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第11話 袴ってすんばらしい。
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いい眺めだなぁ。
私は今、城のベランダみたいな所に立っている。今日は空に雲一つない、いい天気で風も気持ちいい。
下には、せっせと働く人々。
……後ろには……。
………マジギれしてる、かよさん。
…………………………………………えっ?
「……とく様。何をしていらっしゃるのですか?」
うゎ~。笑顔で怒ってる。
にっこにこだ~。
間違えても、
高い城に登って、働いている人々にありのようにせっせと働くがよいって思っていた、な~んて。言える雰囲気ではない。
「服を着替える時はいらっしゃたのに朝食を持って来る間に居なくなって!
その時の私がどんな気持ちだった判ります?解りませんよね。
ものすごーく心配したんですよ。
お給料の。」
……おいおい。そこは嘘でも私の心配をした方がいいんじゃないかな…。
一応、安藤家に仕えてるんだし。
「その後、すぐ弓の稽古だったのにもかかわらず、時間になってもいらしゃらない。
……あの弓の先生との無言の時間がどれだけ居心地が悪かったか判りますか?
……控えめに言って苦行ですよ。
居たたまれなくなって、とく様を館中探し回っても居ない。」
そりゃ、居ないだろうね。だって私が居るとこ館じゃないもん。
「たまたま、通りかかった心優しい兵士が教えてくれなければ、今も私は館中を走り回っていました。
……本当にどうしてくれるんですか!!
まだ、朝なのに疲れたんですけど!!」
えっと、ドウドウ。
知らないうちに、なんだかとっても迷惑をかけてしまったらしい。
「とにかく、弓の先生を待たせているので早く着替えて行きますよ。」
一通り叫んで落ちついたらしいかよさんは言った。ぷんぷんと効果音がつきそうな程に頬を膨らませるかよさんはむんずと私の腕を掴みずるずると私を連れ戻そうとする。
これ以上かよさんを怒らせると後が怖いので私は神妙な顔でうなずいた。
「(´・∀・`)ウン」
「ふざけているのですか?」
かよさんの笑顔が深くなった。
あれ、なんか間違えたかな?
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袴ってすんばらしい!!!!
なんだよ。この動きやすさは!!
足を全力で開いても転ばない!!!
いやー。いいね、袴。これは、弓の稽古のやつだけど。着るのも簡単だし。
毎日これにしよう。
………えっ?
弓の稽古はどうなったか、だって?
やったよ。もちろん。……泣きそうになりながらね。
あの先生。マジ怖い。なんもしゃべんないの。最初に、
「私を真似て射て。」
って言ってから稽古中、ずーと、無言。
真似たよ。そりゃもう必死にね。
おかげで肩と指がばっきばき。
でも、矢が的に当たると嬉しいし、そのたびに、先生が良くやったなというふうに、うなずいてくれるのも嬉しい。
弓矢を放つ瞬間の腕の感覚、
矢が的に当たるたぁんッと気持ちいい音が鳴る。
……ヤバい。これは、はまる。
これが、私の袴と弓との出会いだった。
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