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29 お料理教室始めます。

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ウェルドは、手にした飾りに魔力と付与を込めた。
それは碧い石で、ゆらゆらと力をオーロラの様に放っている。

物理も状態異常も跳ね返すように。
フィルナが幸せでいられるように。
フィルナの危機に駆け付けられるように。
ついでにフィルナに自分以外の男が近づかないように。『そいつは雷にでも撃たれてしまえ!
     もげろっ!  』
そして愛(重いっ‼︎)を思いっきり込める。

遠征と称して他領に足を伸ばした。
公私混同と呼びたきゃ呼べ。
他領の宝飾店に行ったのだ。
給料3ヶ月分程の魔石を選び、カタログの葉と花のレリーフのシンプルなミスリルの土台を選ぶ。



はっきり言おう。
セルバにびびっている。
わざわざ他領に行ったのは、見つからない為だ。

確証は無い。
だが、フィルナに付けられたセルバのヘアピンが、絶対、絶対、怪しい。

細胞の一つ一つがフィルナを求めている。
抱きしめて離したく無い。
なんなら抱きしめて、人の世界から離れたっていいくらいだ。

だけど。

キスから未知の領域に進む為に何が必要か。
思い切りだけじゃ無い。
そう考えて、あのヘアピンを封印する事だと気がついた。自分の飾りはおいおいだ。
とりあえず、外して封印してやる。
これからのお食事タイムに、邪魔されないようにな。




遠征から帰って、呆然となった。
妖しい世界が増えていた。

あの王女が。
あの捕食者としてこの世界に君臨していた、あの王女が。
なんか違う。

セルバとドルセナを足して2で割った様になっている。
そして、言いたく無いが。
無茶苦茶、言いたく無いが。
なんか可愛いくなっている。

そして侍女達。
もう、分裂したスライムの様に雰囲気が同じ。
増殖。って感じだ。
……なんか不思議な女子軍団。


ーーー近寄らないぞっ!
自己保身が、本能で叫ぶ。

まあいい。
もう見ない。
フィルナしか見ない。


久しぶりに見たフィルナは可愛い。
愛しさが湧き上がる。
小柄な体は、すっぽりと俺の腕の中に収まる。
あのチャンスを潰して、あれだけドン引きされた"言質"は、ちゃんとありがたいカードとして、ちゅっちゅ、うはは出来ている。
このまま蕩けさせて、なる様になりたい!
ものすごくなりたい。

だけどそうなったら一回で終わりかもしれない。
フィルナは野生動物のように臆病だ。
もしちょっとでも痛い思いをしたら、深く深く巣穴に潜ってしまう。
こんなに♡に頭を使ったことはかつてあっただろうか?
いや、無い!
だが、振り回される自分が嫌いじゃない。
むしろ好きだ。
この一歩がフィルナに続くと思うとたまらん!
ここまで、ゆるゆるとキスまで来た。
後はゆっくりと盛り付けに進んで行くのみ!
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