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実録!雌の穴ほぐし屋さん!!
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通称『雌の穴ほぐし』。正式な名称としては、『女性器性機能向上、及び疑似女性器増設手術』は、魔術と科学が融合したこの新暦において、一般的な美容整形手術の一環として知られている。
その効果と主な用途―――夜の行為のマンネリ化を感じた夫婦や恋人が、新たな刺激を求めて女性器の性機能向上や、はたまたそれだけは飽き足らなくなった者たちは、『子宮直通の新たな性器』を増設するために行う手術―――が用途の為、『雌の穴ほぐし』と低俗な名称で広まっているそれはしかし、旧暦最後の世界大戦によって大きく減じた人口を再度増やすために、出生率向上のために世界政府が奨励しているため非常に一般的な手術である。
とはいえ、手術なのだ。本来であれば、クライアントの要望を聞き、手術の計画を立案。魔術的医療及び化学的医学両面からクライアントの身体を『造り替える』ものである。
しかし、ここ東京においてまことしやかに噂される、『雌の穴ほぐし屋さん』は違うという。どのような複雑で、難しい施術も、僅かな時間で、後遺症も残さずに行ってしまうらしい。
しかも、その『ほぐし屋』さんの場所は、とある一般的な樹木マンションの一室という話なのだ。妖しい。
非合法組織による若年層を対象とした未認可、無許可で行われる『雌の穴ほぐし』行為と、それによる性奴隷としての戦災未整備地域への人身売買が問題として取り上げられている昨今である。
この『雌の穴ほぐし屋さん』もまたその拠点の一つではないか、少なくともその問題の一端に切り込むことが出来るのではないか、と筆者がこの『雌の穴ほぐし屋さん』について取材を行ううち、なんと当の『雌の穴ほぐし屋さん』と接触を持つ事が出来た。しかも施術の様子を見せてくれるという。
正確な住所についての記述は控える事を条件として、今回、『雌の穴ほぐし屋さん』の直接取材となった訳だが、先に結論から述べると、『雌の穴ほぐし屋さん』は決して非合法なものではなかった。
それどころか、本誌における取材対象としては例外的な、あまりに光栄な対象を取材する事となった。
その重要性から場所についての正確な記載は改めて控えさせていただくが、それ以外についてはほぼすべての内容の掲載許可を頂いた。
とある、偉大な存在の、意外な一側面、あるいはお茶目な休日の様子を読者諸氏もぜひ目にとどめて頂きたい。
―――週刊東京『実録!雌の穴ほぐし屋さん!!(天藤氏要望によりお蔵入り)』冒頭より
―――かつての世界大戦よりはや50年。
魔術の再発見とそれに伴う利権の奪い合いに端を発した、世界観同士の戦争とも呼ぶべきそれは、ここ旧日本の首都、東京にも確かな爪痕を残していた。
かつては1200万人が生活していたそこは主要な戦場の一つとなり、現在に至ってもなお人口300万人と往時の喧騒を取り戻しているとはいいがたい。
しかし、この失った人口の代わりに得たものもある。科学と魔術の融合による新たな技術だ。ここ30年、『緑とコンクリートの真なる融和』をスローガンに新たに制定された都市計画にしたがって再整備された東京は、かつての映像記録に見られるようなコンクリートジャングルから、最新式の上級魔術強化樹木式建築物が立ち並ぶ、まるで旧暦のファンタジーに語られるような『エルフの森』という様相を呈していた。
そんな、『緑の街、東京』の都心部にあるなんの変哲もない一般市民の住まう中層向け樹木マンション。その一室に、『雌の穴ほぐし屋さん』はある。
エントランスの自動ドアを前に、事前に教えられた部屋の番号を入力してインターホンを押せば、相手からの応答はなくそのまま自動ドアが開き、エレベーターに乗って部屋の前へ。
扉の横に付けられたインターホンを押す前に、深呼吸を一つして周囲を見渡す。空は青く、周囲はこの樹木マンションと同一規格の樹木マンションが立ち並ぶ、何の変哲もない東京の一区画の景色といった風情。
目の前の扉も中層家族向けマンションの玄関に通じる扉にしか見えない。表札に関しても何も書いていなかった。果たして、このような場所で『雌の穴ほぐし』が行われているのだろうか。
意を決してインターホンを押す。しばしの沈黙。扉の先から、スタスタスタと、スリッパに包まれた軽やかな足取りが聞こえてくる。そしてそのまま、
「はーい、ちょっとお待ちくださいねー。今お明けしますから」
落ち着いた女性の言葉と共に、ガチャリ。機械式錠が開錠される音がして、扉が開いた。
「貴方が、『週刊 東京』の記者さんですか?」
そう聞いてくる女性の美しさに、筆者はしばしの圧倒された。まさに烏の濡れ羽色といった風情のつややかで豊かな髪を、ちょうど首のあたりで左右二つ結びにして、尻尾を体の前に垂らしている女性。
野暮ったく大きい眼鏡を掛けているが、その魅力を隠しきれるものではない大きく釣り目気味な瞳は、こちらに微笑みかけているため僅かに弓なりになっている。
ナチュラルメイクなのだろう。微かな朱の刺した唇は瑞々しさを湛えており、目の前の女性が妙齢であることを訴えかけていた。
さらには誠に失礼ながらも、直接的な表現をさせていただくならば、非常の豊かな胸をニットのセーターに包み、群青色のロングスカートにスートールを纏ったその姿は、『文学が好きな深窓のご令嬢』といった風情であった。
「はい。そうですが……助手の方でしょうか?」
後から考えると非常に、それこそ、ここで殺されても文句が言えない質問であったが、『彼女』はこちらの問いに対して、首を振って否定した。身長は150センチあるかないかだろう。まるで少女のような背に、大人の女の魅力を一杯に詰め込んだ彼女は、微笑みながら、こちらを見上げ、
「ウフフ……助手さんに見えますか?残念、私がその……」
そこで顔を赤くして、言い淀む。深窓の令嬢といった風情の彼女としては、その通称を口にするのは少し恥ずかしかったようだった。
「『雌の穴ほぐし屋』の、セリアです。よろしくお願いしますね?」
そういって『雌の穴ほぐし屋』のセリア女史は微笑みかけた。
―――まずは、上がってください。
そういって通された部屋の中は、まるで変哲もないファミリー向けマンションの一室といった風情だった。
可愛らしい女性的なインテリアがそこかしこに飾ってあり、アロマを焚いているのだろうか。システムキッチンを備えたリビングには柑橘系のさわやかな香りが満ちていた。
そしてリビングの机に案内され、『今お茶を出しますから』としばし待ってる間に失礼にならない程度に部屋全体を見渡しても、何ら『雌の穴ほぐし』に使われるような医療器具を見つける事が出来なかった。
ただ一点、リビングの壁に額縁で飾られている写真だけだ異彩を放っていた。最新式の宇宙服に身を包んだ完全防護状態の屈強な男女に囲まれて、丁度今お会いしたようなご令嬢の装いでセリア女史がそこには写っていた。
背景はどうやら宇宙のようだ。背景に瞬く星々が美しい。ならば、背景ははめ込みか合成だろう。そうでなければ他の被写体と違い生身のセリア女史に説明がつかないからだ。そういえば宇宙ステーションにこういった写真を撮れる観光設備があると聞いた。いずれにせよ、どうやらセリア女史と他の写真に写っている諸氏は仲が良いらしい。皆が皆満面の笑みだ。
「宇宙を旅行されたことが?」
お茶を運んできた女史に質問を投げかける。これも後々の事を考えるとあまりにも失礼であったが、セリア女史はそれに対して何も言わずに、パァっと笑みを浮かべて、頷きを返す。
「はい!大好きです!宇宙!!」
そういうセリア女史の雰囲気に、その時は印象よりミーハーな方なのだな、と筆者は思った。また、深窓の令嬢然としたその雰囲気からは予想外に、中々おしゃべりが好きなようでもあった。
宇宙、新暦において最も将来が期待される分野。科学と魔術の融合により、人類は光年レベルの長距離移動を短時間で可能とした。そうなれば居住可能な惑星の探索が行われ、事実、居住可能な惑星が発見され、現在魔術を基幹とした惑星開拓技術によって環境改善中だ。
一般人がまだそういった惑星自体に降り立つことはかなわないが、その惑星開拓の中継地点である宇宙ステーションには一般人も高額ながら旅行に行くことは可能である。
つまりはそういう旅行者の一人なのだろう。そこから類推できる事は、セリア女史が一般市民としては高級な暮らしをしているという事だ。見た所このファミリー向けマンションにも一人で住んでいるようで、それだけの資産を得るには、やはり違法な『雌の穴ほぐし』を行っているのだろうかと、著者の疑念は増すばかりであった。
それから、ある程度お互いに世間話を挟んでから、核心に切り込んでいくこととする。
「さて、セリアさん。今日はお招きいただいてありがとうございます。そのうえでまず前提としてお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はい。なんでしょう?」
「『雌の穴ほぐし』が資格の必要な医療行為である事は、ご存じですね?」
著者は、断定口調で聞いた。その雰囲気、世話話から感じた印象としても、取材対象の女性は聡明だ。これを分かっていない筈がないという意図での質問。
果たして、微笑みながらセリア女史は頷いた。
「ええ、勿論存じております。これでもちゃんとお医者さんの資格、持ってるんですよ?」
どうです?と言わんばかりにその豊かな胸を張ってフンス!と意気込む様子は誠に可愛らしく、ついつい追及の手を緩めそうになる。美人は、得なものだ。
「ではその、医療行為を行う事業所の届け出が必要な事は?」
「勿論」
「でしたら何故……『女性器性機能向上、及び疑似女性器増設手術事業所届け出一覧』にここの住所の記載がないんですか?」
そう、今日ここに来て、この『事業所一覧にない』というのが、『雌の穴ほぐし屋』の違法性について追及しようとしている根拠であった。
基本的に魔術と科学の複合的な医療行為については、そのバランスが崩れるとどのような災害が発生するか未知数な為、事業所の届け出が義務付けられている。
当初、『雌の穴ほぐし屋さん』にアポイントが取れ、その場所を聞くことができた。そのため、
この『事業所届一覧』に記載された住所とも照らし合わせたにも関わらず、届け出済みの住所には事前に聞いた住所はなかった。
それはつまりこの『ほぐし屋さん』が届け出を出してない未認可な事業所であることを示している。
こちらが根拠を述べても、セリア女史は笑みを浮かべたままで、頬に人差し指を当てて少し中空を見上げた後、小首をかしげ
「えー、はい。超法規的措置です☆」
にこやかに答えた。
「どのような理由があってそのような事が・・・!」
あからさまにはぐらかされた返答に、思わず語気が強くなる。身を乗り出してさらに追及しようとした瞬間、
「記者さん?」
機先を制してセリア女史がこちらの目を見ながら声を掛けて来た。今までのどこかしら明るく軽やかな声ではない、静かで重い声。
明らかに今まで違う雰囲気に、こちらも身を乗り出したまま、思わず追及の手が止まる。
そしてそのまま見つめ合う事数秒、先に口を開いたのは、セリア女史の方だった。
「私は、『本来なら一月や二月かかる雌の穴ほぐし手術を僅か1日で済ませてしまうという奇跡の雌の穴ほぐし屋さんの技術について取材がしたい』との事でその許可をだしたのですが……本当はこの場所の違法性を問う取材だったと……?」
「た、確かに当初はそうでした!ですが、『事業所届一覧』にない以上、その違法性は明らか!でしたら昨今の違法雌の穴ほぐし屋さん問題の一端に切り込む端緒として、取材できればと思った次第です」
「嘘ですね。もとから違法な、ほぐし屋さんだと思って取材するつもりだったんでしょう?」
圧が、更に高まる。静かな瞳の中に、著者は言い知れない何か、深いものを見出した。知らず、乗り出していた筈の身が、下がり、椅子へと沈み込む。
この段階で、著者は、セリア女史の正体について察することができた。
「やはり……魔術師……」
その可能性は考慮していた。『雌の穴ほぐし』は魔術と科学的医療双方を思って施術する。ならば、見た所ひとりでこの『雌の穴ほぐし屋』を切り盛りしているのだから、セリア女史が魔術師であって当然なのだ。
魔術。遥か太古の昔、最初の人によって見出された、この惑星に存在しない筈の力。空気中に漂っているが、光学的、科学的に観測が困難な非物理的な素因である霊子に、一定の図形や言葉、様式で以て干渉、『科学的プロセスにとは違った形で』現象を引き起こす奇跡の御業。
既に『最初の人』がもたらした際には呪文や術式について、一定の形式に纏められていたという事から、恐らくは『最初の人』自体が他の惑星からの転生者であったという見解が現代においては有力ではあるが、いずれにせよそれは限られる者しか知らない技術であった。
神話や伝説に語られる古代においては、素質ある者が『神の力』として振るい、そこから社会が形成、成熟されるに従って、だんだんと社会の上層部、また裏の暴力の世界に押しやられていったそれは、産業革命を経て科学文明が急速な発達を見せてゆく中で、再び一般市民の目に晒される事となる。
科学技術発展による隠匿されていた魔術の発見と、その混乱、及び動乱については読者諸氏も歴史の授業で十分習っていると思うのでここでは割愛させて頂くが、いずれにせよ現在、魔術は、科学と共に我々の生活を支えている重要な技術として一般的なものと認知されている。
とはいえ、都市インフラを支える永続的な効果を発揮する魔法や、人口霊石を動力とした、物理スイッチによる術式操作を除いて、魔術という技能は非常に属人的な技術である。
魔術を扱うには、魂の資質が必要だった。
魔術によりその存在が確定、定義付けられた魂は、その存在の精神や本質を決定付ける心核と、そして心核を覆っている、『霊子に干渉できる出力』を決定する魂殻の二種で構成されていた。
そしてこの心核と魂殻が魔術を扱う、つまりは霊子に干渉できるだけの資質を備えて生まれる者の確率は実に10人に1人。
それもこれはあくまで『資質がある』という話であって、その扱える能力が高くなるに従って、確率は天文学的に減少してゆく。
魔術師の最高位である、創星魔術を扱う創星級魔術師に至っては、今もなお一線で活躍する、かつて大戦を終結に導いた英雄、『六人』を除いて存在すらしていない状況である。
そんな魔術師であるが、実際のところ属人的な技術かつ大戦後の混乱期から立ち直りつつある現在、『魔術師』である事を隠すことは案外そうは苦労しない。出生時と教育機関初等部入学時に素養の検査はされるがそれまでだ。
勿論その検査で先天的にたぐいまれなる素養を見出されることも多々あるが、その後の成長でその才能を開花させるものも居る。
すべての魔術師が、魔術学院まで進学した登録済みの魔術師という訳ではないのだ。とはいえ、敢えて隠すよりも、ちゃんとした専門学校に通う方が当然一般企業の就職にも有利な為、大部分がそうするのだが、ごく一部はなんらかの事情からそういった道を選ばず、裏社会に身を窶す事もある。
おそらく、セリア女史はそういったそういった裏社会に身を窶す魔術師の一人なのだろう。このような美人が日の当たらぬ場所で生きているとは、なんともやるせない。
とはいえ、そのような感傷はともかく相手が魔術である事を想定して、当然こちらも対策はしている。スーツの裏には各種魔術防護用の呪符を仕込んでいたし、何よりジャーナリストとして危険な場所に赴く際の緊急手段として、PMCとは契約済みだ。
沈み込んだ体のまま、懐にあるPMC直通の情報端末へとエマージェンシーコールを送ろうとした瞬間、
「無駄ですよ」
バツン!!!懐の端末が、鈍い音を立てて何の反応も返さなくなった。軍用として物理的霊的に質実剛健の作りをしているそれが破壊された事に対して顔を引きつらせながらも、勝利宣言をする。
「は……はは!この端末は10分に一度信号を送信しています。それが途切れればここの住所を知るPMCが1時間以内にこの部屋に殺到しますよ……!」
それまではこの体中に仕込んだ防御用呪符で対応する予定であった。
しかし、一切焦った様子を見せず、セリア女史は笑みのまま、
「そうですか」
頷きの後、右手の人差し指で、机を叩いた。トン、と軽い音がやけに響く。
そして次の瞬間、机がわずかに発光して、
「……え?」
パチ……と軽い音。そして、スーツの裏に仕込んだ呪符が全て効力を失った感覚を寄越してきた。
おそらく読者諸氏はこのような経験をすることはないと思うので、後学のために著者のリアクションをここに記しておく。
万全の守りと思っていたそれが破られた時、感じたのは命の危機ではなく、恥ずかしながら
「こ……これだけ揃えるのにどれだけかかったと思ってるんだよぉ」
という情けない悲しみだった。なお給料半年分であることを明記しておく。それだけの価値は、あった筈なのだ。
こちらのその反応は流石に予想外だったらしく、セリア女史も慌てて、
「あっ!そ、そうですよね。記者さんとしては大事な物でしたよね!す、すいません!」
そう言うとパン、と拍手を一つ。
「【破却術式実行対象復元】【復元物強化】―――【復元完了】」
呪文が唱えられ、その呪文に込められた機能が発動する。そして瞬時にスーツの裏の呪符の全てが効力を発揮している感覚が戻って来た。
こちらが言葉を失っていると、眼前の女史は可愛らしく手を合わせて、
「ごめんなさい!そうですよね。記者さんとしては高価なものですもの。お詫びと言っては何ですが、先ほどのものよりちょっと強化しました。勝手に壊してしまって申し訳ないです。ただ、一応こっちは預からせて貰いますね?」
そういうと彼女の右手には何時の間にやら懐にあった筈の通信端末が、握られていた。しかもどうやら先ほどの術式で修理されたのか、完全な状態で。
もはや、こちらは曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。彼女は、セリア女史は相当高位の魔術師だ。
そして私は、その魔術師のテリトリーに居る。取材どころの話ではなかった。私はこの魔女の機嫌をどうにか取り、どうにかこの場から逃げ去らねばならない。その一心であった。
「さて、それでは行きましょうか」
今しがたの緊張感のあるやり取りなどまるでなかったかのように、セリア女史は楽し気な笑みを浮かべて席を立ち、こちらを案内する。そこは玄関からリビングへ続く道ある、扉だった。
なんの変哲もない扉だったがしかし、
「それじゃあ今から、『雌の穴を解し』ますから、ぜひ取材していってくださいね?」
扉を開ければ、そこには明らかに構造上おかしい『下へと続く階段』。異空間への道である。
『今ここにある現実からわずかに揺らいだ場所』を異空間として己の制御下に置く術を持つ魔術師は、熟練の高位魔術師の証拠だ。今まで著者が直接取材した中にも存在しない。
もはや毒を喰らうば皿まで。著者は、女史に誘われてその階段を下っていった。
階段を下りた先には、大体縦横高さ、共に大体5メートル程の空間が広がっていた。どこか医療機関の手術室を思わせる清潔で無機質な白く明るい空間である。
そして、その部屋の中央には、決して医療機関の手術室ではありえないものが鎮座していた。
その円形の金具から伸びた鎖で、円形の内側にいる少女の四肢を拘束した台座である。どうやら少女自体気絶しているらしく、数多を俯き気味にして全く反応を寄越さない。
垂れ下がった頭の口元には僅かな陰。どうやら、猿轡も噛まされているらしい。
「これは明らかに犯罪ですよね!?!?!?!?誘拐ですよ!?!?!?!?!?!?!?!?」
明らかなその空気に思わず著者が叫びをあげてもなお、セリア女史はニコニコと微笑みつつ、
「確かに誘拐はしましたけど犯罪ではありませんよー?」
とニコニコ意味不明な返しを返すばかりである。
「と、ともかく連絡しなければ、警察に……!」
「無駄ですよ?ここ、そういうの通じませんから」
「あっ!くそ!そうか!!やっぱりそうか!!!」
とこちらが動揺している間にも事態は進行してゆく。こちらがうるさくしていた声で意識を取り戻したのだろう。眼前の少女が愚図りだした。意識が覚醒しようとしている。
「あっ!ほら記者さんがうるさくするから起きちゃいましたよ?もぅ~~」
「私が悪い流れではないですよねこれ!?」
と可愛らしく口を尖らせるセリア女史ではあるが、もはやそれで騙される私ではなかった。
「あっ、そうだ記者さん」
「……なんです?」
騙されないと同時、彼女がこちらの要望を聞く気が一切全くない事も認識した私は疲れながらもその言葉に耳を傾けた。
「大丈夫ですよ?本当に。ご両親からも許可は得てますし。あ、私の事はセリア女史ではなく女史と読んでください。……それで気付かないとも限らないですしねぇ」
「?それはどういう……」
こちらの疑問を尻目に、セリア女史は台座の横に鎮座している、彼女の腰ほどの高さの清潔そうな棚に載せられた医療器具らしきものに手を取って、何やら確認していた。
そうすれば、当然拘束された少女が目を覚ます。
『こ、ここ……ここ、は?』
猿轡は噛まされている筈なのに、なぜか少女の声は少しノイズがかっていたが、明瞭に聞き取れた。
自身の状況が上手く認識できていないのだろう。意識が覚醒したばかりの眠そうな半眼で、周囲を見渡している。
「あ、あの猿轡はどちらかというと舌噛まない用なんですよ。私個人の趣味でちゃんと話せる形にはなってるんですよね」
と恐ろしい事を述べるセリア女史を尻目に、少女を観察する。
美しい少女だった。
灼熱のように鮮烈な赤い長髪を腰ほどまでに流し、前髪はぱっつんと切りそろえられている。どうやら眉だけでなく、まつ毛まで赤い事から染めているわけではない、地毛だ。
事実、魔術師はその心核の特異性から髪の色が通常のホモサピエンスと変わっている事はよくある。
だんだん覚醒してきて周囲をきょろきょろと観察するその瞳は釣り目気味で美しく、眉とまつ毛も整えられており、意志の強さを感じさせた。
大の字に拘束されているからこそ、まるでモデルのように長い手足もよくよく見える。服は着ているにも関わらず、足は裸足であったため、そのつま先までしっかり手入れされている事がよくわかる。
身長は大体160センチ後半程だろうか。その顔つきから十代半ばから後半に見える少女としては割と背が高い。
そして何より、その身に包む制服。シャツにネクタイとその上を包むブレザーと、可愛らしいミニスカートは造りからして高級感を漂わせ、何よりそのブレザーの肩から金具で留めれて後ろに流されている特徴的なマントから、その制服がどこのものかは明らかであった。
「都立魔術高等院の制服……!?」
そう、旧日本の首都東京において最も権威ある魔術学習機関の制服である。都立魔術高等院。
卒業すれば、エスカレーター式に旧日本最高の魔術学府である東京大学魔学系研究科、魔学部への進学がほぼ約束されるその学院はどのような地位の者にも門戸を開いているからこそ、志願率は尋常ではなく、倍率は50倍。
実力主義の校風が色濃く、卒業までに約7割が成績不良を理由とした退学の憂き目に合い、他の著名な魔術の私立に流れる程である。
しかしそれゆえに、現役生は皆優秀な生徒ばかり。とはいえ、問題がない訳でもない。倍率50倍の厳しい入学試験をパスする事など、それこそ幼少期からそれ専門の教育を受けていた人間位しか不可能である。
そのため、学生の9割9分が所謂上流階級の子女で占められており、更にはなまじっか優秀である為、皆プライドが高く、別名『貴族主義魔術師養成機関』とも呼ばれていた。
ともかく、その都立魔術高等院の学生が、何の因果か今円形の台座に拘束されていた。
さらに、である。きょろきょろを見渡すその姿をよく観察するにあたり、彼女の素性も、著者は察する事が出来た。
こちらから問いかける前に、現状をある程度察した彼女が、言葉を上げる。
『な、なんですか此処は!?どなたですか貴方達は!?この狼藉、私が千勝院 綾香と知っての行いですか!?!?!?!?』
そう、千勝院 綾香である。今一番、都立魔術高等院の学生としては有名な人物であった。
千勝院家は、50年前の世界大戦を足かけにして急成長を遂げた新興財閥である。大仰な名前だが、これについては大戦時に、願掛けを含めて初代当主が改名したらしい。
基本的に旧日本の法律では、むやみに苗字を新しくすることは不可能であったはずであるので、それを可能とした当時の千勝院家の勢いがどれほどあったか察する事が出来る。
財閥としては現在3代目。眼前にいらっしゃる千勝院家のお嬢様の御父上、厳勝氏が運営しており、3代目として、その苗字に似合わず、名前に似合った安定的かつつ堅実な運営をしているという事で有名であった。
3代続けばその後も安泰とよく言われる以上、相当なプレッシャーの中そつなく運営出来てる事自体が、氏の有能さを物語っているというのがもっぱらの評価である。
財閥としては、新興財閥によくある魔術関連に重きを置いた企業体系となっており、特に基幹となっている、魔術発動補助媒体メーカー、『SENSHO』は女性向け魔術発動補助媒体分野にて、世界で有数のシェアを誇っている。
そのご令嬢ともなれば、世間に露出する機会も多く、綾香嬢は厳勝氏の妻であり、優秀かつ有名な魔術師でもある『朱炎のレスリー=アン・スーザン・千勝院』女史の資質を色濃く受け継ぎ、当然のように都立魔術高等院へと進学。優秀な成績を収めているとの事だった。
学内においても優秀かつお嬢様である彼女は、その生まれと現状からか自信家の高飛車なお嬢様、というのがもっぱら周囲の評価である。そしてその自信に見合うだけの実力も確かに備わっている、という評価もまた受けていた。
「ええ。存じてますよ。貴方が千勝院 綾香さんであることは。そうでもなければ、こんな事いたしませんもの」
ニコニコと肯定の意を示すセリア女史に、さすがに気が気でない。こんな、明らかに、千勝院家へと仇なす行為。無実であると私自身の潔白を叫んでも、どう考えたって共犯にされる流れである。
とりあえず綾香嬢の視界に入って刺激しないようにするしか、その時の著者出来る事はなかった。
「あっ!安心してくださいね?重力制御で浮かせてるから、特に体重がかかって四肢を拘束する手錠が擦れて痛いって事はないでしょう?そこは、オンナノコでしょうから。ちゃんと考慮してあげました」
そういってフンス、と胸を張るセリア女史。魔術としても超高等、科学的にそれを再現した装置を購入するとするとしても、億はくだらない技術をさらっと使っている旨を語るその言葉に、もはや著者は驚き疲れ始めていた。
『……っ!舐めた事を言ってくれますわね!!!!後悔なさい!!!【我は遍く炎を友とする苛烈なる勝利者!】【炎熱顕現摂氏三千度!】【炎熱収束!】【照射!】』
