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番は特別らしい
8 レンの変身事情
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目が覚めた。
その途端いきなり健康チェックや水分補給と、人がバタバタ走り回る。
その渦の真ん中で、レンはぼんやりとそれを見ていた。
何がなんだかわからない。
ここが何処で、何故自分がこんな世話をされているのかわからない。
ただハナがぶるぶるしていた。
青褪めて、でも鼻は真っ赤で、涙製造器になってる目は腫れている。
いつもサラサラな髪はぐちゃぐちゃで、いやぁブスだぞって言いたかった。
「良かったぁ…」掠れた声は溜め息みたいで。
あ?俺、なんかしたのか?って思った。
合格判定されてソファでお茶を飲んでたら
慌ててやって来たカールさんが頬をプルプルしながら真面目な顔で
「申し訳ございませんでしたぁ‼︎」と90°のお辞儀をした。
自分よりデカい男の頭頂部が目前に晒される。
豊かなほっぺがその髪の塊の両横にふるんと覗いて、レンは口がへにょっとなった。
いや、俺、白い閃光しか覚えてないし…
レンはハナの番という男に、殴り飛ばされて落ちたらしい。
そしてそのまま一週間も寝てたらしい。
既にお披露目会は終了してて、他の人はお大事にと旅立ったらしいのだが
いや。全く覚えてないし。
でも一撃で落ちたのか…
不甲斐ないぞ日本男子‼︎とレンはがっくり思った。
でもこっちの人はデカくてなんか狩猟民族で肉食います!って感じだし。
米をひたすら育ててきた日本人とは、もう体の構造からして違う気がする。
それよりもその男のパワーだ!
たった一撃で顎が砕けて頬骨が折れて目玉が潰れて…
うわぁ、スプラッタ系だぁ!
でも今、痛みも違和感も無いけれど。
なんか治癒魔法をありったけ使ったらしい。
お披露目会の王宮では、擦り傷や回復魔法(♡♡の)程度しか必要なくて。
上級や中級の治療師は緊急討伐に駆り出されていて、初級だけが在駐してたらしい。
とりあえず治そうと初級治療師を神殿からも、質より量でありったけ召集したらしいけど。レンはりっぱに生死の境をふらふら行き来してたそうで…
「初級では眼球修復までは出来ませんしね、
上級が来るまでと欠損部位を魔石の力で覆っておりましたら…」
何故か魔石が染みて溶け込んで身体に吸収されてしまった。
おかげで傷も欠損も塞がったのだけれど。
ニャウムさんがそっと手鏡を差し出した。
カールさんが申し訳無さそうに眉を下げる。
ハナが胸の前で両手を揉みしだいて、意味ありげにこっちを見てる。
そして鏡を見て、レンはぽかんと口を開けた。
周りはレンの狂乱を鎮める為に息を潜めて待機してる。
ああ、なんという事でしょう。
そこには見慣れない顔が、こっちを見返しておりました。
割と丸いどんぐりの様な、精悍さの無かった目だったのに。
片方の目の色は夜空のような藍色に変わっていた。
しかもその中に銀粉が散って、ミルキーウェイのような光が煌めいている。
ふわんと猫っ毛だった髪はシルバーなポイントメッシュが入って、それが後光のように光っている。
キューティクルによる天使の輪というよりも、これはまさしくオーラの光だ。
そう"影のある主人公"のようにババンと
輝くオーラを纏わせた顔が、こっちを見ていた。
周りの人達は固唾を飲んでいる。
レンの動向に息さえ止めて見守っている。
それこそ悲鳴をあげたらと、構えている。
甘い。
レンはそのままを受け入れる事ができる男だ。
そこしか選択肢が無ければ楽しみに変える事さえできる。
幼い頃からハナを鼓舞して過ごす事で、それを極めた男だった。
唇の端をクイっとあげたら、なんか訳ありでシニカルな顔がこっちを見てる。
「いいじゃん。」
いや、これだよ。
異世界ってこれだよ。
チートもハーレムも無いなら、ちょっとくらい特別感が欲しいよね。
うんうん。
なんかやっと"異世界キター‼︎"って思えるぞー
うきうきとやけるレンに、心配していた周りはほっとした後で確実に引いていた。
ずびずびと鼻を啜っていたハナがくふっと笑った。
「レンちゃん。"左眼が疼くぜ"なんて言っても無視だからね」
