34 / 75
気持ち
5-5
しおりを挟む「とりあえず放課後、教室に迎え行くね」
昼休みが終わるチャイムが鳴って、主人はそう言って何事もなく教室に戻る。
頭の中はまだどこかふわふわしてて、午後の授業なんて集中できるはずもなく、
迎えた放課後。
「みゆー、帰ろ!」
何事もないように爽やかな顔で現れた主人を、周りが放っておくはずもなく…
「え、蓮様じゃん、なんでここにいんの」
「今みゆって言った?え、月宮みゆって首輪外されたんじゃないの?」
うん、パニックになるのも無理はない。
周りの視線を一気に受けながら、主人のもとへ向かう。
「あの、蓮様!首輪制度ってなくなったんじゃないんですか?!」
そんな中、主人に唯一声をかけた女の子がいた。
きっとみんなが気になってるその質問。
「うん、なくしたよ」
「じゃ、じゃあ、なんでこの子と一緒に帰るなんて、」
女の子の視線が私に移った。
「え、まじありえない」
「首輪外されたくせに」と、誰かの小声が耳に入る。
冷たい視線に、背中がじんわり汗ばむ。
その瞬間、主人の手が私の手を取った。
「だって俺の彼女だもん」
その瞬間、周りが悲鳴に包まれる。
特に女子。
ああ、視線痛い。逃げたい。
「俺の彼女」
このフレーズは死ぬほど嬉しいけど、これ私荷が重すぎない?
「あ、そうだ。この際だから言っとくけど、首輪じゃなくなったからといえ、俺の子に手出したら許さないから」
"シーーン"
空気が張り詰めるのが私にもわかる。
確実に主人の殺気はパワーアップしてる。
「行こ、みゆ」
「え、ちょ、」
手を引っ張られた私は主人とそのまま教室を出た。
「れ、んさま?」
「ん?なーに?」
「今日、車じゃないんですか?」
いつも高級外車が外に待ってるのに、今日はそれがいない。
「んー、呼んでない。みゆ送って帰ろうと思って」
「え?私別に一人で帰れ……まっ…」
言葉を遮るように、私の唇に長い人差し指を押し付ける主人。
そして私の顔を覗き込むようにかがむ。
「ねえ、俺ら付き合ってるんでしょ?」
「……」
私はゆっくり頭を縦に振る。
「じゃあ黙って送られてよ、ね?」
「……ハイ……」
「いい子いい子」
とんとん、と頭をぽんぽんしてまた歩き出す。
……なに今の……。
彼氏の主人、甘すぎない?
「蓮様のそれって、もともとですか?」
「ん?それって?」
「…なんか、その…Sっぽい感じ、」
主人は、一度こっちを向いた後、息を吐き出すように笑う。
「んー、どうだろ。人によるかな。好きな子にはSになるのかも」
「……ッ、」
「今まで考えたことなかったなー」
頭をかきながら、考えるそぶりを見せる主人の横で、"好きな子"ってワードが頭から離れない。私って、こんな単純だったっけ。
「なんで?嫌?」
「…いや、嫌ってわけじゃ…」
「じゃあ好きなんだ」
「嫌い、じゃないです…」
「あ、またそれ」と私を見ながら笑う主人に思わず目を背ける。
「好き、っては言ってくれないんだもんな~」
私だって…
主人の言葉に、胸の奥がズキンとする。
ここで素直に好き、って言えれば可愛げあるのはわかってるのに。
自分が嫌になる。
さっきまで熱かった顔が、今度はじんわりと冷たくなった。
恥ずかしい。悔しい。でも、嬉しい。
「まあそうゆうとこがみゆっぽくて可愛いんだけどね」
でも主人のためなら、少しずつでも
素直になりたい、と思った。
「あ、家ここです、」
「へえ、ここなんだ。大きいね」
「いや、蓮様の家に比べたら全然」
「そうかな、一緒ぐらいでしょ」
もうお別れか。一人の時は長い道のりなのに、
今日は、一瞬だった。
「じゃあ、また明日ね。みゆ」
「…蓮様」
私は咄嗟に主人の袖を掴む。
「どうしたの?」
びっくりしたのか、目を見開く主人。
「…あ、あの…蓮様の、Sなとことか、でもほんとは優しいとことか…
ほんとは全部……好きです…これからよろしくお願いします」
私は恥ずかしすぎて主人の目を見れなかった。
「…じゃあ、また明日」
一方的にそう言って逃げるように、家に入る。
気持ちちゃんと伝わっただろうか。
あまりにも直球すぎた?