それがどれだけ高等な魔術であるかは、綾香嬢こそが理解できるものであったのだろう。セリア女史の言葉に僅かにひるみながらも、攻撃系の魔術を放とうと呪文を紡ぐ。嬢の眼前に突然爆炎が顕現し、そしてそれが収束。熱線として放たれる。
そしてそれを当然の事のように、
「【解術】♪」
たった一言でセリア女史はかき消した。
『なっ……!』
おそらくは綾香嬢も現状を判断して、先手必勝を仕掛けたのだろう。判断自体は間違っていなかったようで、その攻撃自体はセリア女史としても予想外だったらしい。手を叩くように合わせてどこか感心したように言葉を紡ぐ。
「へぇ~!凄い!凄いです!そのお年でもう、心核翻訳を見出しての術式強化が出来てるとは。もう魔術師としては一人前なんて、綾香さんは本当に優秀な方なんですねぇ」
心からの称賛といった様子の言葉はしかし、今しがたその強化された術式をたった一言で解除した本人が言うならば皮肉にしかならない。事実、セリア女史は眉根を寄せて
「とはいえ、私にちょっとでも届かせようとするなら、せめて【炎熱顕現摂氏六千度】に【疑似太陽顕現概念付与】と【収束複製多重照射】くらいはやってほしかったですねぇ。……所詮はそんなものですか」
著者は残念ながら魔術の専門家ではない。だからセリア女史の言葉がどれだけ無茶であったかは厳密には理解できないと言えど、綾香嬢の青ざめた顔が、それだがどれだけ高等な技術かは察する事が出来た。
青ざめた顔のまま、猿轡を噛まされて、綾香嬢は振るえた声を絞り出す。
『教授級が扱える術式でないと届かないなんて……ご冗談はおよしなさい!!』
「あはは。冗談かどうかはともかくとして、あなたの術式が届かない事は理解できましたね?とはいえ、一々解術するのも面倒なので……はい。【発動阻害領域展開】ね?」
『っ!?うそ!そんな適当な詠唱でこ、こんな高度な術式!!な、何者ですの貴方!?!?!?!?』
どうやら魔術の発動を阻害されたらしい綾香嬢が本格的に焦った声を上げれば、それにまるでなんともないかのような微笑みを返して、
「何者って……『雌の穴ほぐし屋さん』ですよ♪」
そう言いながら、傍らの台から一つ、霧吹きを手に持った。
「はい!という訳で記者さん、今から雌の穴をほぐしていきますよー!!」
と、楽しそうにセリア嬢がこちらに向き直って宣言した。そうしたならば、当然綾香嬢もこちらを向き直り、
『あ”!貴方!貴方何していますの!?この女の仲間ですわね!?助けなさい!ほら!!!顔を覚えましたからね!!!今助けないと後で貴方、この女ともども酷いですわよ!!!!!』
大の字に拘束された四肢をユラユラと揺らしてこちらに助けを求めてくる。
それに対してはこちらもあいまいな笑みを浮かべ、
「い……いやぁ」
と答えるしかない。確かに今ここで綾香嬢を助けなければ後が酷いかもしれないが、そもそも今ここでセリア女史に歯向かって助かる自信が全くなかった。
『こ、この愚図!お馬鹿!!!ちょっとは私の役に立とうとは思いませんの!?』
あしざまにこちらを罵ってくるお嬢様に対して、どうやらセリア女史は気分を害したらしい。スッと近寄って行き、
「うるさいですよ、綾香さん」
「ムッー!?ムッ?ムゥー!ンムゥー!!!」
綾香嬢の言葉が猿轡を噛まされたものとなった。
そしてしばしの時間が経ち、叫び疲れた頃を見計らって、セリア女史が再び声をかける。
「この方は観客ですから、特にあなたを助ける事はありませんし、そもそもあなたが助かる事はありませんよ。さて、話の腰が折られましたね。では、雌の穴をほぐしていきましょうか」
そう言いながら拍手を一つ。そうしたなら、
『え?……は!?いやぁぁぁぁぁあああ!?!?!?!?』
いきなり綾香嬢の羽織っていたブレザーが消滅して、その下に着ていたシャツのボタンが全てはじけ飛んだ。僅かにシャツが開き、可愛らしくレースがあしらわれた、その慎ましやかな胸を包む白のブラジャーもわずかに見えている。
そしてなにより特筆すべきは、その年ごろの少女らしい可愛らしくも柔らかそうな腹部と、その中心に控え目に存在する、臍だった。
ここからの描写に関しては、著者自身の欲望に従って綾香嬢の姿をつぶさに観察し、描写している訳ではない。セリア女史の要請によるものである、という事を注釈として先に述べさせて頂く。
ともあれ、臍である。セリア女史はそこに並々ならぬ興味があるようで、年頃の少女の健康的な白い肌に覆われた腹を、霧吹きを持っていない方の手で撫でまわしながら、臍に視線をやって妖しい笑みを浮かべる。
「あは!流石お嬢様。健康状態もいいですし、可愛らしいお腹に、お臍ですねぇ。これなら、いやらしいものが出来そうです♪」
『ヒッ!?へ、変態……!やめなさいこの変態!!ど、どうするつもりですの!?!?というか何故このような事を!?!?!?!?』
「どうしてでしょうねぇ」
はぐらかしながら、下腹部を覆うシャツを捲って安全ピンで止める。そして、霧吹きに入っている液体を噴射して、腹全体に吹きかけた。
『あっ!冷たっ!や、やめなさい・・・!』
綾香嬢の講義もものともせず、医療用の薄いゴム手袋を両手に付けて、ガーゼで下腹部全体にまんべんなくふりかけた液体を塗り広げてゆく。
ツンとした、アルコールの匂いがこちらにも感じられた。さて、魔術にこういったアルコールは使われるのだったか。
「ええと、女史。このアルコールのような匂いの液体は、どのような魔術的な効果を発揮する液体なのですか?」
「あ、これですか。これは普通に医療用アルコールです。お腹を弄るので、一応雑菌が入らないように、消毒ですよ。魔術でも消毒出来ますけど……わざわざ術式と詠唱してそういう事やるよりも、手っ取り早いですからねぇ」
そういう事らしかった。なお、逆にこの部屋全体は魔術によって完全無菌状態にしているらしい。なるほど、これが魔術と科学の融合と神妙な顔で頷くこちらと違い、たまらないのは綾香嬢だ。
『お、おな、お腹を弄るですって!?この千勝院 綾香の体を弄るなんて……』
「さて、消毒したので、改めて。まずはこれを使っていきますね」
そういってセリア女史が取り出したのは、細くとも確かな存在を示す、金属製の、長い針だった。
「これをどうするかというと、なんと!綾香さんのお臍に刺します!!お臍にさして!!!お臍の穴を解していやらしい、雌の穴にしていきますよっ!!!!」
どうやら、テンションが上がっているらしい。先ほどの深窓のご令嬢然とした雰囲気とはまた違う、どことなくマッドサイエンティストといった雰囲気を漂わせながら、セリア女史は宣言した。
『へ、臍!?ひ、ヒィィィィィ!?!?!?!?!?!?何、何をおっしゃってるの!?おやめなさい!!!』
セリア女史の本気を感じ取り、顔を真っ青にしながら全力で拘束から逃れようと綾香嬢が四肢を暴れる。
「大丈夫ですよ。痛くはしませんから」
『そんなもの刺されて痛くない筈がないでしょう!?』
額に脂汗を浮かべて、必死に体を動かそうとも綾香嬢が逃げる事など出来はしなかった。
「よし、では行きますね……」
そうして、左手を腰に添えて、真剣な瞳で右手に針を持ち、臍へと狙いを定める。丁度セリア女史の腕程の長さもあるそれの先端が、ゆっくりと臍へと近付いてゆき……
『いやいやいやいあやいやいやいやいやぁ~~~~~~!!!!!!!……あ?れ?痛く、ない?』
叫び声をおあげていた綾香嬢が、怪訝な声をあげた。
たしかにプツリと、針の先端は臍の中心に突き立っているにも関わらず、どうやら痛みを感じていない事が、見て取れる。
「もう!だから大丈夫だって言ったじゃないですか。今この針は、魔術的処理によって実体と非実体の合間を揺らいで存在しています。だからこうして」
ヌプププププと湿った音と共に、針が臍の中へと吸い込まれてゆく。
「入れても痛みを感じない訳ですね。あくまで体に入ってる針は、そこには『ない』わけですから。この針は、非実体状態を解除した際に、針の実態部分が顕現するマーカーみたいな役割になってるんですよ」
そう言いながら、真剣なまなざしで針を刺してゆく。まなざしには、職人としての鋭さが備わっていた。
『な……何を言ってるんですの貴方!?ひ、非実体と実体の間を揺らぎながら、触る事が出来るだけの存在可能性を付与するなんて、大学の実験室レベルの話ではありませんの!?それを、それをこんな……』
「そうですよぉ。実験室レベルの話です。つまり綾香さんは、実験室レベルの事をされてる実験動物っていう事ですね。魔術と科学の発展に貢献できるなんて、綾香さん良かったですねぇ」
『よくありませんわよぉ!わた、私を実験動物だなんて……!この千勝院家の長女にそのような辱め、ゆる、ゆるしませんわ!!』
「アハハ。四肢を縛られて、お臍に針を刺されてるような状態で凄まれても全然迫力がありませんね」
涙目になりながら抗議する綾香嬢の罵倒も何のその。呑気な口調で返しながら、セリア女史は針を突き刺し進めていった。
『おやめなさい!おやめになって!』
そして綾香嬢も同様に抗議の声を上げながら、身を捩る。
叫びをあげる綾香嬢とそれを意に介さず針を刺し進めてゆくセリア女史。しばし二人のすれ違ったやり取りが続いた後、突然、セリア女史が僅かづつ進めていた針の動きを止めた。
『や……やっと聞く気になりましたかしらこの変態!!』
「ちょっと黙ってください」
返答は、鋭い声だった。
「今、針が膀胱の上あたりに来てます。もし今まで見たいにギャーギャー喚いていたら……針が膀胱を貫通しますよ。そうしたら針を実体化したら、大変ですね。膀胱に穴が……開いちゃいますねぇ。膀胱に穴が開いたら、おしっこが体の中に垂れ流しですねぇ」
『ヒッ……』
その状況を想像したのだろう。思わず綾香嬢も静かになり、動きが固まった。
「そうそう。それでいいんです」
そうして、ヌヌヌヌヌとさらに針が沈みこんでいき、ついにどこかに突き当たったのだろうか、針が止まった。
『んぃっ!?♥♥♥♥……え?な、ん。なんで?なんでですの!?』
そしてそれに伴って綾香嬢がどこかしら艶めかしい声を出したかと思えば、顔を青ざめさせて色を失う。
「記者さん、これはあまり一般には知られてない魔術の知識なんですが、形而上の存在である魂は、魔術的観測が古来より行われ、また最近ではそれを取り入れた科学によってもその存在自体は観測、実証されている訳です。ではその魂が人体のどの『部位』、『存在』はないので、座標と言ってもいいですね。どこに魂が概念的にあるか、ご存じですか?」
『あっ♥おっ♥おや♥おやめに♥なっ……て、ヒンッ♥』
どうやら綾香嬢はその答えを知っているらしい。どうにか言葉を止めようと声を荒げるが、クリクリとセリア女史が針を回す動きに従って、煽情的な声があがり、中断される。
「いえ。その……不勉強で申し訳ない」
「いえいえ。非常に専門的な話なので仕方ないです。で、改めて話を戻すんですが、その魂の座標、男女共に共通なんです。……子宮。なんですよ。子宮の中心に魂はあります。男性に関しては、厳密に言うと『子宮と成りえた位置』にあるんです」
「後者については魔術の世界では『女性が、命を生み出す重要な場所である子宮に魂が存在するのに対して、なぜ男性の魂が陰茎や精巣でなくそこに宿るのか』というのは魔術界長年の謎だった訳ですが、そこらへんは科学の知識に感謝ですね。『魂は、子宮に宿る』という訳です」
なぜ今その話をするのか。大体察する事が出来た著者は、どうやらげんなりとした顔をしていたらしい。抗議するように唇を尖らせながら、セリア女史が話を続ける。
「あ!そんな詰まらなさそうな顔をしないでくださいよ~。これから面白くなるんですから。で、この話をする以上、今非実体の針は、綾香さんの魂を捕えています。つまり、子宮まで到達したんですねぇ」
『こ!この!変態!鬼畜!!!ひ、人の!乙女の大事な所をそんな勝手に!!最悪ですわぉっほ!?♥♥♥♥』
「人の大事な所を……ねぇ。貴方がそれを言っちゃいますか」
思う所があるのだろう。女史がおもむろにクリクリクリッっと針を回すと、快楽を感じるのだろうか。めちゃくちゃに綾香女史のお腹が跳ねた。
『あっ♥やめ♥なん♥なんで♥♥♥♥こ、こんな♥こんなイッ♥イクッ♥♥♥♥』
そしてどうやら限界を迎えたらしい。ビクビクビクッと頤を上に向けて、綾香嬢が跳ねた。そしてそのまま、大きく開かれ、スカートに包まれて見えない股の間から、ポタリ、ポタリと透明な粘液が、垂れて来た。
屈辱極まったのだろう。両目に涙を浮かべながら、顔を真っ赤にして綾香嬢がセリア女史を睨みつける。
「あははは。そんなに睨んできて。でも、人様に魂弄られて抵抗も出来ないような魔術師失格のお嬢様に睨まれたって、何も怖くはないですよ?」
『へ、変態がっ!?モガッ!?モグッ!?!?!?!?ウッ!?ウッ……ムゥ~ウグゥ~~!!!クゥッ~~~~~!!!!!!」
「その変態に発言権すら握られてるのに。滑稽ですねぇ」
口調は、先ほどの深窓の令嬢然としたそれだ。それだったが、明らかにセリア女史は現状を楽しんでいた。それはまるで子供のように無邪気で残酷に。
四肢を拘束してた少女の臍へと長い針を刺して、それを楽しそうに弄るセリア女史は、初めて
昆虫標本を造る少年にしか見えなかった。
目端から涙を流す綾香嬢を他所に、セリア嬢がこちらに近くへと来るように手招きをしてきた。おもむろに近づいてゆく。頭上から綾香嬢が睨みつけてくる気配がするが、無視。今この場の主は、セリア女史だ。
女史の機嫌を損ねて、子供の無邪気な残酷さがこちらに向いては、たまったものではない。
「さて、記者さんには今から、大学院の実験室レベルの、最新技術を見せて差し上げますね。そしてそれが、私が『雌の穴ほぐし屋さん』として、僅かな時間で雌の穴ほぐしを施術できる理由です」
そういって胸を張る。そのまま、しゃがんで、という声に促されて、お互いにちょうど綾香嬢の臍の位置まで目線を下げる。
『へ!変態!!!殺してやる!!!殺してやりますわ!!』
……頭上で何か綾香嬢が言っていたが、無視である。改めて綾香嬢のお腹を見れば、なるほど。美しかった。幼少期から若さを理由にせず、むやみに傷つけるような事はせず、大事に手入れされた肌はきめが細かく、健康的な白さを放っている。
母親が戦闘系魔術師であったからだろう。その母の薫陶を受けてよく鍛えられた腹筋は、均整の取れた張りを見せつけしかし、六つに分かれているという事はない。あくまで美しいなだらかな曲線を見せている。
そしてその中心に、臍が備わっていた。縦に小さな楕円形に見える、かつて母親とつながっていた証。そして今、その中心には針が深々と突き刺さっていた。
「いやぁ……いい。お腹ですよこれは。今までも沢山、性器とお臍のどちらの雌の穴も、その……解してきましたけど、これは、解し甲斐のあるお臍です。特にこの、鍛えられているからこそ既に楕円形なのがいい。もういやらしい穴にしてくださいって言ってるようなものじゃないですか!」
「いや、それは……どうでしょうか」
とは言いつつも、こと此処に至っては著者としても生唾を飲み込まざるを得なかった。美しい少女の、美しく、均整がとれた腹筋に備わった、かつての母が子を養うために開けられた穴の名残。
それがもし、再び開かれ、今度は快楽を得るための肉器官に変貌したとするならば、それはあまりに冒涜的であり、だからこそ非常に淫靡に違いなかった。
「さて、と。それでは本題に入って行きましょう。記者さん、身体強化魔術はご存じですね?」
「ええ、勿論」
一般的な魔術だった。特に『魔ロンパス』は私も愛用している。
『魔ロンパス』、人口霊石によって術式を刻み込まれた事で、魔術の素養もない一般人でも使える形にした簡易呪符の中一種で、一般流通している中でもっとも有名な身体強化の簡易呪符だ。
その簡易呪符を湿布のように、体の強化したい部位に貼り付ける事で一定時間、貼ったてある部位が強化される。そして、そのまま仕事に励む事で疲労予防と回復、また作業効率の上昇が期待できる。
人口が激減した中で、社会の再興とさらなる発展を目指す現代社会のサラリーマンにとっては必須の品だ。その中でもロングセラー商品の『魔ロンパス』は、現代の魔科学が生み出した最高の発明品の一つに数えられていた。
「では身体強化とは、いったい『何を強化』するのでしょうね?」
「それは勿論……身体では?」
実際、魔ロンパスは、貼った部位にだけ効果を発揮する。己の経験に基づいたその言葉に、待っていましたと言わんばかりにセリア女史が頷いて、答えを返す。
「たしかにそれは事実です。魔術的にも以前は単純に『身体そのものを強化しているんだろう』と思われていました。事実術式自体は『体のどこそこを、どのように強化しろ』という命令で構成されている訳ですから。ですが、これは最近の研究の結果で分かったことですが、実は身体強化魔術は体そのものを強化している訳ではありませんでした。なんと、魂を強化しているんです!!」
どうだ!と言わんばかりに胸を張ってセリア女史が宣言する。
「と、言いますと?」
「その前に前提の話をしましょう。魂がその存在の精神や本質を決定付ける心核と、それを覆う霊子にどれだけ干渉できるか、その出力を決定する魂殻の二種類で構成されているのは有名ですね?そして、心核と外見には、密接な関係がある事も」
頷く。本質とは、外見であるというのは、現代において有名な話だ。例えばもし何らかの理由で右腕を失ったとしたら、当然右腕を失った分、外見も変わる。そうなると心核の右腕を司る部分も損なう。逆に、心核の一部、右腕を司る部分を損なった場合、右腕も腐り落ちる。
そういう形の相関関係があるという事は既に証明済だ。
興味深い話だ。頷くこちらを意に介さず、セリア女史は早口で話を続ける。
「魂は霊糸によって構成される超高密度の情報体である、というのは科学技術との技術交流の中で元来言われていた事でした。事実、心核は精神、外見それに付随する骨格や皮膚、また魔術、生物共に非常に重要な器官である脳と心臓、女性なら子宮。男性なら精巣から陰茎の情報がそこに集約されている事は既に判明した通りでした」
「そうなると、当然『では?他の情報は?内臓や神経の情報はどこに集約されているのか?』という疑問が出てきます。これは近年の魔科学の医療界における非常に重要な研究項目の一つとなっていました。そして身体に影響を与える最も一般的な魔術として強化魔術があります。これによって身体がどのように強化されるかを調べる事によって、これが分かったのです」
そういってピンと指を立てる。内容が内容だ。思わず抗議の叫びも忘れて、どうやら綾香嬢も聞き入っているらしい。そこは、真面目な学生らしかった。
「なんとですねぇ……身体強化魔術は確かに低級の、物理法則を超越しない身体に強化に関しては、術式によって反応した霊糸が直接筋肉や神経へと干渉して強化していました。例えばそれは筋繊維の増大などによって観測されます」
「しかし!中級以上の、空高く、それこそ高さ100メートルを一足飛びに飛び越したり、音速を超えるスピードの走行能力を与えたりする場合は、なんと科学的観測によっては筋繊維の増大などが一切見られませんでした。霊糸が直接筋力や神経を強化するのではなく、魂殻のとある部位に霊糸が干渉して、『この筋肉は、この脚はすごく強いぞー。物理法則を超越するくらいつよいぞー』と概念強化している事が判明したのです!」
「先ほどの話とは矛盾してしまうのですが、実のところ一定以上の魔術師にとって、『中級以上の身体強化が、魂を強化している』というのは感覚的には周知の事実でした」
「とはいえ、事実魔術を使うと早く走れて高く飛べるのです。まさか一切体が強化されておらず、魂だけが強化されているとは露にも思われていませんでした。また、それを魔術の側面から否定する事実も存在しなかったため、誰もが違和感を抱きつつも、『身体強化魔術は身体そのものを強化する』という魔術における一般論は長年信じられてきました」
「しかし、魔術が表に出ておおっぴらに科学的学術的観点から観測が行われる事により、その一般論が覆されたのです!そこから約20年。筋繊維一本、神経一枝という微細な部位を対象とした身体強化を付与する事が可能な術式の開発と、それを用いた際の身体の変化に対する医学的側面のからの観測、また、霊糸による魂殻介入部位の観測という魔術的側面両面からの観測によって、ついに人類は!!『体の内臓や神経の各部に相似する魂殻の概念的な部位』を特定する事が出来たのです!これはヒトゲノム解析に匹敵する偉業ですよ!!」
「本当に何者ですかあなたは!?」
思わず叫んだ。そんな最新の、それこそ報道もされていない最先端の医療技術について言及する。そしてそれが意味する事は、セリア女史が尋常の魔術師ではないという事だ。こちらの叫びを前に、セリア女史は笑みのまま続けた。
「それは今はいいじゃないですか♪さておき、これによって、医療技術は新しい世界へと踏み出します。そう、今までは外科的アプローチでは困難な手術についても、魂殻の該当部位へと干渉する事により、可能となるのです。例としてこれから行う、『雌の穴ほぐし』における、臍の穴から子宮への性器増設について説明しましょう」
「今までは外科的手術にて腹部を切開。そして子宮上部に穴を開け、臍の穴と子宮上部に開いた穴までの『道』を、クライアント本人の体組織から培養した人工筋肉を幾重にも外科的に縫合して作り上げ、そこに同様に培養した神経組織を張り付けて、回復魔術にて癒着。そうして雌の穴を作り上げる訳ですね。このようにして無理やり作り出された雌の穴は、当然一度では定着しません。なので、約一か月程、術後を見ながら医学的、魔術的に定着するまでの経過観察を見る事になるわけです」
ですが、と言葉を切って、満面の笑みでセリア女史は針が刺さった臍を見る。
「魂殻に存在する『体内の設計図』を直接弄れば、それに従って体も変化するわけです。通常の『雌の穴ほぐし』の際にも、最終的に魂殻も変化する事となります。魂と肉体は強く結びついている訳ですから。とはいえ、魂という根源的、霊的な部分から弄る事で、より速やかかつ安全で複雑な、人体改造が出来てしまうんですね……では、やっていきましょうか」
そういって、セリア女史の右手人差し指が針に触れた。
『いや!嫌ですわ!!!やめなさい!!やめろったら!!!!!……【我は遍く炎を友とする苛烈なる勝利者!】』
それは、心核に宿る言葉。魔術師のみが見出す事の事の出来る、己の存在そのものたる心核翻訳を高らかに綾香嬢は叫んだ。
「なるほど確かに心核翻訳は術式詠唱の接頭語とすることでその強化だけでなく、己の存在を世界に改めて示すことで、魂の干渉への非常に強力な耐性を得る事が出来ます。的確なな判断です」
コクリ。まるで教師のようにセリア女史は満足げに頷いて、
「ま、たかだか高等魔術院の成績程度でイキってる小娘如きにどうにかなるものではないんですけどね♪はい、【術式解凍】!【性器増設術式実行】☆」
『ギョ!?ハヒッ!?!?!?!?☆おっへ♥ほぎゃあああああああああ!!!!!♥♥♥♥♥♥』
セリア女史の言葉と共に人差し指の先から光と共に複雑かつ緻密で立体的な魔術式陣が展開し、針全体が光り輝いたかと思えば、綾香嬢が、己の対面などかなぐり捨てた叫びをあげる。
バタバタと陸に打ち上げられた魚のように手足をばたつかせながら、針が刺さった綾香嬢の臍の内側辺りからは、グチュ、ヌチョ、メキョなどといった、明らかに人体が発してはいけない水音が発生していた。
見れば、バタつく足の合間からは、ぼたぼたと白っぽい粘液が絶え間なく垂れ、それどころかアンモニア臭もしていた。どうやら失禁すらしているらしい。スカートが履いてある事は誠に幸運であった。
のちの事を考えれば、もしそこが露わになっていたらセリア女史はその詳細な描写も望んでいただろうからだ。
まさしく昆虫標本としてコルクに打ち付けられたまま、薬剤を投与されその死の瞬間を待つ蟲のような断末魔としか言えない絶叫を上げる綾香嬢を他所に、それを満足げな目で見ていたセリア女史が、綾香嬢がどのような凄惨な状況に置かれているか、こちらに語り掛けて来た。
「フフフ。大変ですね綾香さん。今彼女のお腹の中は魂殻を弄る事で、『こうであるのが正しい。なぜなら魂殻に記載された体内の情報がそうなっているからだ』という風に作り替えられてます。当然、随時回復系の魔術は常に行使してますよ。まずはお腹の中の筋肉が、臓器を除いてどろどろに解されて、溶けるんです。だからほら」
そう言いながら、セリア女史のたおやかな細い指が臍の周りを押す。まるで水風船を外から押し込んだかのように、その指が埋まっていった。
『おひゃわえれえらおいえうあ♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥』
綾香嬢がもはや人とも思えぬ絶叫を上げた。ジョロジョロとスカートの端から白濁が混じった尿が零れ落ちて、床を汚す。
「当然お腹の中がどろどろに溶けて再構成されるなんて、もはや激痛とすら言えない激感に、人は耐えられません。だから通常の施術の際は、麻酔で意識を遮断した状態でやりますよ?けれど彼女はまぁ色々とあって……そういう訳にもいきませんから、全部痛覚を快楽に変換して、綾香さんの精神と魂と脳が耐えられるぎりぎりをお届けしています。嬉しいでしょ?綾香さん。きっと人生でこんなに気持ちよかったことないですもんね♥」
ニコニコとセリア女史が見上げた先には、鬼のような形相で頭を振り乱し、涙によだれに鼻水に、ともかくありとあらゆる体液を絞り出して叫びをあげる綾香嬢の顔があった。
「あはは♥不細工ですね綾香さん。ばっちいおしっこまで垂れ流して、いやらしい本気汁でお股びしょしょにしてまで気持ちよくなりたかったんですか。この、変態さん!」
『へひゃあああああああ♥♥♥♥♥♥♥♥♥』
ペチン、軽くお腹を叩けば、まるでそれに押し出されたかのように尿がブシッと噴出したようで、スカートが汚れた。
「アハハハハハ!財閥の選ばれし?高貴な?お嬢様が、はしたないですね。あ、でも安心してくださいね綾香さん。もう聞いている余裕はないでしょうが、ちゃんと大きい方は処理してあげましたから。漏らす心配はないですよ?……私もそんなばっちいモノ、見たくないですし……プッククッ……クーッアハハハハハハハッ!!!!!」
セリア女史は、もはや先ほどのような深窓のご令嬢然とした雰囲気を金繰り捨てて、上品ながらも全力で笑い転げていた。
もはや拷問に等しい快楽を与えられながら人体改造されている少女の叫びと、美しい女性の笑い声を聞きながら、頭がおかしくなりそうな時間は、その後10分程続いた。10分程続いて、綾香嬢のお腹から聞こえた不吉な水音が、止んだ。
「あっ!終わったみたいですよ、記者さん!」
そういって楽しそうに手を叩くセリア嬢であったが、いざ近寄ろうとして、顔をしかめる。
「うえ、ばっちぃ」
そう、大便以外のありとあらゆる体液を垂れ流して―――おそらくは人体改造が終わった瞬間気絶したのだろう―――頭を俯かせている綾香嬢からは、異臭が漂っていた。世界に冠たる都立高等魔術院の制服も、体液に濡れた事と綾香嬢自身が暴れた事で汚れ切っており、その輝かしさを失っている。
