ざまぁされた悪役令嬢の息子は、やっぱりざまぁに巻き込まれる

たまとら

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終結に向けて

83 タロ

タロにとって人は駒だった。
退屈を紛らわす、可愛い生物だった。

よそ見をしていると国も人も直ぐ消えてしまったりする。
人の根底は、どれだけ時代が変わっても同じ。

ちょっと力を見せると擦り寄ってくる。
魔術師や錬金術師などは、遥か昔に禁術となった陣をちらりと見せれば、すぐに足元に跪いた。

たまに閨で楽しませてやれば、もう自分の駒になっていく。

戦わせ。
助けさせ。
反抗させる。

でも、そんな遊びは直ぐ飽きてしまった。
自分の知りたいものがもう無くなってしまって、タロは退屈に身を焦がしていた。

そんな時だ。
サモエドに会ったのは。

目新しい自動人形の造り方。
その手腕に心がドキドキと昂った。

こんな感じ久しぶり。

サモエドは、独特な錬成陣を見せつけてくる。
知らない知識に、目前が一気に明るくなった。

楽しい!


~サモエドは閨の誘いを断った。

でも見せつけた禁術に釘付けだ。

うん、術師にとって知らない知識は麻薬の様なものだ。
もう、サモエドの心はじわじわと私のモノになっていく。欲が染めあげていく。

そうして思うがままの駒になったら。
いつものように彼の知識を絞り出し、楽しもう。
飽きたら廃棄すれば良い。

でも。
今までに無いくらい気に入ったから、ファーヴの魔石を手に入れさせた。
彼の陣は独特だ。
凄く興味ある。

この魔石を研究すると、賢者の石に辿り着く。
その誘惑に抗える人間などいない。
自分の仲間を作ったら、退屈な時間も無くなるかも知れない。
それも良いなぁ、と、そう思ってた。



「くそくらえだ。」


そんな。
そんな筈は無い。

私の知識を欲しがらない筈は無い。

私がこんなちっぽけな人形になって消されるなんて、ありえない。


「おまえは長く生き過ぎたんだな。
寿命が無い事で、人としての尊厳まで失くしたんだな。
因果応報だよ。
やった事はいつか自分に返ってくるんだ。」


馬鹿な。

この私が、そんなちっぽけな物差しで測れるものか‼︎

怒りで反論しようとしたが、言葉はぐるぐると頭を巡っているうちに、ぽつりぽつりと雨垂れのように抜けていく。


だめだ‼︎

思考がまとまらない!

タロは必死に崩落を食い止めようとした。

だがこの人形の容量は小さ過ぎて、端からの消滅が止められない。


昔、人間だった時。
賢者の石を錬成した時。
錬金陣で古い体から新しいものに替えた時。
人の心を操って反乱を興した時。

……あぁ、薄れていく。

昔。
昔の名前。

思い出せない。


抜けていく記憶は、夢の様にゆらゆらと瞬いて、その意味さえわからなくなる。
ああ、砂漠の蜃気楼みたいだ…



「セバスティンは元には戻れない。
おまえはやってはいけない事をしたんだ。」

サモエドは喉の奥で笑った。

「あのファーヴの魔石で人間と人形を混ぜてみるよ。
新しい錬成を造って見せるさ。」

新しイ、…レン…セ、イ…

一瞬、自動人形の目がキラリと光った。

「その方法がか?」

サモエドは人形を覗き込む。
そして、ふわりと優しく笑った。


「うん。もうには興味無いか。」



複雑な言葉がどんどん崩れていく。



いやだ。

なぜ。

その単語だけが、頭の中で回っている。
その単語が万華鏡のようにちかちかと踊ってる。
自動人形はがくがくと震えた。


いや…だ…

い…や…

…や …


許容範囲を超えた意識がスパークして、人形はフィードアウトした。



サモエドの目の前に、力の抜けた人形が転がる。


るるるる…

小さな音が、聞こえた。

しばらくして、人形の再起動が始まる。



自動人形は、目の前の人間に目を向けた。

その目は無垢で純粋な信頼がこもっている。
生まれたばかりの人形に、サモエドはにこりと笑った。


「タロ。それがおまえの名前だ。」

主の言葉に、人形は頷いた。



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