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04 龍の巣
青き翼獅子
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06
フューリー基地に帰還し、補給作業の間に食事。
そして1時間仮眠を取ると、また出撃だった。
『忙しいことだな』
「居眠り運転はやめておけよ」
再び“龍巣”へとエアカバーに向かうフレイヤ隊とブリュンヒルデ隊。
実際、出撃の連続で疲れ気味だった。
『衛星での偵察によると、デウス空軍の基地にすでに機影は見えないってことですが…』
リチャードが希望的観測が半分、不安が半分という声で言う。
デウス軍の弾が切れたかと楽観視する一方で、やつらが簡単には諦めないだろうという予測も働いているのだ。
『こちらAWACS。レーダーに感。
デウス軍航空隊接近中』
リチャードの悪い予感は当たったらしい。
敵の対空防御施設をもう少しでレーダーに捉えるというタイミングで、敵航空隊が接近してきたのだ。
『ち、こんな時に!
地上目標補足、地対空ミサイル及び対空自走砲と確認。
ブリュンヒルデ隊対地攻撃を開始する。
フレイヤ隊、すまんが敵機は任せる』
ガートルードがいらだちを滲ませた声で通信を入れてくる。
地対空兵器と敵機の両方を相手にしなければならない状況は、戦闘機乗りにとっては悪夢なのだ。
「フレイヤ1コピー。
パワーマキシマム、オールウエポンズフリー、コンバットマニューバゴウゴウゴウッ!」
フレイヤ隊の2機は、出現した敵機を迎え撃つべく加速をかけた。
『各機、レーダーにコンタクト。
F-15Jが2機。最近連合軍が宣伝している化け物部隊と思われる。
交戦するぞ』
デウス国防空軍第6航空師団第19航空隊通称“サフィール隊”1番機、エドゥアルト・レーム中佐、TACネーム“エルハヴェン”(高貴)は部下たちに指示を送る。
胴体脇と主翼に青いラインを引いた6機のJAS39Eグリペンで構成される彼の部隊の動きは、整然としていながら力強い。
まるで本当に翼獅子の群れのようだった。
ともあれ、今回“サフィール隊”が“龍巣”に差し向けられたのは奇策と言えるものだった。
“龍巣”をカバーできる空軍基地は戦力が払底しつつある上に、24時間連合軍の衛星で監視されている。
航空隊は飛び立った瞬間から動きを読まれてしまうのだ。
そして、ことごとく迎撃が差し向けられる。
その点彼の部隊が運用するグリペンはSTOL(短距離離着陸)能力に優れる。
民間の小さな飛行場から離発着が可能なのだ。
“龍巣”に近づく事ができたということは、自分たちは幸いにしてノーマークだったらしい。
『各機、友軍の撤退まで後少しだ。
敵に制空権を渡すな。行くぞ』
レームは部下たちを激励しながら戦闘に備えた。
『反射パターン照合。敵機はグリペンE型と判明』
「ち!高機動機だ。厄介だな」
ジョージとエスメロードは、接敵した相手の正体を知って、エアマスクの下で渋面になる。
「FOX-2」
エスメロードは600メートルの距離で99式を発射するが、グリペンはすさまじい機動であっさり回避する。
『ロングレンジではだめか!FOX2!』
ジョージは加速をかけてすれ違いざまに04式を放つ。
今度は距離が近いため、怪物じみたマニューバでも回避できなかった。
グリペンの1機が炎の塊になって落ちていく。
『サフィール4がやられた!』
『落ち着け、回避行動を止めるな!』
仲間を失った敵部隊だが、動揺している様子はない。
急旋回を続けながら器用にミサイルを撃ってくる。
「くそ!見事なマニューバだ!」
『機体が軽いからな!』
