一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!

夢咲 アメ

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第3話

あれからほどなくして、ルビーはフェリクスに半ば強引に、王宮の離宮に連れて来られていた。

「ここが今日から君が住む所だよ。君のために君が好きそうな家具や物をたくさん用意したんだ」

気に入ってもらえたかな、と問いかけてくるフェリクスに対し、ルビーは肩を震わせていた。

「王太子様…私はここに住むことを承諾した覚えはありません。どうか我が家に帰らせてください」

「それは聞けないと言っただろう?これは、もう決定事項なんだ。それに…君を帰す事は出来ない。そんな事をしたら君は、僕ともう二度と会わないつもりなんだろう?……僕はそれが許せない。君の隣だけが…僕の居場所なんだから」

「……」

まるでこちらの言い分など初めから聞いていないかのようにフェリクスは話を続けていく。

「それにね、ルビー」

「この件に関しては、もう君のお父様には許可を得ているんだ。もちろん婚約破棄の事についてもね」

「!!?」

「ルビーが婚約破棄をしたがっている事は君のお父様にも伝えたよ。だけど、僕はそれを望んでいないから、このまま婚約は続けたいと伝えたんだ。そうしたら君のお父様はどうしたと思う?」

「『ルビーの意思を私は尊重したい』と頭を下げて言ってきたんだよ」

(っ!お父様)

「だけど、『僕がこれは国が決めた事でもある。例え名家と名高いクライシス家でも国の決定に逆らえば、君と君の家族たちはどうなるかな?』…そう言ったんだ。そうしたら君のお父様はね、凄く苦しそうな顔をしながら、婚約の続行と今後、君が王宮に住む事を承諾したんだよ」

フェリクスが話し終えると同時にルビーは全身から力が抜けていき、その場に座り込んだ。

(フェリクス様がした事はもはや脅迫だわ)

国の決定と言うが、王太子自らが婚約破棄と言えば婚約は解消できる。その逆も然りだ。クライシス家は名家で位も上位貴族。そして双方のうち片方でも婚約破棄を言い出せば、婚約を続ける事は出来ない。なのに婚約破棄ができないという事は……それはつまり、王太子自らが、この婚約を破棄した場合クライシス家を潰すと言って脅したのだろう。それこそ国の権力を使って…そして、私や私の家族を人質にまでして。

(でなければ、お父様が承諾するはずがないわ…私がフェリクス様を慕っていた時から苦言を漏らしていたのはお父様だったから)

何度も王太子殿下は、本当にお前の事を愛しているのか?この前2人を見たが、娘のお前に向ける殿下の態度はとても婚約者に向けるものではなかった、ルビー本当に結婚をするのか、と何度も婚約破棄を促していたほどだ。

「君のお父様からも許可は貰ったし、先方から婚約破棄をする事も無いと言質まで取ったからね。だからねルビー、駄々をこねるのはもう止めて…大丈夫、これからは僕が君の傍に居てあげるから」

寂しくなんてないからね。と、そう笑いながら話すフェリクスにルビーは、込み上げてくる感情を飲み込むように答えた。

「分かりましたわ…王太子殿下。…でも私、今日はもう疲れまして…一人にさせてください」

ぎこちない笑みを浮かべたがフェリクスは気づかなかったのだろう。そのまま部屋から出ていこうとしていた。が扉に手をかけるところで思い出したかのようにこちらを振り返った。

「あぁ、そうだった。ルビー」

「…どうされましたか」

「僕もなるべく君が寂しくならないようにするつもりだけど、ずっと一緒には居る事が出来ない時もある。だからね、」

入れ、とフェリクスが扉に向かって呟いた。そして、扉から入ってきた人物にルビーは目を見開いた。

「カル………」

扉から入ってきたのはルビーの専属執事のカルだった。

「君の犬を連れてきてあげたよ。といっても、君のお父様から王宮に住むにあたって、この執事だけは連れていくようにと懇願されたからだけどね。」

そしてカルに体を向け「じゃあ、カル。ルビーが外に出ようとしたら、君の全部を持ってルビーを止めるんだよ。それが君の新しい役目だ」と言い放つ。

「……」

しかしカルは、フェリクスの言葉にうなずきもせずにルビーに近づき、そっと頬を触った。

「お嬢様…」

「カル…………うっ…カルぅぅ」

カルが来た事で押し止めていたものが涙となって溢れてきた。
(怖かった…突然、豹変したフェリクス様に、もう家に帰れない事に)
ポロポロと泣くルビーに、カルは頬に寄せていた手で目の端を優しく拭った。
しかしそんな光景をフェリクスは冷ややかな目で見ていた。

