりながら、もう片方の手でクリトリスを愛撫する。よほどの不感症でもない限り、これで感じない女はいないはずだ。
 だが、時雨からすれば、それは感じないという次元の問題ではなかった。
 ワンワンスタイルで犬の交尾のようにセックスをしているというだけでも倒錯した興奮を感じているのに、首筋にキスをされ、乳首とクリトリスをいじられる感触は、快感が強すぎた。
 「ま...待って!♡私イっちゃうっ!♡すぐイっちゃうのっ!♡感じすぎる...♡
 あ...あああああああああああああああああーーーーーーーっ!♡」 
 時雨は体をぐっとのけぞらせて激しくオーガズムに達した。
 それこそ、体が溶けてなくなってしまったかと思うほどの激しく甘美な絶頂だった。
 「時雨さん、イっちゃったんだな...」
 洋一は、処女である時雨を何とか絶頂に導けた達成感に浸っていた。だが、それどころでない事態が発生してしまう。
 「だめっ!だめっ!我慢できない...だめええええええっ!」
 引き裂くような時雨の絶叫と共に、部屋が光りに包まれる。
 「え...これは...?」
 洋一の目が点になる。時雨の体から光が放たれ、金色に輝く大きな三角形の耳と、同じく金色に輝く9本の尻尾が出現していたのだ。
 「やだ...♡見ないで...!お願い!見ないで!♡」
 ああ...なんて気持ちいい...。でも悔しい...情けない...。こんな姿を見られてしまうなんて。
 「時雨さん、無理しないで、ね?」
 そう言って、洋一は蜜壺から陰茎を抜いてしまう。
 凄まじい異物感と圧迫感から解放されたのは良かったが、同時に時雨はとても空虚な気持ちになる。
 なにより、自分は達したのに、洋一が達していないというのが許せなかった。
 「待って!洋一君まだ出してないでしょ?
 私に最後までさせて!♡」
 そうは言ったものの、激しいオーガズムの余韻で動くことさえままならない時雨にできることは限られている。
 布団の上に仰向けになり、横で膝立ちになった洋一の陰茎を手でしごいていく。
 手コキのやり方などほとんど知らない。だが、洋一を気持ちよくさせたいという時雨の一念が、手コキを熱心で熱っぽいものにして行く。
 うう...お〇んちんて...こうしてみるとすごい迫力...。私のえっちなお汁と血で汚れて...。
 「ああ...時雨さん...出るよ!出すからね...!」
 一方で、奉仕される側の洋一にとっては、手コキの拙さなどどうでもよかった。
 普段できる女、女傑、人妻っぽい美人という印象の時雨が、淫らに自分に奉仕している。それだけで十分すぎるほど興奮していた。
 「きゃっ...♡出た...洋一君のザーメン出た...♡」
 大量のどろどろした白濁を顔にぶっかけられる形になってしまった時雨だが、不快感はなかった。ただ、洋一を射精させたという充実感と満足感だけがあった。
 
