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パルスと辺境
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『お願いします』
そう言って美しい礼をとった後、パルスはこてりと横倒しになった。
えっえっえっ!
と、焦るライサンダーは、涙以外の水分が絨毯に染みていくのを見た。
慌てて抱き上げると血がびしゃりと溢れた。
さっき、ぎゅっと掴まれた時の傷だ。
入り口が小さくて血が噴き出なかったが深い。
すぐに館の主と医師を呼んだ。
体が小さくて良かった。
首筋を鷲掴むするつもりでにぎり。
でも小さかったので、剣の柄のように…いや、ひょっとしてカテラリーぐらいか。
そうやって小さな体だったから掌にすっぽりと収まって、致命傷にならなかったのだろう。
~~あの王が処分と言明したからには、周りの親衛隊が出しゃばってくる。
幸いなのか、こんなに流れた血がある。
館の主にそれっぽい子猫の死体を調達するように頼んで、ライサンダーは直ぐに馬に乗った。
幸い子猫だ。
スリングにした布を自分に巻き付けて固定する。
「しかし、これから熱が出ますよ。」
「爪先が肺ギリギリだったのです!」
「無理をしたら悪化します!」
医師と主が難色を示したが、余裕は無い。
「俺が力を少しずつ渡しながら行くから。わかってるだろう、時間が無い。見つかって反逆を疑われたら皆殺しだぞ!」
熱と薬で意識を失って、ぐんにゃりしている子猫をそっと撫でる。
そうやってライサンダーは出発した。
馬は護衛も入れて六頭。
全てが自領の者だ。
王の探索の補助として騎士団に同行していた。
王への恭順を見せる為に、隣の領地くらいなら度々同行していた。
実績は築いている。
今まではハズレだった。
今回は当たりだ。
この命を助けられた。
同行して良かった。
ライサンダーの領地は辺境だ。
この戦闘力の高い獣人の国からで、さらに辺境という、腕一本の能力主義の集団だ。
途中の宿場で馬を休ませ、破竹の勢いでシーシュスに向かった。
医師の指示通りに包帯を変え、薬を飲ませる。
同行のおやぢ兵達も、孫を見るようにハラハラと見守っている。
はぁはぁと速い息は熱く。
出来るだけ水分を摂らせる。
時々シルフィと呼んでるのが聞こえる。
そうやってシーシュスに帰って来た。
「父上!」
犬っころのようにメテオが走って来た。
馬から降りるとはふはふと飛びついてくる。
「良い子にしてたか。」
わしわしと頭を捏ねると、メテオはもちろんだよー! と笑った。
尻尾がぶんぶんと振られている。
腹にぶら下げたスリングと、薬の匂いに鼻に皺を寄せて?と見上げる。
ふさふさした尻尾が、心配そうに下へ降りた。
ライサンダーはそっと布をめくった。
「パルスという。おまえより小さい。可愛がってくれ。」
メテオはその包帯に覆われたく黒い子猫を、びっくりした目で見つめた。」
そう言って美しい礼をとった後、パルスはこてりと横倒しになった。
えっえっえっ!
と、焦るライサンダーは、涙以外の水分が絨毯に染みていくのを見た。
慌てて抱き上げると血がびしゃりと溢れた。
さっき、ぎゅっと掴まれた時の傷だ。
入り口が小さくて血が噴き出なかったが深い。
すぐに館の主と医師を呼んだ。
体が小さくて良かった。
首筋を鷲掴むするつもりでにぎり。
でも小さかったので、剣の柄のように…いや、ひょっとしてカテラリーぐらいか。
そうやって小さな体だったから掌にすっぽりと収まって、致命傷にならなかったのだろう。
~~あの王が処分と言明したからには、周りの親衛隊が出しゃばってくる。
幸いなのか、こんなに流れた血がある。
館の主にそれっぽい子猫の死体を調達するように頼んで、ライサンダーは直ぐに馬に乗った。
幸い子猫だ。
スリングにした布を自分に巻き付けて固定する。
「しかし、これから熱が出ますよ。」
「爪先が肺ギリギリだったのです!」
「無理をしたら悪化します!」
医師と主が難色を示したが、余裕は無い。
「俺が力を少しずつ渡しながら行くから。わかってるだろう、時間が無い。見つかって反逆を疑われたら皆殺しだぞ!」
熱と薬で意識を失って、ぐんにゃりしている子猫をそっと撫でる。
そうやってライサンダーは出発した。
馬は護衛も入れて六頭。
全てが自領の者だ。
王の探索の補助として騎士団に同行していた。
王への恭順を見せる為に、隣の領地くらいなら度々同行していた。
実績は築いている。
今まではハズレだった。
今回は当たりだ。
この命を助けられた。
同行して良かった。
ライサンダーの領地は辺境だ。
この戦闘力の高い獣人の国からで、さらに辺境という、腕一本の能力主義の集団だ。
途中の宿場で馬を休ませ、破竹の勢いでシーシュスに向かった。
医師の指示通りに包帯を変え、薬を飲ませる。
同行のおやぢ兵達も、孫を見るようにハラハラと見守っている。
はぁはぁと速い息は熱く。
出来るだけ水分を摂らせる。
時々シルフィと呼んでるのが聞こえる。
そうやってシーシュスに帰って来た。
「父上!」
犬っころのようにメテオが走って来た。
馬から降りるとはふはふと飛びついてくる。
「良い子にしてたか。」
わしわしと頭を捏ねると、メテオはもちろんだよー! と笑った。
尻尾がぶんぶんと振られている。
腹にぶら下げたスリングと、薬の匂いに鼻に皺を寄せて?と見上げる。
ふさふさした尻尾が、心配そうに下へ降りた。
ライサンダーはそっと布をめくった。
「パルスという。おまえより小さい。可愛がってくれ。」
メテオはその包帯に覆われたく黒い子猫を、びっくりした目で見つめた。」
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