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4 一山いくらの運命なんていらない。

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口の中に舌が入り込んでくる。
そのぬるりとした感触に鳥肌がたつ。
暴れてもびくともしない。
逃げる舌を追いつめられて絡まされて、口の端から涎が伝っていく。
息が出来ない。ウェルドの匂いに絡みつかれて意識が暗くなっていく。
呼吸を求めてはっはっと開けた口に、さらに舌が捩じ込まれる。
苦しい。

頭を振ると、やがて顔が離れて
「鼻で息をするんですよ。」
とイケボが耳に流れた。
ねろりと舌が顎から耳へと舐め上げていく。
耳たぶをちゅっと吸われると腰が跳ねた。

「やめ…やめて下さい…」

必死で言うのに知らんぷりだ。
体が熱くなって、放たれる匂いが強くなる。
フィルナの意識はもう何も考えられない。

いつのまにかソファで仰向けに寝転んでいた。
大きな手が額から頭を撫でる。
かきあげられた髪で視界が広がる。
目の前に碧い宝石があって、術をかけるように覗き込まれた。
「フィルナ。」
手が唇をなぞっていく。
全身がぶるりと震えた。
「やっと見つけた。俺の運命の恋人。」

「あ、あの……っ」

声を掛けようとして、やられた!
開いた口に再び舌が入り込む。
体の上から重さが増して、より深くなったそれに頭が真っ白になる。
押し出そうと動かした舌が逆に絡め取られ、逃げようともがいているのにまるでこっちから攻めているような錯覚に襲われた。
それを楽しむように碧い目が細められる。

いや、待って。
待って。
なんなのコレ!




「フィルナ。シャワーの温度が上がらない!」

いきなりドルセナ姉様の声が響いた。
ビクッと飛び跳ねたウェルドを、思いっきり押し退ける。

「フィルナ。いる?フィルナ!」

あわあわと伝声菅に駆け寄る。

「今!今行きます!」

いつの間にかシャツのボタンが外れていた。
ウェルド、恐ろしい

ウェルドの手からするりと逃れる。
捕まらないぞ。絶対に。
涙目をいからせると、眉をハの字にしていたイケメンがくすりと笑った。
むっとする!

「何がおかしいんですか!俺は仕事に行きます。出て下さい。」
「待ってる。」
「冗談!部屋に鍵を掛けます。出て下さい。」
必死に威嚇する。

「…もうキスはしない。待ってていいかい?」
「信用度は0ゼロです。行きますよ。」
ウェルドはちょっとムッとしたように、ドアを開ける。
続いて出るとドアに鍵どころか防護結界までガッツリかけた。
ザマァと思って振り返るとそこに顔があって、ぎゅっと抱きしめられる。

大きさの違いで(ちくしょう!)すっぽりと腕の中にはまってしまった。

「ちょ、何ですか。止めて下さい。」
顔を背けて抵抗すると、そむけた首筋にちゅっと落とされた。
ひっ、と仰反る。


「顔も見ないうちに視線を感じたんだよ。これは運命だ。」

違う。
噂のヤリチンくそ野郎をガン見しただけだ。
「君も俺の匂いに酔ってるだろう」
何処の吟遊詩人の歌詞だ、ソレ。
確かに匂いはぼ~っとさせられる。
させられるが、ソレとこれは別だろう。

ウェルドの碧い目はじっとフィルナを見つめている。

「君は俺の運命だ。」

「貰った運命なんか、欲しくないです。」
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