 「ねえ時雨さん、今更かもだけど、どうして俺としたいって思ってくれたんです?」
 ピロートークとしては無粋かもと思いながらも、洋一は問わすにはいられなかった。
 「それは...その...な。
 うー...!
 志乃さんがのろけるんだよ!
 ”洋一さんのお〇んちんでお〇んこが拡げられちゃった”とか”洋一さんに抱かれてからオナニーしても満足できない”とか...。”生で中出しされて、お尻の処女まで捧げちゃった♡”とか...。
 そういう話を聞いてるうちに、洋一君なら気持ちよくさせてもらえるかもって...」
 狐の耳と九本の尻尾をしまって、いつもの姿に戻った時雨はそこで言葉を区切ると、枕で顔を隠してしまう。よほど恥ずかしかったらしい。 
 「うーーっ...!
 絶対、絶対に内緒だからね!?私が処女だったってことも!君の目の前で尻尾と耳を出しちゃったことも!」
 「わ...わかってますって。誰にも言いませんよ...」
 洋一と時雨のやりとりは、幸せなピロートークとはとても行かなかった。
 「耳と尻尾出しちゃうのって、そんなに恥ずかしいことなんですね...」
 「他人事だと思って...!
 ”尻尾を出す”って言葉がある通り、私ら妖狐にとっては、意図せずに尻尾や耳を見せてしまうのは屈辱なんだ!
 それこそ、いい大人が人前でお漏らししたようなものだよ!うう...!」
 耳まで真っ赤になる時雨を見て、洋一は時雨の気持ちを理解できた気分になる。確かに、自分がこの年で人前でお漏らししたら、屈辱だろう。
 「ねえ、時雨さん、いつぞやの借りは返せました?」
 洋一は真剣な顔で問う。 
 時雨が志乃のお見合いのことを話してくれなければ、志乃は今頃別の男の腕の中にいたかもしれないのだ。
 そこは、真剣に借りは返したいと思った。
 「全然だよ!勝手に私だけイかせて...抜いちゃうなんてひどいじゃないか...!
 次はちゃんと私のお〇んこでイってもらうからね!」
 耳まで真っ赤になりながら、幼子のようにまくし立てる時雨を、洋一は可愛いと感じてしまう。
 できる女で、知る人ぞ知る企業の女傑、カリスマ、と言っても可愛い面はあるのではないか?
 もしかして、その可愛い面を知っているのは自分だけじゃないのか?そう思うと、自然に顔がにやけてしまう。
 「あっ!なんか不埒なこと考えてる!絶対考えてるっ!
 勘違いしないでよね!一回したくらいで...恋人気取りとか...ないから...!きゃ...」
 子供のようにまくし立てる時雨を、洋一は思い切り抱きしめる。
 「それは困ったなあ。俺、もう時雨さんにはまっちゃってるよ...。
 そんなこと言われたら、どうしたらいいのさ?」
 時雨は抵抗しようとはしない。顔は見えないが、嬉しそうになっているような気が、洋一にはした。
 「お...お馬鹿さん...。10年早いのよ...♡
 でも...どうしてもっていうなら...時々相手してあげてもいいよ...?♡」
 わかりやすくめんどくさいツンデレ。それが洋一の時雨に対する素直な印象だった。
 できる女という外面とのギャップが激し過ぎて、萌え死にそうだ。
 「どうしてもです!これからもよろしくお願いしますね!」
 「う...うん!お願いされた...!次は、洋一君が私の手管でめろめろになる番なんだから...」
 全く自信がない様子でそういう時雨を、洋一は心から愛しいと思うのだった。

 「いやあ、カキフライつまみにできるなんて感激だなあ」
 「あの...話逸らしてない...?」
 下にいる志乃に電話して、酒とつまみを頼むと言ったところ、冷酒とカキフライが差し入れられたのだ。
 しかも、ウスターソースとタルタルソースが別の皿にのせられているというサービスぶりだ。
 「早く食べないと冷めちゃいますよ。はい、あーん」
 「え...?あ...あーん...。ん...んんんーーー♡」
 洋一の言葉に従って開けた口に放り込まれたカキフライの食感と味に、時雨は幸せいっぱいになってしまう。
 味の濃いのはどうかと思ってきたが、カキのもちっとした食感と、ウスターソースの味の濃さ、タルタルソースのボリュームは、信じられないほどの満足感だった。
 「って!じゃなくて洋一君...!」
 「はい、もひとつ、あーん」
 揚げたてのカキフライを目の前に突き出されると、時雨はどうしても抗うことができない。
 「あーん...♡」
 うう...こんなの屈辱だあ...!でも、もう私、洋一君にめろめろかも...。どうしよう...。わ。。わたしは悪くない...!洋一君が私をいろいろたぶらかすから...。
 長い時を生きながらも、女として未熟な自覚はあったが、初めての男にここまではまって、心を奪われてしまうとは時雨には思わなかったのだ。
 かくして、洋一と時雨の、いろいろうまく行ったのか行かなかったのかよくわからない夜は過ぎて行くのだった。
 

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