「ま、予想された事ですけどね。はい、【空間情報転写】【対象30分前。台座周辺半径2メートル】【転写】」
呪文と共に術式が発動し、一気に綾香女史自身と制服、そして周囲が清潔になる。まるで何もなかったかのように。しかし、その臍に刺さった針はそのままだ。
周囲が清潔になった事を確認して、セリア女史が近づいてゆく。それと同時著者も手招きしてその近くに呼び寄せた。
「さて、現状はですね、綾香さんのお臍の穴と、子宮までの道が出来た状態になっています。あとは、このお臍の穴をちゃんと開けば、なんと!」
セリア女史はそこで言葉を切って、恥ずかしそうに顔を赤らめて俯いた。
「新しい……臍お、おまん、こ穴が、出来てるのです!!」
顔を赤らめたままの満面の笑みは確かに可愛らしく魅力にあふれているが、そんなに恥ずかしいなら態々言わなくてよかったと思う。まっとうなツッコミはしかし、著者の心の奥にしまわれた。
「さて、体表については外見判定で、心核を弄らないといけない訳ですね?ただ、これについては、切開してその痕を回復術式で消してあげればそれで終わりです。なので、一々心核に干渉なんて高度かつ手間のかかる事をするよりも、実際に外科的アプローチでやっていきます」
そう言いながら、セリア女史が左手で針を引き抜く傍ら、台から一本のメスを取り上げた。
「これ、斬ると当時に柄と刃に彫られた回復術式が発動してくれる優れものなんですよ。これで、斬ったそばから、切り傷を治してくれます。あ、綾香さんの痛覚が快感に変換されてるのはまだそのままですよ。じゃあ、行きますね……」
そういって女史は、針が刺さった臍の中心、その上部にメスを当てた。そしてそのまま、スゥ……とお腹を切り裂いてゆく。
どうやら、それが快感として脳に伝わったらしい。ちょうど端まで斬った瞬間!ビクリ!!とお腹が痙攣して、
『ア……え?ここ、は?』
いまだ夢見心地の綾香嬢の目が開いた。そうして己のすぐ眼前の気配に気付き、視線を下にやって、現状を再認識したらしい。
「えい」
叫ぶ直前、セリア女史が可愛らしい声と共に、拍手を一つ。そうすれば、綾香女史の猿轡が外れ、
「い……やぁっ!?♥♥♥!?!?♥♥♥!?♥♥!?♥♥♥!!!♥!?」
そのまま叫ぼうとした声が中断し、顔を仰け反らせて絶頂した。
その様にうんうん、ほら言わんこっちゃないとでもいうかのようにセリア女史が頷いて、言葉を紡ぐ。
「叫ぶためにはお腹、腹筋に力を入れる必要があります。けれどそれは、新しく出来た『雌の穴』に力を入れてぴったり閉じるという事。もしこれが無改造の膣であれば膣道全体に神経が通ってる訳ではありませんが、『雌の穴』、臍お、まんっ、こっ!……ぅう……は、その壁全体に快楽を感じる為の敏感な神経が走ってますからね。お腹に力を入れたら。それはそうなりますよ」
つまりもう、綾香嬢は叫ぶことが出来ない、という事だった。絶頂しながら、その波をやり過ごしつつ、その事実を綾香嬢もかみしめたのだろう。
はらはらと涙を流し、今度はどうにか控えめな声量で抗議の声を上げる。
「どうして……どうしてこんなひどい事を」
「さて、どうしてでしょうねぇ。ともかく、記者さん見てくださいよ!これ!これが新しい綾香さんの臍の穴を解して作った雌の穴!気持ちよくて孕むために男の人の御立派なのを迎え入れる事の出来る、変態の穴ですよ!!!」
そう言って、臍を中心に開いた10センチ程の亀裂の左右に、手を掛ける。未発達の膣の大陰唇のようにぴったりと閉じたそこは、まさに『未開発の幼い女性器』といった雰囲気を醸し出していた。
「はい御開帳♥」
「いやッ♥!?へッ♥ウゴッ♥コッ♥カッ♥」
反射的に叫ぼうとした綾香嬢がまたのけ反って絶頂する。それを尻目に、お腹に増設された『大陰唇』を開けばそこには、
「おお……」
「えへへへ。凄いでしょう?」
そこには確かに、『膣』が出来上がっていた。綾香嬢の絶頂に合わせて開いたり閉じたりする肉壁は、テラテラと粘液を垂れ流しながらツルツルの側面を見せつける。閉じたり開いたりする
『膣道』の奥には、こちらもパクパクと口を閉じたり開いたりする穴が見えた。そこが、実際の膣における子宮口と同様のものなのだろう。
しかし、こちらの方が見た所穴の大きさが大きい。それこそ、亀頭すらも容易に飲み込めそうな程に。
全体的にとても今しがた出来たとは思えない造りだ。それこそこの臓器が産まれてからずっと存在したかのような自然さ。これが、『魂殻からアプローチする事で作り出した臓器』という事なのだろう。
もはや膣と言って差し支えない、新しく解して作られた雌の穴ではあったが一つ。一つだけ、不満点があった。
それは、
「その、これは臭いが……」
「ですよねぇ」
そう、異臭がしたのだ。正直、いざ事に及ぼうとした際には障害になるだろう。
いくら美少女が相手であろうと、この臭いは特殊な性癖がなければ勃起を維持するのは難しいであろう、というくらいの臭い。
「わた、私臭くない……臭くないですわ。それなのにこんな……こんな……」
お腹から立ち上るのだろう。その臭いを嗅いでしまった綾香嬢も、先ほどよりも涙をより流して嘆き悲しんでいた。
「フフフ。大丈夫ですよ記者さん。実は、この臭いは既に想定済みです!そもそもが、この湧き出ている潤滑剤としての粘液が腸液であることが大きな理由なのです。それに、臍膣道だって、全然いやらしくて、男好きして、男の人の精液を搾り取るような返しや襞がないじゃないですか。これからもっと、もっと。も~っと変態でいやらしくしてあげるから、覚悟してくださいね♥」
「い……ッ♥♥♥♥♥」
もはや、綾香嬢は昆虫標本に打ち付けられた昆虫であった。叫ぶ自由はなく、嘆く自由すら、存在しなかった。
そうしてその後行われた、『臍膣道改造手術』は、見る側からすれば医学的にも非常に有意義な内容であったが、施術される側としてはたまったものではない酸鼻を極める手術であった。
まず、襞を作るために膣道の一部を先ほどのメスで切り裂く。当然走る激痛は、事前に快感へと変換されていた。この段階で再度噛まされていた猿轡をかみしめて、どうにか絶頂をやりすごす綾香嬢の姿は、あまりにも哀れであった。
猿轡はつまり、その快楽に舌をかみ切らないように、という配慮のものだったのだ。
そうして切り裂かれた事によってできたヒダを盛り上げて、魂殻に干渉して、『盛り上がったヒダヒダが本来の状態である』と設定して回復術式を行使。そうすると回復術式は、『魂の設計図に従って、体を回復させようとする』ので、あんなに平坦だった膣道にヒダが盛り上がった形で定着する。この時どうやらヒダにも神経を通して、快楽をより感じるようにしているらしい。
ただでさえ快楽を感じている筈なのに、この回復術式を行使されている時の綾香嬢の反応は、特に激烈だった。今まで存在しなかった筈の神経が新設される事に脳が混乱し、しかもそれがあまりにも気持ちよいものだから精神もぐちゃぐちゃにかき混ぜられるようになる、というはセリア女史の談であった。
「本当は死んじゃうんで、死なないようにするの大変なんですよ?後はちゃんと手術は麻酔をかけてやりましょう、って事ですね」
膣拡張器で綾香嬢の臍性器を全開にしながら、匠の顔でその膣道に傷をつけて新たな快楽器官を増設してるセリア女史は軽い口調でそう言った。
そうしてヒダを作り終わったら、今度は分泌液の異臭問題だ。この時点でもはや綾香嬢はなんの反応も返さなくなった。
性器増設とその改造による快楽がどれだけ凄惨なものだったか示す、絶頂の本気汁がスカートに包まれた股の間からぼたぼたと塊になって落ちるのみで、もはや先ほど出尽くしたのだろう。失禁の証明たるアンモニア臭も、ほとんど香る事はなかった。
「さて、これは簡単です。えい!」
ゾリュン!と臍性器の内側を一撫で。ビクリ、とひと際強く綾香嬢の体が震えて、放屁すらした。
「無様ですねぇ」
ニコニコとそう言いながら、セリア女史が臍性器を撫でた手を引き抜いたら、確かに先ほどのような異臭は完全になくなっていた。それどころか、バニラのような甘やかな匂いすら漂ってくる。
「これは……?」
「こう……腺をちょちょいと弄って改造してあげました♥」
ね?簡単でしょ?とでもいうように首を傾げるセリア女史だったが、前提として使用されている技術があまりに最先端のモノであったため、判断できるものではなかった。
曖昧な笑みを浮かべているこちらについてどう思ったのかは分からないが、ともかく数俊の間の後、セリア女史が再び、己の『作品』をこちらに見せてくる。
「ともかく!はい!これが!ほぐされきった綾香さんの雌の穴です!」
じゃじゃーんとでも擬音が付きそうな身振り手振りで、膣拡張器によって拡張されたそこを見せる。
「おお……」
「むぅ……さっきと同じ反応ですねぇ」
「いや、そうでもないですよ?」
そういって下を見れば、著者の一物は、確かかに怒張していた。
正直、臍を性器とする、という『雌の穴ほぐし』には抵抗があったのだ。そもそも臍は性器ではない。おんなものを性器として無理やり改造するなんて、嫌悪感の方が勝っていた筈なのだ。
しかし、とろとろと白く白濁した粘液に塗れた妖しくいやらしい臍膣壁。唇のように膨らむ子宮口がいやらしく、男性器を求めるかのように蠢動しているさま。あさましくも精液を絞るために、幾重にも膣道に増設されたぷっくりとした肉輪に、男性器の裏筋に媚びて、己もあさましく快楽を貪るためだけのヒダ。
そんなものを見ては、いくら何でも理性より先に本能が一物を勃起させていた。正直な所、そこはたしかに、たまらない『雌の穴』だった。パクパクと、呼吸に合わせて蠢動しているのは、きっと男に、竿に、もっと言うのなら精子に媚びているのだろうとすら思わせた。
「……こうまでしたという事は、その。『使う』予定があるわけですよね?」
思わず、聞いてしまう。著者この時確かに、取材の事などもうほぼ忘れて、このおこぼれにどうあずかろうか、という心境になっていた。
「それは駄目ですよ~。記者さんが綾香さんを襲ったら、それはお互いの同意が取れてない限り、犯罪ですから」
膣拡張器を引き抜きながら、セリア女史がこちらを窘めた。
「それはどういう……?」
疑問が確信に変わる前に、事態は、次へと進んで行った。
膣拡張器を引き抜けば、そこにはぬらぬらとお腹全体を粘液で濡らしならがも、ぴったりと閉じた臍膣口が見える。それを満足げに見て、セリア女史は綾香嬢の猿轡を外した。
そしてそこに徐に男性器を模したディルドを押し当て、
「綾香さん、起きてくださーい!たかだか雌の穴ほぐされたくらいで気絶しててはいけません……よっ!!!」
一気に刺し貫いた。
「……ッ♥♥♥♥♥!?!?!?!?!?ぉ♥……ぉぉぉおあああああ♥♥♥♥!!!!!!!??????」
絶叫。臍膣を貫いたディルドーの衝撃で絶頂してディルドをより強く締め付け、その締め付けで絶頂して、絶頂に絶頂を重ねてもうこれ以上ない程力が入ったのだろう。そこでやっと、綾香嬢は絞り出すような低音で、絶頂の悲鳴を上げる事が出来た。
「えい♥えい♥どうですか新しい雌の穴?気持ちいいですか綾香さん??」
「あ♥おほ♥おぁ♥や、やめ♥やめ♥やめて♥やめてください♥どうか♥どうか♥」
そして絶叫を聞きながら、間髪入れずにセリア女史がディルドを無理やり抜き差しする。通常の膣に挿入したならば、きっとパチュン、パチュンといった柔らかな、水音がしたのだろうそれ。
しかし、雄に射精を媚びて、快楽を貪るために新設されたその器官がディルドを抜き差しするときの音は、ジュゴッ!ジュゴッ!ともっとえげつない音をさせていた。
「これ、おトイレ掃除みたいで楽しいですね」
ニコニコと文学を好みそうな深窓の令嬢然とした黒髪の美女が、能天気に感想を述べる。
それだけ見ればなんとも和やかな光景だが、実際はその深窓の令嬢が大の字に拘束した朱髪の美少女の、己が今しがた臍を改造して作り出した凄惨な搾精器官を楽し気に虐めている風景が展開されているのだ。
著者も、頭がどうにかなりそうであった。
「おっ♥え”ぇえ”♥げっ♥♥♥♥」
そして事実、頭がどうにかっているのは綾香嬢の方だ。まるで槍で串刺しにされて、それを抜き差しされるかのように腹部が跳ねる。
快楽搾精として新たに開発された臍性器をぐちゃぐちゃにかき回される、その快楽はいかばかりかは想像すらできなかったが、もはやプライドすらこそぎ落ちた綾香嬢の懇願が、その暴力の恐ろしさの一端を、見て取る事が出来た。
「も♥あや♥あやまり♥あやまりますから♥♥♥♥やめて♥♥♥」
ピタリ。セリア女史の手が止まる。
「……何を、謝るんですか?」
その問いに答えることなく、綾香嬢はただ壊れた再生機器のように『ごめんなさい』を繰り返すばかりだ。
その様子に失望したのだろう。大きくため息をついて、セリア女史がディルドのピストン運動を再開しようとする。
「これはまだ反省の必要がありますねぇ」
その言葉に、ついに綾香嬢の精神が決壊した。今までのような涙とは違う、拘束された四肢を暴れさせて赤ん坊のようにグズるような泣き方。
「い”や”~~~!!!!!あ”っ♥わ”だっ♥わ”だじがっ♥あ”っ♥お”っ♥ な”に”ぃぃぃ♥をしだっでいうんでずの”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”っほぉ”♥」
「分かりませんか?」
「わ”がり”ま”ぜん”♥んっ♥ごん”な”♥はんざいこういぃ♥っひ♥される覚えはありませんぁぁぁ♥♥♥」
再びの、深いため息。その言葉に、心の底から失望したらしい。それと同時に、深い頷きを見せて、セリア女史は、ディルドを引き抜いた。
「【鎮静】【感覚鈍化】」
「んおっ♥へっ!?……あれ?」
言葉と共に、一瞬で綾香嬢が泣き止む。きょろきょろと不思議そうに周囲を見渡す。
「一旦、綾香さんの感覚を鈍らせました。ちゃんと話を聞かせて欲しかったですし。それにまぁ、私自身は、正直な所関係のないといえばないのは事実ですしね……殺してやりたいくらい憎いですが」
「えっ?それはどういう……」
綾香嬢の疑問を遮り、ピッとセリア女史は人差し指を立てる。
「まず前提として、誘拐から始まる綾香嬢への一連の流れは、犯罪では、ありません」
「な。何を言って・・・?」
「厳密にいうと、私達に限って言えば、合法となるのです。記者さんは、こういえばもうお分かりですね……?」
そういってにこやかに微笑みを浮かべるセリア女史に、こちらも疲れた笑みを返す。あくまで表面上だ。心臓はどくどくと緊張のあまり早鐘を打っていた。まさか、こんな場所で、こんな状況で、そんなお方と出会うなんて……
「確かにあなたの名前は有名ですが、それこそあなたに肖って世界各国でその名前が付けられているせいで、ありふれた名前になってるんですよ?名前だけで判断が付くはずがない。そもそも、貴方達は宇宙開拓のの最前線にいらっしゃるはずだ。こんな東京にいるなんて、露にも思わないですよ」
その言葉に、うふふとセリア女史は微笑みを返す。
「宇宙は息が詰まりますから。リフレッシュのために、お忍びで結構降りてきてるんですよ?防犯上誰がどういう頻度で、っていう話は出来ませんけど」
「……このやり取りは記事にしていいのですか?」
「はい、大丈夫です。一般に有名ではないですが、一部ではよく知られているの話なので」
それで探されて見つかる私達ではないですし、と嘯くその言葉には、絶対の自信があふれていた。それもそのはずだ。
「あなたたち……何を言って……」
先ほどからの快楽地獄で脳の回転がまだ戻っていないのだろう。綾香嬢だけが唯一話についてゆけず取り残されていた。
「簡単な話です。この一連の行いは、創星級魔術師の免罪規定の範疇内という事です」
「!?!?!?そ、それは!?そんなまさか!?!?!?」
その事実に綾香嬢が驚愕の叫びをあげる。そう、そういう事だ。
『創星級魔術師の免罪規定』。それは、かつての大戦時、世界の裏側にはびこる魔術師連盟と当時の一部国家上層部の悪意と欲望に真っ向から立ち向かい、世界を調停した六人の『創星級魔術師』に送られた褒章かつ勲章であり、人類が未だ彼らには到達していない敗北の証であった。
『世界に干渉する』魔術を極めた結果、己自身が《世界》となった、創星級魔術師。彼らを殺傷するには、一撃で恒星を粉々に粉砕するだけの威力が必要である。
せいぜいが全力で攻撃能力を行使して、『星の表面を灼熱の海に叩き込んであらゆる動植物を死滅させる』程度しかなしえない現行人類では決して打倒不可能な存在。
宇宙開発の魔術的アプローチの旗頭でもある彼らに対して、世界政府は、これからも末永い友好を期して、『免罪規定』を決定した。勿論彼らが悪人であればこのような事はなかっただろう。しかし、事実として彼らは善人だった。
せいぜい、『六人』の内の一人、『騎士』がよく不倫騒動を起こして免罪規定を適用している位だ。
詳しい内容は細かく条文となっているため、ここでの説明は省くが、つまりは少女の拉致誘拐程度は、特に問題にならないという事で、それが適当されるセリア女史はつまり、
「そういえば綾香さんには名乗ってませんでしたね。改めて、名乗りましょう」
そう言いながら眼鏡をはずして、両手を広げる。そしてそのまま、
「【魔術師正装展開】」
呪文と共に、それまでの文学好きのお嬢様然とした装いから、ふたつに結んだ髪を解いて流し、山高帽を被り、黒いローブに身を包んだステレオタイプな魔女がそこに現れた。
右手には魔術発動補助媒体。写真ではない。テレビでもない。教科書で見た姿が、そこには存在していた。
「初めまして。私、セリア・ドリット・ローゼンタールと申します……よろしくね?」
そうしてペコリ、とお辞儀をすれば、
「は?え!?えっ!?あ、あのっ……そのっ!わ、わた。わたくし!!!貴方の・・・!」
どうやら感極まったらしい。綾香嬢が、今まで己の身に降りかかったことなど忘れ去ったように歓喜の叫びをあげて、まったく意味をなさない言葉の羅列を紡いでいた。さもありなん。
創星魔術師はすべての魔術師の憧れ。到達点だ。本来であれば宇宙開発の最前線、ついに見つかった居住可能惑星にて環境改善に努めているために普段決して会えない筈の存在が、今目の前にいるのだ。
まるでプロスポーツ選手に憧れる少年がその道のレジェンドに出会ったかのように、きらきらとした目で見つめる。
「偽物とは、思わないのですね」
こちらの指摘に、きっと睨みを返して、綾香嬢が声を荒げる。
「当り前でしょう!?この魂の輝き、密度、凡百の魔術師であろうはずがありません!ああ!!ローゼンタール師!私、貴方の書いた『戦災未整備地域における救急医療体制から見る科学と魔術の医療の展望~魔術師は如何に人の命を救うべきか~』拝読いたしました!その、凄く分かりやすく魔術の現代における限界点について詳しく述べられてて、とても参考になりましたの!」
必死に言葉を紡ぐ綾香嬢に、セリア女史(※本来であればローゼンタール師と呼称すべきであるが、彼女の特別の許しを得てこのままの呼称で記載を続けてゆく)も、まんざらでもなさそうに頷いている。
「よく読んでくれてますねぇ。嬉しいです」
「はい!はい!ありがとうございます!将来は大学に進んだら医学方面に進もうと思ってまして、特にSENSHOブランドは今は空間飛翔やスポーツ競技用の魔術発動補助媒体が主ですが、これから魔術が医療方面とより繋がりを深めてゆくならきっと、それに沿った魔術発動補助媒体も必要になります!そこを開拓してゆくのはブランドの維持発展に繋がると確信しておりますわっ!!……っ!!!」
そうやって四肢を大の字に拘束されたまま半笑いで、憧れの魔術師に必死で声を上げていた綾香嬢はしかし、もはや話すことがなくなったのか、口を閉ざした。
僅かな沈黙の時間。
「それで……」
口を開いた半笑いのまま、再び言葉を紡いだのは、綾香嬢の方だった。眼がカッと見開き、その端からはツツ……と涙が溢れ、声も震えている。きっと、恐怖なのだろう。
「それでどうして……私は、こんな目に……?」
そう、意味が分からない。たしかに綾香嬢は、優秀だ。優秀とはいえ、世界に冠たる『六人』にしてみれば、単なる小娘でしかない。もしこれが将来的に綾香嬢が成長して、千勝院の名を背負う段階になったら出会う機会もあっただろうが。どうして、今。
「そうですね。それではご説明しましょうか……あ、そうそう。前提として、記者さんの目的だった『雌の穴ほぐし屋さん』について説明しますね。これは、私が地球に降りてきた際に、先ほど説明した通りの、魂殻干渉技術を駆使して『雌の穴を解していた』という事が噂として広まっていたのでしょう」
そもそも、魂殻における各種内臓、筋肉、及び神経の設計図を見出すプロジェクトを主導していたのは、セリア女史だ。
近く大々的に発表がなされるこの研究成果を用いて、治験兼セリア女史の魂殻干渉による外科的手術技能向上という意味合いも含めて、極々秘密に知人や、その知人からの紹介があった場合、この東京のこの場所にて、『雌の穴ほぐし』手術を有償で行っていたらしい。
手術にかかるお値段は、臨床段階であるという事によって割り引いても1回5000万E。東京の一般的なサラリーマンの年収10年分だ。『私が行うという点において、それはもう世界最高峰の技術ですからね。むしろ安くは出来ないんですよ』とはセリア女史の談だ。
当然極々秘密に行われていたこの『雌の穴ほぐし』は、今までの手術とは大違い。僅か1日で特に後遺症もなく終わるという事で、高額ながらもそれなりに行われた。だから、それがどこかしらから噂として漏れたのだろう、という事だ。
「……で、では。もしや、私の。私の『雌の穴ほぐし』を、誰かに依頼されたという事ですか?」
その言葉に、セリア女史はニコニコしながら、首を横に振った。
「いいえー。これは、私がしたいからやったのです」
「!?……どうして!?どうしてなのですか!?」
初め、この地下空間で会った時のような勝ち気で、怒りに満ちた叫びが上がる。それはそうだろう。年頃の娘の臍が、本人の意思ではなく解され、雌の穴に改造されたのだ。そのような事、到底受け入れる事が出来るものではない。
そしてその答えを知るセリア女史は、綾香嬢の問いなんてまったく気にせず、魔女の箒を壁に立てかけて、静かに語りだした。
「私はね、リフレッシュしに地球に滞在すると、この近くにあるカフェに必ず行くんです」
「そ、それがなんだというんですか!?」
「そのカフェはこじんまりとしていて、一人で珈琲と本を楽しむにはとても良い場所でした。それがある日、カフェのマスターだけが運営していたその店に、アルバイトの、男の子がやって来たんです」
「男の……子?」
その言葉に、ビクリ。綾香嬢の体が跳ねる。そしてサッ……っと顔を青ざめさせて、『うそ……そんな。そんな事って……』とブツブツ口の中でつぶやき始めた。
そのような綾香嬢の様子などまったく気にもせず、セリア女史は言葉と続ける。
「初めは、『ああ、マスターもやっぱり寄る年波には勝てないんだな』って思いました。笑っちゃいますよね?私の方がおばあちゃんなのに。それで特には気にしてなかったんですが、一生懸命その子が頑張ってるものだから。ある日マスターに聞いたんです。『どうしてアルバイトの子を雇ったんですか?』って」
「そうしたら、『彼は、俺の知り合いが運営している孤児院で世話をしているご両親を亡くした子で、一生懸命勉強して、最近都立高等魔術院に入学したんだ。孤児院は東北の方にあってな。とても魔術院に通える場所じゃない。だから。ここの二階を下宿として貸している。……実を言うと、冒険者だったご両親の遺産があってな?そこから下宿代も払われているのに、態々手伝ってくれるんだよ』って、仏頂面のマスターが珍しく笑って応えてくれたんです」
「ひぃ……!」
チョロチョロチョロチョロと、綾香嬢のスカートの端から小水が漏れていた。恐怖のあまり流れ出したのだ。それを見て、セリア女史は満面の笑みを浮かべながら綾香嬢に声を掛ける。
「綾香さん」
「はい……」
「私が魔術師を志した理由は、ご存じですね?」
「はいぃ……」
消え入りそうな声だった。その言葉を最後に、一度、沈黙が下りる。まるで死刑囚が刑の執行を待っている間のような、冷たく、肌を刺す沈黙。
それを破ったのは、セリア女史だった。にこやかに、綾香嬢へと『命令』する。
「その理由を、記者さんにもわかるように説明してもらっても、いいですか?」
答えは、沈黙。厳密には、歯の根が合わずガタガタと震えて言葉が上手くでてこないのだ。
「ひっ……いぃっ……」
「答えろ」
今までのお嬢様然としたゆったりとした口調ではなく、真顔で一切の抑揚もなく一言。
「ふ、ふつうの!いぃ一般じ、人の時にっ!!りょ、両親を、魔術師によって殺されたから!!!ふ、ふく……魔術師への復讐の為にっ!ですっ!!!」
「……はい☆その通りです♪よくご存じですね、綾香さん。そういう訳で、ご両親が亡くなったという所にちょっとシンパシーを感じた私は、その少年に声を掛ける事にしました」
綾香嬢の答えを聞いて、再びにこやかな外面を被ったセリア女史が、言葉を続ける。
セリア女史の理由を言い切ってからというもの、綾香嬢の感じている恐怖はさらに深まっているようだった。
歯の震えが全身にいきわたり、ガチャガチャと彼女を拘束している金具の鎖部分の金属音が煩い。
「少年は、ちょっと年齢の割に見た目が幼く可愛らしい子でしたが、芯はとても強い子でした。北海道戦災未整備地域を攻略、再開拓する冒険者だったらしいご両親は、その地にて仲間たちを守ってお亡くなりになったそうです」
「彼も、その意思を継いで『誰かを守る人でありたい』と願っていました。とはいえ、まだ未熟な彼は、誰を、なぜ、どのように守るかは見出していないようでした。しかし、何事も実力あってこそと孤児院で猛勉強をして魔術院への切符を手にしたとの事」
「いやぁ……立派ですねぇ。特に私なんて両親を殺されて復讐に走った人間ですから、その志は、心に沁みました。勿論私は私の選択を間違っているとは思ってないですし、後悔もしていません。ですが、両親を殺されて、ダンジョンのモンスター達に殺意を燃やして無謀な挑戦をせずに、両親の生き様から学んで、己のしたい事、すべきことを冷静に見据えようとしている彼の姿は、やっぱりちょっと眩しかったです」
そう言って春風のように暖かい笑みを浮かべる女史と対照的に、綾香嬢は極寒の地に放り込まれたかのようだ。
顔を真っ青に青ざめさせて、カッと瞳を開き、ただひたすら女史の話に聞き入っている。
「だからでしょうねぇ。ちょっとお手伝いしたくなったんですよ。彼は、優秀でした。ですが、高等魔術院に通う生徒というのは、すべからく優秀です。そのうえで、大体皆が裕福な家庭で、事前に十分な教育をされているのです。ですから、高等魔術院の講義も、入学試験の際に必要だった知識の他に、『ここに入学するレベルの人間なら、塾や家庭教師から得ている筈の知識』を前提に進んで行きます」