エスメロードとジョージは何度もHUDに敵を捉えながら、すんでのところで逃げられていた。
グリペンは局地戦闘機として、航続距離を諦める代わりに軽量化がなされている。
それは規格外のSTOL性能を実現するが、副次的な作用として加速性能と機動性の向上に貢献している。
とくにE型は、単発機ながら高出力のエンジンを採用しているわりに機体が軽いため、このようなすさまじいマニューバを可能としている。
「ならば!」
エスメロードはドッグファイトを諦め、時間差射撃を試してみることにする。
1発目のミサイルを回避しようと敵が機首を向けた先に、2発目を送り込む。
『フレイヤ1、敵機を撃墜』
E-767から撃墜報告が入る。
作戦変更が功を奏したようだ。
『FOX-2!』
ジョージが同じように04式を時間差で放ち、さらに1機のグリペンを撃墜する。
追従性の高い04式で時間差射撃をやられては、さしものグリペンも逃げられないようだ。
「逃げても無駄だ!」
浮き足だったグリペンを、エスメロードがさらに1機撃墜する。
『くそ!“雷神”と“飛龍”、噂通りだ!』
『焦るな、回避できない攻撃じゃない』
残った2機は、時間差射撃に備えて機動を変える。
こちらが放ったミサイルを、急加速をかけて紙一重でかわす動きをする。
そして、返す刀でミサイルを撃ってくる。
「やるじゃない」
『フレイヤ1、ミサイルを回避』
エスメロードはフレアを発射して敵ミサイルを回避する。
「敵の対G特性は相当に高いな」
『ああ、なみのパイロットがあれをやったら確実に気絶だ』
ジョージが歯がみした様子で答える。
とにかく、同じ人間が行っているとは思えないマニューバなのだ。
「よし、アールヴ着いてこい!」
『アールヴコピー!』
フレイヤ隊はミサイルの回避を兼ねていったん上昇し、ついで急降下する。
『いかん!』
敵部隊の1番機は、グリペンの機体特性が仇になったことに気づいたらしい。
急降下してくるF-15Jを振り切ることができないのだ。
STOL性を追及したために、軽量で機体の大きさに比して翼面積が広いグリペンは、急降下時にどうしても空気抵抗を受けてしまう。加えて、自重を活用して加速をかけることができないのだ。
『FOX-2』
「FOX-2!」
エスメロードとジョージが同時に放った04式は、見事な機動で2機のグリペンに食らいついていた。
二頭の翼獅子が火の玉となって高度を下げていき、やがて爆ぜる。
『こちらAWACS。
敵飛行隊の全滅を確認。
地上の敵防空施設も全て破壊を確認。
作戦終了。フレイヤ隊帰還せよ』
どうやら、ブリュンヒルデ隊が敵の防空施設の破壊に成功したようだった。
「フレイヤ1了解。ミッションコンプリート。RTB!」
2機のF-15Jは機体を翻し、南へと進路を取った。
この日、エリアD9Tは完全に連合軍の制圧下に入るのである。
フューリー基地に帰還し、補給作業の間に食事。
そして1時間仮眠を取ると、また出撃だった。
『忙しいことだな』
「居眠り運転はやめておけよ」
再び“龍巣”へとエアカバーに向かうフレイヤ隊とブリュンヒルデ隊。
実際、出撃の連続で疲れ気味だった。
『衛星での偵察によると、デウス空軍の基地にすでに機影は見えないってことですが…』
リチャードが希望的観測が半分、不安が半分という声で言う。
デウス軍の弾が切れたかと楽観視する一方で、やつらが簡単には諦めないだろうという予測も働いているのだ。
『こちらAWACS。レーダーに感。
デウス軍航空隊接近中』
リチャードの悪い予感は当たったらしい。
敵の対空防御施設をもう少しでレーダーに捉えるというタイミングで、敵航空隊が接近してきたのだ。
『ち、こんな時に!
