パートナー

紅猫

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プロローグ

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《パートナー》。
 それは当時の政府が、身寄りのない子供たちのために作られた新たな制度。
 そんな《パートナー》制度の対象は、捨てられた子供、虐待を受けた子供、金がなく生活が厳しくなった子供……様々なとある理由を持つ子供たちだ。
 素晴らしいことに、制度導入当時の対象者の男女比はなんと1:1。こうして、《パートナー》制度はこの国に留まらず、世界中で導入された。
 またの名を、《モンスター退治組》と呼ばれていることを、当時の対象者は知らなかった。
 
 世界には、数百年前から地球に住んでいる《モンスター》という存在があった。モンスターは人々の生活を脅かし、不安と恐怖を与えた。その退治役に《パートナー》対象者は選ばれた。ある者は散っていき、ある者は生き生きとモンスターを蹴散らす。対モンスターとの戦争とも言えるだろう。
 
 そんなことをしていれば当然、対象者は減っていく。

 導入から10年。現在もその制度は施行されている。が、問題がある。
 それは、『少子高齢化問題』。
 この国、いや全世界でこの問題は課題と考えられるほどに、子供が少なくなっているのだ。その上、近年のモンスターは力が強くなっていった。いや、知性を身につけたのだ。そのため、子供はどんどん減っていき、とうとう全世界を通して10万人程度しかいなくなってしまった。    

 この現状を変えようとした政府は、ある提案をした。地球上にある数百の国に向けて。
 『モンスターを我々、大人で対処しよう』
 ほとんどの国はこの提案に賛同。しかし、一部の反対派は最後までこの意思を変えなかった。
 結局、全世界総出のモンスター討伐作戦は実行されたが、戦力は彼らの予想をあまりに大きく上回る。
 それは、作戦開始からわずか10分ほどのこと。
 
モンスターを倒すべく棲みかを探索中の一人の剣士は、あるなにかを見つけた。
 「……人?」
 先が見えないくらい暗い洞窟の奥で、一人ぽつんと壁に腰かけている人物。なぜかその上には魔灯……魔法による光が。
 近寄って話しかける。
「おい、大丈夫か、き……………うわっ!?」
 剣士は後退りした。突然の出来事に剣を抜く暇もなかった。その原因は、やはり魔灯下の人物。
 死んでいるのだ。
 それもかなり前に。腕や脚は骨が剥き出しになっており、顔面はまさに骸骨そのもの。服と呼べる代物ではなく、布を羽織るように着ている。指先にはもう骨すら見当たらない。性別が区別できないくらい酷い姿だった。
 剣士はすぐに洞窟から出て、一人の老いた戦闘員に伝えた。
 「本当だって。ここの洞窟の先に、人の死体が!」
 「嘘つけ。こんなところに一人で行くようなやつは自殺志願者か頭のおかしい野郎だけだ」
 「……魔灯………」
 「あ?」
 「魔灯……魔灯があったんだよ!」
 剣士が思い出したように生き生きと話し始める。
 「魔灯だ。魔法はその発動者が死ぬと自然に消える。だけど、あれはもう死んでいた。つまり、別に人がいるってことだよ!」
 はあ、とため息をつき、 戦闘員は洞窟を目指す。
 
 「行ってくれるのか!?」
 「何かあってからじゃ遅いからな……」
 奥へ進むと、目的の場所へ着いた。後ろにいる戦闘員はふぅ、と額の汗を拭う。
 「……あれ? 死体がなくなってる」
 「元からなかったんじゃないのか?」
 「いや、あったんだって」
 「本当……か……………」
 「?」
 話の区切れが悪いので、ふりかえるとそこには……
 「……………え?」
 心臓を突かれ、白目を剥いている老人。
 「かはっ……くっ、くあ!」
 その心臓を貫いた剣は老人の胸元から戻され、老人が倒れる。倒れたあとに出てきたのは、人影。
 「な、なんだ?」
 「我レ、人ヲ斬ル者ナリ」
 数秒後、剣士も老人と同じ状態になった。
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