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♡♀ 第五章 キレる彼女と斬られる彼女 ♀Zzz
10話
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私達は腐肉の園で肉体が朽ちた後の骨を運び入れる“骨の白壁”と呼ばれる区域を、メリランダの案内もあり迷うことなく進んでいった。
途中、スケルトンを何体か倒しながら地下10層目の一番奥へと着くと、下の階層に続く通路には魔物が上がって来ないよう、幾重にも結界が貼られていた。
メリランダが言うには埋葬区域はここまでで、この先からは魔物が人間に対して攻撃性を持つ危険区域らしい。つまり、ダンジョンらしいダンジョンの始まりだ。
結界の貼られた通路をシホ達が進んでいると、メリランダはため息をつく。
「これだけの結界の中を平然と進めるとは、お二人が敵にならなくて良かったです。私には聖魔法しか取り柄がありませんので」
シホは足を運びながらメリランダに尋ねる。
「ところで危険区域って言ってたけど、私達の監視とはいえメリランダは危なくないの?」
「当然生きている人間ですから狙われますよ。ですが、自分で言うのも何ですが、私の聖魔法は上位種以外の魔物であれば、普通は一撃で浄化できますから。それに屍人払いの結界を展開してますので、私より弱い不死系の魔物は近づけません」
「メリランダってそんなに強かったんだ」
「通常、墓守は埋葬区域より先に入る事はありませんが、冒険者の救出や捜索の依頼が来ればそれを行う事もあるのです。なのでそれ相応の力量も求められます。まあ、お父様達や信頼できる冒険者を交えてパーティーを組んで行きますけどね」
「どこまで行ったことあるの?」
「31層目より先が“穢れの澱み”と呼ばれる区域なのですが、その辺りまでなら以前足を踏み入れたことがあります」
「よく分からないけど結構危ない事してたんだね。なんでそんなに頑張れるの?墓守ってだけで辛い思いしてるんでしょ?」
「好奇心と家族のためでしょうか。元来、このダンジョンの研究を生業としていた一族がいつしか墓守と呼ばれる様になったのだとか。私もいつか大カタコンベの謎を解き明かして、一族の汚名を払拭してあげたいのです」
「へぇ、ただの変態かと思ってたけど立派な子だったんだね」
「私は変態ではありません、性癖が珍しいだけです。さあ、着きましたよ。ここから先20層までが“生者返し”と呼んでいる区域です」
壁の松明の明かりが途切れると闇が広がる空間に出た。メリランダが暗闇を照らす魔法を上空に放つと、先ほどまでの人工的な造りではない土の大地が照らし出された。
◆私はダンジョンと聞いていたので、湿っていて薄暗く狭い迷宮が続くものだと思ってた。でも、目の前に広がるのは見た事もない広大な地下世界そのものだった。
魔物のうめき声がそこら中から聞こえてくる。私がただの人間の身で訪れていたなら、逃げ帰りたくなる様な場所だった。生者返し、まさにその名の通りだ。
蠢く魔物の影を見ながらシホはエルテを気に掛ける。
「エルテ、怖くない?怖かったら私にしがみ付いていいからね」
「いや、シホがまた発情したら困る。それにもう死んでるし、怖くないから」
「メリランダぁ、エルテが死体みたいに冷たいよー」
メリランダは両腕を広げて満面の笑みを湛える。
「私ならいつでも抱いて差し上げますよ、シホさん」
◆まともな相談相手がほしい・・・・。
シホはやりどころのない思いを、闊歩する魔物達へとぶつけていく。そのままの勢いで道を切り開いていくシホのレベルも少し上がり、三人は21層目に到達した。
◆“墓標畑”。ここから先30層目までをそう呼ぶらしい。
多くの駆け出し冒険者がこの辺りで命を落とすため、剣や杖が地面に刺さり墓標の様に並ぶためその名が付いたみたいだ。
そう説明してくれたメリランダもここまで長い距離を歩き、流石に疲れを見せていた。
メリランダは立ち止まると、
「ちょっと休憩しませんか?疲れ知らずのお二人と違って人間の私には休息が必要です。あっちに聖者の軌跡があったはずです。向かってもらっていいでしょうか?」
聞きなれない言葉にシホが聞き返す。
「聖者の軌跡?なにそれ?」
