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青鬼竜
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「おや、おまえ、傷はすっかり良くなったね。」
青鬼竜のバルドルが擦り寄ってくる。
「元気に走れるようで、嬉しいよ。」
ひとしきり挨拶を済ますと、竜は愉しげに散っていった。
残っているのは、ぽかんとした兵ばかりだ。
「ああ、すみません。竜の挨拶が先になってしまいました。」
シリンは花のように笑うと優美にカーテシーをする。
「シリンと申します。神殿へと騎乗する竜を選ぶように申し渡されました。よろしくお願いします。」
竜に押し付けられた顎のせいで、竜の涎が髪や体にまとわりついてベタベタしている。
でもその笑顔は、兵達の心に女神にすり替わるほど眩しかった。
「斎王様。」
聞いた事のある声がして、青年が跪く。
「あや、バルドルの騎士様ですね。」
「はい。覚えて頂き光栄です。ソールと申します。あの時はありがとうございました。」
****
「それで神殿へと通われるのに青鬼竜が。」
「はい、私は戦う訳ではありませんし、何かあった時は、逃げる方向かな、っと。」
「確かに。」
竜騎士団長は、ソールに命じる。
「青鬼竜を前に並ばせて、選んで頂け。」
青鬼竜達が綺麗に整列している。
訓練の一端が見えるようだ。
目をキラキラさせて、シリンを見上げてくる。
(可愛いなぁ。)
とりあえず、今相棒のいない仔で、三歳をこえた落ち着いた仔がのぞましいな…。
と、考えていると一頭と目が合った。
名前は?と目で問うと
『 ショロトル 』
と頭の中で声がした。
ゆっくり竜に近づいて、「 ショロトル 」と呼ぶと、その碧い目の中の虹彩がきゅっと収縮した。
「ショロトルを貸してください。」
「な、名前を!」
「ああ、自分で名乗ってくれました。」
斎王とは、そういうモノであるというのに、やはり兵は不思議そうだ。
ショロトルに騎乗帯を付ける。
初め女性用の横乗り用の鞍をつけようとするので、赤くなって抵抗した。
(次回からは、ちゃんとズボンでこよう。)
心配する兵達ににこりと笑うと、鎧に足をかけて跨る。
スカートのような神官の衣装は伸びが悪く、ちょっとピンとしたが、無事に乗れた。
手綱を取って、ショロトルの首筋を優しく叩く。
「頼むよ。お前だけが頼りだ。」
軽く走り、ダク足にしたり、回ったりと様子を見る。
ショロトルはこちらが望む通りに動いてくれる。
シリンはいつのまにか斎王としての笑を忘れ、大きく口を開けて笑っていた。
ショロトルと仲の良いバルドルがソールを乗せて横に並び、かけくらべをする。
護衛の時の感覚を養う為か、他から三頭走ってきて、ショロトルを中心に菱形になったり一列になったりする。
竜の振動がももに伝わって、命を感じてとても幸せな気持ちになった。
竜に跨ったシリンは、白銀の髪がふうわり流れ、神話そのままだった。
庭師も台所の調理師も、下働きも、放牧場の外からその姿にうっとりと見惚れていた。
青鬼竜のバルドルが擦り寄ってくる。
「元気に走れるようで、嬉しいよ。」
ひとしきり挨拶を済ますと、竜は愉しげに散っていった。
残っているのは、ぽかんとした兵ばかりだ。
「ああ、すみません。竜の挨拶が先になってしまいました。」
シリンは花のように笑うと優美にカーテシーをする。
「シリンと申します。神殿へと騎乗する竜を選ぶように申し渡されました。よろしくお願いします。」
竜に押し付けられた顎のせいで、竜の涎が髪や体にまとわりついてベタベタしている。
でもその笑顔は、兵達の心に女神にすり替わるほど眩しかった。
「斎王様。」
聞いた事のある声がして、青年が跪く。
「あや、バルドルの騎士様ですね。」
「はい。覚えて頂き光栄です。ソールと申します。あの時はありがとうございました。」
****
「それで神殿へと通われるのに青鬼竜が。」
「はい、私は戦う訳ではありませんし、何かあった時は、逃げる方向かな、っと。」
「確かに。」
竜騎士団長は、ソールに命じる。
「青鬼竜を前に並ばせて、選んで頂け。」
青鬼竜達が綺麗に整列している。
訓練の一端が見えるようだ。
目をキラキラさせて、シリンを見上げてくる。
(可愛いなぁ。)
とりあえず、今相棒のいない仔で、三歳をこえた落ち着いた仔がのぞましいな…。
と、考えていると一頭と目が合った。
名前は?と目で問うと
『 ショロトル 』
と頭の中で声がした。
ゆっくり竜に近づいて、「 ショロトル 」と呼ぶと、その碧い目の中の虹彩がきゅっと収縮した。
「ショロトルを貸してください。」
「な、名前を!」
「ああ、自分で名乗ってくれました。」
斎王とは、そういうモノであるというのに、やはり兵は不思議そうだ。
ショロトルに騎乗帯を付ける。
初め女性用の横乗り用の鞍をつけようとするので、赤くなって抵抗した。
(次回からは、ちゃんとズボンでこよう。)
心配する兵達ににこりと笑うと、鎧に足をかけて跨る。
スカートのような神官の衣装は伸びが悪く、ちょっとピンとしたが、無事に乗れた。
手綱を取って、ショロトルの首筋を優しく叩く。
「頼むよ。お前だけが頼りだ。」
軽く走り、ダク足にしたり、回ったりと様子を見る。
ショロトルはこちらが望む通りに動いてくれる。
シリンはいつのまにか斎王としての笑を忘れ、大きく口を開けて笑っていた。
ショロトルと仲の良いバルドルがソールを乗せて横に並び、かけくらべをする。
護衛の時の感覚を養う為か、他から三頭走ってきて、ショロトルを中心に菱形になったり一列になったりする。
竜の振動がももに伝わって、命を感じてとても幸せな気持ちになった。
竜に跨ったシリンは、白銀の髪がふうわり流れ、神話そのままだった。
庭師も台所の調理師も、下働きも、放牧場の外からその姿にうっとりと見惚れていた。
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