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ギルドでの討伐
10 別の道 アオニアとナヴァ
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回復師は手に負えない損傷を魔石で溜めていた力で覆う。
ラップのように創面を塞いで壊死や流血を抑える。
そして上級者へ受け渡す時間を作る。
魔石は決して修復や回復させるモノでは無い。
その魔石がレンの身体に溶けて吸収されたと言う。
そして損傷もダメージさえ無くなったという。
にわかに信じられない事を言われて、アオニアは目を見張った。
頭の中で学んできた事がシナプスとなって轟き激流となって渦巻く。
そんな事、聞いたことがない。
でも細胞レベルで修復が出来るなら、ナヴァの細胞を立て直せるのでは…
アオニアの青空の眼は虚無に似たような碧紺の思考へと沈んでいく。
召喚されても番の現れなかった異世界人。
人と違う魔力の波動。
そしてその波動は、自分にナヴァの成長を示唆してくれたあの男に似ていた。
ジャダに自分の印章を渡していたリンドルム様。
レンのギルドタグのチェーンにも付けていた。
あの男がここまでするのは理由があるはずだ。
……きっとレンに使われたのは"産まれなかった子供"の魔石だ。
かつて社交界に噂が走った。
リンドルム様の子供が胎内で魔石になったという。
魔力があり過ぎて身喰いしたのだと、負け犬の遠吠えのようにあちこちでこそこそと囁かれたものだ。
下級回復師の魔石では死にかけるほどの損傷をカバー出来るはずもない。
あの時、傷を覆う為に魔石が掻き集められた筈だ。
儀式の担当官のリンドルム様はその場にいた筈だ。
彼がその魔石を使ったのなら、あの波動は頷ける。
ああ、産まれなかった子供。
番が現れなかった異世界人。
吸収されて、命になった魔石。
……そうだ、番なら。
番は人種も性別も年齢にもとらわれない。
番は魂を分け合った者。自分の魂の半分だ。
魔力も同じ。魂も同じ。
その相手の魔石だとしたら身体の隅々に溶けて生命になってもおかしくない。
「ナヴァ!ナヴァ‼︎私はこれから魔力を溜めるよ!」
私は魔力を溜めて石にする術を知っている。
急成長で爆ぜる細胞に、私の魔石を流し込もう。
覆うんじゃない、吸収させて身体を作り変えるんだ。
小指の爪の先までも、二人の魔力で出来上がっていくんだ。
ナヴァの小さな身体を勢いよく抱き上げた。
ぐぅと息が漏れる。
細い肩に額を付けて、アオニアは震えた。
「私達は繋がれる。愛し合える。一つになれるんだ!」
闇のようなナヴァの目の中に小さな光が生まれた。
それがどんどん大きくなり、うるうると輝く。
愛してる。
君が私で、私は君だ。
もう離れない。
離れなくていい。
希望で輝く嵐のような二人をレンは静かに見ていた。
ほんの少し切なげに揺れて、口がきゅっと一文字になる。
アオニアはらしくないその顔を見た。
いつだって前を向いていた目が、合った途端に伏せられる。
そうか、2日。
動けない体のまま、叫んで噛みつこうと暴れていたレン。
ハントヴェルゲの領主は生粋の貴族だ。弱味を見つけ出すのが上手い。
弱味が無ければ理論をすり替えて弱味を作り出すのも上手い。
ジャダは領兵により、領地の神殿に解呪に向かった。
まだ若いレンの弱味にするには充分だろう。
でも、そういうのは好きじゃない。
「ジャダは無事だ。」
レンがぴくりと視線を上げる。
「神殿も領主もリンドルム様に敵対する事は無い。
ジャダは大っぴらにリンドルム様の印章を見せていた。
今更消す事は出来ないさ。」
アオニアは胸元から革紐を引っ張り出すと、小袋から黒い物を取り出した。
繭のようなソレは、指で挟むとふこっと歪んで中の銀が光る。
「コレは君がギルドタグに付けていたリンドルム様の印章だ。」
君から離されたら察知されそうだったから、君の髪を丸めて中に入れてたんだ。
旅中に何処かで捨てるつもりだったんだけどね。
アオニアはレンの唇を指で割ると上顎の頬側にソレをぐにっと押し込んだ。
「コレに助けを呼べばリンドルム様に届く。」
アオニアは笑った。不敵で眩しく美しい笑顔だ。
しがらみの消えた夏空のような笑顔だ。
「私の知ってるジャダは諦めの悪い男だ。
しつこい程に食い付く猟犬のように君を探しているだろう。
君が呼べば地獄の底からでも走って来るさ。」
ナヴァの小さな手がレンの頬を撫でた。
