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 寝るには少し時間があったので宿題を進めることにした。
 将来の夢。か、、、私は物心ついた頃からこのお城で働いていたからいまいち城の外の世界が分からない。
 そういえばリンはパティシエになりたいとか言ってたな、なんてほかの人の将来の夢を思い浮かべたりした。

 数十分経っても私は何も出てこなかった。

 今のところなりたい職業もないし、ただ今を生きるような生活をしているのでこれといった目標もない。
 強いて言うなら勉強くらいだ。
 考えに考え抜いた結果私はペンを取り、原稿用紙に思いを綴った。

「よしっ、書けた」

 私は完成した作文の原稿用紙をカバンにしまった。


 次の日は午後からの授業と聞いたので、午前中はしなくてもいいと言われていたが雑用の仕事を少しした。

「おつかれー、昨日はどうだったの?」
「あ、リン。おつかれ!昨日は楽しかったよ?」
「へぇ!学校とは違う?やっぱり」
「うーん、学校に行ったことがないからわからないけどやっぱりマンツーマンで教えるってところが違うのかな?」
「マンツーマンかぁ、しっかり教えて貰えそうね」
「うん、分からないところも直ぐに教えてくれるからね」
「で、ガルージュ王子はどうだった?」
「ガルージュ?あー、私が授業受けてる間居眠りしてたなー」
 「もー!そういうのじゃなくて!なんて言うの?なんかこう、意外な一面とかなかったの?」
「んー…あ、やっぱり王子様なだけあって、色んな家のことを知ってたよ」
「色んな家?」
「貴族とか財閥っていうのかな?私機能ノート貰ったんだけど、カルラーナ家って知ってる?」
「あー!知ってる知ってる!私ずーっとあそこのステーショナリーセット欲しいって思ってたの!あそこの文房具ちょっと高いから手が出しにくいんだよねー」
「それで、ガルージュからカルラーナ家について教えて貰って」
「へー!なんかそういうの1番嫌いそうなのに意外だねー」

「カルラーナ家っていえば、10年前くらいからご令嬢が行方不明でね、今も見つかってないらしいの」
「そうなんだ。みんな心配してるだろうね」
「うんうん。生きてるなら私たちと年齢は変わらないそうよ。街にはポスターが少し貼られてるらしいんだけど、街に行く機会もないから分からないよね」

 リンと別れたあと私は昼食を軽く取り、授業を受ける部屋へ向かった。

「おー、早いなー」
「ガルージュ、こんにちは」
「はいこんにちは。ノート使った?」
「ううん、まだ。何に使うか迷っててさ」
「そうか、大事に使えよー!なんてったって王国の王子がプレゼントしたもんだからな」
「はいはいすごいすごい」
「絶対思ってないだろ」

 今日の授業は主に理科の勉強だった。今回はガルージュと一緒に受けた。

「学校ならばこの現象を実験道具を使って実際にやるんだけど、場所が場所だし…写真だけど許してね」
「学校ではこんなこともするんですね」
「ええ、少し危険だけれどこれも勉強の1部なの」
「まあそんなこと実験しなくたって今後の人生にはあんま関係ないけどなー」
「王子!」
「はーいごめんなさーい」

 授業が終了した後に朝のリンの話が気になってガルージュに聞いてみることにした。

「カルラーナ家の行方不明のご令嬢はまだ見つかってないの?」
「ああ、全くわかってないそうだ」
「ご令嬢ってことは写真とか肖像画とか残ってないの?」
「行方不明になったのは2歳の頃だぜ?赤ん坊の頃の写真はあるらしいが、行方不明当時の写真とか絵はないらしいぞ」
「ふーん、早く見つかるといいね」
「生きていれば、な」
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