「ですが、独学で高等魔術院に入学した彼には、そういった知識の蓄積がありませんでした。そのため、成績が伸び悩んでいたようです。伸び悩むという事は将来的には退学の可能性があるという事。ですので、そこの部分について、彼が本来であれば知っていなければならない知識について、教えてあげました。」
「……そういう事だったんですの」
呆然としながら、どこか納得がいった風に、綾香嬢が呟いた。
「あっ!勘違いしないでいただきたいんですが、あくまで私は彼が知るべき知識を教えてあげただけ。それを活かし、己の血肉としたのは彼の努力と実力ですからね?ともかく、本来彼が塾や家庭教師の教えを受けていれば知っている筈の知識を教えてあげた事は非常にプラスだったようです。今まで理解するにも精いっぱいだった講義について、余裕をもって受ける事が出来るようになり、成績もどんどん上昇していきました。そしてついには、学内一位を取る事が出来たんですね……その成績を見せて来た時の彼の顔といったら満面の笑みで」
その時の事を思い出しているのだろう。セリア女史はホニャッと相好を崩し、
「我が事のように嬉しかったです」
「あ……ぁあ……うゎ……」
もはや、綾香嬢は言葉もない。
「ですが」
そしてその幸せそうな顔をから一転、セリア女史はオーバーアクション気味に悲しそうに表情をクシャッと歪めて。
「成績が1位になってからです。彼に会いに行くと、何か、思いつめたような、悩んでいる様子を取る事が多くなりました。彼も思春期のお年頃でしたから、初めはそう言った悩みなのかと、女性である私がむやみに掘り起こすのは悪いな、と敢えて触れなかったのです。成績については順調だったようですし」
そう言いながら、今の今までその手に持ってたディルドを傍らの台において、新たなディルドを手に持った。今までの、男性の形をそのまま模した一般的な造りと比べて、竿に玉が浮かび上がっていたり、カサが尋常な大きさでないそれは、明らかに快楽を貪りたい『好事家』向けの、暴力的な代物だった。
もはや両の瞳から大粒の涙を流し、尿をピュピュッと断続的に漏らす綾香嬢の、その、垂れ流しになっている甘臭い愛液に塗れたお腹の、臍性器の周りを、ディルドでなぞりながらセリア女史はペチペチと叩く。
その所作を受けて、ひきつけを起こし、意味のある言葉を話せない綾香嬢を他所に、セリア女史の話は続く。
「そしてある日、彼が登校を拒否して、部屋から出てこなくなったと、マスターから電話があったのです。驚いた私はすぐさまあらゆる予定をキャンセル。開拓惑星から中継宇宙ステーションへ。中継宇宙ステーションから地球の機動エレベーターへ。機動エレベーターから東京へすっ飛んで帰ってきて、カフェの二階へと直行しました。そして、彼の部屋に赴き、ベットで蹲り、泣き叫ぶ彼を見つけたのです」
そう言いながら、スッとセリア女史は、臍膣の、臍膣口へ、臍大陰唇を割り開いてディルドの先端を当てがう。
圧力に押され、グニッと歪み、僅かにその先端を飲み込んだ臍膣口は、魔術により感覚を鈍化されようとも、魂に刻まれた偽りの本能に従い、貪欲にそれを飲み込もうと僅かに盛り上がりかぶりついていた。
「さて、綾香さん!問題です!」
今日で一番満面の笑みを浮かべて、セリア女史は、かつての世界大戦の際に、『報復の化身』、『復讐の魔女』と謳われた、セリア・ドリット・ローゼンタールは、綾香嬢へと問いかける。
「どうして彼は、リッ君、天藤 律君は、泣いていたのでしょーっか!?」
「ヒッ……ヒッ……ゆるっ、ゆるしっ……」
「おやおや~綾香さん、答えは『ゆるしっ』じゃないぞ~~~?」
真っ青を通り越して白い顔になりながら、さめざめと泣いて許しを請う綾香嬢の顔をニコニコと下から覗き込んだセリア嬢が、異常なテンションでそれを遮る。
そのまま下からニコニコと満面の笑みで見つめるセリア嬢と、さめざめと泣く綾香嬢。しばしの時間が流れ、ついに綾香嬢が口を開いた。
「ヒッ……わたっ……わたしっ!わたしっがっ!孤児院出でっ!独学でっ!生意気にもッ!な”ま”い”ぎに”も”お”!!一位をとった天藤 律をねたんで!!!虐めたからですっ!!!虐めてッ!!!彼のっ!両親の、形見の魔術発動補助媒体、焼いたからですぅ!!!!!!!」
「……うわぁ」
そのあまりの事実に、思わず著者も唸ってしまった。それは、いけない。スキャンダルだ。いくら、都立高等魔術院が『貴族主義魔術師養成機関』と揶揄されようと、事実として世界政府は、貴族主義的な差別を認めている訳ではない。
それが、実際に学内の生徒が、他の生徒、しかも独学で入学し、実際には世界最高の学習補助があったとはいえ、1位を取った苦学生を、その生まれから虐めるなど、あってはならない事だ。ましてやそれが、『六人』の一人と懇意になってたとなれば、どうなる事か。
もしこれが表沙汰になれば、まず千勝院ブランドにも大きな傷がつき、更には旧日本の教育行政において、どれだけの首が飛ぶか想像もつかない。少なくとも東京都内の教育行政に関しては総取り換えとなるだろう。
まさか『雌の穴ほぐし屋』さんの取材からからこのような一大スクープに発展するとは。思わず、著者の額にも汗が噴き出て来た。そして固唾をのんで続きを注視する。
「ふむふむ、つまり綾香さんは、リッ君が、『学内1位を取ってから突っかかってきた千勝院さんをあしらっていたらそれがだんだんエスカレートして、教科書を隠されたり、他の生徒に無視されるといったあからさまな虐めに発展。それをやめるよう、正々堂々勝負しようと彼女に提案してたら、今度は孤児であるリッ君を快く思わない連中と結託して彼女に放課後、取り押さえられてしまった。その上で無理やり首にかけてあったアミュレットを奪い取られてしまう。それに激怒し、取り返そうと反射的にはなって来た彼の攻撃魔術をどうにか防いで、生意気な孤児の思わぬ反撃に怒った千勝院お嬢様によって、奪い取られたアミュレットが焼かれた事が悲しかったの』で、泣いたと、そうおっしゃるんですね?ふぁいなるあんさー?」
すべて知っているぞ、と言わんばかりに綾香嬢が話していない所まで、きっちりと語りつくして、セリア女史は確認を取る。
「ふぁ、ファイナルアンサー!!!!!」
それに対して、もはや綾香嬢は自棄だ。あらん限りの声を上げてそれが答えだと宣言する。心境としては、己の死刑執行スイッチを押した気分だろう。
そして、その宣言に、セリア女史は笑顔で応えた。
「【感覚鈍化解除】……ブブー!!不正解でーす!!!」
ズドム!!もはや殴りつける勢いで、ディルドを突きこむ。たまらず、拘束された綾香嬢の体がくの字に折れ曲がった。
「おっ♥ぃっ♥た♥ぃった♥いぃ♥いった、の、にぃぃっひぃぃぃぃいいいいいい♥♥♥♥」
殴りつけられた影響だろう。肺から空気が一気に吐き出されたうえでの絶頂の叫びは、細く長かった。
そのまま、ジュゴ!ジュゴ!と無慈悲な音を響かせながら、めちゃくちゃにディルドを出し入れしてセリア女史が宣言する。
「いいですか綾香さん?正解は、『己を虐めてくる卑劣な輩に、誰かを守る為に磨いてきた自分の力を僅かでも振るってしまった己の情けなさに泣いている』でしたー!!……貴様がリッ君の何かを奪えると思うな。だが、貴様の行いは確かにリッ君の心に染みを作ったんだ。小娘、死ぬか?」
絶対零度の言葉。それでついに綾香嬢の精神は決壊した。
「ご♥ごめんなさいぃぃぃいいいいいい!!はじ、初めはちょっとなまいっひぃ♥生意気だから♥っほぉ♥わからせてやろうと♥♥こっちのじつりょくぉをっほ♥♥とおもって♥♥♥でも、なんどやってもかてなくて♥♥だから♥♥あせ♥♥あせって♥でも、でも♥♥♥♥♥こ、こんな師が♥♥師が♥♥家庭教師についてるなんて♥♥ついてるな、なんて♥はんそく♥♥♥」
その言葉に、セリア女史がピクリを眉根を上げた
「あ”?私が帰ってくるのは精々が月に2回程度ですよ?貴方はどうせ毎日家に帰ってからも家庭教師や専門の講師と一緒にお勉強でしょう?言い訳する悪い子には、こうですよ♪えい☆」
そう言うや否や、ディルドにバチリと電流が走った。
「ぎゃひゃあああああ♥♥♥♥♥♥♥♥ごべ♥ごめんなさい♥♥♥♥♥ごめんなざい♥あや♥♥♥♥♥あやまりまず♥♥あやまりますが♥♥ら”あ”っ♥♥」
「私に謝ってもしょうがないんだよなぁ。それに、ウフフ。さっきは『こんな事されるほど悪い事はしてない』とか泣き叫んでいた小娘が何か言ってますね。そいや♪♪」
「ごっへぇ♥♥♥♥」
ディルドを奥深くまで突き入れたタイミングで、ドムッと鈍い音がして、綾香女史の下腹部が膨らみ、綾香女史は、その体をくの字に曲げながら顔だけはのけ反るという、摩訶不思議な体勢になってた。
「あははは。記者さん、綾香さんの臍お……おまん、こ」
「なんでそこだけ恥ずかしそうなんですか?」
「せ、セクハラですよ!?と、ともかく。綾香さんの臍フン~ンフは、このように完全に変態さんなんですね。さっきは電流、今は衝撃波。どんな苦痛も、快楽に変換してしまうんです。例えば、私の突き入れてるこれがナイフだったとしても、ズタズタに切り裂かれる神経と筋肉の感触で絶頂出来ます。それどころか、きっと死に瀕した際に分泌される脳内麻薬で最高に気持ちいいですよ。それこそ死にそうな位。実際出血多量で死ぬんですけど」
試してみます?にこやかな顔で綾香嬢に問いかける。
「い♥♥いやぁぁぁァ♥♥死に♥♥死にたく♥♥♥死にたくないです♥死は♥死はいや♥……あぉ♥へっ♥」
「あ、そんなこといいながら いい加減脳が馬鹿になってきたみたいですねぇ。処刑アクメ妄想してイッてますよ。頑張れ♥頑張れ♥あとその10倍位の濃度の快楽を感じると死ぬことが出来るぞ♥♥♥」
その言葉に嫌々、とばかりに絶頂の煉獄に叩き込まれながらも必死に綾香嬢は首を振っていた。
「あはは。冗談冗談。言われてますから。『殺さないでください』って。さっき言ったように、本質的にリッ君は悲しんでるんです。自分が、いわれなき暴力を振るったという事に。いや、私からすれば正当性があると思いますが。けど彼は、『何時かの誰かの為に』力を求めていた。その力を、誰かへ害意を持って使った己に失望したみたいで。はぁ~~リッ君いい子」
その、『リッ君』とのやり取りを思い出したのだろう。機械的な動きで綾香嬢の臍性器を抉りながら、中空を見つめて恍惚とした表情でにやけ顔を浮かべた。
「まぁ、まずは部屋に入るなり、その情動は誰にでもあるもので、そんなに卑下するものでもないんだよ。自分を許してあげて、と『慰めて』あげたら、やっぱり彼にも感情がありますもの。私に、『復讐』を依頼してきたんですね。それはもう可愛いリッ君の頼みですから。二つ返事で受けてあげましたよ。……私としても許せませんでしたし。だって」
そう言いながら、何の感情もない瞳でじっと、セリア女史は綾香嬢を見つめた。
「両親の形見を踏みにじるような輩が、生きている必要、ありませんよね?」
「カ゜ッ♥」
瞬間、綾香嬢からすべての力が抜け、ガクリと頭が垂れ下がった。
「あっ!やってしまいました。ついつい全力で殺気を向けてしまいましたね。はーい、綾香さん起きてくださーい」
そう言うなり、ディルドの周囲に魔術式陣が展開し、そして展開したままそのまま突き入れた。バチリ!と先ほど電流を流した時のような音がする。
「♥ガッ♥♥♥ッ!?……はーっ!はーっ!はーっ!」
どうやら綾香嬢が蘇生したらしい。一度震えてから、全力で空気を取り入れていた。
「こうやってディルド経由で心臓に電流を与えられると、蘇生アクメ出来るんですね~。……どうでした?綾香さん?蘇生アクメ、気持ち良かったですか?」
「は、はひ♥気持ち良かったれす♥♥♥」
完全に心が折られているのだろう。綾香嬢は顔を涙やよだれ、鼻水などあらゆる体液でぐちゃぐちゃにしながら、媚びた笑みを浮かべて答える。
「は?これは貴方がやらかしたリッ君への非道に対する復讐ですよ?なに気持ちよくなってるんですか?」
そしてそのまま突き入れられたままのディルドに、セリア女史は一切容赦をせずに膝蹴りを叩き込んだ。
「オゲッ♥!?……い、ぎゃああああああああ!?!?!?!?♥♥♥♥痛い!痛い!!痛い!!!痛い!!!!痛い!!!!!!あし?あしの!?わたくしの足が!?」
鈍い音と共に、ミシリという音が背骨から聞こえ、痛みと快楽がないまぜになった叫びが上がる。そして先ほど同様、上半身はめちゃくちゃに暴れているにも関わらず、下半身はまるで力を失ったかのようにプラプラと揺れていた。
「あ!いけないけない!今脊椎を痛めちゃいましたね。このままでは半身不随です!!!『せめて五体満足で返してくれ』って厳勝氏から言われてるんでした。てへぺろ☆ごめんなさいね綾香さん。今治して差し上げますから……【魂殻構成探査術式起動】【対象:脊椎構成部】並行して、【身体精査術式起動】【患部傷害深度測定】」
セリア女史が言うなり、綾香女史の全身を、立体的かつ精緻な記号、数式が信じられない密度で記載された球状の魔術式陣が包み込む。
その魔術式陣を睨みつけながら、セリア女史が何かを探るように右手の人差し指をその魔術式陣へと翳している。人差し指が動くたび、それに従い術式の構成も、僅かに変化する。
「よし、患部状態確認……当該患部の、健常時の神経、脊椎の構成を魂殻より【転写】……完了。それに従って、【概念式回復魔術式起動】……はい!治りましたよ!」
そう言うなり魔術式陣が消失するなり、陸に打ち上げられた魚のように、ビクビクと綾香嬢の脚が動くようになった。
「はっ!?あれ!?足、足が!?」
あまりの事態に、綾香嬢は己の身に起こったことを処理しかねているようだった。
「おお……こ、こんな事が」
「えへへ。凄いでしょう?まだ損傷した直後なら、身体の状況が魂殻に反映されていないので、魂殻に記載された体の状態をロードマップにして概念式回復術式を起動すれば、簡単に損傷した神経を治す事が出来るんですよ。即席の魂殻構成探査術式が高度過ぎて今の所、私か『賢者』(※後日確認したところによると、女史曰く『六人』の内の一人、『賢者』との事)しか使えませんけどね」
「え、似非マッチョ眼鏡……?」
取材当初は理解しきれていなかったが、なるほど、『六人』の内二人しか使えないとなれば、まだまだ一般化は先なのだろう。
「けれどこれで、『~が治る』という事象を叩きつける事で、自然治癒能力を高める賦活式回復魔術式では治す事の出来ない傷病を治療できる代わりに、むりやり患部以外の身体と整合性を取らない形の治癒になってしまう為、長期的には致命的な後遺症が発生してしまうリスクが存在する概念式回復魔術式の安全性が向上しますよ!何せ、魂殻に記載された情報を活用、干渉する事で、患者の体にとって自然な形の治癒状況指定が出来るので」
それはつまり、今まで治癒が困難だった様々な傷病が治癒されるという事であり、宇宙進出の時代にあって人類の寿命もまだまだ伸びそうであった。
セリア女史の見せた絶技にこれからの医療現場の明るい未来を夢想して、何とはなしに著者とセリア女史が浸っていた緩い空気を切り裂いたのは、綾香嬢の叫びだった。
「お待ちくださいローゼンタール師!!その、先ほど、厳勝、という名前が出たように思えたのですが……」
「あら、脊椎損傷の激痛の中でもちゃんと大好きなお父様の名前は聞いてるんですね。はい、出しましたよ。そもそも、リッ君を慰めて復讐を依頼されて真っ先に行きましたからね?。リッ君の保護者として、相手の保護者の管理不行き届きは追及するのは当たり前ですから」
いつの間にか『リッ君の保護者』にランクアップしていたセリア女史が、何を当たり前の事を?と小首をかしげる。それを聞いた綾香女史の反応は、激烈だった。
「いや、いや!いや!!いやいやいやいいやぁああ♥♥♥お父様♥おがあざまぁぁぁ♥♥♥」
「悲鳴を上げたまま絶頂するなんて忙しい人ですねぇ」
絶望と絶頂がないまぜになった叫びがあがり、それを見てセリア女史はしたり顔で大きく頷く。
「ともあれ、そうでしょうそうでしょう。聞けばお父様が大好きで、お母さまを心から尊敬しているみたいですものね、綾香さん。だからこそ、『たかが孤児』に負けて、千勝院という家名と、『朱炎の娘』という肩書に泥がついて、ひいてはお父様とお母様の名に傷がつくことを恐れるあまり、どんどん行為がエスカレートしていっちゃったんですよね。分かります分かります」
うんうん頷き、
「まぁそれで許される事ではありませんが……焼け焦げたアミュレットから、貴方が魔術を使用した痕跡を見つけるなり、土下座しましたよ。お二人とも」
「いやあああああ♥♥♥♥おがっ♥♥♥おがああ♥♥♥♥♥」
もはやセリア女史はディルドを握っていなかった。代わりに、弓なりになって魚のように震える綾香嬢が、その臍膣圧でディルドをヒリ出すのを見て、手を叩いて笑っていた。
「ごべ!ごべん”な”ざい”♥♥お父様♥♥お母さま♥♥ばがな”♥♥♥お”ろ”がな”む”ずめ”でぇ”♥♥♥ごべんなざいぃぃぃ♥♥♥♥ゆ”る”じでぇぇぇぇ♥♥♥も”う”♥じないがらゆるじでぇぇぇ♥♥♥」
「とか言いながらはしたなくイってるんだからしょうがないですねぇ。少しでも謝意があるならイクの我慢したらどうですか?まぁ無理でしょうけど。そんな意志だけでどうにかなるよなやわな解し方、してませんし」
そう言いながら、セリア女史がおもむろに手を叩く。そうするといきなり綾香女史を拘束していた拘束が外れ、地面に投げ出された。
べちゃり、と音がした。
「んべっ♥」
「さて、そういう訳で、貴方の所業は大好きなお父様とお母さまの知る所となりました。彼らは、『娘が本当に取り返しのつかない事をして申し訳ない。我々としては天藤君に最大級の謝意を示すし、便宜を図る。そして、ローゼンタール師の怒りを買った以上、もはや娘がどうなろうとも我々にはどうしようもない。それでもどうか、どうか娘の命だけは勘弁して頂けないか』と土下座してきました」
その言葉に、完全に力の抜けきった体で言葉なく、さめざめと綾香嬢は涙を流していた。
「まぁ私としては、仮に私の両親の形見が焼かれた日には、怒りのあまり本人だけでなく一族郎党皆殺しですが。とはいえ、リッ君にも殺さないで欲しい、って言われましたし、千勝院財閥の当主とその妻にも土下座されてしまったわけで。これは殺すわけにはいきません。もしそうでなければ、四肢を切り落とし、内臓も肺と心臓だけにして、余命三日の死ぬまで謝罪を叫ぶマシーンになって貰おうかと思ってましたが」
びくりと、綾香女史の体が震え、チョロチョロと、もはや絞りだされたかと思われた尿が漏れた。
「うわばっちぃ!さておき、そう言ったら土下座しながら二人とも涙を流して『刺し違えても貴方を止める』と言ってましたし、隣のリッ君もドン引きして再度止めて来たんですよね」
もぅ、リッ君は甘いです。頬に手を当てながらセリア女史は話を続ける。
「そこは流石に冗談です、とお茶を濁しました。いやぁ、ご両親は実際にお話しすると、中々の人格者でした。まぁ、娘の教育には失敗したようですが」
「う……う”う”……ぐすっ」
憧れ『だった』魔術師の頂から、絶対零度の視線を受けて、ただ綾香嬢は蹲り、震えるばかりだ。
「とはいえ、私自身も貴方の所業に、かつて親を失ったものとして、単純に腹が立っていました。不快だったんですね。ですので、ご両親の対応を加味して、『命は取らない。五体満足のままにするし、廃人にしないけれど、社会的に殺す。ただし、千勝院ブランドについては利する事も行う』と宣言し、それで同意を得ました」
「そういう訳なので記者さん、今日の事は、私の住んでいる場所の住所以外はすべて記事にしていいですからね?」
「……そういう事ですか」
だから取材に応じたと、そういう事だった。
「ですがそれでは、まぁ旧首都の教育行政が爆発して、恐らく綾香嬢は退学になって立場は失うでしょうが、千勝院財閥にも大きなダメージが入るのでは?……貴方の風評も悪くなる恐れがありますよ?」
「アハハ。復讐の魔女が願われて復讐を行っただけですよ。それで下がる風評なんてさして興味がないですね。あと、千勝院についてなんですが、これはリップサービスでなく全く事実であるですけど、実は私、以前からSENSHOユーザーなんですよね。言ってなかったですけど」
そう言って右手を伸ばすと、その手に壁に立てかけてあった魔女の箒が収まる。柄の先端をこちらに見せれば、そこには確かにSENSHOの文字が刻印されていた。
「いやぁ、正直『六人』レベルになると、本当は魔術発動補助媒体なんて必要ないんです。けれど、昔から使ってるからか、ある方が『しっくり』来る。そのしっくり来る中でも、SENSHO製が使い心地が一番良いんですよ。だから愛用しています。これからもこの品質を保ってくれるなら、末永く使っていきたいですし、そうある事を願ってます。これも、記事に書いちゃってください」
なるほど、『六人』の内の一人が愛用する魔術発動補助媒体メーカーともなれば、それは確かに大きな宣伝になるだろう。
「あとは、『姫様』と、『勇者』もSENSHOお勧めしたら気に入ってくれましたよ」
「なんと。『勇者』女史はそういった、女性向けのものをお使いになるんですね。お洋服などは『姫様』の御趣味で可愛らしいのを着ているというのは有名ですが」
「あははは。確かに、もう50年も女の子やってるのに、偶に『俺は男なんだ!』と主張してますけど、そのたびに『姫様』が、『もう!不可逆なのはわかってございましょう?それに、オナペットがどれだけ素敵な女の子で、私の心とお腹の奥とお股を熱くさせるか、ベットで教えて差し上げます!』って言って二晩位ギシギシアンアンして勇者君ちゃんがもう立派なオンナノコだって教え込んでるんですよね。だからちゃんと、二人とも使ってくれるんです」
「……それは、記事にしていいやつですか?」
思わず苦笑いが浮かぶ。
「いいですよ。あの二人がおしどり婦妻なのは積極的に発信していきたいですし。『人類最強の比翼連理に陰り無し』って」
「それもそうですね。ありがとうございます」
「はい。さて、聞いてましたね?綾香さん」
そういって、セリア女史が綾香さんの所にしゃがみこんで、先ほどと同様の術式を行使し、身なりだけは整えて、徐に仰向けにさせた。
手にはいつの間にかコルセットが。ちょうど、臍に当たる場所に、ディルドが固定されている。
「そういう訳で、千勝院財閥は、『愚かにも創星級魔術師の身内に手を出した財閥当主の娘』という生贄をささげる事で、創星級魔術師と明確なつながりを持てるので、これからも安泰です。娘を放逐してもいいくらいには。良かったですね?」
「……はい」
「そして今までの一連の流れは、先に宣言しておきましょう。これから行われる、天藤 律が貴方に行う復讐の下準備兼、私のうっぷん晴らしでした」
「ふく、復讐なら……」
「はい?」
綾香女史が、かすれた声でセリア女史に問いかける。
「な、なんでここに、天藤 律が。いないんです……の?」
「それはこんなもの見たら絶対優しいリッ君は途中でやめさせますからね。私の鬱憤晴らしも兼ねてるんです。途中でやめさせられたら、私が不完全燃焼になっちゃいますもの」
その言葉に、綾香嬢は、ただ体を震わせて、
「あ……あく、あく、ま……」
涙を流した。
「……っはー!身勝手なガキですね。いいですか小娘。私は、『六人』は、私達以外の多くの人の努力と協力もあったうえで、世界大戦という状況と、その裏にある極少数の人間が主導する悪意と戦いました。それは、この地獄のような戦争が終わって、世界が平和になり、皆が幸せになる事を願ったからです」
「そしてどうにか魔術師協会首領による、星喰らいの創世魔術を打ち破り、実力行使で戦場を停戦させ、どうにか各国の利害をお互い痛み分けの状態に調整し、終結させたんです。そのうえで、少なくとも向こう数百年は戦争に目が向かないように、宇宙という新天地の可能性も示して。そして実際人類は今、復興と宇宙開発の追い風を受けて繁栄の階に手を掛けている状態です。平和なんですよ。あの時、世界の誰もが望み、願った、平和です」
「勿論、そうはいっても、世界には悪意や不条理が確かにあります。それは仕方ない。それどころか。世界に蔓延るそれと今もなお戦っているんです。だから、その戦いの羽休めが出来るカフェのひと時くらいは、救われてありたい。……そして、確かに状況は違うとはいえ、両親を失いながら、私のようにその死に拘泥して、復讐に狂う事もなく、両親の死を死として受け入れ、過去のものとしながら、確かにそれを糧として正道を歩くリッ君は、救いそのものでした」
「救いを多少なりとも穢したのは、貴方ですから。だから、全力で無様に踊ってくださいね?」
そう言いながら、絶頂に次ぐ絶頂で、くたくたになった綾香嬢に、セリア女史はコルセットを取り付けた。そうすれば、ちょうどディルドが臍性器に挿入された状態になる。
もはや、綾香嬢はされるがままだ。
「うっ♥くっ♥……これ以上、私にどうしろというのですの?」
「あはは。そんな投げやりにならないでもっと頑張りましょう?今体力も回復させてあげますから」
そう言うなり、どうやらセリア女史は賦活式回復魔術を使ったようだ。荒かった綾香嬢の息も、整ってゆく。
「さて、綾香さんの体力が回復したところで、気付いてますか?今綾香さんの魂を縛るように、術式が展開しているのが」
「えっ……!?ウグッ♥」
「さっき、半身不随を治療する際にちょちょいっと掛けさせて貰いました♪」
徐に、寝込んだ状態から座り込んで、綾香嬢は、己の腹をのぞき込む。座り込む際に腹筋を駆使したからだろう。臍性器がディルドを咥え込み、それで体に衝撃が走ったらしく、艶めかしい声も出る。そして、徐にのぞき込んだままの姿勢で、震えだした。
「な……なん?なんなのです、これ……は。うそ、この術式陣、個々の術式自体は精緻で意図が……術式の意図と効果は、分かるのに……わ、わか。わから、ない……!個々の術式を組み合わせて陣として、組みあがったら、何を、どのような効果になるのか分からないっ!まるで……何もッ!ほっ♥」
顔を真っ青にして、綾香嬢は叫び、それでディルドが臍膣によって咥え込んでしまったのだろう。絶頂した。都立高等魔術院の才女とはいえ、流石に世界最高最強の魔術師には足元にも及ばないようだった。
「簡単ですよぉ。単純な効果を解術されないようにデコイを沢山噛ませてるから分からなくなってるだけなんです。綾香さん、そのまま臍おま……フン~ンフが気持ち良かったら日常生活も送れないでしょ?だからその術式は、プレゼントです。なんと、特定の状況を除いて、臍性器の感覚をセーブしてくれるんですよ!」
「それで、どんな恐ろしい条件なんですか……?」
「もう!ノリが悪いですね綾香さん!簡単です!『ご主人様に対して精神的、性的な興奮を得た時』です!」
その言葉を聞いて、どこか冷めた顔で、綾香嬢は頷いた。
「つまりそのご主人様を、天藤 律にすることが、復讐だと?」
「はぁ~!!!もう!重ね重ねノリが悪いですよ綾香さん!!!綾香さんが人間卒業するか人間のままでいられるかの瀬戸際なんですから、ちゃんと聞いてください!!!」
