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02 押し戻される戦線
緑の猛禽たち
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03
2018年8月4日。
サン・オリヴィエ島奪還作戦は、四日目にして最終局面に入り始めていた。
すでにデウス軍は島の維持は不可能と判断し、残存兵力を撤退させ始めている。
この島を制圧した時とは違う。
デウス軍将兵たちにとっては、勝利するための戦いではなく、生き残るための戦いだった。
「FOX2!」
友軍の撤退を支援するデウス空軍航空隊を、フレイヤ隊の2機は手当たり次第に落としていた。
Mig-29とF-15J相手に、旧式のF-4EやMig-21は敵ではない。
だが、数が多く厄介なことに変わりはない。
「ちっ!やむをえんか」
エスメロードは腹を括る。自分の勝利にこだわっている場合ではない。
「こちらフレイヤ1。
タンホイザー、チャンネルを“富士山”に変えられたし」
『“富士山”了解』
“タンホイザー“の船務士が迅速に反応する。
エスメロードは、事前に打ち合わせておいたチャンネルに切り替える。
「“タンホイザー”。
北に向けてSAMを発射して欲しい。敵機をそちらに追い立てる」
『了解。北だな。任せておけ』
艦長のバーナードが直々に答える。
『いいのですか?我々は敵の弾道ミサイルに備える予定では?』
『今が敵をたたくチャンスだ。臨機応変に行く。
SAMを慣性誘導で発射する』
「了解、感謝する。チャンネル元へ」
石頭の副長の言葉を風と受け流すバーナードに、エスメロードは感謝していた。
「アールヴ、聞こえたな?
やつらを押し出すぞ!」
『ラジャー』
フレイヤ隊の2機は、息のあったコンビネーションで敵のMig-21の部隊を島の北西に追い立てていく。
申し訳程度に機銃やミサイルで攻撃しながら。
『馬鹿野郎…!たった2機に…』
数で劣る相手に翻弄されているデウス軍のパイロットは、ただ歯がみしていた。
そして、彼はすぐに悟る。
互角の戦いどころか、自分の部隊は地獄に向けて全力疾走していたことに。
追い立てられて逃げた先に、“タンホイザー”から放たれたSM-2がピンポイントで飛来したのだ。
全く予想外の攻撃に、デウス軍航空隊はひとたまりもなかった。
ことごとく、SM-2の餌食となっていく。
「フレイヤ1より“タンホイザー”。敵機の全滅を確認。援護感謝す」
『ひとつ貸しだぞ』
バーナードは短く応じる。
それでも、声は嬉しそうだった。
『こちらAWACS。警告、デウス軍の新手が北東より侵入して来る。
フレイヤ隊、交戦せよ』
E-767からの通信に、エスメロードはレーダーをにらみつける。
「反射波照合。F-16Cおよび電子戦機だ」
『少しは手応えのありそうなやつが来た』
今まで相手にしていた旧式機とはわけが違う。
そう思いながらも、エスメロードとジョージは高揚していた。
デウス国防空軍第1航空師団第9航空隊。通称スマラクト隊。
緑の迷彩が特徴の、4機のF-16Cと1機のF-16CJ電子戦機で構成される。
「ちっ!味方は全滅か」
1番機であるロン・シュタインホフ大尉、TACネーム“スクルキン”(ならず者)は舌打ちする。
味方の撤退の支援に向かった航空隊はけっこうな数がいたはずだ。
それが壊滅している。しかも、見たところたった2機の敵によって。
「あの2機を必ず落とすぞ!続け!」
スマラクト隊はアフターバーナーを吹かして肉薄していった。
『やばいな。電子戦機の目つぶしが邪魔だ』
「ヘッドオンで攻撃していったんやり過ごすぞ!
