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20、嵐は去った
しおりを挟む嵐は去った。一番の嵐はミミルだったような気がする。
ジャック団長も二人の娘も、エルヴィンもミミルもそれぞれ帰って、今は静かだ。ハクリとルルとフェリックス。そしてダリアの四人だけだ。
静かなのだが、くっつき虫のごとくダリアがフェリックスから離れない。
「ダリア様、何か食べない?」
ルルはフェリックスにべったり引っ付くダリアに、昼食を進めるが、ダリアはふるふると頭をふって拒否をする。
「ルル様、ありがとうございます。胸がいっぱいでご飯が食べれませんわ。もう少しだけフェリックス様のお側にいたいんです」
なんて鈴のような声で健気にフェリックスの腕を抱きこんで離さないダリアは、危ない魅力満載だ。
「そう、ダリア様がよければいいのだけど…」
隣りで明らかに可哀想な状態のフェリックスを見て、ルルもハクリも苦笑いだ。
(フェリックスが結構限界か? 勃起を隠す気はないのだろうが、ちょっとアレは可哀想な…)
同じ男としてハクリは息子の股間の心配をした。
すぐに精液酒を貰っても良かったのだけど、ダリアはまだ生理中だという。では性行為は出来ない。
昨日の昼寝時も最後まではしてないし、お触り程度。フェリックスも夢であってもダリアの性器を触る気がなかった為、そういう本格的な男女の行為をしてない。
いわゆる後、数日はお預け状態なのだ。
生殺しが続くのだが、ダリアの想いを聞けば正直数日の生殺しくらいは我慢出来る。
「フェリックス様」
ダリアが耳元で呼んだ。
「ん?」
「フェリックス様のお部屋に行きたいです」
ダリアはそう言って大きく膨れ上がった先端を、隠すようにふにっと掴んできた。
「んっ…(確かに、そろそろ痛いしな)…」
「これ、飲みたいです」
何を頼まれても拒否できないすがるような瞳で、今度は勃ち上がった巨根の根元、丸く膨れた部位をダリアは手のひらで優しく包む。
(飲みたいって、精液を?)
今、フェリックスの部屋に入れば両親にバレバレなのだが、伴侶になるという二人だし、最後まではするつもりはないから二人きりで部屋にこもるのも悪くはない…はず。
(ギリギリまでは大丈夫…か?)
フェリックスが立ち上がると、自ずとダリアも立ち上がる。
「フェリックス様?」
「…部屋へ行こうか」
「はい!!」
気をつかう。めちゃくちゃ気をつかうとハクリとルルが思っていたところに、大変可愛らしくダリアが頭を下げた。
「フェリックス様のお部屋に行きますが、結界を張ります。声とか漏れないようにします。
フェリックス様の声は綺麗ですけど、私の声だと不快かもしれませんので、大丈夫です」
「いや、うん」
「えぇ、はい」
どちらかというと我が子の喘ぐ声の方が嫌だと、ハクリとルルは思う。そして、ダリアの喘ぐ声など恐れ多くて聞けない。
結界ならば、安心だと本気で胸を撫で下ろした。
部屋に入り、靴を脱ぎベッドに上がる。二人してベッドの上の住人になったところで、ダリアは真正面からフェリックスに抱きついた。
「結界は張りました!! スゥー。はぁぁぁ、フェリックス様の香り、大好きです」
首筋に顔を埋めるダリアの頭をフェリックスは撫でる。至高の宝石は自分の手の中だ。
「ダリアは無臭だよね」
「え? 無臭? 発情期の匂いはしてませんか?」
ダリアは全体重をフェリックスに預けていたが、ふとした疑問を抱き身体を離す。するとフェリックスも気づかなかったのか驚いている。
「しない、な」
「では、もう性行為が出来ますね!!」
そうなのだろうが、いきなりガッツクのも男としてどうかと思うし、ダリアが召喚した場所はフェア王国のダリアの寝室だ。
広いしいつもの場所である方が、安心するだろうから性別固定化の儀式と、その後の性行為はフェア王国でするつもりだった。
「ここではダリアが不安だろう? 早急にするべき事ではないし、最後まではやめておこう」
「フェリックス様、私は、もう繋がりたいです」
ダリアは抱きつきながら、フェリックスの男性らしく見事に張る箇所を優しく撫でてくる。
「…ダリ、ア…」
「フェリックス様のお声で、お腹が痛いです」
全く可愛くて堪らない。嫌でないのなら、遠慮なく頂戴しよう。フェリックスはダリアの頬に手を添えて唇を合わす。角度を変え、舌を絡ませて、さらに口づけが深くなる。
息を吸うのを忘れるほどの気持ち良さ。口に入ってくるものの中では、ダントツ一番の柔らかさと甘さだ。
フェリックスは身体の力が抜けきっているダリアの肩をゆっくり押し倒し、ベッドに組み敷いた。
首筋を舐めたら、その舌ざわりに痺れる。ダリアの身体は基本的に無臭であるし、生き物臭さがない。それも妖精族ならではなのだが、鼻が良い種族の間では堪らない状態。
そのものに匂いがないならば、交わると自ずと己の香りのみで構築される。それは己の所有物である印。
狼種であるフェリックスには、最高に独占欲を満たしてもらえるのだ。
「…フェリックス…様、…あつ、いっンッ!」
「俺もだ」
「服…脱ぎたいです」
「そう…だな」
服から見える部分だけでも、フェリックスは夢中になり舐めていた。性行為の前にやる事がある。フェリックスはダリアの下半身に手を添える。
「フェリックス様!?」
ダリアの身体は気持ちよかったようだ。しっかりと反応している箇所を触り良かったと安心する。
「直接飲むから、股を閉じないでね」
「フェリックス様!? 直接飲むなんて、ダメです!!