「は……?」
人間卒業という不穏なワードに、流石にこれまでの責め苦でどこか擦り切れていた綾香嬢も、耳を傾けざるを得なかった。
「いいですか、その『術式』には、ご主人様登録が必要なんです。そうすると機能が発揮されます。だから今も綾香さんはディルドが臍の中を刺激して、気持ちがいいでしょう?」
「んっ♥まぁ、そうですが……」
そう言って、どこか切なそうに綾香嬢は腰をくねらせた。くねらせるたびに、ビクリビクリと腰が跳ね上がる。
それを身ながら満足げにセリア女史は頷いて、
「で、ご主人様登録ですが、単純です。『子宮に初めて精液を受け容れた対象の系譜』となってます。前提として、性交の際ですね。射精と同時に、射精した側の魂殻は僅かに己を構成する霊糸を解し、精子をマーカーに、射精された側の魂殻に接触しようとします。そして接触すると、接触された側の魂殻が反応して、そこから新たな魂が形成されるんです。まるで肉体における、精子と卵子の関係です。面白いですね~」
「それで、です!現在魂を覆うように展開している術式は、最初に綾香さんの魂殻に接触しようとした魂殻の形質を認識します!そして、今後はその魂殻の形質を持った対象とした精神的、性的な興奮を感じた場合のみ、恒常的に発動している綾香さんの臍性器への【感覚鈍化】を解除。性感を感じて、絶頂出来るようにしてくれます」
そういって両手を合わせ、セリア女史は我が事のように喜んだ。
「良かったですね綾香さん!これで、男に媚びて気持ちよくなって精子を恵んでもらう事しか考えていない。雑魚雑魚な、変態雌性器を臍の穴に抱えててもちゃんと社会生活を送れますよ!!けれど、気を付けてくださいね?」
そう言いながら、座り込んだままの綾香嬢へと近付き、セリア女史はコルセットを小突く。
「んぃ♥」
「綾香さん、コルセットを透視してディルドをよく見てもらっていいですか」
「?はい……え」
もはや擦り切れて投げやりになり、あらゆる不条理も受け入れるといった雰囲気だった綾香嬢の体が、ガタガタと震えはじめ、ゆっくりと白い顔を持ち上げセリア嬢へと質問した。
「で……ディルドの中、内部に……せい、精子が…‥精子と、魂殻が……これ、しかもこれ。に、人間の、じゃない……一体なんの……せい、し……」
「あら!ちゃんと人間のものじゃないのは認識しているんですね。魔術的観点による魂の差異を基準とした生物の分類自体は、大学レベルの内容ですが、高等魔術院の知識でも、しっかり予習と復習をしていれば分かる事。ちゃんと勉強されている証拠です」
そうして慈愛の笑みを浮かべて、セリア女史は宣言した。
「豚さんの精液です。ご存じですか?魂は、たとえ種族が違ったとしても、精子と共に子宮内に運ばれたに魂殻に、ちゃんと魂は反応するんですよ?」
「ひっ♥……ハッ♥♥いっ♥♥じゃ、じゃあディルドの上部にある、このデジタル数字はっ……!」
ガタガタガタと震えながら、綾香嬢はさらなる答え合わせをした。
「はい!ディルドから豚さんの精液が発射されるまでのタイムリミットを表示してくれるタイマーです。ちょうど3時間ですね。三時間後、封時凍結された豚さんの精液が、凍結解除されて、綾香さんの子宮へ発射。ご主人様登録されるんですね!あ、ディルド、というかコルセットが外れる条件は、『豚さん、またはリッ君の精液が子宮に入り込んだら』です。あ、ディルドを固定してるコルセットは現在の宇宙船の外壁にも使われてる素材で作ってますし、その留め金は私特性の魔術式陣で幾重にも封印してます。だから、物理的魔術的にも3時間で正規の方法では外せませんからね?」
「じゃ……じゃあ天藤 律に会って……」
「あっ!そこの話に行くのはまだ早いですよ綾香さん!まずはもし3時間の間にリッ君の精液が注がれず、豚さんがご主人様登録された場合についてお話しますね?そうなると、綾香さんはもはやお相手の豚さんで精神的、性的な興奮を感じた場合のみ絶頂出来る訳ですが……【感覚鈍化】」
どうやら性器からの快感が遮断されたらしい、むしろどこかしら違和感を感じる様子で、綾香嬢は座りなおした。
「そのお相手の豚さんですが……じゃ~ん!!こうなってます!!」
そう言って両手を広げれば、そこには画像が展開された。美味しそうな、とんかつだ。
「……は?」
「はい!もう食べちゃってます!!いやぁ!美味しかったですよ!最高級の豚肉でしたから!!」
大変なんですよ?死んだ対象の魂を一部だけ保存して生殖可能な状態で保存するなんて、ニコニコと笑いながら、魔女は己の技術を誇示した。
「……え?それじゃあ、もう。私は、もし天藤 律に会えなかったら、もう一生……」
「絶頂も出来ないし、性感も感じる事が出来なくなりますね!!」
「あ……アハ。アハハハ。あ、あれ?さむ、寒い……寒いですわ。いや、いや……ど、どうし、どうして……」
そう言いながら、快感を鈍化された綾香嬢はボロボロと涙を流しながらガタガタと座り込んだまま両肩を掻き抱いて、震え出した。それはさながら薬物中毒患者が中毒に苦しんでるかのよう。
「アハハ、もう実は綾香さんの体は、脳が駄目になってるんですよ。知ってました?さっきから頭のおかしくなるような、というか私が術式で生命維持してないと廃人か心停止するようなめちゃくちゃな気持ちよさを感じて、脳が、体が快楽中毒になってるんですね。例えば、ほら【感覚鈍化一部解除】」
徐に、セリア女史が綾香嬢のスカートの中へと手を突っ込む。そして、クチュリと音がして、
「あっ…‥やめッ……あれ?」
「ちゃんと処女ですね……それはさておき、おかしいでしょ?気持ちいいかはともかく、クリトリスも、Gスポットだって、本当はもっと鋭い感覚を寄越して来ていい筈です。けれどそれがすごい鈍い。得られる快楽なんて、以前の性感帯から得られる気持ちよさに比べて、10分の1もないんじゃないですか?鈍化を解除した状態でこれですから、平時は快感なんて一切感じませんよ?痛覚と触覚は認識されますが」
「な……なんっ……」
「もう、終わってるんですよ。臍性器の気持ちよさに、心核が、魂殻が、慣れちゃったんです。『こっちの方が気持ちいい』って。だから『女性器なんていらない。これはおしっこの穴だ』って、認識しちゃってるんです。通常の雌の穴ほぐしでは、そういった部分もちゃんと配慮して施術してますが、そんなの今回は関係ないですからね」
「い……いや。いやぁ」
ガチガチガチ、少女の体が今日この場で何度も見たように、震え出した。見れば、炎のような朱の髪に。僅かに白いものが混じっているのが見て取れる。白髪だ。
「それだけ激烈な反応を起こしてるくらいだから、もう脳のシナプスが一部壊れちゃって、雌性器の快楽がないと生きていけないですよ。今ですら綾香さん、『もう気持ちよくなれない』って思っただけで、不安で不安で怖くてしょうがないですよね?それが中毒反応なんです。あ!でも安心してくださいね?」
その豊かな胸をはって、魔女は宣言する。
「さっき言いましたが、ご主人様は『受け入れた精子の系譜』です!つまり、既に死んだこの豚さんですが、ちゃんと食用に繁殖していますから、子孫の方々がいらっしゃいます!その方々の豚ちんぽなら気持ちよくなれますよ?」
解決策を提示して、魔女は微笑み、綾香嬢の耳元で囁く。
「だからもし豚精子を子宮に浴びて、獣姦でしか気持ちよくなれない変態さんになっても安心してください。運命の王子様はいますから。その時は……そうですね。私の食べた豚さんが、どの地方産の豚か、教えて差し上げます。頑張ってその地方の畜舎の豚さんのお、おち……おチンポを咥え込んで、運命の王子様を探してくださいね♪」
顔を赤らめながら、セリア女史が楽し気に宣言する。
「お…‥‥げええええええ!!!!うぶぇぇぇぇえ!!!!!」
たまらず、綾香嬢は吐いた。
「あっ、もう!ばっちぃですね!」
言葉と共に手を一つ叩けば、お嬢様の醜態は一瞬で消え去ってしまうのだった。
「でも、それは嫌ですよね?」
コクリと、綾香嬢は頷く。
「じゃあ、もうリッ君の精子を膣から射精してもらって、一生リッ君でしか気持ちよくなれない女になるしか、ないですね?大丈夫です。ご両親から許可は貰ってますから。安心してリッ君の雌奴隷になっていいんですよ」
それは、地獄に垂らされた蜘蛛の糸だった。まるでかつての宗教的指導者のように、敬虔で厳かな雰囲気を漂わせながら、セリア女史は綾香嬢へと言葉を擦り込んでいく。
「……!は……い。なります。天藤 律の……」
そう、そもそも、千勝院 綾香に選択肢など在りはしないのだ。豚の花嫁か、天藤 律の雌奴隷か。人以下か、せめて人か。選ぶまでもない。
「天藤 律様」
雌奴隷志望の至らない呼称を、ぴしゃりとセリア嬢が訂正した。
「っ!は、はい!天藤、てんどう りつさまの、雌奴隷に」
「うんうん、よく言えました」
その様子に、セリア女史は満足したように優し気な笑みでセリア女史は綾香嬢の頭を撫でた。まるで母が愛する我が子にするような優しい手付き。今日これまで、セリア女史から綾香嬢にもたらされたのは苛烈な性拷問のみだ。砂漠に降った慈雨のように染み渡ったのだろう。潤んだ瞳で、感動に打ち震えながら綾香嬢はその手付きを受け容れた。
「けれど、頑張ってくださいね。もう性器ではほとんど快楽なんて得られないんです。その状態で破瓜して、射精に導いたら、とても、とっても痛いですよ……!」
頭を撫でながら、セリア女史は哀れで愚かな少女を励ます。その言葉に、ぶんぶんと頭を縦に振って、幼児退行しかながら綾香嬢は、宣誓する。
「っはい。はいっ!けど頑張りますっ!」
そしていきなりクシャっと顔を歪め、
「豚は、豚は、豚はいや。ぶたのおよめさんは、いやぁ……!」
抑えきれない涙声で感情を吐露した。
「それは良い覚悟です、綾香さん。ところで……」
撫でていた手でそのまま白髪が混じりだした綾香嬢の髪をひっつかみ、徐に顔を上向かせながら、セリア嬢が綾香嬢を上から睨みつける。
何度かセリア女史の冷たい声は今回何度か聞いたが、それに比してもなお冷たい声が、綾香嬢へと浴びせかけらた。
「小娘、貴様なんでリッ君に射精してもらえる前提で話しているんだ?」
「……ぇ」
か細い、声だった。
「リッ君は私に復讐を願いました。そして、私は『どのような復讐をする』とは言ってません。命を取らない事は貴方のご両親リッ君共通の願いなので、それは分かっているでしょうが。さて、リッ君は今自分の部屋にいます。今、私が綾香さんへと復讐している事は教えています」
「そのうえで、いきなり部屋に転がり込んでくる、発情臭たっぷりの綾香さん。どうしたと思いますよね?当然、綾香さんは状況を説明せざるを得ませんよ?だってリッ君には訳が分からないんだから……あ、いや『射精されなければ死ぬ』とか嘘を言われても困りますね。……えい!【魂縛魔術式追加条件付与】。今付与してる術式に1個付け足しました。これで綾香さんは正確かつ詳細な説明をしてしまいますね。大変ですね……ともかく、リッ君は聞くわけです。聞いたうえで」
「うぐっ……ぐぇ……ヒッ!」
コテン。可愛らしく首を傾げて、凄絶な笑み魔女は、蜘蛛の糸を切られて絶望に沈む少女へとトドメを刺した。
「なんで、いじめられてた子が、いじめっ子の処女を奪うんだ。触れるのも嫌に決まってるだろう。それどころか、自分がNoと言うだけで目の前の女は人間失格豚花嫁確定だぞ?そっちを選ぶに決まってるだろうが」
「あ……あははははは☆あひゃ!!いひひひひ!!!!……ひぃー!!ひぃー!!!いやああああああああああああああ!!!!!!」
「きゃあ!!」
いきなり綾香嬢がセリア女史を突き飛ばし、ここから逃げようと立ち上がり、著者とセリア女史が入って来た階段へと向かい、
「な……なんで!?どうしてなの!?どうしてよぉ!!!もう!!!もういやぁ!!!!!やぁ!!!!!どうして!!!!!」
まるで見えない壁にぶつかったかのように、階段の前で立ち止まった。
「そこは『綾香さん用の出口』じゃないですからね。本物は別です。それにしても……案外冷静。いや、土壇場でも判断力がありますね。実は魂に展開する術式陣は、まだ起動していません。あ、そうか。ディルドのタイマーの数字が動いてない事から推察しましたね?それでなくてもタイマーさえ動いてなければ豚精液が射精されないからどうにかなると踏んだのか」
どちらにせよ無駄ですけど。突き飛ばされた衝撃で口の端を切ったのか、僅かに流した血をぬぐいながら、黒衣の魔女は立ち上がった。
「ヒッ……ひぃ!!!」
「ともあれ、自分から壁に追いつめられるなんて、綾香さん、殊勝な方です。それに免じて、久々にやってあげましょう。いやぁ、懐かしいですねこれ!」
そう言いながら、見えない壁を背にして怯える綾香嬢へと、セリア女史は向かってゆく。その様に、思わず著者も興奮を抑えきれなかった。
それは、世界で最も有名な心核翻訳の一つ。かつての大戦を終わらせた『六人』の一人。『復讐者』の代名詞。
『賢者』が導き、『英雄』が切り開いて、『騎士』が守り、『姫』と『勇者』が駆け抜けた光の道にて、取りこぼされた悲劇の当事者へ、常に女がかけた言葉。
一度、誰かを虐げ、理不尽をもたらしたのならば、その言葉から逃れ得る術はない。
「さぁ、綾香さん。貴方の傲慢を、愚かさを清算しましょう。天藤 律の願いを受け容れて、復讐の魔女が、ここに宣言します」
「あ……ああ、いや」
もはや逃れえぬものではない。綾香嬢はただ、眼前の少女のような女性を見下ろして震えるのみだ。
そして、セリア・ドリット・ローゼンタールは、千勝院 綾香の胸に、人差し指を突き付け、終わりの言葉を放つ。
「【魔術式陣起動】――― 【復讐するは、我にあり】」
「はい!わかりましたね綾香さん!!!私の行きつけのカフェは、この近くです。頑張ってカフェの場所を三時間以内に探し出して、二階にいるリッ君に会って、誠心誠意謝って土下座して無様にゆるしを請うて、トイレの紙屑程の価値もない処女を破って貰って、快楽奴隷奴隷宣言してきてくださいね……【鈍化解除】」
「あおぅ♥♥うぅぅう♥♥♥♥」
「お帰りはあっちです」
鈍化が解除されて、快楽が走るのだろう。よたよたと頼りない足取りで、それでも必死に綾香嬢は、階段を上っていった。そしてそのまま、街に出て必死に件の『リッ君』を探すのだろう。
しかしそれは、
「いずれにせよ、貴方の大切な『リッ君』に彼女の人生の責任を押し付ける事になるのでは?」
「それはもう。復讐の魔女に、復讐を依頼したのです。私はあくまで執行者。意志の代行者であって、復讐者そのものではないですから。己の意志の責任は、己で取るほかありませんから」
「それは……そうですね」
しばし、二人だけの時間が流れる。
「ところで」
口火を切ったのは、セリア女史だった。
振り向けばいかなる魔術か、当初のニットセーターにロングスカートに変じていた。
「この後お暇ですか?」
「え……ええ。まだ時間はありますが……」
「でしたら実は、ちょっと私もオンナノコですから、気持ちいいのを見てちょっと昂ってしまって……」
そういう年ではないだろう、というツッコミは口の中で飲み込んだ。
「記者さんも、そこ。苦しいですよね?」
少女は、悲惨だった。自業自得とはいえ、悲惨だった。だが、痴態でもあった。確かに、著者の一物は、膨れ上がって苦しさすら感じている。
ススっと、ニットセーターのお腹が、まくり上げられる。するとそこには、花が咲いていた。僅かに開いた臍の、穴。そこから覗く、肉厚なヒダと、肉輪。蠢いている。先ほどの少女のそれと比べてもえげつのない、食蟲植物のような、それ。
思わず唾を呑みこむ。
「えへへ……当然、人体実験は、自分の体でもやってるんですよ。……どうです?ちょっとばかり、休憩でも」
頷かない以外の理由は、無かった。
―――結局、内容が内容だったことと、天藤 律氏の要請もあり、この記事はお蔵入りとなった。
とはいえ、セリア女史との交流はこのまま続き、『六人』とのコネを得た事で、その年のボーナスは信じられない額になったし、何より社内でのポジションが三段ほど一足飛びに上昇する事となった。
その代わり、彼女と、天藤氏が巻き込まれる世界の騒乱に、私も関わらざるを得ない事となるわけだが。
さらには、この取材の後、著者の泡姫通いは、『雌の穴ほぐし済み嬢』一択となってしまい、今までの泡風呂のランクから、3段階は上でないと満足できなくなってしまった。畜生め。
その効果と主な用途―――夜の行為のマンネリ化を感じた夫婦や恋人が、新たな刺激を求めて女性器の性機能向上や、はたまたそれだけは飽き足らなくなった者たちは、『子宮直通の新たな性器』を増設するために行う手術―――が用途の為、『雌の穴ほぐし』と低俗な名称で広まっているそれはしかし、旧暦最後の世界大戦によって大きく減じた人口を再度増やすために、出生率向上のために世界政府が奨励しているため非常に一般的な手術である。
とはいえ、手術なのだ。本来であれば、クライアントの要望を聞き、手術の計画を立案。魔術的医療及び化学的医学両面からクライアントの身体を『造り替える』ものである。
しかし、ここ東京においてまことしやかに噂される、『雌の穴ほぐし屋さん』は違うという。どのような複雑で、難しい施術も、僅かな時間で、後遺症も残さずに行ってしまうらしい。
しかも、その『ほぐし屋』さんの場所は、とある一般的な樹木マンションの一室という話なのだ。妖しい。
非合法組織による若年層を対象とした未認可、無許可で行われる『雌の穴ほぐし』行為と、それによる性奴隷としての戦災未整備地域への人身売買が問題として取り上げられている昨今である。
この『雌の穴ほぐし屋さん』もまたその拠点の一つではないか、少なくともその問題の一端に切り込むことが出来るのではないか、と筆者がこの『雌の穴ほぐし屋さん』について取材を行ううち、なんと当の『雌の穴ほぐし屋さん』と接触を持つ事が出来た。しかも施術の様子を見せてくれるという。
正確な住所についての記述は控える事を条件として、今回、『雌の穴ほぐし屋さん』の直接取材となった訳だが、先に結論から述べると、『雌の穴ほぐし屋さん』は決して非合法なものではなかった。
それどころか、本誌における取材対象としては例外的な、あまりに光栄な対象を取材する事となった。
その重要性から場所についての正確な記載は改めて控えさせていただくが、それ以外についてはほぼすべての内容の掲載許可を頂いた。
とある、偉大な存在の、意外な一側面、あるいはお茶目な休日の様子を読者諸氏もぜひ目にとどめて頂きたい。
―――週刊東京『実録!雌の穴ほぐし屋さん!!(天藤氏要望によりお蔵入り)』冒頭より
―――かつての世界大戦よりはや50年。
魔術の再発見とそれに伴う利権の奪い合いに端を発した、世界観同士の戦争とも呼ぶべきそれは、ここ旧日本の首都、東京にも確かな爪痕を残していた。
かつては1200万人が生活していたそこは主要な戦場の一つとなり、現在に至ってもなお人口300万人と往時の喧騒を取り戻しているとはいいがたい。
しかし、この失った人口の代わりに得たものもある。科学と魔術の融合による新たな技術だ。ここ30年、『緑とコンクリートの真なる融和』をスローガンに新たに制定された都市計画にしたがって再整備された東京は、かつての映像記録に見られるようなコンクリートジャングルから、最新式の上級魔術強化樹木式建築物が立ち並ぶ、まるで旧暦のファンタジーに語られるような『エルフの森』という様相を呈していた。
そんな、『緑の街、東京』の都心部にあるなんの変哲もない一般市民の住まう中層向け樹木マンション。その一室に、『雌の穴ほぐし屋さん』はある。
エントランスの自動ドアを前に、事前に教えられた部屋の番号を入力してインターホンを押せば、相手からの応答はなくそのまま自動ドアが開き、エレベーターに乗って部屋の前へ。
扉の横に付けられたインターホンを押す前に、深呼吸を一つして周囲を見渡す。空は青く、周囲はこの樹木マンションと同一規格の樹木マンションが立ち並ぶ、何の変哲もない東京の一区画の景色といった風情。
目の前の扉も中層家族向けマンションの玄関に通じる扉にしか見えない。表札に関しても何も書いていなかった。果たして、このような場所で『雌の穴ほぐし』が行われているのだろうか。
意を決してインターホンを押す。しばしの沈黙。扉の先から、スタスタスタと、スリッパに包まれた軽やかな足取りが聞こえてくる。そしてそのまま、
「はーい、ちょっとお待ちくださいねー。今お明けしますから」
落ち着いた女性の言葉と共に、ガチャリ。機械式錠が開錠される音がして、扉が開いた。
「貴方が、『週刊 東京』の記者さんですか?」
そう聞いてくる女性の美しさに、筆者はしばしの圧倒された。まさに烏の濡れ羽色といった風情のつややかで豊かな髪を、ちょうど首のあたりで左右二つ結びにして、尻尾を体の前に垂らしている女性。
野暮ったく大きい眼鏡を掛けているが、その魅力を隠しきれるものではない大きく釣り目気味な瞳は、こちらに微笑みかけているため僅かに弓なりになっている。
ナチュラルメイクなのだろう。微かな朱の刺した唇は瑞々しさを湛えており、目の前の女性が妙齢であることを訴えかけていた。
さらには誠に失礼ながらも、直接的な表現をさせていただくならば、非常の豊かな胸をニットのセーターに包み、群青色のロングスカートにスートールを纏ったその姿は、『文学が好きな深窓のご令嬢』といった風情であった。
「はい。そうですが……助手の方でしょうか?」
後から考えると非常に、それこそ、ここで殺されても文句が言えない質問であったが、『彼女』はこちらの問いに対して、首を振って否定した。身長は150センチあるかないかだろう。まるで少女のような背に、大人の女の魅力を一杯に詰め込んだ彼女は、微笑みながら、こちらを見上げ、
「ウフフ……助手さんに見えますか?残念、私がその……」
そこで顔を赤くして、言い淀む。深窓の令嬢といった風情の彼女としては、その通称を口にするのは少し恥ずかしかったようだった。
「『雌の穴ほぐし屋』の、セリアです。よろしくお願いしますね?」
そういって『雌の穴ほぐし屋』のセリア女史は微笑みかけた。
―――まずは、上がってください。
そういって通された部屋の中は、まるで変哲もないファミリー向けマンションの一室といった風情だった。
可愛らしい女性的なインテリアがそこかしこに飾ってあり、アロマを焚いているのだろうか。システムキッチンを備えたリビングには柑橘系のさわやかな香りが満ちていた。
そしてリビングの机に案内され、『今お茶を出しますから』としばし待ってる間に失礼にならない程度に部屋全体を見渡しても、何ら『雌の穴ほぐし』に使われるような医療器具を見つける事が出来なかった。
ただ一点、リビングの壁に額縁で飾られている写真だけだ異彩を放っていた。最新式の宇宙服に身を包んだ完全防護状態の屈強な男女に囲まれて、丁度今お会いしたようなご令嬢の装いでセリア女史がそこには写っていた。
背景はどうやら宇宙のようだ。背景に瞬く星々が美しい。ならば、背景ははめ込みか合成だろう。そうでなければ他の被写体と違い生身のセリア女史に説明がつかないからだ。そういえば宇宙ステーションにこういった写真を撮れる観光設備があると聞いた。いずれにせよ、どうやらセリア女史と他の写真に写っている諸氏は仲が良いらしい。皆が皆満面の笑みだ。
「宇宙を旅行されたことが?」
お茶を運んできた女史に質問を投げかける。これも後々の事を考えるとあまりにも失礼であったが、セリア女史はそれに対して何も言わずに、パァっと笑みを浮かべて、頷きを返す。
「はい!大好きです!宇宙!!」
そういうセリア女史の雰囲気に、その時は印象よりミーハーな方なのだな、と筆者は思った。また、深窓の令嬢然としたその雰囲気からは予想外に、中々おしゃべりが好きなようでもあった。
宇宙、新暦において最も将来が期待される分野。科学と魔術の融合により、人類は光年レベルの長距離移動を短時間で可能とした。そうなれば居住可能な惑星の探索が行われ、事実、居住可能な惑星が発見され、現在魔術を基幹とした惑星開拓技術によって環境改善中だ。
一般人がまだそういった惑星自体に降り立つことはかなわないが、その惑星開拓の中継地点である宇宙ステーションには一般人も高額ながら旅行に行くことは可能である。
つまりはそういう旅行者の一人なのだろう。そこから類推できる事は、セリア女史が一般市民としては高級な暮らしをしているという事だ。見た所このファミリー向けマンションにも一人で住んでいるようで、それだけの資産を得るには、やはり違法な『雌の穴ほぐし』を行っているのだろうかと、著者の疑念は増すばかりであった。
それから、ある程度お互いに世間話を挟んでから、核心に切り込んでいくこととする。
「さて、セリアさん。今日はお招きいただいてありがとうございます。そのうえでまず前提としてお聞きしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はい。なんでしょう?」
「『雌の穴ほぐし』が資格の必要な医療行為である事は、ご存じですね?」
著者は、断定口調で聞いた。その雰囲気、世話話から感じた印象としても、取材対象の女性は聡明だ。これを分かっていない筈がないという意図での質問。
果たして、微笑みながらセリア女史は頷いた。
「ええ、勿論存じております。これでもちゃんとお医者さんの資格、持ってるんですよ?」
どうです?と言わんばかりにその豊かな胸を張ってフンス!と意気込む様子は誠に可愛らしく、ついつい追及の手を緩めそうになる。美人は、得なものだ。
「ではその、医療行為を行う事業所の届け出が必要な事は?」
「勿論」
「でしたら何故……『女性器性機能向上、及び疑似女性器増設手術事業所届け出一覧』にここの住所の記載がないんですか?」
そう、今日ここに来て、この『事業所一覧にない』というのが、『雌の穴ほぐし屋』の違法性について追及しようとしている根拠であった。
基本的に魔術と科学の複合的な医療行為については、そのバランスが崩れるとどのような災害が発生するか未知数な為、事業所の届け出が義務付けられている。
当初、『雌の穴ほぐし屋さん』にアポイントが取れ、その場所を聞くことができた。そのため、
この『事業所届一覧』に記載された住所とも照らし合わせたにも関わらず、届け出済みの住所には事前に聞いた住所はなかった。
それはつまりこの『ほぐし屋さん』が届け出を出してない未認可な事業所であることを示している。
こちらが根拠を述べても、セリア女史は笑みを浮かべたままで、頬に人差し指を当てて少し中空を見上げた後、小首をかしげ
「えー、はい。超法規的措置です☆」
にこやかに答えた。
「どのような理由があってそのような事が・・・!」
あからさまにはぐらかされた返答に、思わず語気が強くなる。身を乗り出してさらに追及しようとした瞬間、
「記者さん?」
機先を制してセリア女史がこちらの目を見ながら声を掛けて来た。今までのどこかしら明るく軽やかな声ではない、静かで重い声。