オールウェポンズフリー!コンバットマニューバゴウゴウゴウッ!」
敵の最右翼についたF-16CJが厄介だった。
強烈なレーダー妨害で狙いを定めることができない。
「FOX-2!」
『FOX-2!』
フレイヤ隊の2機は、まず正面からAIM-9を放つ。
1発は外れたが、1発は赤外線誘導に従って、レーダー妨害の中でも敵の1機に食らいつく。
火の玉に変わる緑のF-16Cとすれ違い、すぐに急旋回して敵部隊の後ろにつける。
「思った通り。FOX-2!」
F-16CJ電子戦機の欠点は改善されていないようだった。
単座機で操縦とレーダー妨害の両方を行わなければならない。そのため、システムの煩雑化を避けて妨害の方向は前方に限定されている。
しかも、一度に複数のことをこなさなければならないパイロットの負担が大きいらしく、部隊の中でも動きにキレがない。
(要するに、後ろを取られたらそこでアウト)
エスメロードの放ったAIM-9から逃れることができす、爆発四散する。
これでレーダー妨害はつぶした。
『フレイヤ2、ガンの射程内』
『FOX-3!』
ジョージが敵の後ろを取り、機銃で蜂の巣にする。
『くそ!いい腕じゃねえか!』
敵隊長機が毒づく。
残った2機が厄介だった。
パイロットが反応速度と対G特性に優れているのだろう。
後ろを取っても、フレアを発射しながら逃げてしまう。
「アールヴ、時間差攻撃!」
『こちらアールヴ、コピー!FOX-2』
業を煮やしたエスメロードは、奥の手を用いることにする。
ジョージと併走しながら、彼に先に撃たせる。
そして、自分は敵が回避した先にAIM-9をたたき込む。
これにはさすがのF-16Cも対処できず、爆散する。
『こそ、これほどとは!』
まだ諦めていない敵隊長機は、必死でこちらの後ろに回り込もうとする。
(加速力でF-16C、機動性でMig-29というところか)
エスメロードは激しい空戦を行いながらも、機体の特性を分析していた。
どちらも廉価で扱いやすい、同クラスの戦闘機とみなされている。
そして性能は一長一短というところだった。
空気抵抗が少ない設計のF-16Cは加速は優れている。
だが、機動性となるとMig-29の方に軍配が上がった。
「FOX-3!」
しつこく逃げようとする敵隊長機に、機銃を浴びせてやる。
『ちいっ!消火装置作動!』
主翼に被弾して黒煙を吹くF-16Cはまたとない的だった。
至近距離からAIM-9が放たれ、F-16Cは回避仕切れずにエンジンに被弾する。
そしてそのまま墜落する前に爆発四散していた。
『こちらAWACS、敵機の全滅を確認。
フレイヤ隊、今回の敵はデウス空軍のエースの1人だ。お手柄だった』
E-767からの通信に、エスメロードは自然と笑顔になる。
「了解。ミッションコンプリート。RTB」
フレイヤ隊は、激しい戦闘を制して帰路につくのだった。
この日、デウス軍のサン・オリヴィエ島からの撤退は完了する。
領土の回復という意味でも、面目の挽回という意味でも、この勝利はアキツィア自衛軍にとって大きな自信となるのである。
2018年8月4日。
サン・オリヴィエ島奪還作戦は、四日目にして最終局面に入り始めていた。
すでにデウス軍は島の維持は不可能と判断し、残存兵力を撤退させ始めている。
この島を制圧した時とは違う。
デウス軍将兵たちにとっては、勝利するための戦いではなく、生き残るための戦いだった。
「FOX2!」
友軍の撤退を支援するデウス空軍航空隊を、フレイヤ隊の2機は手当たり次第に落としていた。
Mig-29とF-15J相手に、旧式のF-4EやMig-21は敵ではない。
だが、数が多く厄介なことに変わりはない。
「ちっ!やむをえんか」
エスメロードは腹を括る。自分の勝利にこだわっている場合ではない。
「こちらフレイヤ1。
タンホイザー、チャンネルを“富士山”に変えられたし」
『“富士山”了解』
“タンホイザー“の船務士が迅速に反応する。
エスメロードは、事前に打ち合わせておいたチャンネルに切り替える。
「“タンホイザー”。
北に向けてSAMを発射して欲しい。敵機をそちらに追い立てる」
『了解。北だな。任せておけ』
艦長のバーナードが直々に答える。
『いいのですか?我々は敵の弾道ミサイルに備える予定では?』
『今が敵をたたくチャンスだ。臨機応変に行く。
SAMを慣性誘導で発射する』
「了解、感謝する。チャンネル元へ」
石頭の副長の言葉を風と受け流すバーナードに、エスメロードは感謝していた。
「アールヴ、聞こえたな?
