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翼竜 よんじゃいました
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早朝、禊と祈りを済ませて、シリンは竜の放牧場に向かう。
ラグナロワはすでに待っていた。
初め、ワタワタと挨拶に来ていた竜達は、何故か端に固まってこちらに来ない。
人は近づくなと言われているので、柵の外に鈴鳴りになっている。
嫌におとなしい竜をじっと見ている時、ラグナロワは耳に違和感を感じた。
痛い? いや、違う。
何か、圧迫感が。
戦士としてのカンで周りを素早く伺うと、はっと気がついた。
風が無い。
音が無い。
防音とは違う。
この場から、動きが全て消え失せ、キンとした無音が耳に痛い。
と、空の向こうから気配がする。
ばっと振り仰ぐと、遥か向こうに小さな点がある。
それがみるみる大きくなる。
あれは…竜だ!
端に固まった赤鬼竜と青鬼竜が、一斉に上をむいてヴオォォォ… と声を上げる。
それに驚いた人々が、上空に気が付いて指差した。
竜が飛んでくる。
巨大な体が十字型を描いて近づいて来る。
いた!
本当にいた!
翼竜がいた!
心の底からの感動に、はっと気がつくとラグナロワの目から涙が落ちていた。
神話の竜が此処にくる。
****
風で撒き散らされた石や砂埃の中に、竜はその大きな体のわりにふんわりと降り立った。
皮膜に覆われた翼をたたむ。
輿車竜より少し小型なのに、頭が大きい。
青銅色の体がキラキラ光っている。
走り寄ったシリンが手を伸ばすと、竜はくさび形の頭をさげた。
金と緑にキラキラ輝く大きな複眼にシリンの笑顔が映っている。その複眼のまわりを掻きながら、
シリンは声をかける。
「コンゴウ、あえて嬉しいよ。」
巨大な竜も喉の奥でクルクル音を立てている。
すでに騎乗帯も着けられていた。
「あ。」思い出したように手を止めてラグナロワを振り返る。
「王、これはコンゴウと言います。」
「そうか、美しい竜だな。」
「コンゴウ、こちらはラグナロワ王だ。
一緒に乗せておくれ。」
翼竜は二人の間に割って入り、翼を邪魔にならないように回して、左の膝をかがめた。
シリンは差し出された脚の上にひょいと足をかけ、騎乗帯に跨った。
手を出してラグナロワを後ろに乗せる。
遠巻きに見守る人々を振り返ると、シリンは通る声で挨拶をする。
声の出ない人々にてを振ると、王に振り返る。
「さあ、参ります。」
ラグナロワはすでに待っていた。
初め、ワタワタと挨拶に来ていた竜達は、何故か端に固まってこちらに来ない。
人は近づくなと言われているので、柵の外に鈴鳴りになっている。
嫌におとなしい竜をじっと見ている時、ラグナロワは耳に違和感を感じた。
痛い? いや、違う。
何か、圧迫感が。
戦士としてのカンで周りを素早く伺うと、はっと気がついた。
風が無い。
音が無い。
防音とは違う。
この場から、動きが全て消え失せ、キンとした無音が耳に痛い。
と、空の向こうから気配がする。
ばっと振り仰ぐと、遥か向こうに小さな点がある。
それがみるみる大きくなる。
あれは…竜だ!
端に固まった赤鬼竜と青鬼竜が、一斉に上をむいてヴオォォォ… と声を上げる。
それに驚いた人々が、上空に気が付いて指差した。
竜が飛んでくる。
巨大な体が十字型を描いて近づいて来る。
いた!
本当にいた!
翼竜がいた!
心の底からの感動に、はっと気がつくとラグナロワの目から涙が落ちていた。
神話の竜が此処にくる。
****
風で撒き散らされた石や砂埃の中に、竜はその大きな体のわりにふんわりと降り立った。
皮膜に覆われた翼をたたむ。
輿車竜より少し小型なのに、頭が大きい。
青銅色の体がキラキラ光っている。
走り寄ったシリンが手を伸ばすと、竜はくさび形の頭をさげた。
金と緑にキラキラ輝く大きな複眼にシリンの笑顔が映っている。その複眼のまわりを掻きながら、
シリンは声をかける。
「コンゴウ、あえて嬉しいよ。」
巨大な竜も喉の奥でクルクル音を立てている。
すでに騎乗帯も着けられていた。
「あ。」思い出したように手を止めてラグナロワを振り返る。
「王、これはコンゴウと言います。」
「そうか、美しい竜だな。」
「コンゴウ、こちらはラグナロワ王だ。
一緒に乗せておくれ。」
翼竜は二人の間に割って入り、翼を邪魔にならないように回して、左の膝をかがめた。
シリンは差し出された脚の上にひょいと足をかけ、騎乗帯に跨った。
手を出してラグナロワを後ろに乗せる。
遠巻きに見守る人々を振り返ると、シリンは通る声で挨拶をする。
声の出ない人々にてを振ると、王に振り返る。
「さあ、参ります。」
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