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第五章:「大陸到着」
閑話その2 「隠れんぼ」
しおりを挟む―― ある日の出来事 ――
「ふふっ、サモン?」
「どうした?」
「遊ばないか」
何をして遊ぶんだろうか…
それにしても突然どうしたのだろうか?
「構わないが…一体何をして遊ぶんだ?」
俺の言葉に暫くバルバラは考え込んだ。
「その…『隠れんぼ』が…したい…」
そういうバルバラの表情は恥ずかしいのか、少し俯いているが、上目遣いで
俺の返事を『期待』しているかの様な目だ。
「そうなのか…良いぞ…」
「ふふっ、ありがとう」
そう言うとバルバラは、嬉しそうに微笑んだ。
確かに「本」を読んでいるだけだったからな。
たまには体を動かして遊ぶのも良いだろう。
さて、どちらから隠れようか。
「ふふっ、私に見付けさせて欲しい」
バルバラが言うならそうしよう。
「じゃ、バルバラは10数えてくれ。」
「ふふっ、分かった」
そう言うと、木に顔を隠す様にして10秒数え始めた。
「8…9…10…もう良いか?」
「良いぞ」
俺は近くにあった朽ち果てている、切り株に隠れた。
中は完全に空洞になっており、人が入れる空間が丁度あった。
俺はしゃがみ込む様にして、背中を丸めて隙間から様子を窺った。
暫くして足音が聞こえ、ローブをはためかせながら歩き回るバルバラの姿が見えた。
(久しぶりだな…)
久しぶりに遊ぶ隠れんぼは、見つかるかも知れないと言う恐怖と緊張が入り混じり。
何とも言えない『楽しさ』と『興奮』が身体を包み込んだ。
「ふふっ、どこに行ったんだ…?」
探すのに苦労しているのか、そんな言葉が聞こえてきた。
俺は口を抑えて息を漏らさない様にした。
すると後ろから突然声が聞こえて来た。
――ふふっ、見付けたぞ――
俺はバルバラの嬉しそうに言う言葉に驚き、思わず立ち上がった瞬間。
後ろから思い切り抱きしめられた。
「ふふっ」
俺は驚きと、突然の出来事で暫し固まってしまった。
もしや…これがしたいだけだったのでは…?
「バルバラ…?」
「ふふっ、どうした?」
「その…当たっているんだが…」
「何がだ?」
皆まで言わせるな…
バルバラ自身が一番分かっているのでは無いか?
「その…バルバラ?」
「ふふっ、どうした?」
「傍から見たらかなり…異様な光景ではないか?」
「どうしてだ?」
「俺はこうして朽ち果てた切り株の中で立った状態で、後ろから抱きしめられているんだぞ?」
「ふふっ…そうだな…『普通』では無いか?」
いや、バルバラの普通とは一体なんなんだ?
それよりもある箇所が背中に当たっているので離れて欲しいのだが…
「バルバラ…離してくれ…さすがにこのまま身動きが取れないのは…」
「ふふっ、分かった」
やっとの思いで、離してくれた…
隠れんぼとはこんなにも心身共に疲れるものだったか。
そんな事を思いながら、俺は切り株から出る事が出来た。
「ふふっ、それで…当たっているとは一体なんだ?」
「大丈夫だ。済んだ事だ」
「ふふっ、教えてくれても良いだろう?」
中々、食い下がる。
「いや、大丈夫だ」
「ふふっ、教えてくれ」
どうしてこんなにもしつこいのだ?
これは言った方が良いのか…いや、何とか言わずに回避出来る方法は…
「ふふっ、もしかして…『胸』の事か?」
俺がそんな事を考えていると、突然バルバラから『答え』が出て来た。
やはりバルバラ自身分かっているでは無いか…
俺は何も言葉を発さずに頷いた。
「ふふっ、可愛らしい奴め」
そう言うとバルバラは今度は前から抱き締めた。
「離してくれ」
「ふふっ、嫌だ」
「頼む」
「ふふっ、嫌だ」
「どうして離してくれないんだ?」
「離したく無いからだ」
いや、尤もな返事だが…
俺の気持ちも些か汲んで欲しいものだ。
「バルバラ?離してくれたら美味しいご飯を食べに行かないか?」
「ふふっ…どうしようかな?」
暫く俺の頭を撫でながら、考えている。
「ふふっ、甘い物でも良いか?」
「勿論だ」
「ふふっ、ありがとう」
やっとの思いで離してくれた。
俺は警戒してすぐさまバルバラと『距離』を取った。
いや、先程の行動を考えたら距離を取らざるを得ない。
「ふふっ、愛おしい」
「……」
「怒ったのか?」
「いや…怒っては無い」
実際俺は怒ってはない、どうして突然この様にしたのか不思議でならないだけだ。
それに先程まで楽しく隠れんぼをしていたのでは無いか。
「ふふっ、では愛しのサモンよ…そろそろ行こうか?」
「そうだな」
怒ってはいないが、あまり腑に落ちないまま俺達は歩み始めた。
だが、どうして場所が分かったのだろうか?
俺自身、考えて隠れたつもりだったのだが…
「それにしてもどうして場所が分かったんだ?」
「ふふっ、『髪』が隙間から見えていたぞ?それだけじゃない。『ローブ』もだ」
「そうだったのか…これからは気を付ける」
また、見付かってあの様になるのも遠慮したい……
それに見付かった事で、『悔しい』思いもある。
「次は…見つからないぞ」
「ふふっ、期待している」
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