やつらを押し出すぞ!」
『ラジャー』
フレイヤ隊の2機は、息のあったコンビネーションで敵のMig-21の部隊を島の北西に追い立てていく。
申し訳程度に機銃やミサイルで攻撃しながら。
『馬鹿野郎…!たった2機に…』
数で劣る相手に翻弄されているデウス軍のパイロットは、ただ歯がみしていた。
そして、彼はすぐに悟る。
互角の戦いどころか、自分の部隊は地獄に向けて全力疾走していたことに。
追い立てられて逃げた先に、“タンホイザー”から放たれたSM-2がピンポイントで飛来したのだ。
全く予想外の攻撃に、デウス軍航空隊はひとたまりもなかった。
ことごとく、SM-2の餌食となっていく。
「フレイヤ1より“タンホイザー”。敵機の全滅を確認。援護感謝す」
『ひとつ貸しだぞ』
バーナードは短く応じる。
それでも、声は嬉しそうだった。
『こちらAWACS。警告、デウス軍の新手が北東より侵入して来る。
フレイヤ隊、交戦せよ』
E-767からの通信に、エスメロードはレーダーをにらみつける。
「反射波照合。F-16Cおよび電子戦機だ」
『少しは手応えのありそうなやつが来た』
今まで相手にしていた旧式機とはわけが違う。
そう思いながらも、エスメロードとジョージは高揚していた。
デウス国防空軍第1航空師団第9航空隊。通称スマラクト隊。
緑の迷彩が特徴の、4機のF-16Cと1機のF-16CJ電子戦機で構成される。
「ちっ!味方は全滅か」
1番機であるロン・シュタインホフ大尉、TACネーム“スクルキン”(ならず者)は舌打ちする。
味方の撤退の支援に向かった航空隊はけっこうな数がいたはずだ。
それが壊滅している。しかも、見たところたった2機の敵によって。
「あの2機を必ず落とすぞ!続け!」
スマラクト隊はアフターバーナーを吹かして肉薄していった。
『やばいな。電子戦機の目つぶしが邪魔だ』
「ヘッドオンで攻撃していったんやり過ごすぞ!
オールウェポンズフリー!コンバットマニューバゴウゴウゴウッ!」
敵の最右翼についたF-16CJが厄介だった。
強烈なレーダー妨害で狙いを定めることができない。
「FOX-2!」
『FOX-2!』
フレイヤ隊の2機は、まず正面からAIM-9を放つ。
1発は外れたが、1発は赤外線誘導に従って、レーダー妨害の中でも敵の1機に食らいつく。
火の玉に変わる緑のF-16Cとすれ違い、すぐに急旋回して敵部隊の後ろにつける。
「思った通り。FOX-2!」
F-16CJ電子戦機の欠点は改善されていないようだった。
単座機で操縦とレーダー妨害の両方を行わなければならない。そのため、システムの煩雑化を避けて妨害の方向は前方に限定されている。
しかも、一度に複数のことをこなさなければならないパイロットの負担が大きいらしく、部隊の中でも動きにキレがない。
(要するに、後ろを取られたらそこでアウト)
エスメロードの放ったAIM-9から逃れることができす、爆発四散する。
これでレーダー妨害はつぶした。
『フレイヤ2、ガンの射程内』
『FOX-3!』
ジョージが敵の後ろを取り、機銃で蜂の巣にする。
『くそ!いい腕じゃねえか!』
敵隊長機が毒づく。
残った2機が厄介だった。
パイロットが反応速度と対G特性に優れているのだろう。
後ろを取っても、フレアを発射しながら逃げてしまう。
「アールヴ、時間差攻撃!」
『こちらアールヴ、コピー!FOX-2』
業を煮やしたエスメロードは、奥の手を用いることにする。
ジョージと併走しながら、彼に先に撃たせる。
そして、自分は敵が回避した先にAIM-9をたたき込む。
これにはさすがのF-16Cも対処できず、爆散する。
『こそ、これほどとは!』
まだ諦めていない敵隊長機は、必死でこちらの後ろに回り込もうとする。
(加速力でF-16C、機動性でMig-29というところか)
エスメロードは激しい空戦を行いながらも、機体の特性を分析していた。
どちらも廉価で扱いやすい、同クラスの戦闘機とみなされている。
そして性能は一長一短というところだった。
空気抵抗が少ない設計のF-16Cは加速は優れている。
だが、機動性となるとMig-29の方に軍配が上がった。
「FOX-3!」
しつこく逃げようとする敵隊長機に、機銃を浴びせてやる。
『ちいっ!消火装置作動!』
主翼に被弾して黒煙を吹くF-16Cはまたとない的だった。
至近距離からAIM-9が放たれ、F-16Cは回避仕切れずにエンジンに被弾する。
そしてそのまま墜落する前に爆発四散していた。
『こちらAWACS、敵機の全滅を確認。
フレイヤ隊、今回の敵はデウス空軍のエースの1人だ。お手柄だった』
E-767からの通信に、エスメロードは自然と笑顔になる。
「了解。ミッションコンプリート。RTB」
フレイヤ隊は、激しい戦闘を制して帰路につくのだった。
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