泣いて腫れぼったい目のまま、笑顔をみせるハナにレンはほっとした。
その途端いきなり健康チェックや水分補給と、人がバタバタ走り回る。
その渦の真ん中で、レンはぼんやりとそれを見ていた。
何がなんだかわからない。
ここが何処で、何故自分がこんな世話をされているのかわからない。
ただハナがぶるぶるしていた。
青褪めて、でも鼻は真っ赤で、涙製造器になってる目は腫れている。
いつもサラサラな髪はぐちゃぐちゃで、いやぁブスだぞって言いたかった。
「良かったぁ…」掠れた声は溜め息みたいで。
あ?俺、なんかしたのか?って思った。
合格判定されてソファでお茶を飲んでたら
慌ててやって来たカールさんが頬をプルプルしながら真面目な顔で
「申し訳ございませんでしたぁ‼︎」と90°のお辞儀をした。
自分よりデカい男の頭頂部が目前に晒される。
豊かなほっぺがその髪の塊の両横にふるんと覗いて、レンは口がへにょっとなった。
いや、俺、白い閃光しか覚えてないし…
レンはハナの番という男に、殴り飛ばされて落ちたらしい。
そしてそのまま一週間も寝てたらしい。
既にお披露目会は終了してて、他の人はお大事にと旅立ったらしいのだが
いや。全く覚えてないし。
でも一撃で落ちたのか…
不甲斐ないぞ日本男子‼︎とレンはがっくり思った。
でもこっちの人はデカくてなんか狩猟民族で肉食います!って感じだし。
米をひたすら育ててきた日本人とは、もう体の構造からして違う気がする。
それよりもその男のパワーだ!
たった一撃で顎が砕けて頬骨が折れて目玉が潰れて…
うわぁ、スプラッタ系だぁ!
でも今、痛みも違和感も無いけれど。
なんか治癒魔法をありったけ使ったらしい。
お披露目会の王宮では、擦り傷や回復魔法(♡♡の)程度しか必要なくて。
上級や中級の治療師は緊急討伐に駆り出されていて、初級だけが在駐してたらしい。
とりあえず治そうと初級治療師を神殿からも、質より量でありったけ召集したらしいけど。レンはりっぱに生死の境をふらふら行き来してたそうで…
「初級では眼球修復までは出来ませんしね、
上級が来るまでと欠損部位を魔石の力で覆っておりましたら…」
何故か魔石が染みて溶け込んで身体に吸収されてしまった。
おかげで傷も欠損も塞がったのだけれど。
ニャウムさんがそっと手鏡を差し出した。
カールさんが申し訳無さそうに眉を下げる。
ハナが胸の前で両手を揉みしだいて、意味ありげにこっちを見てる。
そして鏡を見て、レンはぽかんと口を開けた。
周りはレンの狂乱を鎮める為に息を潜めて待機してる。
ああ、なんという事でしょう。
そこには見慣れない顔が、こっちを見返しておりました。
割と丸いどんぐりの様な、精悍さの無かった目だったのに。
片方の目の色は夜空のような藍色に変わっていた。
しかもその中に銀粉が散って、ミルキーウェイのような光が煌めいている。
ふわんと猫っ毛だった髪はシルバーなポイントメッシュが入って、それが後光のように光っている。
キューティクルによる天使の輪というよりも、これはまさしくオーラの光だ。
そう"影のある主人公"のようにババンと
輝くオーラを纏わせた顔が、こっちを見ていた。
周りの人達は固唾を飲んでいる。
レンの動向に息さえ止めて見守っている。
それこそ悲鳴をあげたらと、構えている。
甘い。
レンはそのままを受け入れる事ができる男だ。
そこしか選択肢が無ければ楽しみに変える事さえできる。
幼い頃からハナを鼓舞して過ごす事で、それを極めた男だった。
唇の端をクイっとあげたら、なんか訳ありでシニカルな顔がこっちを見てる。
「いいじゃん。」
いや、これだよ。
異世界ってこれだよ。
チートもハーレムも無いなら、ちょっとくらい特別感が欲しいよね。
うんうん。
なんかやっと"異世界キター‼︎"って思えるぞー
うきうきとやけるレンに、心配していた周りはほっとした後で確実に引いていた。
ずびずびと鼻を啜っていたハナがくふっと笑った。
「レンちゃん。"左眼が疼くぜ"なんて言っても無視だからね」
泣いて腫れぼったい目のまま、笑顔をみせるハナにレンはほっとした。
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