明らかに今まで違う雰囲気に、こちらも身を乗り出したまま、思わず追及の手が止まる。
そしてそのまま見つめ合う事数秒、先に口を開いたのは、セリア女史の方だった。
「私は、『本来なら一月や二月かかる雌の穴ほぐし手術を僅か1日で済ませてしまうという奇跡の雌の穴ほぐし屋さんの技術について取材がしたい』との事でその許可をだしたのですが……本当はこの場所の違法性を問う取材だったと……?」
「た、確かに当初はそうでした!ですが、『事業所届一覧』にない以上、その違法性は明らか!でしたら昨今の違法雌の穴ほぐし屋さん問題の一端に切り込む端緒として、取材できればと思った次第です」
「嘘ですね。もとから違法な、ほぐし屋さんだと思って取材するつもりだったんでしょう?」
圧が、更に高まる。静かな瞳の中に、著者は言い知れない何か、深いものを見出した。知らず、乗り出していた筈の身が、下がり、椅子へと沈み込む。
この段階で、著者は、セリア女史の正体について察することができた。
「やはり……魔術師……」
その可能性は考慮していた。『雌の穴ほぐし』は魔術と科学的医療双方を思って施術する。ならば、見た所ひとりでこの『雌の穴ほぐし屋』を切り盛りしているのだから、セリア女史が魔術師であって当然なのだ。
魔術。遥か太古の昔、最初の人によって見出された、この惑星に存在しない筈の力。空気中に漂っているが、光学的、科学的に観測が困難な非物理的な素因である霊子に、一定の図形や言葉、様式で以て干渉、『科学的プロセスにとは違った形で』現象を引き起こす奇跡の御業。
既に『最初の人』がもたらした際には呪文や術式について、一定の形式に纏められていたという事から、恐らくは『最初の人』自体が他の惑星からの転生者であったという見解が現代においては有力ではあるが、いずれにせよそれは限られる者しか知らない技術であった。
神話や伝説に語られる古代においては、素質ある者が『神の力』として振るい、そこから社会が形成、成熟されるに従って、だんだんと社会の上層部、また裏の暴力の世界に押しやられていったそれは、産業革命を経て科学文明が急速な発達を見せてゆく中で、再び一般市民の目に晒される事となる。
科学技術発展による隠匿されていた魔術の発見と、その混乱、及び動乱については読者諸氏も歴史の授業で十分習っていると思うのでここでは割愛させて頂くが、いずれにせよ現在、魔術は、科学と共に我々の生活を支えている重要な技術として一般的なものと認知されている。
とはいえ、都市インフラを支える永続的な効果を発揮する魔法や、人口霊石を動力とした、物理スイッチによる術式操作を除いて、魔術という技能は非常に属人的な技術である。
魔術を扱うには、魂の資質が必要だった。
魔術によりその存在が確定、定義付けられた魂は、その存在の精神や本質を決定付ける心核と、そして心核を覆っている、『霊子に干渉できる出力』を決定する魂殻の二種で構成されていた。
そしてこの心核と魂殻が魔術を扱う、つまりは霊子に干渉できるだけの資質を備えて生まれる者の確率は実に10人に1人。
それもこれはあくまで『資質がある』という話であって、その扱える能力が高くなるに従って、確率は天文学的に減少してゆく。
魔術師の最高位である、創星魔術を扱う創星級魔術師に至っては、今もなお一線で活躍する、かつて大戦を終結に導いた英雄、『六人』を除いて存在すらしていない状況である。
そんな魔術師であるが、実際のところ属人的な技術かつ大戦後の混乱期から立ち直りつつある現在、『魔術師』である事を隠すことは案外そうは苦労しない。出生時と教育機関初等部入学時に素養の検査はされるがそれまでだ。
勿論その検査で先天的にたぐいまれなる素養を見出されることも多々あるが、その後の成長でその才能を開花させるものも居る。
すべての魔術師が、魔術学院まで進学した登録済みの魔術師という訳ではないのだ。とはいえ、敢えて隠すよりも、ちゃんとした専門学校に通う方が当然一般企業の就職にも有利な為、大部分がそうするのだが、ごく一部はなんらかの事情からそういった道を選ばず、裏社会に身を窶す事もある。
おそらく、セリア女史はそういったそういった裏社会に身を窶す魔術師の一人なのだろう。このような美人が日の当たらぬ場所で生きているとは、なんともやるせない。
とはいえ、そのような感傷はともかく相手が魔術である事を想定して、当然こちらも対策はしている。スーツの裏には各種魔術防護用の呪符を仕込んでいたし、何よりジャーナリストとして危険な場所に赴く際の緊急手段として、PMCとは契約済みだ。
沈み込んだ体のまま、懐にあるPMC直通の情報端末へとエマージェンシーコールを送ろうとした瞬間、
「無駄ですよ」
バツン!!!懐の端末が、鈍い音を立てて何の反応も返さなくなった。軍用として物理的霊的に質実剛健の作りをしているそれが破壊された事に対して顔を引きつらせながらも、勝利宣言をする。
「は……はは!この端末は10分に一度信号を送信しています。それが途切れればここの住所を知るPMCが1時間以内にこの部屋に殺到しますよ……!」
それまではこの体中に仕込んだ防御用呪符で対応する予定であった。
しかし、一切焦った様子を見せず、セリア女史は笑みのまま、
「そうですか」
頷きの後、右手の人差し指で、机を叩いた。トン、と軽い音がやけに響く。
そして次の瞬間、机がわずかに発光して、
「……え?」
パチ……と軽い音。そして、スーツの裏に仕込んだ呪符が全て効力を失った感覚を寄越してきた。
おそらく読者諸氏はこのような経験をすることはないと思うので、後学のために著者のリアクションをここに記しておく。
万全の守りと思っていたそれが破られた時、感じたのは命の危機ではなく、恥ずかしながら
「こ……これだけ揃えるのにどれだけかかったと思ってるんだよぉ」
という情けない悲しみだった。なお給料半年分であることを明記しておく。それだけの価値は、あった筈なのだ。
こちらのその反応は流石に予想外だったらしく、セリア女史も慌てて、
「あっ!そ、そうですよね。記者さんとしては大事な物でしたよね!す、すいません!」
そう言うとパン、と拍手を一つ。
「【破却術式実行対象復元】【復元物強化】―――【復元完了】」
呪文が唱えられ、その呪文に込められた機能が発動する。そして瞬時にスーツの裏の呪符の全てが効力を発揮している感覚が戻って来た。
こちらが言葉を失っていると、眼前の女史は可愛らしく手を合わせて、
「ごめんなさい!そうですよね。記者さんとしては高価なものですもの。お詫びと言っては何ですが、先ほどのものよりちょっと強化しました。勝手に壊してしまって申し訳ないです。ただ、一応こっちは預からせて貰いますね?」
そういうと彼女の右手には何時の間にやら懐にあった筈の通信端末が、握られていた。しかもどうやら先ほどの術式で修理されたのか、完全な状態で。
もはや、こちらは曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。彼女は、セリア女史は相当高位の魔術師だ。
そして私は、その魔術師のテリトリーに居る。取材どころの話ではなかった。私はこの魔女の機嫌をどうにか取り、どうにかこの場から逃げ去らねばならない。その一心であった。
「さて、それでは行きましょうか」
今しがたの緊張感のあるやり取りなどまるでなかったかのように、セリア女史は楽し気な笑みを浮かべて席を立ち、こちらを案内する。そこは玄関からリビングへ続く道ある、扉だった。
なんの変哲もない扉だったがしかし、
「それじゃあ今から、『雌の穴を解し』ますから、ぜひ取材していってくださいね?」
扉を開ければ、そこには明らかに構造上おかしい『下へと続く階段』。異空間への道である。
『今ここにある現実からわずかに揺らいだ場所』を異空間として己の制御下に置く術を持つ魔術師は、熟練の高位魔術師の証拠だ。今まで著者が直接取材した中にも存在しない。
もはや毒を喰らうば皿まで。著者は、女史に誘われてその階段を下っていった。
階段を下りた先には、大体縦横高さ、共に大体5メートル程の空間が広がっていた。どこか医療機関の手術室を思わせる清潔で無機質な白く明るい空間である。
そして、その部屋の中央には、決して医療機関の手術室ではありえないものが鎮座していた。
その円形の金具から伸びた鎖で、円形の内側にいる少女の四肢を拘束した台座である。どうやら少女自体気絶しているらしく、数多を俯き気味にして全く反応を寄越さない。
垂れ下がった頭の口元には僅かな陰。どうやら、猿轡も噛まされているらしい。
「これは明らかに犯罪ですよね!?!?!?!?誘拐ですよ!?!?!?!?!?!?!?!?」
明らかなその空気に思わず著者が叫びをあげてもなお、セリア女史はニコニコと微笑みつつ、
「確かに誘拐はしましたけど犯罪ではありませんよー?」
とニコニコ意味不明な返しを返すばかりである。
「と、ともかく連絡しなければ、警察に……!」
「無駄ですよ?ここ、そういうの通じませんから」
「あっ!くそ!そうか!!やっぱりそうか!!!」
とこちらが動揺している間にも事態は進行してゆく。こちらがうるさくしていた声で意識を取り戻したのだろう。眼前の少女が愚図りだした。意識が覚醒しようとしている。
「あっ!ほら記者さんがうるさくするから起きちゃいましたよ?もぅ~~」
「私が悪い流れではないですよねこれ!?」
と可愛らしく口を尖らせるセリア女史ではあるが、もはやそれで騙される私ではなかった。
「あっ、そうだ記者さん」
「……なんです?」
騙されないと同時、彼女がこちらの要望を聞く気が一切全くない事も認識した私は疲れながらもその言葉に耳を傾けた。
「大丈夫ですよ?本当に。ご両親からも許可は得てますし。あ、私の事はセリア女史ではなく女史と読んでください。……それで気付かないとも限らないですしねぇ」
「?それはどういう……」
こちらの疑問を尻目に、セリア女史は台座の横に鎮座している、彼女の腰ほどの高さの清潔そうな棚に載せられた医療器具らしきものに手を取って、何やら確認していた。
そうすれば、当然拘束された少女が目を覚ます。
『こ、ここ……ここ、は?』
猿轡は噛まされている筈なのに、なぜか少女の声は少しノイズがかっていたが、明瞭に聞き取れた。
自身の状況が上手く認識できていないのだろう。意識が覚醒したばかりの眠そうな半眼で、周囲を見渡している。
「あ、あの猿轡はどちらかというと舌噛まない用なんですよ。私個人の趣味でちゃんと話せる形にはなってるんですよね」
と恐ろしい事を述べるセリア女史を尻目に、少女を観察する。
美しい少女だった。
灼熱のように鮮烈な赤い長髪を腰ほどまでに流し、前髪はぱっつんと切りそろえられている。どうやら眉だけでなく、まつ毛まで赤い事から染めているわけではない、地毛だ。
事実、魔術師はその心核の特異性から髪の色が通常のホモサピエンスと変わっている事はよくある。
だんだん覚醒してきて周囲をきょろきょろと観察するその瞳は釣り目気味で美しく、眉とまつ毛も整えられており、意志の強さを感じさせた。
大の字に拘束されているからこそ、まるでモデルのように長い手足もよくよく見える。服は着ているにも関わらず、足は裸足であったため、そのつま先までしっかり手入れされている事がよくわかる。
身長は大体160センチ後半程だろうか。その顔つきから十代半ばから後半に見える少女としては割と背が高い。
そして何より、その身に包む制服。シャツにネクタイとその上を包むブレザーと、可愛らしいミニスカートは造りからして高級感を漂わせ、何よりそのブレザーの肩から金具で留めれて後ろに流されている特徴的なマントから、その制服がどこのものかは明らかであった。
「都立魔術高等院の制服……!?」
そう、旧日本の首都東京において最も権威ある魔術学習機関の制服である。都立魔術高等院。
卒業すれば、エスカレーター式に旧日本最高の魔術学府である東京大学魔学系研究科、魔学部への進学がほぼ約束されるその学院はどのような地位の者にも門戸を開いているからこそ、志願率は尋常ではなく、倍率は50倍。
実力主義の校風が色濃く、卒業までに約7割が成績不良を理由とした退学の憂き目に合い、他の著名な魔術の私立に流れる程である。
しかしそれゆえに、現役生は皆優秀な生徒ばかり。とはいえ、問題がない訳でもない。倍率50倍の厳しい入学試験をパスする事など、それこそ幼少期からそれ専門の教育を受けていた人間位しか不可能である。
そのため、学生の9割9分が所謂上流階級の子女で占められており、更にはなまじっか優秀である為、皆プライドが高く、別名『貴族主義魔術師養成機関』とも呼ばれていた。
ともかく、その都立魔術高等院の学生が、何の因果か今円形の台座に拘束されていた。
さらに、である。きょろきょろを見渡すその姿をよく観察するにあたり、彼女の素性も、著者は察する事が出来た。
こちらから問いかける前に、現状をある程度察した彼女が、言葉を上げる。
『な、なんですか此処は!?どなたですか貴方達は!?この狼藉、私が千勝院 綾香と知っての行いですか!?!?!?!?』
そう、千勝院 綾香である。今一番、都立魔術高等院の学生としては有名な人物であった。
千勝院家は、50年前の世界大戦を足かけにして急成長を遂げた新興財閥である。大仰な名前だが、これについては大戦時に、願掛けを含めて初代当主が改名したらしい。
基本的に旧日本の法律では、むやみに苗字を新しくすることは不可能であったはずであるので、それを可能とした当時の千勝院家の勢いがどれほどあったか察する事が出来る。
財閥としては現在3代目。眼前にいらっしゃる千勝院家のお嬢様の御父上、厳勝氏が運営しており、3代目として、その苗字に似合わず、名前に似合った安定的かつつ堅実な運営をしているという事で有名であった。
3代続けばその後も安泰とよく言われる以上、相当なプレッシャーの中そつなく運営出来てる事自体が、氏の有能さを物語っているというのがもっぱらの評価である。
財閥としては、新興財閥によくある魔術関連に重きを置いた企業体系となっており、特に基幹となっている、魔術発動補助媒体メーカー、『SENSHO』は女性向け魔術発動補助媒体分野にて、世界で有数のシェアを誇っている。
そのご令嬢ともなれば、世間に露出する機会も多く、綾香嬢は厳勝氏の妻であり、優秀かつ有名な魔術師でもある『朱炎のレスリー=アン・スーザン・千勝院』女史の資質を色濃く受け継ぎ、当然のように都立魔術高等院へと進学。優秀な成績を収めているとの事だった。
学内においても優秀かつお嬢様である彼女は、その生まれと現状からか自信家の高飛車なお嬢様、というのがもっぱら周囲の評価である。そしてその自信に見合うだけの実力も確かに備わっている、という評価もまた受けていた。
「ええ。存じてますよ。貴方が千勝院 綾香さんであることは。そうでもなければ、こんな事いたしませんもの」
ニコニコと肯定の意を示すセリア女史に、さすがに気が気でない。こんな、明らかに、千勝院家へと仇なす行為。無実であると私自身の潔白を叫んでも、どう考えたって共犯にされる流れである。
とりあえず綾香嬢の視界に入って刺激しないようにするしか、その時の著者出来る事はなかった。
「あっ!安心してくださいね?重力制御で浮かせてるから、特に体重がかかって四肢を拘束する手錠が擦れて痛いって事はないでしょう?そこは、オンナノコでしょうから。ちゃんと考慮してあげました」
そういってフンス、と胸を張るセリア女史。魔術としても超高等、科学的にそれを再現した装置を購入するとするとしても、億はくだらない技術をさらっと使っている旨を語るその言葉に、もはや著者は驚き疲れ始めていた。
『……っ!舐めた事を言ってくれますわね!!!!後悔なさい!!!【我は遍く炎を友とする苛烈なる勝利者!】【炎熱顕現摂氏三千度!】【炎熱収束!】【照射!】』
それがどれだけ高等な魔術であるかは、綾香嬢こそが理解できるものであったのだろう。セリア女史の言葉に僅かにひるみながらも、攻撃系の魔術を放とうと呪文を紡ぐ。嬢の眼前に突然爆炎が顕現し、そしてそれが収束。熱線として放たれる。
そしてそれを当然の事のように、
「【解術】♪」
たった一言でセリア女史はかき消した。
『なっ……!』
おそらくは綾香嬢も現状を判断して、先手必勝を仕掛けたのだろう。判断自体は間違っていなかったようで、その攻撃自体はセリア女史としても予想外だったらしい。手を叩くように合わせてどこか感心したように言葉を紡ぐ。
「へぇ~!凄い!凄いです!そのお年でもう、心核翻訳を見出しての術式強化が出来てるとは。もう魔術師としては一人前なんて、綾香さんは本当に優秀な方なんですねぇ」
心からの称賛といった様子の言葉はしかし、今しがたその強化された術式をたった一言で解除した本人が言うならば皮肉にしかならない。事実、セリア女史は眉根を寄せて
「とはいえ、私にちょっとでも届かせようとするなら、せめて【炎熱顕現摂氏六千度】に【疑似太陽顕現概念付与】と【収束複製多重照射】くらいはやってほしかったですねぇ。……所詮はそんなものですか」
著者は残念ながら魔術の専門家ではない。だからセリア女史の言葉がどれだけ無茶であったかは厳密には理解できないと言えど、綾香嬢の青ざめた顔が、それだがどれだけ高等な技術かは察する事が出来た。
青ざめた顔のまま、猿轡を噛まされて、綾香嬢は振るえた声を絞り出す。
『教授級が扱える術式でないと届かないなんて……ご冗談はおよしなさい!!』
「あはは。冗談かどうかはともかくとして、あなたの術式が届かない事は理解できましたね?とはいえ、一々解術するのも面倒なので……はい。【発動阻害領域展開】ね?」
『っ!?うそ!そんな適当な詠唱でこ、こんな高度な術式!!な、何者ですの貴方!?!?!?!?』
どうやら魔術の発動を阻害されたらしい綾香嬢が本格的に焦った声を上げれば、それにまるでなんともないかのような微笑みを返して、
「何者って……『雌の穴ほぐし屋さん』ですよ♪」
そう言いながら、傍らの台から一つ、霧吹きを手に持った。
「はい!という訳で記者さん、今から雌の穴をほぐしていきますよー!!」
と、楽しそうにセリア嬢がこちらに向き直って宣言した。そうしたならば、当然綾香嬢もこちらを向き直り、
『あ”!貴方!貴方何していますの!?この女の仲間ですわね!?助けなさい!ほら!!!顔を覚えましたからね!!!今助けないと後で貴方、この女ともども酷いですわよ!!!!!』
大の字に拘束された四肢をユラユラと揺らしてこちらに助けを求めてくる。
それに対してはこちらもあいまいな笑みを浮かべ、
「い……いやぁ」
と答えるしかない。確かに今ここで綾香嬢を助けなければ後が酷いかもしれないが、そもそも今ここでセリア女史に歯向かって助かる自信が全くなかった。
『こ、この愚図!お馬鹿!!!ちょっとは私の役に立とうとは思いませんの!?』
あしざまにこちらを罵ってくるお嬢様に対して、どうやらセリア女史は気分を害したらしい。スッと近寄って行き、
「うるさいですよ、綾香さん」
「ムッー!?ムッ?ムゥー!ンムゥー!!!」
綾香嬢の言葉が猿轡を噛まされたものとなった。
そしてしばしの時間が経ち、叫び疲れた頃を見計らって、セリア女史が再び声をかける。
「この方は観客ですから、特にあなたを助ける事はありませんし、そもそもあなたが助かる事はありませんよ。さて、話の腰が折られましたね。では、雌の穴をほぐしていきましょうか」
そう言いながら拍手を一つ。そうしたなら、
『え?……は!?いやぁぁぁぁぁあああ!?!?!?!?』
いきなり綾香嬢の羽織っていたブレザーが消滅して、その下に着ていたシャツのボタンが全てはじけ飛んだ。僅かにシャツが開き、可愛らしくレースがあしらわれた、その慎ましやかな胸を包む白のブラジャーもわずかに見えている。
そしてなにより特筆すべきは、その年ごろの少女らしい可愛らしくも柔らかそうな腹部と、その中心に控え目に存在する、臍だった。
ここからの描写に関しては、著者自身の欲望に従って綾香嬢の姿をつぶさに観察し、描写している訳ではない。セリア女史の要請によるものである、という事を注釈として先に述べさせて頂く。
ともあれ、臍である。セリア女史はそこに並々ならぬ興味があるようで、年頃の少女の健康的な白い肌に覆われた腹を、霧吹きを持っていない方の手で撫でまわしながら、臍に視線をやって妖しい笑みを浮かべる。
「あは!流石お嬢様。健康状態もいいですし、可愛らしいお腹に、お臍ですねぇ。これなら、いやらしいものが出来そうです♪」
『ヒッ!?へ、変態……!やめなさいこの変態!!ど、どうするつもりですの!?!?というか何故このような事を!?!?!?!?』
「どうしてでしょうねぇ」
はぐらかしながら、下腹部を覆うシャツを捲って安全ピンで止める。そして、霧吹きに入っている液体を噴射して、腹全体に吹きかけた。
『あっ!冷たっ!や、やめなさい・・・!』
綾香嬢の講義もものともせず、医療用の薄いゴム手袋を両手に付けて、ガーゼで下腹部全体にまんべんなくふりかけた液体を塗り広げてゆく。
ツンとした、アルコールの匂いがこちらにも感じられた。さて、魔術にこういったアルコールは使われるのだったか。
「ええと、女史。このアルコールのような匂いの液体は、どのような魔術的な効果を発揮する液体なのですか?」
「あ、これですか。これは普通に医療用アルコールです。お腹を弄るので、一応雑菌が入らないように、消毒ですよ。魔術でも消毒出来ますけど……わざわざ術式と詠唱してそういう事やるよりも、手っ取り早いですからねぇ」
そういう事らしかった。なお、逆にこの部屋全体は魔術によって完全無菌状態にしているらしい。なるほど、これが魔術と科学の融合と神妙な顔で頷くこちらと違い、たまらないのは綾香嬢だ。
『お、おな、お腹を弄るですって!?この千勝院 綾香の体を弄るなんて……』
「さて、消毒したので、改めて。まずはこれを使っていきますね」
そういってセリア女史が取り出したのは、細くとも確かな存在を示す、金属製の、長い針だった。
「これをどうするかというと、なんと!綾香さんのお臍に刺します!!お臍にさして!!!お臍の穴を解していやらしい、雌の穴にしていきますよっ!!!!」
どうやら、テンションが上がっているらしい。先ほどの深窓のご令嬢然とした雰囲気とはまた違う、どことなくマッドサイエンティストといった雰囲気を漂わせながら、セリア女史は宣言した。
『へ、臍!?ひ、ヒィィィィィ!?!?!?!?!?!?何、何をおっしゃってるの!?おやめなさい!!!』
セリア女史の本気を感じ取り、顔を真っ青にしながら全力で拘束から逃れようと綾香嬢が四肢を暴れる。
「大丈夫ですよ。痛くはしませんから」
『そんなもの刺されて痛くない筈がないでしょう!?』
額に脂汗を浮かべて、必死に体を動かそうとも綾香嬢が逃げる事など出来はしなかった。
「よし、では行きますね……」
そうして、左手を腰に添えて、真剣な瞳で右手に針を持ち、臍へと狙いを定める。丁度セリア女史の腕程の長さもあるそれの先端が、ゆっくりと臍へと近付いてゆき……
『いやいやいやいあやいやいやいやいやぁ~~~~~~!!!!!!!……あ?れ?痛く、ない?』
叫び声をおあげていた綾香嬢が、怪訝な声をあげた。
たしかにプツリと、針の先端は臍の中心に突き立っているにも関わらず、どうやら痛みを感じていない事が、見て取れる。
「もう!だから大丈夫だって言ったじゃないですか。今この針は、魔術的処理によって実体と非実体の合間を揺らいで存在しています。だからこうして」
ヌプププププと湿った音と共に、針が臍の中へと吸い込まれてゆく。
「入れても痛みを感じない訳ですね。あくまで体に入ってる針は、そこには『ない』わけですから。この針は、非実体状態を解除した際に、針の実態部分が顕現するマーカーみたいな役割になってるんですよ」
そう言いながら、真剣なまなざしで針を刺してゆく。まなざしには、職人としての鋭さが備わっていた。
『な……何を言ってるんですの貴方!?ひ、非実体と実体の間を揺らぎながら、触る事が出来るだけの存在可能性を付与するなんて、大学の実験室レベルの話ではありませんの!?それを、それをこんな……』
「そうですよぉ。実験室レベルの話です。つまり綾香さんは、実験室レベルの事をされてる実験動物っていう事ですね。魔術と科学の発展に貢献できるなんて、綾香さん良かったですねぇ」
『よくありませんわよぉ!わた、私を実験動物だなんて……!この千勝院家の長女にそのような辱め、ゆる、ゆるしませんわ!!』
「アハハ。四肢を縛られて、お臍に針を刺されてるような状態で凄まれても全然迫力がありませんね」
涙目になりながら抗議する綾香嬢の罵倒も何のその。呑気な口調で返しながら、セリア女史は針を突き刺し進めていった。
『おやめなさい!おやめになって!』
そして綾香嬢も同様に抗議の声を上げながら、身を捩る。
叫びをあげる綾香嬢とそれを意に介さず針を刺し進めてゆくセリア女史。しばし二人のすれ違ったやり取りが続いた後、突然、セリア女史が僅かづつ進めていた針の動きを止めた。
『や……やっと聞く気になりましたかしらこの変態!!』
「ちょっと黙ってください」
返答は、鋭い声だった。
「今、針が膀胱の上あたりに来てます。もし今まで見たいにギャーギャー喚いていたら……針が膀胱を貫通しますよ。そうしたら針を実体化したら、大変ですね。膀胱に穴が……開いちゃいますねぇ。膀胱に穴が開いたら、おしっこが体の中に垂れ流しですねぇ」
『ヒッ……』
その状況を想像したのだろう。思わず綾香嬢も静かになり、動きが固まった。
「そうそう。それでいいんです」
そうして、ヌヌヌヌヌとさらに針が沈みこんでいき、ついにどこかに突き当たったのだろうか、針が止まった。
『んぃっ!?♥♥♥♥……え?な、ん。なんで?なんでですの!?』
そしてそれに伴って綾香嬢がどこかしら艶めかしい声を出したかと思えば、顔を青ざめさせて色を失う。
「記者さん、これはあまり一般には知られてない魔術の知識なんですが、形而上の存在である魂は、魔術的観測が古来より行われ、また最近ではそれを取り入れた科学によってもその存在自体は観測、実証されている訳です。ではその魂が人体のどの『部位』、『存在』はないので、座標と言ってもいいですね。どこに魂が概念的にあるか、ご存じですか?」
『あっ♥おっ♥おや♥おやめに♥なっ……て、ヒンッ♥』
どうやら綾香嬢はその答えを知っているらしい。どうにか言葉を止めようと声を荒げるが、クリクリとセリア女史が針を回す動きに従って、煽情的な声があがり、中断される。
「いえ。その……不勉強で申し訳ない」
「いえいえ。非常に専門的な話なので仕方ないです。で、改めて話を戻すんですが、その魂の座標、男女共に共通なんです。……子宮。なんですよ。子宮の中心に魂はあります。男性に関しては、厳密に言うと『子宮と成りえた位置』にあるんです」