産毛がそよぐだけの風のようだった。
アオニアはナヴァを抱き上げると「じゃ」と一言残し、
振り返る事無く去って行った。
ラップのように創面を塞いで壊死や流血を抑える。
そして上級者へ受け渡す時間を作る。
魔石は決して修復や回復させるモノでは無い。
その魔石がレンの身体に溶けて吸収されたと言う。
そして損傷もダメージさえ無くなったという。
にわかに信じられない事を言われて、アオニアは目を見張った。
頭の中で学んできた事がシナプスとなって轟き激流となって渦巻く。
そんな事、聞いたことがない。
でも細胞レベルで修復が出来るなら、ナヴァの細胞を立て直せるのでは…
アオニアの青空の眼は虚無に似たような碧紺の思考へと沈んでいく。
召喚されても番の現れなかった異世界人。
人と違う魔力の波動。
そしてその波動は、自分にナヴァの成長を示唆してくれたあの男に似ていた。
ジャダに自分の印章を渡していたリンドルム様。
レンのギルドタグのチェーンにも付けていた。
あの男がここまでするのは理由があるはずだ。
……きっとレンに使われたのは"産まれなかった子供"の魔石だ。
かつて社交界に噂が走った。
リンドルム様の子供が胎内で魔石になったという。
魔力があり過ぎて身喰いしたのだと、負け犬の遠吠えのようにあちこちでこそこそと囁かれたものだ。
下級回復師の魔石では死にかけるほどの損傷をカバー出来るはずもない。
あの時、傷を覆う為に魔石が掻き集められた筈だ。
儀式の担当官のリンドルム様はその場にいた筈だ。
彼がその魔石を使ったのなら、あの波動は頷ける。
ああ、産まれなかった子供。
番が現れなかった異世界人。
吸収されて、命になった魔石。
……そうだ、番なら。
番は人種も性別も年齢にもとらわれない。
番は魂を分け合った者。自分の魂の半分だ。
魔力も同じ。魂も同じ。
その相手の魔石だとしたら身体の隅々に溶けて生命になってもおかしくない。
「ナヴァ!ナヴァ‼︎私はこれから魔力を溜めるよ!」
私は魔力を溜めて石にする術を知っている。
急成長で爆ぜる細胞に、私の魔石を流し込もう。
覆うんじゃない、吸収させて身体を作り変えるんだ。
小指の爪の先までも、二人の魔力で出来上がっていくんだ。
ナヴァの小さな身体を勢いよく抱き上げた。
ぐぅと息が漏れる。
細い肩に額を付けて、アオニアは震えた。
「私達は繋がれる。愛し合える。一つになれるんだ!」
闇のようなナヴァの目の中に小さな光が生まれた。
それがどんどん大きくなり、うるうると輝く。
愛してる。
君が私で、私は君だ。
もう離れない。
離れなくていい。
希望で輝く嵐のような二人をレンは静かに見ていた。
ほんの少し切なげに揺れて、口がきゅっと一文字になる。
アオニアはらしくないその顔を見た。
いつだって前を向いていた目が、合った途端に伏せられる。
そうか、2日。
動けない体のまま、叫んで噛みつこうと暴れていたレン。
ハントヴェルゲの領主は生粋の貴族だ。弱味を見つけ出すのが上手い。
弱味が無ければ理論をすり替えて弱味を作り出すのも上手い。
ジャダは領兵により、領地の神殿に解呪に向かった。
まだ若いレンの弱味にするには充分だろう。
でも、そういうのは好きじゃない。
「ジャダは無事だ。」
レンがぴくりと視線を上げる。
「神殿も領主もリンドルム様に敵対する事は無い。
ジャダは大っぴらにリンドルム様の印章を見せていた。
今更消す事は出来ないさ。」
アオニアは胸元から革紐を引っ張り出すと、小袋から黒い物を取り出した。
繭のようなソレは、指で挟むとふこっと歪んで中の銀が光る。
「コレは君がギルドタグに付けていたリンドルム様の印章だ。」
君から離されたら察知されそうだったから、君の髪を丸めて中に入れてたんだ。
旅中に何処かで捨てるつもりだったんだけどね。
アオニアはレンの唇を指で割ると上顎の頬側にソレをぐにっと押し込んだ。
「コレに助けを呼べばリンドルム様に届く。」
アオニアは笑った。不敵で眩しく美しい笑顔だ。
しがらみの消えた夏空のような笑顔だ。
「私の知ってるジャダは諦めの悪い男だ。
しつこい程に食い付く猟犬のように君を探しているだろう。
君が呼べば地獄の底からでも走って来るさ。」
ナヴァの小さな手がレンの頬を撫でた。
産毛がそよぐだけの風のようだった。
アオニアはナヴァを抱き上げると「じゃ」と一言残し、
振り返る事無く去って行った。
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