でもこれを言わなきゃ、私はずっと私のままだ。
せっかく彼女になれたのに、主人の前でずっと逃げ腰のままなんて嫌だ。
ああ、素直って難しい
家に入って30分間、私は玄関にうずくまっていた。
「いや、あれ反則だろ……」
主人もまた、私の家の前でそれ以上に照れていたのだった。
5
あなたにおすすめの小説
カモフラ婚~CEOは溺愛したくてたまらない!~
伊吹美香
恋愛
ウエディングプランナーとして働く菱崎由華
結婚式当日に花嫁に逃げられた建築会社CEOの月城蒼空
幼馴染の二人が偶然再会し、花嫁に逃げられた蒼空のメンツのために、カモフラージュ婚をしてしまう二人。
割り切った結婚かと思いきや、小さいころからずっと由華のことを想っていた蒼空が、このチャンスを逃すはずがない。
思いっきり溺愛する蒼空に、由華は翻弄されまくりでパニック。
二人の結婚生活は一体どうなる?
私はお世話係じゃありません!【時任シリーズ②】
椿蛍
恋愛
幼い頃から、私、島田桜帆(しまださほ)は倉永夏向(くらながかなた)の面倒をみてきた。
幼馴染みの夏向は気づくと、天才と呼ばれ、ハッカーとしての腕を買われて時任(ときとう)グループの副社長になっていた!
けれど、日常生活能力は成長していなかった。
放って置くと干からびて、ミイラになっちゃうんじゃない?ってくらいに何もできない。
きっと神様は人としての能力値の振り方を間違えたに違いない。
幼馴染みとして、そんな夏向の面倒を見てきたけど、夏向を好きだという会社の秘書の女の子が現れた。
もうお世話係はおしまいよね?
★視点切り替えあります。
★R-18には※R-18をつけます。
★飛ばして読むことも可能です。
★時任シリーズ第2弾
恋に臆病な私と恋を知らなかった御曹司の距離が、ゼロになるまで
夏目萌
恋愛
過去の恋愛が原因で、「女にだらしない男」を何よりも嫌う向坂 来海(29)。
一方、御曹司で誰にでも優しく、来る者拒まず──けれど、誰にも本気になったことのない羽柴 充輝(29)。
本来なら交わるはずのなかった二人は、ある出来事をきっかけに関わるようになる。
他の女性とは違い媚びることも期待することもない来海の態度に、充輝は次第に強く惹かれていく。
「誰にも本気にならない」はずだった彼の、一途すぎる想いに触れ、恋を信じることを避けてきた来海の心は少しずつ揺らぎ始めていき――。
不器用で焦れったくて、簡単には進まない二人の恋の行方は……。
他サイト様にも掲載中
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
君は恋人、でもまだ家族じゃない
山田森湖
恋愛
あらすじ
同棲して3年。
毎朝コーヒーを淹れて、彼の寝ぼけた声に微笑んで、
一緒に暮らす当たり前の幸せを噛みしめる——そのはずだった。
彼女は彼を愛している。
彼も自分を愛してくれていると信じている。
それでも、胸の奥には消えない不安がある。
「私たちは、このまま“恋人”で止まってしまうの?」
結婚の話になると、彼はいつも曖昧に笑ってごまかす。
最初は理由をつけていたのに、今では何も言わなくなった。
周囲の友人は次々と結婚し、家族を持ち始めている。
幸せそうな写真を見るたび、彼女の心には
“言えない言葉”だけが増えていく。
愛している。
でも、それだけでは前に進めない。
同棲という甘い日常の裏で、
少しずつ、確かにズレ始めているふたりの未来。
このまま時間に流されるだけの恋なのか、
それとも、家族へと歩き出せる恋なのか——。
彼の寝息を聞きながら、
彼女は初めて「涙が出そうな夜」を迎えていた。
俺様御曹司に飼われました
馬村 はくあ
恋愛
新入社員の心海が、与えられた社宅に行くと先住民が!?
「俺に飼われてみる?」
自分の家だと言い張る先住民に出された条件は、カノジョになること。
しぶしぶ受け入れてみるけど、俺様だけど優しいそんな彼にいつしか惹かれていって……
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる