妖精王の味

うさぎくま

文字の大きさ
21 / 46

20、お披露目

しおりを挟む

 開いていく扉に皆の視線が集まる。入室してきたエティエンヌフューベルと凛音。

 皆の視線は煌びやか過ぎるエティエンヌフューベル一択。当然のごとく凛音は霞んで見えている。いやもう分かりきっていたが、眼中に無しは結構辛い。

 硬直して動かない話さない面々。ならばと凛音は現在の恥ずかしい姿(片腕抱っこ)をやめてほしいと進言する事にした。


「エティエンヌフューベル様、私、歩けます」

「歩けない。二、三歩ほど歩いて。すぐに蹴つまずいていただろう」

「あれは、たまたまで(誰のせいだ!?)今はっ」

「それ以上拒否するなら、生殖器を繋げたまま、しばらく生活するか? そういう生物も実際に存在するし、私は願ったりだ」

「ヒィッ!?」

 引きつって(冗談ではなく本気を感じ)硬直している凛音を片腕に乗せ、部屋のど真ん中に鎮座しているソファまで優雅に歩いていき、エティエンヌフューベルは腰を下ろした。

 当然、凛音はエティエンヌフューベルの膝の上。

(「なんで一々膝に乗せるのぉぅー!?」)

 凛音の心の問いは必死だ。先程は裸体どうしで乗せられていた。
 かるく凛音の常識を、ぶち破ってくるエティエンヌフューベルにタジタジ。あり得ないだろうと行動全てに突っ込みを入れてしまう。

 先程と違い現在は衣服を着用しているし、エティエンヌフューベルの素晴らしく誇れるブツは勃っていない。
 勃ってはいないが、通常よりも数倍デカイ男性器は服の上からもハッキリとフォルムが分かる。

 身体が少し動く度に、ムニムニと尻に感触が伝わるのだ。

 意識するなと言い聞かせれば聞かせるほど、それが先程まで凛音を快楽地獄に落とし、アンアンと善がりまくりを提供してくれていた立派なナニと頭に叩き込まれ。
 それを意識してしまうと、落ち着かないし、猛烈に恥ずかしい。


「エ、エティエンヌフューベル様っ!!!」

 一応抗議してみるが、エロさより優しさ溢れる表情を浮かべて、こちらを見つめてくるエティエンヌフューベルは誠実さが溢れており、エロを抜かれてしまう。

「凛音。私の身体を感じて赤い顔で怒られても、嬉しいだけだ。
 男として意識してくれていると実感できて、堪らなく嬉しい。流石に皆の前で入れたりしないから、これくらいは許してくれないか?」

「のぅっ!!!」

 エティエンヌフューベルの魅力に胸を撃ち抜かれてしまった凛音はポヤポヤだ。うっとりポヤポヤだ。

 己の魅力にポヤポヤうるうるする凛音に満足する。

 愛しい身体を抱きしめながら撫でまくるという、あちらの世界ではセクハラで間違いないほどの手業で凛音の身体を堪能しながら、エティエンヌフューベルはイヨカ達に初めて、視線と思考を向けた。


「イヨカ、そろそろ思考の海から帰ってこい。柑橘系の果物水を用意するように頼めるか?」

「王…王…エティエンヌフューベル様…」

「慣れない姿だろうが、私がエティエンヌフューベルで間違いない。声も口調も身体に準じ変わってしまっているからな。まっ、慣れてくれ」

「エティエンヌフューベル様、エティエンヌフューベル様、エティエンヌフューベル様…」


 泣きながら土下座し感動している。しかし見開かれた瞳は眼球が飛び出してくるのでは? と注意したくなるほど。
 しかとエティエンヌフューベルを見据え、動かないという気持ち悪い状態。

 想像通りの為、エティエンヌフューベルは先に進むにはどうしたものかと考える。

 性行為中、叫び声は多少抑えられたといえども、凛音は絶対に喉が渇いているはず。唇も渇いているし、まずは飲み物を与えたい。

 本心では凛音には精液酒キャラメルマキアートを与えたいのだが、今は凛音から物理的に離れたくない。
 では直飲みで…とは流石に無理だとエティエンヌフューベルも理解している。

