恋するじゃがいもと、先輩とボケナス

たまとら

文字の大きさ
15 / 15
学園生活

12 行事のススメ

しおりを挟む
シグルド先輩は取り囲まれている。
いつもと違うのは、おっさんおばさんが群がっていることだ。

今日から学園の行事がある。
新入生が慣れてから歓迎の祭りとして学園を解放している。
解放なので近隣住民や未就学児も、貴族平民問わずにやって来る。
勿論、保護者も押し寄せる。
そんな訳でヴィンターベルク公爵家の若様に我が子を売り込もうと、親達は目の色を変えていた。


この祭りは2年になって選択する学科をアピールするのが目的だ。
興味を持って入科して欲しいと体験したりして宣伝している。

魔導師科は回路を描いて作った魔道具を展示したり、参加者に簡単な手元灯を作らせたりしている。ほかには魔導紙で陣を書いて空調を上げ下げしたり薬草で薬を錬成したりしている。
専門学科では領地経営の法律手続きのノウハウや地図を等高線で立体にする魔法を見せていた。
恒例となった騎士科の集団行動の美しさは、令嬢達がため息さえ忘れて見入っている。

オープン初日から学園中がキラキラワクワクで大賑わいだった。


ルインは取り囲まれるシグルド先輩をうっとり見ていた。
なんで同じデザインの制服集団なのに、すぐ見つけられちゃうんだろう。
やばい。カッコいいし。
恋というフィルターを通さなくても、カラスの群れの中に降臨してる神みたいなオーラありまくりじゃん。

グッと力任せに握ったせいで、パンフはぐちゃぐちゃになった。

祭りは3日ある。
一番盛り上がるのは最終日で、驚く仕掛けもてんこ盛りだ。
しかも各学科ともゲストを呼んで、それを目当てに人がくる。


こんな初日に来園者を捌くシグルド先輩を探してた訳。
それは騎士科のゲストのせいだ。

何度も言うが、ルインはアルヴィン辺境伯家の末っ子だ。
森から国を護る緩衝として領地がある。アルヴィン家は強い。
アイゼルロイツ王国の中でも抜きん出た、武による武の為の家だ。
アルヴィン家はだいたい王立学園卒業と共に騎士団とか魔法師団とかの国防の要となっていく。
それでも最終的に森から湧き出る魔獣を物理的に何とかする為と帰っていくのは、単に他では熱く沸る闘魂の捌け口がないせいだ。

つまりアルヴィン家は自他共に認める戦闘民族な訳で。
男女問わず熱い視線のファンがいる
つまり騎士科のゲストと指名されるのに何の不思議も無いわけだ。

ただその名が次兄のランバとなるとルインは頭を抱えるしかなかった。
父も長兄も三男のウルク兄ならば何とか誤魔化す自信があった。
だがランバ兄は無理なのだ。


ルインは学園でのびのびやりたい放題するために、ぬるっとおつきを躱して五月蝿い王都の屋敷にも寄らずにとっとと学園に来た。
つまりガッツリ叱られる案件だ。
"ごめんなさい"としょぼんのくっすんで脳味噌に筋肉が直結している父様達はコロっといく。
でもランバ兄は違う。
父様の様な筋肉なのに母様の様に理路整然とした脳味噌なのだ。
ツンとした氷の剣士と呼ばれる兄様は、けして感情論では誤魔化されないのだ。その上説教はとてつもなく長い。
楽しい学園生活のためにその説教を躱すことが、今の重大目標だ。


ぐん!と気合いを入れる。
三つ編みがくいんと上がった。

やるっ‼︎
説教を逃れる為に僕はやる!
細工は流流、後は結果を御覧じろだ‼︎

百面相で表情筋を緩ませてから
ルインは歩き出した。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

虐げられた令息の第二の人生はスローライフ

りまり
BL
 僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。  僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。  だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。  救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。  お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。        

大事な呼び名

夕月ねむ
BL
異世界に転移したらしいのだが俺には記憶がない。おまけに外見が変わった可能性があるという。身元は分からないし身内はいないし、本名すら判明していない状態。それでも俺はどうにか生活できていた。国の支援で学校に入学できたし、親切なクラスメイトもいる。ちょっと、強引なやつだけどな。 ※FANBOXからの転載です ※他サイトにも投稿しています

イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺

ユッキー
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。  大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

僕の幸せは

春夏
BL
【完結しました】 【エールいただきました。ありがとうございます】 【たくさんの“いいね”ありがとうございます】 【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】 恋人に捨てられた悠の心情。 話は別れから始まります。全編が悠の視点です。

処理中です...