地上目標補足、地対空ミサイル及び対空自走砲と確認。
ブリュンヒルデ隊対地攻撃を開始する。
フレイヤ隊、すまんが敵機は任せる』
ガートルードがいらだちを滲ませた声で通信を入れてくる。
地対空兵器と敵機の両方を相手にしなければならない状況は、戦闘機乗りにとっては悪夢なのだ。
「フレイヤ1コピー。
パワーマキシマム、オールウエポンズフリー、コンバットマニューバゴウゴウゴウッ!」
フレイヤ隊の2機は、出現した敵機を迎え撃つべく加速をかけた。
『各機、レーダーにコンタクト。
F-15Jが2機。最近連合軍が宣伝している化け物部隊と思われる。
交戦するぞ』
デウス国防空軍第6航空師団第19航空隊通称“サフィール隊”1番機、エドゥアルト・レーム中佐、TACネーム“エルハヴェン”(高貴)は部下たちに指示を送る。
胴体脇と主翼に青いラインを引いた6機のJAS39Eグリペンで構成される彼の部隊の動きは、整然としていながら力強い。
まるで本当に翼獅子の群れのようだった。
ともあれ、今回“サフィール隊”が“龍巣”に差し向けられたのは奇策と言えるものだった。
“龍巣”をカバーできる空軍基地は戦力が払底しつつある上に、24時間連合軍の衛星で監視されている。
航空隊は飛び立った瞬間から動きを読まれてしまうのだ。
そして、ことごとく迎撃が差し向けられる。
その点彼の部隊が運用するグリペンはSTOL(短距離離着陸)能力に優れる。
民間の小さな飛行場から離発着が可能なのだ。
“龍巣”に近づく事ができたということは、自分たちは幸いにしてノーマークだったらしい。
『各機、友軍の撤退まで後少しだ。
敵に制空権を渡すな。行くぞ』
レームは部下たちを激励しながら戦闘に備えた。
『反射パターン照合。敵機はグリペンE型と判明』
「ち!高機動機だ。厄介だな」
ジョージとエスメロードは、接敵した相手の正体を知って、エアマスクの下で渋面になる。
「FOX-2」
エスメロードは600メートルの距離で99式を発射するが、グリペンはすさまじい機動であっさり回避する。
『ロングレンジではだめか!FOX2!』
ジョージは加速をかけてすれ違いざまに04式を放つ。
今度は距離が近いため、怪物じみたマニューバでも回避できなかった。
グリペンの1機が炎の塊になって落ちていく。
『サフィール4がやられた!』
『落ち着け、回避行動を止めるな!』
仲間を失った敵部隊だが、動揺している様子はない。
急旋回を続けながら器用にミサイルを撃ってくる。
「くそ!見事なマニューバだ!」
『機体が軽いからな!』
エスメロードとジョージは何度もHUDに敵を捉えながら、すんでのところで逃げられていた。
グリペンは局地戦闘機として、航続距離を諦める代わりに軽量化がなされている。
それは規格外のSTOL性能を実現するが、副次的な作用として加速性能と機動性の向上に貢献している。
とくにE型は、単発機ながら高出力のエンジンを採用しているわりに機体が軽いため、このようなすさまじいマニューバを可能としている。
「ならば!」
エスメロードはドッグファイトを諦め、時間差射撃を試してみることにする。
1発目のミサイルを回避しようと敵が機首を向けた先に、2発目を送り込む。
『フレイヤ1、敵機を撃墜』
E-767から撃墜報告が入る。
作戦変更が功を奏したようだ。
『FOX-2!』
ジョージが同じように04式を時間差で放ち、さらに1機のグリペンを撃墜する。
追従性の高い04式で時間差射撃をやられては、さしものグリペンも逃げられないようだ。
「逃げても無駄だ!」
浮き足だったグリペンを、エスメロードがさらに1機撃墜する。
『くそ!“雷神”と“飛龍”、噂通りだ!』
『焦るな、回避できない攻撃じゃない』
残った2機は、時間差射撃に備えて機動を変える。
こちらが放ったミサイルを、急加速をかけて紙一重でかわす動きをする。
そして、返す刀でミサイルを撃ってくる。
「やるじゃない」
『フレイヤ1、ミサイルを回避』
エスメロードはフレアを発射して敵ミサイルを回避する。
「敵の対G特性は相当に高いな」
『ああ、なみのパイロットがあれをやったら確実に気絶だ』
ジョージが歯がみした様子で答える。
とにかく、同じ人間が行っているとは思えないマニューバなのだ。
「よし、アールヴ着いてこい!」
『アールヴコピー!』
フレイヤ隊はミサイルの回避を兼ねていったん上昇し、ついで急降下する。
『いかん!』
敵部隊の1番機は、グリペンの機体特性が仇になったことに気づいたらしい。
急降下してくるF-15Jを振り切ることができないのだ。
STOL性を追及したために、軽量で機体の大きさに比して翼面積が広いグリペンは、急降下時にどうしても空気抵抗を受けてしまう。加えて、自重を活用して加速をかけることができないのだ。
『FOX-2』
「FOX-2!」
エスメロードとジョージが同時に放った04式は、見事な機動で2機のグリペンに食らいついていた。
二頭の翼獅子が火の玉となって高度を下げていき、やがて爆ぜる。
『こちらAWACS。
敵飛行隊の全滅を確認。
地上の敵防空施設も全て破壊を確認。
作戦終了。フレイヤ隊帰還せよ』
どうやら、ブリュンヒルデ隊が敵の防空施設の破壊に成功したようだった。
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