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終結に向けて
74 タロの誘惑
セバスティンは子供を押し除けると、すかさずサフィアの前で振り向いた。
自分の身体を盾として、子供と向き合う。
そのまま全身全霊を込めた威圧を放った。
子供ータロは黒曜石のような目をキラキラさせて見返す。
「良かったぁ。一か八かの賭けだったんだぁ。
ほら、女っていろいろ難しいじゃない。」
セバスティンの威圧を気にも留めず、タロは笑った。
「もう、時間が無かったからどうしようと思ってたんだ。これがダメならまた人形かなぁって。」
切れ長な一重の目が、セバスティンをひたりと見据える。
その目の中には見た事も無いものがあって、背筋をぞくりと駆け上がった。
手が、手が動かせ無い。
声も、声も出せない。
タロの目に絡め取られたまま、セバスティンはサフィアを背に立ち尽くしていた。
タロは口元を笑で貼り付けたまま近寄ってくる。
そのつるりとした頬に、小さなヒビが走った。
「もう。凄い空間魔法と結界魔法だったよぉ。場所の特定に凄く時間が掛かっちゃった。結界破るのも、余計な魔物や人間を呼ばない様にするのに、凄く力を使っちゃったんだから。もう、ギリギリさぁ。」
タロの目は笑っていない。
頬の亀裂が生き物のように広がっていく。それが剥がれると、ぱらりと白い粉になって溢れた。
「ああ、本当にレリアにそっくり。
しかも劣化を防ぐ魔法も掛けてくれてたんだね。その体、若いままじゃないかぁ。
それなら望み通り使えるね。」
近寄る足首が、ぴしりと弾けた。
ズボンから白い粉が散っていく。
靴が片方残されて、体が傾いてタロの視線が逸れた。
「防護だっ!」
絡んだ視線が逸れて自由になったセバスティンは人形に叫ぶとサフィアを抱き抱えて走る。
湧いたように集まる人形がタロへと取り付く。
指も足もひび割れていくタロはさらに小さくなって、人形の塊の中に呑み込まれていく。と、思ったが
「どけよぉ!」
叫びで人形が吹き飛んだ。
足を引き摺りながらタロはサフィアに向かう。
「そのボディ、凄く良いよ。嬉しい。」
セバスティンの風と火を練り上げた攻撃は、タロの一振りで弾かれた。
それが天井に当たってメキメキと空へと巻き上がって行く。
タロの目がセバスティンを捉えた。
チカチカと瞳の中に光が踊る。
ソファが、テーブルが、花瓶がぐらりと浮き上がると部屋の中をぐるぐると踊り始めた。
その回転が速くなり、風を孕んで竜巻のようにぐるぐると壁を作る。
サフィアとセバスティンとタロ。
三人を閉じ込めて、竜巻の風が部屋を蹂躙していく。
がつがつと壁に当たる音。
轟轟と風が走り回る音。
その中でセバスティンは再び炎を放った。
タロの髪に火が移る。
メキメキと音を立てて全身に火が上がる。
たいまつになって、タロはあはははは、と大声で笑った。
楽しい。
面白い。
人の慌てて必死な姿は本当に愉快だ。
指の溶け落ちて丸い手で、炎を竜巻の壁に叩き付ける。
べきべきと音を立てて閃光が風の中で弾けて、天井に開いた穴へと炎が渦巻いて立ち昇る。
片手で薙ぎ払うとセバスティンの体がおもちゃのように弾かれて、渦巻きの中にぐちゅぐちゅと巻き込まれていく。
炎と風が屋敷を軋ませて、巻いた風から柱や屋根が降り注いだ。
ごずん。
がしゅ。
めきっ。
焦げ臭い中に、重い落下音が振動している。
大丈夫。
君に当てたりはしないよ。
せっかく綺麗なのに、傷付けたりしないよ。
タロはにこやかに笑う。
「こんにちは。よろしくね。」
