ダークファンタジア番外編

ノクターン

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14部

当時のお話と、儀式?

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クロスを産んだゆりが再び妊娠した。ラクシュミは、ハインリヒに「ムサカ殿にゆりへの扱いを気をつけるように言っておいてほしい」と頼み、ハインリヒはミカエルから当時の話を聞くことにした。
この夜、ムサカの部屋にハインリヒとミカエルがやってきている。

「では、当時のことをお話します」
ミカエルは真面目な顔で切り出した。そして話し終える頃には涙目になっている。一方ムサカとハインリヒの顔は青ざめていた。ムサカはミルキダスからもその時の話を聞いていたので二度目である。

「死んだふり……そりゃきつい……」
ハインリヒも、その時のことは詳しく聞いていなかった。

「当時の王は、今のような温和な感じではありませんでしたから、王なりに王妃に気を遣ったつもりではあったんですが、王妃は、子供のためだけに抱かれたと思ってしまったようで、ひどく傷ついてしまって、それにアナスターシャ様が同調して、そのようなことになってしまったようです。王妃は元々こちらの人間ではないので、考え方で大きなずれがおこってしまったんですよね。我々は妊娠した女性に手は出さないですから」
「そうだよな。むしろ、手を出そうとしたら変態呼ばわりされるくらいだからな」
とハインリヒ。
「大丈夫です。王妃は当時よりもこちらが興奮しやすい匂いを発したりしてますので、楽に興奮できますよ。どうしてもその気にならなかったら、王妃を抱きしめてチュッチュしてあげてください。好意を示すってことが大事です。こればかりは我々じゃ代わりにならないんです」
「……ムサカ様、逃げないでくださいね」
ハインリヒが言った。
「え?」
とムサカ。
「王妃が出産するまでいてくださいね。何が起こるかわからないんですから」
「わかってる」
「王妃を邪険にしなきゃいいんです。ムサカ様なら大丈夫ですよ」
ミカエルは去って行った。

「……ところで、なんで王妃とそうなったんでしたっけ?」
ハインリヒが聞いた。
「えーと……」
ムサカは金蛇のことを言おうかと思ったが、ハインリヒにいうのも微妙な感じである。
「忘れた」
「女王様はムサカ様が王妃を妊娠させる夢を見たらしいですよ。ヴィラがディランから聞いたらしいです。正夢になったので、陛下も驚くでしょうね」
「はあ……帰るにも帰りにくいな」
「子供の成長を見守りたいと思いません?」
「ずっとこちらにいることはできない。それこそ王にすまなすぎる」
「ムサカ様が帰る方が王はショックでしょうけどね。まあほどほどがいいのかなあ」

さてその後、ムサカはゆりにどう対応しようかドキドキしていたが、いきなり儀式が始まるかもしれないという話がとんできた。
「もう儀式? わしはどうしよう。ゆり様に参加してほしいと言われたら、参加するしかないか」
などと思っていたら、ゆりがやってきた。
「ムサカさーん」
やってきたのは蛇の目のゆりの方である。
「ゆ、ゆり様」
「儀式が起きるかもしれないので、その前に仲良くしましょう」
「は、はい。あの、私は儀式に参加しなくていいんでしょうか?」
ムサカは緊張した様子である。
「男達に交ざってもらうのも悪いっていってましたよ。二人っきりで仲良くするほうがいいでしょう?」
「その方がいいです」
ゆりは結構良い匂いを発していたので、ムサカは(いけるかもしれない)と思い蛇の目のゆりと仲良くした。
「ゆり様は本当に良い匂いすぎて……ああ、かわいい。今はあなたのすべてが愛おしい」
ムサカの様子がおかしくなってきた。肌に鱗のもようがあらわれてきている。

「ムー様!」
「ゆり様、このかわいい体で私の子供を妊娠してくださったんですね。ありがとう。ありがとう。お礼に一杯口づけをさせてください」
ムサカはどうやら変化しているようである。
「ムー様、赤い月じゃないのに出て来てくれたんですね。うれしいです!」
「あなたが愛おしくて出てこずにはいられないです」
ムサカはゆりを抱きしめて頬擦りしている。
(なんか性格変わった? まあいいか)
蛇の目のゆりは、ムサカがまた変化してくれたことがうれしかったので細かいことは気にしなかった。
「体調に気をつけてくださいね。よしよし」
ムサカはゆりの頭をなでたり背中をなでたりしていた。

さて、ゆりにもムサカにもさっぱり見えていなかったが、ムサカの肌に現われた蛇紋の蛇のうちの金色の蛇の首に、青い花のつるが巻き付いていた。小さい青い花も一輪咲いている。
「ああ、どちらのゆり様もわたしのものにしたい」
「あっちの私はムー様の変化姿はちょっときついかもしれないですね。目隠しした方がいいかも」
「なら目隠ししましょう。あなたはまたね」
「はい」
(ムー様が溺愛モードになるとは……びっくりだけど、うれしいな)

黒目のゆりに代ってもムサカは甘めに接し、どちらのゆりも結構ご機嫌になったのだった。

翌朝、ムサカは自分のベッドで寝ていたのだが、ハインリヒがやかましく思念を送ってきていたので、ハインリヒの部屋に行ってみた。ハインリヒは椅子に座ったままひっついている。

「何をしとんだ?」
とムサカ。
「ムサカ様がしたんですよ。早く解放してください」
「わしが? そうだっけ?」
ムサカはハインリヒを解放した。
「それで、儀式はどうなったんだ?」
「私は参加してないんで知りません。ムサカ様が、お前はパスしろとか言って」
「そうだっけか。そういう気もする。そろそろ儀式が負担じゃないか?」
「いきなり嫉妬モードに入らないでくださいよ。もー」
ハインリヒはぐちぐち言っていた。

「まあまあすまなかった」
(昨晩のことはあまり覚えてはいないが、いい夜だったような気がするな)
支度をしてからゆりの部屋に行ってみたが、ゆりは疲れてまだ寝ていた。

(そうだ。花を贈ろう)

ムサカは山の中に入って花を摘んできてゆりの侍女に渡した。

目が覚めたゆりは、お花の贈り物に喜んだのだった。
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