 精液酒キャラメルマキアートの出所を知らない凛音に、いきなり直飲みしろと言った瞬間に嫌悪を見せるだろう。冗談なくしばらくショックから立ち直れない。
 いずれは直飲みもお願いしたいが、今はまだいい。だから果実水なのだ。
 まだぶつぶつとエティエンヌフューベルの名前を言いながら陶酔しているイヨカを無視し、この部屋で一番まともそうな妖精族でないパッドにエティエンヌフューベルは視線を合わす。


「パッド、頼まれてくれないか? 凛音に飲ます果実水を至急用意してくれ」

「…………」

 頭は下げられ、カタカタと震えているパッドの肩を見て、溜め息が出る。

「パッド。私は凛音の護衛騎士に就任している人を感謝こそすれ、害しはしない。絶対にだ。怖がるな」

「…も、申し訳ございません」

 幾分柔らかなエティエンヌフューベルの声を頭上から聞いたパッドは、肩の力が少しぬけ絨毯につきそうなほど下げていた頭を上げ、正面にいる妖精族の王を視界に入れた。

「……か、果実水…ですね。か、しこまり、ました」

 それだけをやっと言葉にし、パッドはいきよいよく立ち上がって部屋を退出した。


 パッドは目的のモノ(果実水)を求め歩いている間も、ずっと目が潰れそうな美貌のエティエンヌフューベルを反芻していた。

(「神は美しい。あれほどの美しさと畏れを纏う王は、妖精族の王以外ありえない。普通にいい合える天草様が、不思議でならない」)

 あまり恐さが入らない、凛音とエティエンヌフューベルの会話を思い出し笑ってしまう。

(「天草様の護衛騎士か…名誉だ。俺は、誰よりも恵まれているな」)

 両親を知らずに育ち、ありとあらゆるイジメにも合っていたパッド。

 ネコ科動物の国『タガルガ王国』は妖精族を除ければダントツで美しい見目が多い国だった。妖精族は生きる時がそもそも違い、神に等しい為基本は恋愛対象にはならない。
 己に力がある権力者などは力の為、妖精族と番いになりたいと願い精液酒を飲みたがるが、一般市民がそう思うのは稀であった。

 もちろん夢物語で、青少年期は必ず選ばれたいなと話を友達とするが、あくまでそれは妄想の世界。パッドもそうであった。

 辛い幼少期をおくっていた自分パッドがまさか神にも等しい妖精族の番いを得て。
 妖精族歴代最高と言われるエティエンヌフューベルのたった一人の伴侶に、妻と共にお使いできる栄誉はパッドには想像さえもしなかった未来だった。

「俺の知人は、もうこの世にいないが、さぞかし悔しがっているだろうな、くくっ」


 妖精族に選ばれ、妖精族の精液酒を飲み、身体を繋げた瞬間から、寿命は否応なく折半される。パッドは若く見えるが、等に人生を終えていてもいいほどは長生きだ。

「はやく、天草様にお持ちしなくてはな」

 パッドは今日作られた、最高級品の果実水を手にし、元来た道を速足で進めていく。




しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす

小木楓
恋愛
完結しました✨ タグ&あらすじ変更しました。 略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。 「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」 「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」 大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。 しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。 強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。 夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。 恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……? 「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」 逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。 それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。 「一生、私の腕の中で溺れていろ」 守るために壊し、愛するために縛る。 冷酷な仮面の下に隠された、 一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。 ★最後は極上のハッピーエンドです。 ※AI画像を使用しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

辺境伯夫人は領地を紡ぐ

やまだごんた
恋愛
王命によりヴァルデン辺境伯に嫁ぐことになった、前ベルンシュタイン公爵令嬢のマルグリット。 しかし、彼女を待っていたのは60年にも及ぶ戦争で荒廃し、冬を越す薪すら足りない現実だった。 物資も人手も足りない中、マルグリットは領地の立て直しに乗り出す。 戦しか知らなかったと自省する夫と向き合いながら、少しずつ築かれていく夫婦の距離。 これは、1人の女性が領地を紡ぎ、夫と共に未来を作る「内政×溺愛」の物語です。 全50話の予定です ※表紙はイメージです ※アルファポリス先行公開(なろうにも転載予定です)

私が生きていたことは秘密にしてください

月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。 見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。 「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

処理中です...