「後者については魔術の世界では『女性が、命を生み出す重要な場所である子宮に魂が存在するのに対して、なぜ男性の魂が陰茎や精巣でなくそこに宿るのか』というのは魔術界長年の謎だった訳ですが、そこらへんは科学の知識に感謝ですね。『魂は、子宮に宿る』という訳です」
なぜ今その話をするのか。大体察する事が出来た著者は、どうやらげんなりとした顔をしていたらしい。抗議するように唇を尖らせながら、セリア女史が話を続ける。
「あ!そんな詰まらなさそうな顔をしないでくださいよ~。これから面白くなるんですから。で、この話をする以上、今非実体の針は、綾香さんの魂を捕えています。つまり、子宮まで到達したんですねぇ」
『こ!この!変態!鬼畜!!!ひ、人の!乙女の大事な所をそんな勝手に!!最悪ですわぉっほ!?♥♥♥♥』
「人の大事な所を……ねぇ。貴方がそれを言っちゃいますか」
思う所があるのだろう。女史がおもむろにクリクリクリッっと針を回すと、快楽を感じるのだろうか。めちゃくちゃに綾香女史のお腹が跳ねた。
『あっ♥やめ♥なん♥なんで♥♥♥♥こ、こんな♥こんなイッ♥イクッ♥♥♥♥』
そしてどうやら限界を迎えたらしい。ビクビクビクッと頤を上に向けて、綾香嬢が跳ねた。そしてそのまま、大きく開かれ、スカートに包まれて見えない股の間から、ポタリ、ポタリと透明な粘液が、垂れて来た。
屈辱極まったのだろう。両目に涙を浮かべながら、顔を真っ赤にして綾香嬢がセリア女史を睨みつける。
「あははは。そんなに睨んできて。でも、人様に魂弄られて抵抗も出来ないような魔術師失格のお嬢様に睨まれたって、何も怖くはないですよ?」
『へ、変態がっ!?モガッ!?モグッ!?!?!?!?ウッ!?ウッ……ムゥ~ウグゥ~~!!!クゥッ~~~~~!!!!!!」
「その変態に発言権すら握られてるのに。滑稽ですねぇ」
口調は、先ほどの深窓の令嬢然としたそれだ。それだったが、明らかにセリア女史は現状を楽しんでいた。それはまるで子供のように無邪気で残酷に。
四肢を拘束してた少女の臍へと長い針を刺して、それを楽しそうに弄るセリア女史は、初めて
昆虫標本を造る少年にしか見えなかった。
目端から涙を流す綾香嬢を他所に、セリア嬢がこちらに近くへと来るように手招きをしてきた。おもむろに近づいてゆく。頭上から綾香嬢が睨みつけてくる気配がするが、無視。今この場の主は、セリア女史だ。
女史の機嫌を損ねて、子供の無邪気な残酷さがこちらに向いては、たまったものではない。
「さて、記者さんには今から、大学院の実験室レベルの、最新技術を見せて差し上げますね。そしてそれが、私が『雌の穴ほぐし屋さん』として、僅かな時間で雌の穴ほぐしを施術できる理由です」
そういって胸を張る。そのまま、しゃがんで、という声に促されて、お互いにちょうど綾香嬢の臍の位置まで目線を下げる。
『へ!変態!!!殺してやる!!!殺してやりますわ!!』
……頭上で何か綾香嬢が言っていたが、無視である。改めて綾香嬢のお腹を見れば、なるほど。美しかった。幼少期から若さを理由にせず、むやみに傷つけるような事はせず、大事に手入れされた肌はきめが細かく、健康的な白さを放っている。
母親が戦闘系魔術師であったからだろう。その母の薫陶を受けてよく鍛えられた腹筋は、均整の取れた張りを見せつけしかし、六つに分かれているという事はない。あくまで美しいなだらかな曲線を見せている。
そしてその中心に、臍が備わっていた。縦に小さな楕円形に見える、かつて母親とつながっていた証。そして今、その中心には針が深々と突き刺さっていた。
「いやぁ……いい。お腹ですよこれは。今までも沢山、性器とお臍のどちらの雌の穴も、その……解してきましたけど、これは、解し甲斐のあるお臍です。特にこの、鍛えられているからこそ既に楕円形なのがいい。もういやらしい穴にしてくださいって言ってるようなものじゃないですか!」
「いや、それは……どうでしょうか」
とは言いつつも、こと此処に至っては著者としても生唾を飲み込まざるを得なかった。美しい少女の、美しく、均整がとれた腹筋に備わった、かつての母が子を養うために開けられた穴の名残。
それがもし、再び開かれ、今度は快楽を得るための肉器官に変貌したとするならば、それはあまりに冒涜的であり、だからこそ非常に淫靡に違いなかった。
「さて、と。それでは本題に入って行きましょう。記者さん、身体強化魔術はご存じですね?」
「ええ、勿論」
一般的な魔術だった。特に『魔ロンパス』は私も愛用している。
『魔ロンパス』、人口霊石によって術式を刻み込まれた事で、魔術の素養もない一般人でも使える形にした簡易呪符の中一種で、一般流通している中でもっとも有名な身体強化の簡易呪符だ。
その簡易呪符を湿布のように、体の強化したい部位に貼り付ける事で一定時間、貼ったてある部位が強化される。そして、そのまま仕事に励む事で疲労予防と回復、また作業効率の上昇が期待できる。
人口が激減した中で、社会の再興とさらなる発展を目指す現代社会のサラリーマンにとっては必須の品だ。その中でもロングセラー商品の『魔ロンパス』は、現代の魔科学が生み出した最高の発明品の一つに数えられていた。
「では身体強化とは、いったい『何を強化』するのでしょうね?」
「それは勿論……身体では?」
実際、魔ロンパスは、貼った部位にだけ効果を発揮する。己の経験に基づいたその言葉に、待っていましたと言わんばかりにセリア女史が頷いて、答えを返す。
「たしかにそれは事実です。魔術的にも以前は単純に『身体そのものを強化しているんだろう』と思われていました。事実術式自体は『体のどこそこを、どのように強化しろ』という命令で構成されている訳ですから。ですが、これは最近の研究の結果で分かったことですが、実は身体強化魔術は体そのものを強化している訳ではありませんでした。なんと、魂を強化しているんです!!」
どうだ!と言わんばかりに胸を張ってセリア女史が宣言する。
「と、言いますと?」
「その前に前提の話をしましょう。魂がその存在の精神や本質を決定付ける心核と、それを覆う霊子にどれだけ干渉できるか、その出力を決定する魂殻の二種類で構成されているのは有名ですね?そして、心核と外見には、密接な関係がある事も」
頷く。本質とは、外見であるというのは、現代において有名な話だ。例えばもし何らかの理由で右腕を失ったとしたら、当然右腕を失った分、外見も変わる。そうなると心核の右腕を司る部分も損なう。逆に、心核の一部、右腕を司る部分を損なった場合、右腕も腐り落ちる。
そういう形の相関関係があるという事は既に証明済だ。
興味深い話だ。頷くこちらを意に介さず、セリア女史は早口で話を続ける。
「魂は霊糸によって構成される超高密度の情報体である、というのは科学技術との技術交流の中で元来言われていた事でした。事実、心核は精神、外見それに付随する骨格や皮膚、また魔術、生物共に非常に重要な器官である脳と心臓、女性なら子宮。男性なら精巣から陰茎の情報がそこに集約されている事は既に判明した通りでした」
「そうなると、当然『では?他の情報は?内臓や神経の情報はどこに集約されているのか?』という疑問が出てきます。これは近年の魔科学の医療界における非常に重要な研究項目の一つとなっていました。そして身体に影響を与える最も一般的な魔術として強化魔術があります。これによって身体がどのように強化されるかを調べる事によって、これが分かったのです」
そういってピンと指を立てる。内容が内容だ。思わず抗議の叫びも忘れて、どうやら綾香嬢も聞き入っているらしい。そこは、真面目な学生らしかった。
「なんとですねぇ……身体強化魔術は確かに低級の、物理法則を超越しない身体に強化に関しては、術式によって反応した霊糸が直接筋肉や神経へと干渉して強化していました。例えばそれは筋繊維の増大などによって観測されます」
「しかし!中級以上の、空高く、それこそ高さ100メートルを一足飛びに飛び越したり、音速を超えるスピードの走行能力を与えたりする場合は、なんと科学的観測によっては筋繊維の増大などが一切見られませんでした。霊糸が直接筋力や神経を強化するのではなく、魂殻のとある部位に霊糸が干渉して、『この筋肉は、この脚はすごく強いぞー。物理法則を超越するくらいつよいぞー』と概念強化している事が判明したのです!」
「先ほどの話とは矛盾してしまうのですが、実のところ一定以上の魔術師にとって、『中級以上の身体強化が、魂を強化している』というのは感覚的には周知の事実でした」
「とはいえ、事実魔術を使うと早く走れて高く飛べるのです。まさか一切体が強化されておらず、魂だけが強化されているとは露にも思われていませんでした。また、それを魔術の側面から否定する事実も存在しなかったため、誰もが違和感を抱きつつも、『身体強化魔術は身体そのものを強化する』という魔術における一般論は長年信じられてきました」
「しかし、魔術が表に出ておおっぴらに科学的学術的観点から観測が行われる事により、その一般論が覆されたのです!そこから約20年。筋繊維一本、神経一枝という微細な部位を対象とした身体強化を付与する事が可能な術式の開発と、それを用いた際の身体の変化に対する医学的側面のからの観測、また、霊糸による魂殻介入部位の観測という魔術的側面両面からの観測によって、ついに人類は!!『体の内臓や神経の各部に相似する魂殻の概念的な部位』を特定する事が出来たのです!これはヒトゲノム解析に匹敵する偉業ですよ!!」
「本当に何者ですかあなたは!?」
思わず叫んだ。そんな最新の、それこそ報道もされていない最先端の医療技術について言及する。そしてそれが意味する事は、セリア女史が尋常の魔術師ではないという事だ。こちらの叫びを前に、セリア女史は笑みのまま続けた。
「それは今はいいじゃないですか♪さておき、これによって、医療技術は新しい世界へと踏み出します。そう、今までは外科的アプローチでは困難な手術についても、魂殻の該当部位へと干渉する事により、可能となるのです。例としてこれから行う、『雌の穴ほぐし』における、臍の穴から子宮への性器増設について説明しましょう」
「今までは外科的手術にて腹部を切開。そして子宮上部に穴を開け、臍の穴と子宮上部に開いた穴までの『道』を、クライアント本人の体組織から培養した人工筋肉を幾重にも外科的に縫合して作り上げ、そこに同様に培養した神経組織を張り付けて、回復魔術にて癒着。そうして雌の穴を作り上げる訳ですね。このようにして無理やり作り出された雌の穴は、当然一度では定着しません。なので、約一か月程、術後を見ながら医学的、魔術的に定着するまでの経過観察を見る事になるわけです」
ですが、と言葉を切って、満面の笑みでセリア女史は針が刺さった臍を見る。
「魂殻に存在する『体内の設計図』を直接弄れば、それに従って体も変化するわけです。通常の『雌の穴ほぐし』の際にも、最終的に魂殻も変化する事となります。魂と肉体は強く結びついている訳ですから。とはいえ、魂という根源的、霊的な部分から弄る事で、より速やかかつ安全で複雑な、人体改造が出来てしまうんですね……では、やっていきましょうか」
そういって、セリア女史の右手人差し指が針に触れた。
『いや!嫌ですわ!!!やめなさい!!やめろったら!!!!!……【我は遍く炎を友とする苛烈なる勝利者!】』
それは、心核に宿る言葉。魔術師のみが見出す事の事の出来る、己の存在そのものたる心核翻訳を高らかに綾香嬢は叫んだ。
「なるほど確かに心核翻訳は術式詠唱の接頭語とすることでその強化だけでなく、己の存在を世界に改めて示すことで、魂の干渉への非常に強力な耐性を得る事が出来ます。的確なな判断です」
コクリ。まるで教師のようにセリア女史は満足げに頷いて、
「ま、たかだか高等魔術院の成績程度でイキってる小娘如きにどうにかなるものではないんですけどね♪はい、【術式解凍】!【性器増設術式実行】☆」
『ギョ!?ハヒッ!?!?!?!?☆おっへ♥ほぎゃあああああああああ!!!!!♥♥♥♥♥♥』
セリア女史の言葉と共に人差し指の先から光と共に複雑かつ緻密で立体的な魔術式陣が展開し、針全体が光り輝いたかと思えば、綾香嬢が、己の対面などかなぐり捨てた叫びをあげる。
バタバタと陸に打ち上げられた魚のように手足をばたつかせながら、針が刺さった綾香嬢の臍の内側辺りからは、グチュ、ヌチョ、メキョなどといった、明らかに人体が発してはいけない水音が発生していた。
見れば、バタつく足の合間からは、ぼたぼたと白っぽい粘液が絶え間なく垂れ、それどころかアンモニア臭もしていた。どうやら失禁すらしているらしい。スカートが履いてある事は誠に幸運であった。
のちの事を考えれば、もしそこが露わになっていたらセリア女史はその詳細な描写も望んでいただろうからだ。
まさしく昆虫標本としてコルクに打ち付けられたまま、薬剤を投与されその死の瞬間を待つ蟲のような断末魔としか言えない絶叫を上げる綾香嬢を他所に、それを満足げな目で見ていたセリア女史が、綾香嬢がどのような凄惨な状況に置かれているか、こちらに語り掛けて来た。
「フフフ。大変ですね綾香さん。今彼女のお腹の中は魂殻を弄る事で、『こうであるのが正しい。なぜなら魂殻に記載された体内の情報がそうなっているからだ』という風に作り替えられてます。当然、随時回復系の魔術は常に行使してますよ。まずはお腹の中の筋肉が、臓器を除いてどろどろに解されて、溶けるんです。だからほら」
そう言いながら、セリア女史のたおやかな細い指が臍の周りを押す。まるで水風船を外から押し込んだかのように、その指が埋まっていった。
『おひゃわえれえらおいえうあ♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥♥』
綾香嬢がもはや人とも思えぬ絶叫を上げた。ジョロジョロとスカートの端から白濁が混じった尿が零れ落ちて、床を汚す。
「当然お腹の中がどろどろに溶けて再構成されるなんて、もはや激痛とすら言えない激感に、人は耐えられません。だから通常の施術の際は、麻酔で意識を遮断した状態でやりますよ?けれど彼女はまぁ色々とあって……そういう訳にもいきませんから、全部痛覚を快楽に変換して、綾香さんの精神と魂と脳が耐えられるぎりぎりをお届けしています。嬉しいでしょ?綾香さん。きっと人生でこんなに気持ちよかったことないですもんね♥」
ニコニコとセリア女史が見上げた先には、鬼のような形相で頭を振り乱し、涙によだれに鼻水に、ともかくありとあらゆる体液を絞り出して叫びをあげる綾香嬢の顔があった。
「あはは♥不細工ですね綾香さん。ばっちいおしっこまで垂れ流して、いやらしい本気汁でお股びしょしょにしてまで気持ちよくなりたかったんですか。この、変態さん!」
『へひゃあああああああ♥♥♥♥♥♥♥♥♥』
ペチン、軽くお腹を叩けば、まるでそれに押し出されたかのように尿がブシッと噴出したようで、スカートが汚れた。
「アハハハハハ!財閥の選ばれし?高貴な?お嬢様が、はしたないですね。あ、でも安心してくださいね綾香さん。もう聞いている余裕はないでしょうが、ちゃんと大きい方は処理してあげましたから。漏らす心配はないですよ?……私もそんなばっちいモノ、見たくないですし……プッククッ……クーッアハハハハハハハッ!!!!!」
セリア女史は、もはや先ほどのような深窓のご令嬢然とした雰囲気を金繰り捨てて、上品ながらも全力で笑い転げていた。
もはや拷問に等しい快楽を与えられながら人体改造されている少女の叫びと、美しい女性の笑い声を聞きながら、頭がおかしくなりそうな時間は、その後10分程続いた。10分程続いて、綾香嬢のお腹から聞こえた不吉な水音が、止んだ。
「あっ!終わったみたいですよ、記者さん!」
そういって楽しそうに手を叩くセリア嬢であったが、いざ近寄ろうとして、顔をしかめる。
「うえ、ばっちぃ」
そう、大便以外のありとあらゆる体液を垂れ流して―――おそらくは人体改造が終わった瞬間気絶したのだろう―――頭を俯かせている綾香嬢からは、異臭が漂っていた。世界に冠たる都立高等魔術院の制服も、体液に濡れた事と綾香嬢自身が暴れた事で汚れ切っており、その輝かしさを失っている。
「ま、予想された事ですけどね。はい、【空間情報転写】【対象30分前。台座周辺半径2メートル】【転写】」
呪文と共に術式が発動し、一気に綾香女史自身と制服、そして周囲が清潔になる。まるで何もなかったかのように。しかし、その臍に刺さった針はそのままだ。
周囲が清潔になった事を確認して、セリア女史が近づいてゆく。それと同時著者も手招きしてその近くに呼び寄せた。
「さて、現状はですね、綾香さんのお臍の穴と、子宮までの道が出来た状態になっています。あとは、このお臍の穴をちゃんと開けば、なんと!」
セリア女史はそこで言葉を切って、恥ずかしそうに顔を赤らめて俯いた。
「新しい……臍お、おまん、こ穴が、出来てるのです!!」
顔を赤らめたままの満面の笑みは確かに可愛らしく魅力にあふれているが、そんなに恥ずかしいなら態々言わなくてよかったと思う。まっとうなツッコミはしかし、著者の心の奥にしまわれた。
「さて、体表については外見判定で、心核を弄らないといけない訳ですね?ただ、これについては、切開してその痕を回復術式で消してあげればそれで終わりです。なので、一々心核に干渉なんて高度かつ手間のかかる事をするよりも、実際に外科的アプローチでやっていきます」
そう言いながら、セリア女史が左手で針を引き抜く傍ら、台から一本のメスを取り上げた。
「これ、斬ると当時に柄と刃に彫られた回復術式が発動してくれる優れものなんですよ。これで、斬ったそばから、切り傷を治してくれます。あ、綾香さんの痛覚が快感に変換されてるのはまだそのままですよ。じゃあ、行きますね……」
そういって女史は、針が刺さった臍の中心、その上部にメスを当てた。そしてそのまま、スゥ……とお腹を切り裂いてゆく。
どうやら、それが快感として脳に伝わったらしい。ちょうど端まで斬った瞬間!ビクリ!!とお腹が痙攣して、
『ア……え?ここ、は?』
いまだ夢見心地の綾香嬢の目が開いた。そうして己のすぐ眼前の気配に気付き、視線を下にやって、現状を再認識したらしい。
「えい」
叫ぶ直前、セリア女史が可愛らしい声と共に、拍手を一つ。そうすれば、綾香女史の猿轡が外れ、
「い……やぁっ!?♥♥♥!?!?♥♥♥!?♥♥!?♥♥♥!!!♥!?」
そのまま叫ぼうとした声が中断し、顔を仰け反らせて絶頂した。
その様にうんうん、ほら言わんこっちゃないとでもいうかのようにセリア女史が頷いて、言葉を紡ぐ。
「叫ぶためにはお腹、腹筋に力を入れる必要があります。けれどそれは、新しく出来た『雌の穴』に力を入れてぴったり閉じるという事。もしこれが無改造の膣であれば膣道全体に神経が通ってる訳ではありませんが、『雌の穴』、臍お、まんっ、こっ!……ぅう……は、その壁全体に快楽を感じる為の敏感な神経が走ってますからね。お腹に力を入れたら。それはそうなりますよ」
つまりもう、綾香嬢は叫ぶことが出来ない、という事だった。絶頂しながら、その波をやり過ごしつつ、その事実を綾香嬢もかみしめたのだろう。
はらはらと涙を流し、今度はどうにか控えめな声量で抗議の声を上げる。
「どうして……どうしてこんなひどい事を」
「さて、どうしてでしょうねぇ。ともかく、記者さん見てくださいよ!これ!これが新しい綾香さんの臍の穴を解して作った雌の穴!気持ちよくて孕むために男の人の御立派なのを迎え入れる事の出来る、変態の穴ですよ!!!」
そう言って、臍を中心に開いた10センチ程の亀裂の左右に、手を掛ける。未発達の膣の大陰唇のようにぴったりと閉じたそこは、まさに『未開発の幼い女性器』といった雰囲気を醸し出していた。
「はい御開帳♥」
「いやッ♥!?へッ♥ウゴッ♥コッ♥カッ♥」
反射的に叫ぼうとした綾香嬢がまたのけ反って絶頂する。それを尻目に、お腹に増設された『大陰唇』を開けばそこには、
「おお……」
「えへへへ。凄いでしょう?」
そこには確かに、『膣』が出来上がっていた。綾香嬢の絶頂に合わせて開いたり閉じたりする肉壁は、テラテラと粘液を垂れ流しながらツルツルの側面を見せつける。閉じたり開いたりする
『膣道』の奥には、こちらもパクパクと口を閉じたり開いたりする穴が見えた。そこが、実際の膣における子宮口と同様のものなのだろう。
しかし、こちらの方が見た所穴の大きさが大きい。それこそ、亀頭すらも容易に飲み込めそうな程に。
全体的にとても今しがた出来たとは思えない造りだ。それこそこの臓器が産まれてからずっと存在したかのような自然さ。これが、『魂殻からアプローチする事で作り出した臓器』という事なのだろう。
もはや膣と言って差し支えない、新しく解して作られた雌の穴ではあったが一つ。一つだけ、不満点があった。
それは、
「その、これは臭いが……」
「ですよねぇ」
そう、異臭がしたのだ。正直、いざ事に及ぼうとした際には障害になるだろう。
いくら美少女が相手であろうと、この臭いは特殊な性癖がなければ勃起を維持するのは難しいであろう、というくらいの臭い。
「わた、私臭くない……臭くないですわ。それなのにこんな……こんな……」
お腹から立ち上るのだろう。その臭いを嗅いでしまった綾香嬢も、先ほどよりも涙をより流して嘆き悲しんでいた。
「フフフ。大丈夫ですよ記者さん。実は、この臭いは既に想定済みです!そもそもが、この湧き出ている潤滑剤としての粘液が腸液であることが大きな理由なのです。それに、臍膣道だって、全然いやらしくて、男好きして、男の人の精液を搾り取るような返しや襞がないじゃないですか。これからもっと、もっと。も~っと変態でいやらしくしてあげるから、覚悟してくださいね♥」
「い……ッ♥♥♥♥♥」
もはや、綾香嬢は昆虫標本に打ち付けられた昆虫であった。叫ぶ自由はなく、嘆く自由すら、存在しなかった。
そうしてその後行われた、『臍膣道改造手術』は、見る側からすれば医学的にも非常に有意義な内容であったが、施術される側としてはたまったものではない酸鼻を極める手術であった。
まず、襞を作るために膣道の一部を先ほどのメスで切り裂く。当然走る激痛は、事前に快感へと変換されていた。この段階で再度噛まされていた猿轡をかみしめて、どうにか絶頂をやりすごす綾香嬢の姿は、あまりにも哀れであった。
猿轡はつまり、その快楽に舌をかみ切らないように、という配慮のものだったのだ。
そうして切り裂かれた事によってできたヒダを盛り上げて、魂殻に干渉して、『盛り上がったヒダヒダが本来の状態である』と設定して回復術式を行使。そうすると回復術式は、『魂の設計図に従って、体を回復させようとする』ので、あんなに平坦だった膣道にヒダが盛り上がった形で定着する。この時どうやらヒダにも神経を通して、快楽をより感じるようにしているらしい。
ただでさえ快楽を感じている筈なのに、この回復術式を行使されている時の綾香嬢の反応は、特に激烈だった。今まで存在しなかった筈の神経が新設される事に脳が混乱し、しかもそれがあまりにも気持ちよいものだから精神もぐちゃぐちゃにかき混ぜられるようになる、というはセリア女史の談であった。
「本当は死んじゃうんで、死なないようにするの大変なんですよ?後はちゃんと手術は麻酔をかけてやりましょう、って事ですね」
膣拡張器で綾香嬢の臍性器を全開にしながら、匠の顔でその膣道に傷をつけて新たな快楽器官を増設してるセリア女史は軽い口調でそう言った。
そうしてヒダを作り終わったら、今度は分泌液の異臭問題だ。この時点でもはや綾香嬢はなんの反応も返さなくなった。
性器増設とその改造による快楽がどれだけ凄惨なものだったか示す、絶頂の本気汁がスカートに包まれた股の間からぼたぼたと塊になって落ちるのみで、もはや先ほど出尽くしたのだろう。失禁の証明たるアンモニア臭も、ほとんど香る事はなかった。
「さて、これは簡単です。えい!」
ゾリュン!と臍性器の内側を一撫で。ビクリ、とひと際強く綾香嬢の体が震えて、放屁すらした。
「無様ですねぇ」
ニコニコとそう言いながら、セリア女史が臍性器を撫でた手を引き抜いたら、確かに先ほどのような異臭は完全になくなっていた。それどころか、バニラのような甘やかな匂いすら漂ってくる。
「これは……?」
「こう……腺をちょちょいと弄って改造してあげました♥」
ね?簡単でしょ?とでもいうように首を傾げるセリア女史だったが、前提として使用されている技術があまりに最先端のモノであったため、判断できるものではなかった。
曖昧な笑みを浮かべているこちらについてどう思ったのかは分からないが、ともかく数俊の間の後、セリア女史が再び、己の『作品』をこちらに見せてくる。
「ともかく!はい!これが!ほぐされきった綾香さんの雌の穴です!」
じゃじゃーんとでも擬音が付きそうな身振り手振りで、膣拡張器によって拡張されたそこを見せる。
「おお……」
「むぅ……さっきと同じ反応ですねぇ」
「いや、そうでもないですよ?」
そういって下を見れば、著者の一物は、確かかに怒張していた。
正直、臍を性器とする、という『雌の穴ほぐし』には抵抗があったのだ。そもそも臍は性器ではない。おんなものを性器として無理やり改造するなんて、嫌悪感の方が勝っていた筈なのだ。
しかし、とろとろと白く白濁した粘液に塗れた妖しくいやらしい臍膣壁。唇のように膨らむ子宮口がいやらしく、男性器を求めるかのように蠢動しているさま。あさましくも精液を絞るために、幾重にも膣道に増設されたぷっくりとした肉輪に、男性器の裏筋に媚びて、己もあさましく快楽を貪るためだけのヒダ。
そんなものを見ては、いくら何でも理性より先に本能が一物を勃起させていた。正直な所、そこはたしかに、たまらない『雌の穴』だった。パクパクと、呼吸に合わせて蠢動しているのは、きっと男に、竿に、もっと言うのなら精子に媚びているのだろうとすら思わせた。
「……こうまでしたという事は、その。『使う』予定があるわけですよね?」
思わず、聞いてしまう。著者この時確かに、取材の事などもうほぼ忘れて、このおこぼれにどうあずかろうか、という心境になっていた。
「それは駄目ですよ~。記者さんが綾香さんを襲ったら、それはお互いの同意が取れてない限り、犯罪ですから」
膣拡張器を引き抜きながら、セリア女史がこちらを窘めた。
「それはどういう……?」
疑問が確信に変わる前に、事態は、次へと進んで行った。
膣拡張器を引き抜けば、そこにはぬらぬらとお腹全体を粘液で濡らしならがも、ぴったりと閉じた臍膣口が見える。それを満足げに見て、セリア女史は綾香嬢の猿轡を外した。
そしてそこに徐に男性器を模したディルドを押し当て、
「綾香さん、起きてくださーい!たかだか雌の穴ほぐされたくらいで気絶しててはいけません……よっ!!!」
一気に刺し貫いた。
「……ッ♥♥♥♥♥!?!?!?!?!?ぉ♥……ぉぉぉおあああああ♥♥♥♥!!!!!!!??????」
絶叫。臍膣を貫いたディルドーの衝撃で絶頂してディルドをより強く締め付け、その締め付けで絶頂して、絶頂に絶頂を重ねてもうこれ以上ない程力が入ったのだろう。そこでやっと、綾香嬢は絞り出すような低音で、絶頂の悲鳴を上げる事が出来た。
