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召喚されました。

2遺されたレン

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ニャウムは子犬が戯れるような双子を見つめた。
明日ハナ様は番の領地へと旅立つ。
二人がその事に何のわだかまりも無さそうで
ニャウムは怒りと哀しみと、ほんのちょっとの肩透かしの入り混じった気持ちで見つめていた。

レン様とハナ様が『召喚の儀』でこの世界に来たのは二か月前だ。
"異世界に生まれてしまった番を招く"という『召喚の儀』でやって来た。
つまり、この世界にレン様の番はいたという事だ。
だのにお披露目の会が終わっても、レン様の番は現れなかった。
今までの儀で番が来なかった事は無い。
歴史上初めての出来事に、王宮も神殿も上へ下への大騒ぎだった。

番が現れないことは幾つか考えられる。
下半身の緩い奴で、熱いパトスを抑えきれずに手近な誰かと番契約を結んだ、とか。
(もしソレなら、あとちょっとで異世界の王国推薦の超超優良な番を手に入れられたのに!と、家族どころか領民も果ては国中から白い眼で見られる事間違い無しだから、絶対名乗りではしないだろう。)

あと…死んだとか。死んだとか、死んだとか。
(そうなら、どれだけ良いだろうか)

レン様の青銀色のメッシュが、黒髪の中で陽に当たってふんわりと後光をさしてるように見える。
ハナ様を見る目は慈愛に満ちた母のようだ。
その左目は藍色で、奥に銀色の煌めきがまたたいている。
ハナ様は黒曜石の様な眼でレン様を見上げている。
互いを思い遣る双子。なんて尊いんだろう。

ニャウムは見えないところでぎゅっと拳を握った。
本当に、死んでいればいいのに。

レン様にこれほどの屈辱と恥辱を与えたその番野郎。
死ねばいいのに。
どいつなのか分かったら、蹴り飛ばしてやりたい。

ソレはただの八つ当たりなのは分かってる。

ニャウムが本当に殴りたいのはサンドロ様だ。
ハナ様の番になられたサンドロ様だ。

レン様がサンドロ様に殴られたのはお披露目会だった。
レン様は死にかけて。
外見も魔力の質も匂いも変わってしまった。

以前の黒目黒髪のレン様を目指していた番なら、いきなり消滅したその気配にパニックになったかもしれない。
そう考えるとそいつもまた被害者といえるだろうけど…

それでも名乗り出て、瀕死のレン様に寄り添う事は出来たはずだと思うから納得出来ない。
どうにも飲み込めないのだ。



レン様は「幸せになれよ」とハナ様に言う。
自分の運命をぶち壊した相手に嫁ぐというのに
「嫌な事は我慢するな。なんなら俺を呼べ。絶対助けに行くから」

~~レン様って可愛い見た目なのに、なんて漢前なのかしら。

いきなりこの世界に召喚されて。
さらに自分の運命を壊した奴にハナ様を託そうとするなんて。
なんて広いお心なのかしら。
神々しくて目眩がしそうだわ。

「いや、俺、了見狭いから。そいつの事許す気無いから。だから顔も合わせて無いから。
でもハナを本気で幸せにしたいと思ってるんなら、託せると思った。」

だから、それって器がデカいというんだよ…。

ニャウムは部屋の入り口に立っている護衛を見た。
赤銅色の髪の美丈夫。
イケメンなのに眉を下げて情け無さそうに項垂れている。
あのサンドロ様によく似ている。
まぁ、従兄弟だしね。

サンドロ様への懲罰を軽くする為か、このジャダはレン様の護衛を申し出た。

レン様を守るのよ。
おかしな事したら潰すからね。

ニャウムは圧を込めた視線でジャダを舐め上げた。
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