俺と竜。ときどき王子。

たまとら

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辺境で大暴れ

9 無事に帰還であります

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ぶわりと生暖かい膜から出ると、そこは見知った山の中だった。
成る程、結界ってこうなってるんだ。
ゆっくりと黒竜のジャスを下ろす。

「じゃ、俺、帰るから。」

(オレを連れてかなくテいいノカ?)

「ん~。姉様に、拾った所に返してらっしゃい。って怒られる事しか見えない。」

(オレは猫じゃないぞ。)

不服げに睨みながらジャスは言う。

(まぁ、必要なら呼べ。望むなら家ニモ行く)

「わかった。じゃ。」

ひらひらと手を振ると踵をかえす。
起きてから、持ってた非常食量を食べたとはいえ腹が減ってる。
走りながら実ってるアバルを掴んで齧り付く。
酸っぱい…。でも汁が喉に沁みていく。

山道を軽快に下って行く。
岩がゴロゴロするのを蹴りながら、草地に跳ぶ。走ってると気持ちが良い。

とりあえず大きなケガも無いし、生きてるし、空は青いし、楽しいし。
上手くしたらフィーリアの収穫のドタバタで、居なかったのもバレて無いかも知れないし。
自分の体がぐんぐん走るのが楽しくて、キーランは笑顔で獣道を駆け降りた。





当たり前だが、バレていた。
館には、キーランを探すために山狩しようと、人が集まり初めていた。
木の上で寝ちゃった。と言ったら、おまえらしいと笑われた。
木こりの爺ちゃんは手加減しない。
ぐりぐり頭を撫で回される。
首がもげるかと思った。

すみません。
すみません。
お騒がせしてすみません。
あわあわと、ごめんなさいと頭を下げる。

無事で良かったよー。
と、笑い話になって、みんな笑顔で帰っていった。
フィーリアの実が沢山収穫できてご機嫌なんだ。良かったぁ。
へらっと笑ったら父様の拳骨がどんときた。

「めし。ふろ。その後に報告だ。」

「はい!」

背筋を伸ばして敬礼する。
さすが領主。
何かあったぐらいはお見通しだ。


とりあえず、めし。めし。
スキップで食堂に行くと、腕組みしたクロディーヌ姉様が待っていた。

有無を言わさず風呂に突っ込まれる。

「暴れるなら、私が洗ってあげるわよ。」

そう笑顔で囁かれて、すごすごと風呂に向かった。 一人で。

膝も肘も沁みる。
がしがしと乱暴に洗いながら、キーランはジャスを思い出していた。
友達、か。
出鱈目な鼻歌が出る。
なんか心がウズウズして、嬉しい。
石鹸を泡だてながら、キーランはおもいっきり歌っていた。
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