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3 お嬢を背に
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「おんぶしようか?」
「ううん、いい」
そう言ってお嬢は僕にしがみついてきた。
えっ、抱っこか? って勘違いしている僕に、お嬢の身体が溶け込んでいった。
「お嬢。あれっ消えた」
少なくとも140cmぐらいの背丈の少女を抱きかかえるつもりだった僕には、拍子抜けするぐらいの空気を抱いた感覚。
幽霊だったのか、いや妖って言ってたよな。幻みたいな……夢か。
「不思議な感じだったな。以外と怖くてなかったし、今日はそこの旅館に泊まってみよう。空いてるかな?」
「駄目じゃ、駄目駄目。兄ぃはアチキの事をいたぶる気かや? 兄ぃがうちの門をくぐった途端にアチキはお仕置きされるのじゃ。痛いから嫌なんじゃ」
ど、どこから声がしてるんだ? お嬢の姿が見えない。周りを見ても赤い着物姿の少女は居なくて、見えるのは湯煙と雨に濡れた石畳だけ。人自体がここには居なかった。
「お嬢居るのか? 僕には見えないよ」
「後ろのガラスを見てみ。アチキが映っているぞ」
お嬢に言われて振り向くと、タバコ屋の店のガラス戸には僕の姿が映っていて、僕の左肩に腰を乗っけてちょこんと座るお嬢の姿が見えた。
「見えたか?」
「うんっ、見えた。お嬢は美人さんだね」
「兄ぃもなかなかじゃぞ。少なくともボンと比べたら千倍良い男じゃ」
「ボン?」
「ボンじゃ、アチキを運んでくれるボンじゃがもう歳でな。この前一緒に外に出てからしばらく見らんのじゃ」
「ボンさんって人間?」
「うん、兄ぃと一緒じゃ。アチキの事が見える人での、ちょっとした付き合いじゃ。そろそろ70年ぐらいは経つかの」
「ううん、いい」
そう言ってお嬢は僕にしがみついてきた。
えっ、抱っこか? って勘違いしている僕に、お嬢の身体が溶け込んでいった。
「お嬢。あれっ消えた」
少なくとも140cmぐらいの背丈の少女を抱きかかえるつもりだった僕には、拍子抜けするぐらいの空気を抱いた感覚。
幽霊だったのか、いや妖って言ってたよな。幻みたいな……夢か。
「不思議な感じだったな。以外と怖くてなかったし、今日はそこの旅館に泊まってみよう。空いてるかな?」
「駄目じゃ、駄目駄目。兄ぃはアチキの事をいたぶる気かや? 兄ぃがうちの門をくぐった途端にアチキはお仕置きされるのじゃ。痛いから嫌なんじゃ」
ど、どこから声がしてるんだ? お嬢の姿が見えない。周りを見ても赤い着物姿の少女は居なくて、見えるのは湯煙と雨に濡れた石畳だけ。人自体がここには居なかった。
「お嬢居るのか? 僕には見えないよ」
「後ろのガラスを見てみ。アチキが映っているぞ」
お嬢に言われて振り向くと、タバコ屋の店のガラス戸には僕の姿が映っていて、僕の左肩に腰を乗っけてちょこんと座るお嬢の姿が見えた。
「見えたか?」
「うんっ、見えた。お嬢は美人さんだね」
「兄ぃもなかなかじゃぞ。少なくともボンと比べたら千倍良い男じゃ」
「ボン?」
「ボンじゃ、アチキを運んでくれるボンじゃがもう歳でな。この前一緒に外に出てからしばらく見らんのじゃ」
「ボンさんって人間?」
「うん、兄ぃと一緒じゃ。アチキの事が見える人での、ちょっとした付き合いじゃ。そろそろ70年ぐらいは経つかの」
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