タロの目は愛おしそうに、サフィアを捉えた。
自分の身体を盾として、子供と向き合う。
そのまま全身全霊を込めた威圧を放った。
子供ータロは黒曜石のような目をキラキラさせて見返す。
「良かったぁ。一か八かの賭けだったんだぁ。
ほら、女っていろいろ難しいじゃない。」
セバスティンの威圧を気にも留めず、タロは笑った。
「もう、時間が無かったからどうしようと思ってたんだ。これがダメならまた人形かなぁって。」
切れ長な一重の目が、セバスティンをひたりと見据える。
その目の中には見た事も無いものがあって、背筋をぞくりと駆け上がった。
手が、手が動かせ無い。
声も、声も出せない。
タロの目に絡め取られたまま、セバスティンはサフィアを背に立ち尽くしていた。
タロは口元を笑で貼り付けたまま近寄ってくる。
そのつるりとした頬に、小さなヒビが走った。
「もう。凄い空間魔法と結界魔法だったよぉ。場所の特定に凄く時間が掛かっちゃった。結界破るのも、余計な魔物や人間を呼ばない様にするのに、凄く力を使っちゃったんだから。もう、ギリギリさぁ。」
タロの目は笑っていない。
頬の亀裂が生き物のように広がっていく。それが剥がれると、ぱらりと白い粉になって溢れた。
「ああ、本当にレリアにそっくり。
しかも劣化を防ぐ魔法も掛けてくれてたんだね。その体、若いままじゃないかぁ。
それなら望み通り使えるね。」
近寄る足首が、ぴしりと弾けた。
ズボンから白い粉が散っていく。
靴が片方残されて、体が傾いてタロの視線が逸れた。
「防護だっ!」
絡んだ視線が逸れて自由になったセバスティンは人形に叫ぶとサフィアを抱き抱えて走る。
湧いたように集まる人形がタロへと取り付く。
指も足もひび割れていくタロはさらに小さくなって、人形の塊の中に呑み込まれていく。と、思ったが
「どけよぉ!」
叫びで人形が吹き飛んだ。
足を引き摺りながらタロはサフィアに向かう。
「そのボディ、凄く良いよ。嬉しい。」
セバスティンの風と火を練り上げた攻撃は、タロの一振りで弾かれた。
それが天井に当たってメキメキと空へと巻き上がって行く。
タロの目がセバスティンを捉えた。
チカチカと瞳の中に光が踊る。
ソファが、テーブルが、花瓶がぐらりと浮き上がると部屋の中をぐるぐると踊り始めた。
その回転が速くなり、風を孕んで竜巻のようにぐるぐると壁を作る。
サフィアとセバスティンとタロ。
三人を閉じ込めて、竜巻の風が部屋を蹂躙していく。
がつがつと壁に当たる音。
轟轟と風が走り回る音。
その中でセバスティンは再び炎を放った。
タロの髪に火が移る。
メキメキと音を立てて全身に火が上がる。
たいまつになって、タロはあはははは、と大声で笑った。
楽しい。
面白い。
人の慌てて必死な姿は本当に愉快だ。
指の溶け落ちて丸い手で、炎を竜巻の壁に叩き付ける。
べきべきと音を立てて閃光が風の中で弾けて、天井に開いた穴へと炎が渦巻いて立ち昇る。
片手で薙ぎ払うとセバスティンの体がおもちゃのように弾かれて、渦巻きの中にぐちゅぐちゅと巻き込まれていく。
炎と風が屋敷を軋ませて、巻いた風から柱や屋根が降り注いだ。
ごずん。
がしゅ。
めきっ。
焦げ臭い中に、重い落下音が振動している。
大丈夫。
君に当てたりはしないよ。
せっかく綺麗なのに、傷付けたりしないよ。
タロはにこやかに笑う。
「こんにちは。よろしくね。」
タロの目は愛おしそうに、サフィアを捉えた。
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