「感動のシーンに水を差すようで悪いけど、カル。お前の役目はルビーがここから出ないように見張る事だ。公爵に言われたからお前を置いているにすぎない。もし、ルビーが逃げ出そうとしたら、君を拾ってくれた公爵家がどうなるか…分かっているね?」

そう冷たく言うフェリクスに対し、カルはルビーに一度微笑むと、すっと立ち上がりルビーを庇うように前に出てフェリクスに真っ直ぐ向き直った。

「そろそろ、その不愉快な発言をやめて頂けますか?お嬢様が怖がっておられます」

「不敬だな…君の今の役目と立場を教えてあげただけだろう。それに私はこの国の王太子だ。発言には気をつけろ」

殺気立った空気が二人の間に漂った。フェリクスの物言いにカルは、震えるどころか殺気をはらんだような目で睨むようにフェリクスを見据えた。

「黙れ…貴様に脅されようが何をされようが、俺が生涯をかけて、忠誠を誓うのはルビーお嬢様だけだ。…たとえ王太子であろうと、お嬢様を傷つけ、泣かせる者に従う道理などない。
噛み殺されたくなければ、貴方こそ発言に気をつけていただきたい。『王太子様』」

一国の王太子に向かってする発言では到底ない。しかしフェリクスの物言いに恐れず、堂々とした態度で言い放つその姿はカルが、どれほどルビーへの忠誠心が高いかこの場で示していた。
カルの発言にルビーは衝撃を受け、しかし安心するように瞳を潤ませた。一方フェリクスはカルの発言で怒るどころか、

「ははっ、いい目だ。お前は、さながらルビーだけの番犬だな。まぁそれくらいの気迫でないとルビーを任せられないからね。」

「じゃあ、頼んだよ番犬くん」と笑いながら出ていった。


フェリクスが去った後、嵐が静まり返ったような静けさに包まれた。ルビーは未だ自分に起きた出来事を消化できずにいた。

(どうしてこうなってしまったのかしら…)

今日、何度そう思ったことだろう。婚約破棄をするだけだったのに、気づけばフェリクス様に退路を断たれ王宮に閉じ込められた。

(お父様達はご無事かしら…)

フェリクス様は確かに、話し合って決めたと言っていたが聞いた限りでは、半ば脅しに近いようなものに違いなかったろう。家族への心配と今後について、頭を悩ませていたら不意に正面に影が落とされた。

「お嬢様…」

影の落とし主は、先程フェリクスに啖呵を切っていたカルだった。カルは、ルビーの正面に膝を落として座った。

「?どうしたの、カル…」

「お嬢様、………沢山泣いて良いのですよ」

「っ!な、何を言ってるの?さっきもあれほど泣いていたでしょう?」

おどけるような口調で私が言ってもカルは答えず、両手でそっと私の頬を包み込むように触った。

「突然の事ばかりで驚いたでしょう。不安や心配事、怖い事だってあったと思います。全部聞いてさしあげます、実家の事や今後の事だって、また明日考えていけばいいじゃないですか。」

そしてカルは、私を安心させるように慈しむような目を向けて優しい声音で、心に積もっていたものを溶かしていった。

「……だから、だから安心してください、ルビー様。もう大丈夫です。私がずっとお側におりますので」

『怖かったね。もう大丈夫だよ、私がずーっと一緒に居てあげる』

「っ!!」

その言葉を聞いた瞬間、幼い頃に自分が彼にかけた言葉がフラッシュバックして、涙がとめどなく溢れていった。
そして、その日はカルに慰められながら私は安心するように眠りに落ちていくのだった。
そしてカルは、眠りに落ちた私を起こさないように抱き抱えてベッドに運び、安心させるように手を握っていた。

「…ルビーお嬢様。貴方の事は、何があろうとこの命にかけてお守り致しますから」

(だからずっと笑っていてください。)

従者が願った願い事は夜の闇に紛れていく。
こうして、ルビーの王宮での生活は幕を開けたのだった。







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