流石に両性具有でも直飲はしませんわ。男の方は大変嫌がるとお聞きしておりますから…」
「俺は他と違う。ダリアのなら嫌ではないよ」
綺麗に笑うフェリックスに頭がクラクラする。「でも…」と言いながらも、股間部を優しく刺激されたらなら、もう何も考えられない。
仰向けに寝転がるダリアは、優しい刺激に頭が朦朧としていた。普段から少し邪魔だと感じていた部位。
自分で触ると何も感じないが、フェリックス様相手だと、それだけで身体は敏感になり性欲が湧き上がる。
「…確かに、デカいけど綺麗な色だ」
そう呟きが聞こえた。今から起こる刺激にダリアの身体は硬直していく。
それを理解するフェリックスは、ダリアが安心するように身体を撫でてくれる。
「ぅあぁ、ぁぁ、っ…」
流石に見るのは無理で、ダリアは目を閉じて快感に身を預ける。力も強いだろうし、犬科は顎も強い。そのトップクラスを誇るフェリックスに対し、自分の急所を曝け出せるのは愛している証拠。
「…愛して、ます」
「ん…」
股から聞こえる大好きなフェリックスの声と、甘やかな刺激にダリアの腰はグズグズになっていく。
はじめての刺激には呆気なく、早々に精液酒を放つ。ビュッビュッ、ビュッビュッと小刻みに出る液体をフェリックスは飲み干す。
言われた通り、フェリックスの好むエールビールだ。辛さがある味よりフルーティーな香りが鼻から抜けるのが好み。
精液酒を美味いと感じるのは、紛れもなくダリアが伴侶である印。
「…美味しいね」
飲みきったのに、唇を舌でひと舐めするフェリックスに見惚れしまう。
思わず独り言のように呟いたフェリックスに、ダリアは恥ずかしげに目線を逸らした。
「…フェリックス様の…エッチ」
恥ずかしがるダリアが可愛いく、キスをしようとフェリックスが体勢を変えた瞬間。ダリアの表情が歪む。
「ンッ……」
身体の作り変えが始まったのだ。
母である異世界人の凛音と、父である妖精王エティエンヌフューベルは、驚くほど身体の形、大きさが異なった。
身体の大きさもだが、元が女性体に近い妖精族の身体から男性骨格への変化は、想像を絶する痛みとの戦いだった。
(身体が、熱いっ、気持ち悪いッッッ。でもこれで、私も…)
ダリアは大きさも、身体の骨格も女性体に近い。父ほどの激痛はないにしても、痛いものは痛い。
苦しむもがくダリアを一歩離れて、フェリックスは静かに見守る。
(フェリックス様、フェリックス様ッッッ!!)
苦しみもがきながらもダリアはフェリックスの顔を探し、瞳を見たくて視線を彷徨わせた。
「痛いよね、大丈夫。ダリア、愛している。痛みが止んだら、沢山愛し合おう、待ってるから」
「…フェリ…ック…ス……さ…ま…」
話では聞いていたが、あまりにも辛い。愛しい人(ダリア)が苦しみに耐えているのに己は何も出来ないのだ。
フェリックスはダリアから目を離す気はない。ダリアを見つめれば苦しみの中にも、喜びがあるのが分かるからだ。
「ダリア、愛してる…」
痛みに耐えながらの、花咲くようなダリアの笑顔は一生忘れないだろう。フェリックスはそう強く思った。
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