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紅猫

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第1章 君だけが。

第2話 第三陣代表者会議

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 「これより、第一回『第三陣代表者会議』を始める」
 
 近隣諸国のなかでも、尤も権力を持つバセノーダ国の代表者が、凛々しい声で会議始まりの合図をした。

 集まったのは全五国。先進国・バセノーダ、首都・サーボン、クルガン、先住民国・ナガリド、コードエッジ。ヤマトたちはクルガンに所属している。
 
 ヤマトほか、第三陣代表者は思った。

 _____一回目なんかい!!



 首都であるサーボン国で、この会議は行われた。全五国による代表者会議のなか、ヤマトは
来週予定されているコズイ帝国の代表者を探した。

 ____いた……!

 コズイ帝国代表者、ガメスとマミ。強力な指導者が現れたと我が国でも騒がれているが、確かにそんな雰囲気はある。
 
 ガメスは強面で、ガタイがいい。背中に下げている巨大な剣は、さらに怖さを強調している。
 逆に、 マミはそれほど危険な印象は与えない。むしろ優しい少女に見える。短く切った金色の短髪と、整った顔立ちは幼さを残すがしっかり者の印象も受ける。

 ____これが、パートナー………?

 一緒にいることが不思議なくらいに真逆な彼らがパートナーなのだから、人生色々あるんだな、とヤマトは思った。

 「近年、モンスターの力が強くなっている。モンスター被害による死者も例年に比べ、多い。なので、全国の第三陣以下の位を持つ者は、今年はより多くモンスター討伐依頼を受けてくれ」

 「わかりました。では次の議題に移ってください」

 「次の議題は、ない!」

 「「「「「………………………は?」」」」」

 司会者以外の全員の声が重なった。

 「だから、次の議題はない。以上で会議はおわりにする!」 
 
 以上だ、解散! と言いかける司会者に、ライラが声を上げる。
 
 「待ってください! もっと重要な議題があるでしょう!!」

 「ラ、ライラ?」

 机をドン、と叩き鋭く司会者を睨むライラ。司会者もそれを感じとり、会議を進める、と促した。

 「ここ最近、モンスター討伐に出た者は挙手を」

 そう言うと、約四名の挙手が伺えた。コードエッジとナガリドのパートナーたちだ。

 「ビッグウルフについて、質問です。最近の奴らはどうですか?」

 答えたのはナガリドの男性。

 「どう、って言うか、なんかめちゃくちゃ強くなったよ」

 「そう、それです。本当の議題は、”ビッグウルフはなぜ強力になったのか”でしょう」

 司会者や、周りの者が唖然とするなか、ヤマトだけは、なぜか誇らしげにしていた。

 「………それは多分、木の実の影響でしょう」

 そう言ったのは、コードエッジの女性。

 「というと?」

 「ビッグウルフの主食は肉ですが、稀に果実を食すことがあります。豚や羊がいなくなって、肉が捕れなくなっても、生き延びるのはこの特性が理由と考えています」

 「なるほど。これほど豊富な知識を持っているとは、近隣諸国としてありがたいです」

 いえいえ、と謙遜するコードエッジ人。コードエッジは今、かなりの機械化が進む国でこれほど野生の知識を持っている人間は少ない。”コードエッジには農家がいない”とはこのこと。

 「果実の樹を切るのは少々心苦しいですので、今後、洞窟に向かう場合、積極的にビッグウルフ討伐をお願いします」

 会議はとうとう終わった。

 会議場所の廊下をヤマトたちは歩いていた。
 
 しかし、ライラの鬱憤は晴れない。

 「なんなんですかあの司会者は! とても代表者と思えません!!」
 
 「まあまあ……」

 なだめるヤマトの前に、二人組が現れる。

 「………なんですか………?」
 
 「やあ、クルガン代表者。ヤマトとライラさん」

 よく見ると、前の二人組は合同練習を予定しているコズイ帝国代表者、ガメスとマミだった。鋭い目付きで睨んでくる奴を、ヤマトも見返す。

 「喧嘩なら買いますよ?」

 「………………」

 「………………」

 睨みあう二人をなだめる女性陣。目があった瞬間、”あっ、この人も苦労してるだ……!”と意気投合した。

 「……ガッハッハッ!!」
 
 突然笑いだすガメスにヤマトとライラ、そしてパートナーであるマミまでも驚く。

 「いやぁ~、威勢のいい野郎が来たじゃねぇか! 俺ぁ、こういう奴が欲しかったんだ! こう、喧嘩腰じゃねぇけど、喧嘩するやつ!」

 「ちょっとガメス! 失礼よ!」

 笑い続ける大男。まるで酔ってるようだ。

 ____とりあえず、悪い人ではなさそうだな……。

 一通り落ち着いたガメスは、やはり朗らかに自己紹介を始める。

 「驚かせてすまなかったな! 俺の名前はガメス。コズイ帝国の第三陣代表者だ。こっちは……」

 「はじめまして、同じく第三陣代表者のマミです。先ほどはガメスがすみませんでした」

 丁重に謝る彼らには、さすがにヤマトも許せざるを得なかった。

 「それでは、我々も自己紹介いたしましょうか」

 「ああ………僕の名前はヤマトです。クルガン第三陣代表者となりました」
 
 「ライラです。今度の合同練習、よろしくお願いします。………それで、どのようなご用件でこちらへ?」

 「おっ、そうだった。忘れるとこだったぜ」

 「もう、しっかりしてよガメス」

 ____我々は一体何を見させられているんだ?

 ガメスがガハハ、と笑い笑い事ではないと華奢な腕でポコポコなぐるマミ。これがいわゆる、夫婦仲と呼ばれるものなんだろう。

 「用件は二つあってな。一つは、お前らクルガンの代表がどんな人間か知りたかったんだ。んで、二つ目は、その合同練習についてなんだが……」

 「あ、ああそのことなら、ライラから提案があるんだよね?」

 「はい。合同練習なのですが、PvPを取り入れたいのですが」

 「ピーぶい…………なんだそれ?」

 「ガメス、PvPというのは………」

 なんと、マミのほうからガメスへ説明してくれた。

 「おぉ、それいいな!」

 「じゃ、決定だね」
 
 「はい、それでは詳細は後日連絡したいと思います」

 「おう」

 「ガメス、違うでしょ!」

 「あっ、そうだった」

 ガメスは頭をガリガリと掻き、照れくさそうに言った。

 「あー、………明日って、時間あるか?」
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