「聖者の軌跡というのは、かつてこの地を修行の場としていた聖職者の一派が修行の最後、その命を終える入滅の儀を行った場所です。その場所は今でも聖なる力が残り、邪な魔物の侵入を許さず、今では冒険者達が身を休める場所として利用されているのです」
「へぇ、そんな場所が」
シホが道中の冒険者の亡骸をいくつか吸収しながら進んでいると、一際明るい光を発し、植物の茂った場所が見えてきた。だがその手前でメリランダが二人を呼び止める。
「ちょっと待っていて下さい、先客が居ないか見てきます。血の気の多い冒険者が居たら厄介ですので」
先行したメリランダが振り返り手招きをすると、シホ達もその領域に足を踏み入れた。その様子を見守っていた彼女は感心する。
「流石は聖属性への完全耐性ですね。聖者の軌跡にも入れるとは・・・・。つくづく敵でなくって良かったと実感しますよ」
メリランダは荷物を下ろすと岩に腰かける。そこから水と保存食を取り出すと口に運ぼうとしたが手を止める。
「あ、一応聞いておきますが、お二人って食事の必要あります?」
シホはエルテと顔を見合わせると首を横に振る。
「この体になってからお腹が減ったとかないよ。気にせず食べなよ」
「そうですか。では、遠慮なく」
休憩を取る事暫し。こちらへ向かってくる鎧の金属が擦れる音に気づいたメリランダは、シホ達に生い茂る植物の陰に隠れるよう告げた。
高級そうな装備を纏う華奢な男は、それなりの手慣れと思われる二人の護衛を連れ聖者の軌跡へと入って来た。一人で座るメリランダに気づくと傲慢な態度で言葉を吐く。
「下から戻ってきてみれば、先客が墓守の娘とは。せっかくの聖者の軌跡も空気が汚れるのではないか?」
薄ら笑いをする男に続き、付き添う剣士の男と魔術師の女もへらへらと笑う。黙ってやり過ごそうとするメリランダは目を逸らし、水の入ったコップに口をつけようとした。
その時、近寄って来た剣士が彼女のコップを手で払い飛ばす。
「おい、主様が邪魔だと言っているのが分からないのか?この小娘め」
それでもメリランダは静かに下を向いていた。物陰からその様子を見ていたシホはエルテに動かないよう言うと、そこから飛び出した。
「こんなの黙って聞いていられるかー!メリランダに何か恨みでもあるっていうの⁉」
メリランダは頭を抱えため息をついた。
途中、スケルトンを何体か倒しながら地下10層目の一番奥へと着くと、下の階層に続く通路には魔物が上がって来ないよう、幾重にも結界が貼られていた。
メリランダが言うには埋葬区域はここまでで、この先からは魔物が人間に対して攻撃性を持つ危険区域らしい。つまり、ダンジョンらしいダンジョンの始まりだ。
結界の貼られた通路をシホ達が進んでいると、メリランダはため息をつく。
「これだけの結界の中を平然と進めるとは、お二人が敵にならなくて良かったです。私には聖魔法しか取り柄がありませんので」
シホは足を運びながらメリランダに尋ねる。
「ところで危険区域って言ってたけど、私達の監視とはいえメリランダは危なくないの?」
「当然生きている人間ですから狙われますよ。ですが、自分で言うのも何ですが、私の聖魔法は上位種以外の魔物であれば、普通は一撃で浄化できますから。それに屍人払いの結界を展開してますので、私より弱い不死系の魔物は近づけません」
「メリランダってそんなに強かったんだ」
「通常、墓守は埋葬区域より先に入る事はありませんが、冒険者の救出や捜索の依頼が来ればそれを行う事もあるのです。なのでそれ相応の力量も求められます。まあ、お父様達や信頼できる冒険者を交えてパーティーを組んで行きますけどね」
「どこまで行ったことあるの?」
「31層目より先が“穢れの澱み”と呼ばれる区域なのですが、その辺りまでなら以前足を踏み入れたことがあります」
「よく分からないけど結構危ない事してたんだね。なんでそんなに頑張れるの?墓守ってだけで辛い思いしてるんでしょ?」
「好奇心と家族のためでしょうか。元来、このダンジョンの研究を生業としていた一族がいつしか墓守と呼ばれる様になったのだとか。私もいつか大カタコンベの謎を解き明かして、一族の汚名を払拭してあげたいのです」
「へぇ、ただの変態かと思ってたけど立派な子だったんだね」
「私は変態ではありません、性癖が珍しいだけです。さあ、着きましたよ。ここから先20層までが“生者返し”と呼んでいる区域です」
壁の松明の明かりが途切れると闇が広がる空間に出た。メリランダが暗闇を照らす魔法を上空に放つと、先ほどまでの人工的な造りではない土の大地が照らし出された。
◆私はダンジョンと聞いていたので、湿っていて薄暗く狭い迷宮が続くものだと思ってた。でも、目の前に広がるのは見た事もない広大な地下世界そのものだった。
魔物のうめき声がそこら中から聞こえてくる。私がただの人間の身で訪れていたなら、逃げ帰りたくなる様な場所だった。生者返し、まさにその名の通りだ。
蠢く魔物の影を見ながらシホはエルテを気に掛ける。
「エルテ、怖くない?怖かったら私にしがみ付いていいからね」
「いや、シホがまた発情したら困る。それにもう死んでるし、怖くないから」
「メリランダぁ、エルテが死体みたいに冷たいよー」
メリランダは両腕を広げて満面の笑みを湛える。
「私ならいつでも抱いて差し上げますよ、シホさん」
◆まともな相談相手がほしい・・・・。
シホはやりどころのない思いを、闊歩する魔物達へとぶつけていく。そのままの勢いで道を切り開いていくシホのレベルも少し上がり、三人は21層目に到達した。
◆“墓標畑”。ここから先30層目までをそう呼ぶらしい。
多くの駆け出し冒険者がこの辺りで命を落とすため、剣や杖が地面に刺さり墓標の様に並ぶためその名が付いたみたいだ。
そう説明してくれたメリランダもここまで長い距離を歩き、流石に疲れを見せていた。
メリランダは立ち止まると、
「ちょっと休憩しませんか?疲れ知らずのお二人と違って人間の私には休息が必要です。あっちに聖者の軌跡があったはずです。向かってもらっていいでしょうか?」
聞きなれない言葉にシホが聞き返す。
「聖者の軌跡?なにそれ?」
「聖者の軌跡というのは、かつてこの地を修行の場としていた聖職者の一派が修行の最後、その命を終える入滅の儀を行った場所です。その場所は今でも聖なる力が残り、邪な魔物の侵入を許さず、今では冒険者達が身を休める場所として利用されているのです」
「へぇ、そんな場所が」
シホが道中の冒険者の亡骸をいくつか吸収しながら進んでいると、一際明るい光を発し、植物の茂った場所が見えてきた。だがその手前でメリランダが二人を呼び止める。
「ちょっと待っていて下さい、先客が居ないか見てきます。血の気の多い冒険者が居たら厄介ですので」
先行したメリランダが振り返り手招きをすると、シホ達もその領域に足を踏み入れた。その様子を見守っていた彼女は感心する。
「流石は聖属性への完全耐性ですね。聖者の軌跡にも入れるとは・・・・。つくづく敵でなくって良かったと実感しますよ」
メリランダは荷物を下ろすと岩に腰かける。そこから水と保存食を取り出すと口に運ぼうとしたが手を止める。
「あ、一応聞いておきますが、お二人って食事の必要あります?」
シホはエルテと顔を見合わせると首を横に振る。
「この体になってからお腹が減ったとかないよ。気にせず食べなよ」
「そうですか。では、遠慮なく」
休憩を取る事暫し。こちらへ向かってくる鎧の金属が擦れる音に気づいたメリランダは、シホ達に生い茂る植物の陰に隠れるよう告げた。
高級そうな装備を纏う華奢な男は、それなりの手慣れと思われる二人の護衛を連れ聖者の軌跡へと入って来た。一人で座るメリランダに気づくと傲慢な態度で言葉を吐く。
「下から戻ってきてみれば、先客が墓守の娘とは。せっかくの聖者の軌跡も空気が汚れるのではないか?」
薄ら笑いをする男に続き、付き添う剣士の男と魔術師の女もへらへらと笑う。黙ってやり過ごそうとするメリランダは目を逸らし、水の入ったコップに口をつけようとした。
その時、近寄って来た剣士が彼女のコップを手で払い飛ばす。
「おい、主様が邪魔だと言っているのが分からないのか?この小娘め」
それでもメリランダは静かに下を向いていた。物陰からその様子を見ていたシホはエルテに動かないよう言うと、そこから飛び出した。
「こんなの黙って聞いていられるかー!メリランダに何か恨みでもあるっていうの⁉」
メリランダは頭を抱えため息をついた。
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