「えい♥えい♥どうですか新しい雌の穴?気持ちいいですか綾香さん??」
「あ♥おほ♥おぁ♥や、やめ♥やめ♥やめて♥やめてください♥どうか♥どうか♥」
そして絶叫を聞きながら、間髪入れずにセリア女史がディルドを無理やり抜き差しする。通常の膣に挿入したならば、きっとパチュン、パチュンといった柔らかな、水音がしたのだろうそれ。
しかし、雄に射精を媚びて、快楽を貪るために新設されたその器官がディルドを抜き差しするときの音は、ジュゴッ!ジュゴッ!ともっとえげつない音をさせていた。
「これ、おトイレ掃除みたいで楽しいですね」
ニコニコと文学を好みそうな深窓の令嬢然とした黒髪の美女が、能天気に感想を述べる。
それだけ見ればなんとも和やかな光景だが、実際はその深窓の令嬢が大の字に拘束した朱髪の美少女の、己が今しがた臍を改造して作り出した凄惨な搾精器官を楽し気に虐めている風景が展開されているのだ。
著者も、頭がどうにかなりそうであった。
「おっ♥え”ぇえ”♥げっ♥♥♥♥」
そして事実、頭がどうにかっているのは綾香嬢の方だ。まるで槍で串刺しにされて、それを抜き差しされるかのように腹部が跳ねる。
快楽搾精として新たに開発された臍性器をぐちゃぐちゃにかき回される、その快楽はいかばかりかは想像すらできなかったが、もはやプライドすらこそぎ落ちた綾香嬢の懇願が、その暴力の恐ろしさの一端を、見て取る事が出来た。
「も♥あや♥あやまり♥あやまりますから♥♥♥♥やめて♥♥♥」
ピタリ。セリア女史の手が止まる。
「……何を、謝るんですか?」
その問いに答えることなく、綾香嬢はただ壊れた再生機器のように『ごめんなさい』を繰り返すばかりだ。
その様子に失望したのだろう。大きくため息をついて、セリア女史がディルドのピストン運動を再開しようとする。
「これはまだ反省の必要がありますねぇ」
その言葉に、ついに綾香嬢の精神が決壊した。今までのような涙とは違う、拘束された四肢を暴れさせて赤ん坊のようにグズるような泣き方。
「い”や”~~~!!!!!あ”っ♥わ”だっ♥わ”だじがっ♥あ”っ♥お”っ♥ な”に”ぃぃぃ♥をしだっでいうんでずの”ぉ”ぉ”ぉ”ぉ”っほぉ”♥」
「分かりませんか?」
「わ”がり”ま”ぜん”♥んっ♥ごん”な”♥はんざいこういぃ♥っひ♥される覚えはありませんぁぁぁ♥♥♥」
再びの、深いため息。その言葉に、心の底から失望したらしい。それと同時に、深い頷きを見せて、セリア女史は、ディルドを引き抜いた。
「【鎮静】【感覚鈍化】」
「んおっ♥へっ!?……あれ?」
言葉と共に、一瞬で綾香嬢が泣き止む。きょろきょろと不思議そうに周囲を見渡す。
「一旦、綾香さんの感覚を鈍らせました。ちゃんと話を聞かせて欲しかったですし。それにまぁ、私自身は、正直な所関係のないといえばないのは事実ですしね……殺してやりたいくらい憎いですが」
「えっ?それはどういう……」
綾香嬢の疑問を遮り、ピッとセリア女史は人差し指を立てる。
「まず前提として、誘拐から始まる綾香嬢への一連の流れは、犯罪では、ありません」
「な。何を言って・・・?」
「厳密にいうと、私達に限って言えば、合法となるのです。記者さんは、こういえばもうお分かりですね……?」
そういってにこやかに微笑みを浮かべるセリア女史に、こちらも疲れた笑みを返す。あくまで表面上だ。心臓はどくどくと緊張のあまり早鐘を打っていた。まさか、こんな場所で、こんな状況で、そんなお方と出会うなんて……
「確かにあなたの名前は有名ですが、それこそあなたに肖って世界各国でその名前が付けられているせいで、ありふれた名前になってるんですよ?名前だけで判断が付くはずがない。そもそも、貴方達は宇宙開拓のの最前線にいらっしゃるはずだ。こんな東京にいるなんて、露にも思わないですよ」
その言葉に、うふふとセリア女史は微笑みを返す。
「宇宙は息が詰まりますから。リフレッシュのために、お忍びで結構降りてきてるんですよ?防犯上誰がどういう頻度で、っていう話は出来ませんけど」
「……このやり取りは記事にしていいのですか?」
「はい、大丈夫です。一般に有名ではないですが、一部ではよく知られているの話なので」
それで探されて見つかる私達ではないですし、と嘯くその言葉には、絶対の自信があふれていた。それもそのはずだ。
「あなたたち……何を言って……」
先ほどからの快楽地獄で脳の回転がまだ戻っていないのだろう。綾香嬢だけが唯一話についてゆけず取り残されていた。
「簡単な話です。この一連の行いは、創星級魔術師の免罪規定の範疇内という事です」
「!?!?!?そ、それは!?そんなまさか!?!?!?」
その事実に綾香嬢が驚愕の叫びをあげる。そう、そういう事だ。
『創星級魔術師の免罪規定』。それは、かつての大戦時、世界の裏側にはびこる魔術師連盟と当時の一部国家上層部の悪意と欲望に真っ向から立ち向かい、世界を調停した六人の『創星級魔術師』に送られた褒章かつ勲章であり、人類が未だ彼らには到達していない敗北の証であった。
『世界に干渉する』魔術を極めた結果、己自身が《世界》となった、創星級魔術師。彼らを殺傷するには、一撃で恒星を粉々に粉砕するだけの威力が必要である。
せいぜいが全力で攻撃能力を行使して、『星の表面を灼熱の海に叩き込んであらゆる動植物を死滅させる』程度しかなしえない現行人類では決して打倒不可能な存在。
宇宙開発の魔術的アプローチの旗頭でもある彼らに対して、世界政府は、これからも末永い友好を期して、『免罪規定』を決定した。勿論彼らが悪人であればこのような事はなかっただろう。しかし、事実として彼らは善人だった。
せいぜい、『六人』の内の一人、『騎士』がよく不倫騒動を起こして免罪規定を適用している位だ。
詳しい内容は細かく条文となっているため、ここでの説明は省くが、つまりは少女の拉致誘拐程度は、特に問題にならないという事で、それが適当されるセリア女史はつまり、
「そういえば綾香さんには名乗ってませんでしたね。改めて、名乗りましょう」
そう言いながら眼鏡をはずして、両手を広げる。そしてそのまま、
「【魔術師正装展開】」
呪文と共に、それまでの文学好きのお嬢様然とした装いから、ふたつに結んだ髪を解いて流し、山高帽を被り、黒いローブに身を包んだステレオタイプな魔女がそこに現れた。
右手には魔術発動補助媒体。写真ではない。テレビでもない。教科書で見た姿が、そこには存在していた。
「初めまして。私、セリア・ドリット・ローゼンタールと申します……よろしくね?」
そうしてペコリ、とお辞儀をすれば、
「は?え!?えっ!?あ、あのっ……そのっ!わ、わた。わたくし!!!貴方の・・・!」
どうやら感極まったらしい。綾香嬢が、今まで己の身に降りかかったことなど忘れ去ったように歓喜の叫びをあげて、まったく意味をなさない言葉の羅列を紡いでいた。さもありなん。
創星魔術師はすべての魔術師の憧れ。到達点だ。本来であれば宇宙開発の最前線、ついに見つかった居住可能惑星にて環境改善に努めているために普段決して会えない筈の存在が、今目の前にいるのだ。
まるでプロスポーツ選手に憧れる少年がその道のレジェンドに出会ったかのように、きらきらとした目で見つめる。
「偽物とは、思わないのですね」
こちらの指摘に、きっと睨みを返して、綾香嬢が声を荒げる。
「当り前でしょう!?この魂の輝き、密度、凡百の魔術師であろうはずがありません!ああ!!ローゼンタール師!私、貴方の書いた『戦災未整備地域における救急医療体制から見る科学と魔術の医療の展望~魔術師は如何に人の命を救うべきか~』拝読いたしました!その、凄く分かりやすく魔術の現代における限界点について詳しく述べられてて、とても参考になりましたの!」
必死に言葉を紡ぐ綾香嬢に、セリア女史(※本来であればローゼンタール師と呼称すべきであるが、彼女の特別の許しを得てこのままの呼称で記載を続けてゆく)も、まんざらでもなさそうに頷いている。
「よく読んでくれてますねぇ。嬉しいです」
「はい!はい!ありがとうございます!将来は大学に進んだら医学方面に進もうと思ってまして、特にSENSHOブランドは今は空間飛翔やスポーツ競技用の魔術発動補助媒体が主ですが、これから魔術が医療方面とより繋がりを深めてゆくならきっと、それに沿った魔術発動補助媒体も必要になります!そこを開拓してゆくのはブランドの維持発展に繋がると確信しておりますわっ!!……っ!!!」
そうやって四肢を大の字に拘束されたまま半笑いで、憧れの魔術師に必死で声を上げていた綾香嬢はしかし、もはや話すことがなくなったのか、口を閉ざした。
僅かな沈黙の時間。
「それで……」
口を開いた半笑いのまま、再び言葉を紡いだのは、綾香嬢の方だった。眼がカッと見開き、その端からはツツ……と涙が溢れ、声も震えている。きっと、恐怖なのだろう。
「それでどうして……私は、こんな目に……?」
そう、意味が分からない。たしかに綾香嬢は、優秀だ。優秀とはいえ、世界に冠たる『六人』にしてみれば、単なる小娘でしかない。もしこれが将来的に綾香嬢が成長して、千勝院の名を背負う段階になったら出会う機会もあっただろうが。どうして、今。
「そうですね。それではご説明しましょうか……あ、そうそう。前提として、記者さんの目的だった『雌の穴ほぐし屋さん』について説明しますね。これは、私が地球に降りてきた際に、先ほど説明した通りの、魂殻干渉技術を駆使して『雌の穴を解していた』という事が噂として広まっていたのでしょう」
そもそも、魂殻における各種内臓、筋肉、及び神経の設計図を見出すプロジェクトを主導していたのは、セリア女史だ。
近く大々的に発表がなされるこの研究成果を用いて、治験兼セリア女史の魂殻干渉による外科的手術技能向上という意味合いも含めて、極々秘密に知人や、その知人からの紹介があった場合、この東京のこの場所にて、『雌の穴ほぐし』手術を有償で行っていたらしい。
手術にかかるお値段は、臨床段階であるという事によって割り引いても1回5000万E。東京の一般的なサラリーマンの年収10年分だ。『私が行うという点において、それはもう世界最高峰の技術ですからね。むしろ安くは出来ないんですよ』とはセリア女史の談だ。
当然極々秘密に行われていたこの『雌の穴ほぐし』は、今までの手術とは大違い。僅か1日で特に後遺症もなく終わるという事で、高額ながらもそれなりに行われた。だから、それがどこかしらから噂として漏れたのだろう、という事だ。
「……で、では。もしや、私の。私の『雌の穴ほぐし』を、誰かに依頼されたという事ですか?」
その言葉に、セリア女史はニコニコしながら、首を横に振った。
「いいえー。これは、私がしたいからやったのです」
「!?……どうして!?どうしてなのですか!?」
初め、この地下空間で会った時のような勝ち気で、怒りに満ちた叫びが上がる。それはそうだろう。年頃の娘の臍が、本人の意思ではなく解され、雌の穴に改造されたのだ。そのような事、到底受け入れる事が出来るものではない。
そしてその答えを知るセリア女史は、綾香嬢の問いなんてまったく気にせず、魔女の箒を壁に立てかけて、静かに語りだした。
「私はね、リフレッシュしに地球に滞在すると、この近くにあるカフェに必ず行くんです」
「そ、それがなんだというんですか!?」
「そのカフェはこじんまりとしていて、一人で珈琲と本を楽しむにはとても良い場所でした。それがある日、カフェのマスターだけが運営していたその店に、アルバイトの、男の子がやって来たんです」
「男の……子?」
その言葉に、ビクリ。綾香嬢の体が跳ねる。そしてサッ……っと顔を青ざめさせて、『うそ……そんな。そんな事って……』とブツブツ口の中でつぶやき始めた。
そのような綾香嬢の様子などまったく気にもせず、セリア女史は言葉と続ける。
「初めは、『ああ、マスターもやっぱり寄る年波には勝てないんだな』って思いました。笑っちゃいますよね?私の方がおばあちゃんなのに。それで特には気にしてなかったんですが、一生懸命その子が頑張ってるものだから。ある日マスターに聞いたんです。『どうしてアルバイトの子を雇ったんですか?』って」
「そうしたら、『彼は、俺の知り合いが運営している孤児院で世話をしているご両親を亡くした子で、一生懸命勉強して、最近都立高等魔術院に入学したんだ。孤児院は東北の方にあってな。とても魔術院に通える場所じゃない。だから。ここの二階を下宿として貸している。……実を言うと、冒険者だったご両親の遺産があってな?そこから下宿代も払われているのに、態々手伝ってくれるんだよ』って、仏頂面のマスターが珍しく笑って応えてくれたんです」
「ひぃ……!」
チョロチョロチョロチョロと、綾香嬢のスカートの端から小水が漏れていた。恐怖のあまり流れ出したのだ。それを見て、セリア女史は満面の笑みを浮かべながら綾香嬢に声を掛ける。
「綾香さん」
「はい……」
「私が魔術師を志した理由は、ご存じですね?」
「はいぃ……」
消え入りそうな声だった。その言葉を最後に、一度、沈黙が下りる。まるで死刑囚が刑の執行を待っている間のような、冷たく、肌を刺す沈黙。
それを破ったのは、セリア女史だった。にこやかに、綾香嬢へと『命令』する。
「その理由を、記者さんにもわかるように説明してもらっても、いいですか?」
答えは、沈黙。厳密には、歯の根が合わずガタガタと震えて言葉が上手くでてこないのだ。
「ひっ……いぃっ……」
「答えろ」
今までのお嬢様然としたゆったりとした口調ではなく、真顔で一切の抑揚もなく一言。
「ふ、ふつうの!いぃ一般じ、人の時にっ!!りょ、両親を、魔術師によって殺されたから!!!ふ、ふく……魔術師への復讐の為にっ!ですっ!!!」
「……はい☆その通りです♪よくご存じですね、綾香さん。そういう訳で、ご両親が亡くなったという所にちょっとシンパシーを感じた私は、その少年に声を掛ける事にしました」
綾香嬢の答えを聞いて、再びにこやかな外面を被ったセリア女史が、言葉を続ける。
セリア女史の理由を言い切ってからというもの、綾香嬢の感じている恐怖はさらに深まっているようだった。
歯の震えが全身にいきわたり、ガチャガチャと彼女を拘束している金具の鎖部分の金属音が煩い。
「少年は、ちょっと年齢の割に見た目が幼く可愛らしい子でしたが、芯はとても強い子でした。北海道戦災未整備地域を攻略、再開拓する冒険者だったらしいご両親は、その地にて仲間たちを守ってお亡くなりになったそうです」
「彼も、その意思を継いで『誰かを守る人でありたい』と願っていました。とはいえ、まだ未熟な彼は、誰を、なぜ、どのように守るかは見出していないようでした。しかし、何事も実力あってこそと孤児院で猛勉強をして魔術院への切符を手にしたとの事」
「いやぁ……立派ですねぇ。特に私なんて両親を殺されて復讐に走った人間ですから、その志は、心に沁みました。勿論私は私の選択を間違っているとは思ってないですし、後悔もしていません。ですが、両親を殺されて、ダンジョンのモンスター達に殺意を燃やして無謀な挑戦をせずに、両親の生き様から学んで、己のしたい事、すべきことを冷静に見据えようとしている彼の姿は、やっぱりちょっと眩しかったです」
そう言って春風のように暖かい笑みを浮かべる女史と対照的に、綾香嬢は極寒の地に放り込まれたかのようだ。
顔を真っ青に青ざめさせて、カッと瞳を開き、ただひたすら女史の話に聞き入っている。
「だからでしょうねぇ。ちょっとお手伝いしたくなったんですよ。彼は、優秀でした。ですが、高等魔術院に通う生徒というのは、すべからく優秀です。そのうえで、大体皆が裕福な家庭で、事前に十分な教育をされているのです。ですから、高等魔術院の講義も、入学試験の際に必要だった知識の他に、『ここに入学するレベルの人間なら、塾や家庭教師から得ている筈の知識』を前提に進んで行きます」
「ですが、独学で高等魔術院に入学した彼には、そういった知識の蓄積がありませんでした。そのため、成績が伸び悩んでいたようです。伸び悩むという事は将来的には退学の可能性があるという事。ですので、そこの部分について、彼が本来であれば知っていなければならない知識について、教えてあげました。」
「……そういう事だったんですの」
呆然としながら、どこか納得がいった風に、綾香嬢が呟いた。
「あっ!勘違いしないでいただきたいんですが、あくまで私は彼が知るべき知識を教えてあげただけ。それを活かし、己の血肉としたのは彼の努力と実力ですからね?ともかく、本来彼が塾や家庭教師の教えを受けていれば知っている筈の知識を教えてあげた事は非常にプラスだったようです。今まで理解するにも精いっぱいだった講義について、余裕をもって受ける事が出来るようになり、成績もどんどん上昇していきました。そしてついには、学内一位を取る事が出来たんですね……その成績を見せて来た時の彼の顔といったら満面の笑みで」
その時の事を思い出しているのだろう。セリア女史はホニャッと相好を崩し、
「我が事のように嬉しかったです」
「あ……ぁあ……うゎ……」
もはや、綾香嬢は言葉もない。
「ですが」
そしてその幸せそうな顔をから一転、セリア女史はオーバーアクション気味に悲しそうに表情をクシャッと歪めて。
「成績が1位になってからです。彼に会いに行くと、何か、思いつめたような、悩んでいる様子を取る事が多くなりました。彼も思春期のお年頃でしたから、初めはそう言った悩みなのかと、女性である私がむやみに掘り起こすのは悪いな、と敢えて触れなかったのです。成績については順調だったようですし」
そう言いながら、今の今までその手に持ってたディルドを傍らの台において、新たなディルドを手に持った。今までの、男性の形をそのまま模した一般的な造りと比べて、竿に玉が浮かび上がっていたり、カサが尋常な大きさでないそれは、明らかに快楽を貪りたい『好事家』向けの、暴力的な代物だった。
もはや両の瞳から大粒の涙を流し、尿をピュピュッと断続的に漏らす綾香嬢の、その、垂れ流しになっている甘臭い愛液に塗れたお腹の、臍性器の周りを、ディルドでなぞりながらセリア女史はペチペチと叩く。
その所作を受けて、ひきつけを起こし、意味のある言葉を話せない綾香嬢を他所に、セリア女史の話は続く。
「そしてある日、彼が登校を拒否して、部屋から出てこなくなったと、マスターから電話があったのです。驚いた私はすぐさまあらゆる予定をキャンセル。開拓惑星から中継宇宙ステーションへ。中継宇宙ステーションから地球の機動エレベーターへ。機動エレベーターから東京へすっ飛んで帰ってきて、カフェの二階へと直行しました。そして、彼の部屋に赴き、ベットで蹲り、泣き叫ぶ彼を見つけたのです」
そう言いながら、スッとセリア女史は、臍膣の、臍膣口へ、臍大陰唇を割り開いてディルドの先端を当てがう。
圧力に押され、グニッと歪み、僅かにその先端を飲み込んだ臍膣口は、魔術により感覚を鈍化されようとも、魂に刻まれた偽りの本能に従い、貪欲にそれを飲み込もうと僅かに盛り上がりかぶりついていた。
「さて、綾香さん!問題です!」
今日で一番満面の笑みを浮かべて、セリア女史は、かつての世界大戦の際に、『報復の化身』、『復讐の魔女』と謳われた、セリア・ドリット・ローゼンタールは、綾香嬢へと問いかける。
「どうして彼は、リッ君、天藤 律君は、泣いていたのでしょーっか!?」
「ヒッ……ヒッ……ゆるっ、ゆるしっ……」
「おやおや~綾香さん、答えは『ゆるしっ』じゃないぞ~~~?」
真っ青を通り越して白い顔になりながら、さめざめと泣いて許しを請う綾香嬢の顔をニコニコと下から覗き込んだセリア嬢が、異常なテンションでそれを遮る。
そのまま下からニコニコと満面の笑みで見つめるセリア嬢と、さめざめと泣く綾香嬢。しばしの時間が流れ、ついに綾香嬢が口を開いた。
「ヒッ……わたっ……わたしっ!わたしっがっ!孤児院出でっ!独学でっ!生意気にもッ!な”ま”い”ぎに”も”お”!!一位をとった天藤 律をねたんで!!!虐めたからですっ!!!虐めてッ!!!彼のっ!両親の、形見の魔術発動補助媒体、焼いたからですぅ!!!!!!!」
「……うわぁ」
そのあまりの事実に、思わず著者も唸ってしまった。それは、いけない。スキャンダルだ。いくら、都立高等魔術院が『貴族主義魔術師養成機関』と揶揄されようと、事実として世界政府は、貴族主義的な差別を認めている訳ではない。
それが、実際に学内の生徒が、他の生徒、しかも独学で入学し、実際には世界最高の学習補助があったとはいえ、1位を取った苦学生を、その生まれから虐めるなど、あってはならない事だ。ましてやそれが、『六人』の一人と懇意になってたとなれば、どうなる事か。
もしこれが表沙汰になれば、まず千勝院ブランドにも大きな傷がつき、更には旧日本の教育行政において、どれだけの首が飛ぶか想像もつかない。少なくとも東京都内の教育行政に関しては総取り換えとなるだろう。
まさか『雌の穴ほぐし屋』さんの取材からからこのような一大スクープに発展するとは。思わず、著者の額にも汗が噴き出て来た。そして固唾をのんで続きを注視する。
「ふむふむ、つまり綾香さんは、リッ君が、『学内1位を取ってから突っかかってきた千勝院さんをあしらっていたらそれがだんだんエスカレートして、教科書を隠されたり、他の生徒に無視されるといったあからさまな虐めに発展。それをやめるよう、正々堂々勝負しようと彼女に提案してたら、今度は孤児であるリッ君を快く思わない連中と結託して彼女に放課後、取り押さえられてしまった。その上で無理やり首にかけてあったアミュレットを奪い取られてしまう。それに激怒し、取り返そうと反射的にはなって来た彼の攻撃魔術をどうにか防いで、生意気な孤児の思わぬ反撃に怒った千勝院お嬢様によって、奪い取られたアミュレットが焼かれた事が悲しかったの』で、泣いたと、そうおっしゃるんですね?ふぁいなるあんさー?」
すべて知っているぞ、と言わんばかりに綾香嬢が話していない所まで、きっちりと語りつくして、セリア女史は確認を取る。
「ふぁ、ファイナルアンサー!!!!!」
それに対して、もはや綾香嬢は自棄だ。あらん限りの声を上げてそれが答えだと宣言する。心境としては、己の死刑執行スイッチを押した気分だろう。
そして、その宣言に、セリア女史は笑顔で応えた。
「【感覚鈍化解除】……ブブー!!不正解でーす!!!」
ズドム!!もはや殴りつける勢いで、ディルドを突きこむ。たまらず、拘束された綾香嬢の体がくの字に折れ曲がった。
「おっ♥ぃっ♥た♥ぃった♥いぃ♥いった、の、にぃぃっひぃぃぃぃいいいいいい♥♥♥♥」
殴りつけられた影響だろう。肺から空気が一気に吐き出されたうえでの絶頂の叫びは、細く長かった。
そのまま、ジュゴ!ジュゴ!と無慈悲な音を響かせながら、めちゃくちゃにディルドを出し入れしてセリア女史が宣言する。
「いいですか綾香さん?正解は、『己を虐めてくる卑劣な輩に、誰かを守る為に磨いてきた自分の力を僅かでも振るってしまった己の情けなさに泣いている』でしたー!!……貴様がリッ君の何かを奪えると思うな。だが、貴様の行いは確かにリッ君の心に染みを作ったんだ。小娘、死ぬか?」
絶対零度の言葉。それでついに綾香嬢の精神は決壊した。
「ご♥ごめんなさいぃぃぃいいいいいい!!はじ、初めはちょっとなまいっひぃ♥生意気だから♥っほぉ♥わからせてやろうと♥♥こっちのじつりょくぉをっほ♥♥とおもって♥♥♥でも、なんどやってもかてなくて♥♥だから♥♥あせ♥♥あせって♥でも、でも♥♥♥♥♥こ、こんな師が♥♥師が♥♥家庭教師についてるなんて♥♥ついてるな、なんて♥はんそく♥♥♥」
その言葉に、セリア女史がピクリを眉根を上げた
「あ”?私が帰ってくるのは精々が月に2回程度ですよ?貴方はどうせ毎日家に帰ってからも家庭教師や専門の講師と一緒にお勉強でしょう?言い訳する悪い子には、こうですよ♪えい☆」
そう言うや否や、ディルドにバチリと電流が走った。
「ぎゃひゃあああああ♥♥♥♥♥♥♥♥ごべ♥ごめんなさい♥♥♥♥♥ごめんなざい♥あや♥♥♥♥♥あやまりまず♥♥あやまりますが♥♥ら”あ”っ♥♥」
「私に謝ってもしょうがないんだよなぁ。それに、ウフフ。さっきは『こんな事されるほど悪い事はしてない』とか泣き叫んでいた小娘が何か言ってますね。そいや♪♪」
「ごっへぇ♥♥♥♥」
ディルドを奥深くまで突き入れたタイミングで、ドムッと鈍い音がして、綾香女史の下腹部が膨らみ、綾香女史は、その体をくの字に曲げながら顔だけはのけ反るという、摩訶不思議な体勢になってた。
「あははは。記者さん、綾香さんの臍お……おまん、こ」
「なんでそこだけ恥ずかしそうなんですか?」
「せ、セクハラですよ!?と、ともかく。綾香さんの臍フン~ンフは、このように完全に変態さんなんですね。さっきは電流、今は衝撃波。どんな苦痛も、快楽に変換してしまうんです。例えば、私の突き入れてるこれがナイフだったとしても、ズタズタに切り裂かれる神経と筋肉の感触で絶頂出来ます。それどころか、きっと死に瀕した際に分泌される脳内麻薬で最高に気持ちいいですよ。それこそ死にそうな位。実際出血多量で死ぬんですけど」
試してみます?にこやかな顔で綾香嬢に問いかける。
「い♥♥いやぁぁぁァ♥♥死に♥♥死にたく♥♥♥死にたくないです♥死は♥死はいや♥……あぉ♥へっ♥」
「あ、そんなこといいながら いい加減脳が馬鹿になってきたみたいですねぇ。処刑アクメ妄想してイッてますよ。頑張れ♥頑張れ♥あとその10倍位の濃度の快楽を感じると死ぬことが出来るぞ♥♥♥」
その言葉に嫌々、とばかりに絶頂の煉獄に叩き込まれながらも必死に綾香嬢は首を振っていた。
「あはは。冗談冗談。言われてますから。『殺さないでください』って。さっき言ったように、本質的にリッ君は悲しんでるんです。自分が、いわれなき暴力を振るったという事に。いや、私からすれば正当性があると思いますが。けど彼は、『何時かの誰かの為に』力を求めていた。その力を、誰かへ害意を持って使った己に失望したみたいで。はぁ~~リッ君いい子」
その、『リッ君』とのやり取りを思い出したのだろう。機械的な動きで綾香嬢の臍性器を抉りながら、中空を見つめて恍惚とした表情でにやけ顔を浮かべた。
「まぁ、まずは部屋に入るなり、その情動は誰にでもあるもので、そんなに卑下するものでもないんだよ。自分を許してあげて、と『慰めて』あげたら、やっぱり彼にも感情がありますもの。私に、『復讐』を依頼してきたんですね。それはもう可愛いリッ君の頼みですから。二つ返事で受けてあげましたよ。……私としても許せませんでしたし。だって」
そう言いながら、何の感情もない瞳でじっと、セリア女史は綾香嬢を見つめた。
「両親の形見を踏みにじるような輩が、生きている必要、ありませんよね?」
「カ゜ッ♥」
瞬間、綾香嬢からすべての力が抜け、ガクリと頭が垂れ下がった。
「あっ!やってしまいました。ついつい全力で殺気を向けてしまいましたね。はーい、綾香さん起きてくださーい」
そう言うなり、ディルドの周囲に魔術式陣が展開し、そして展開したままそのまま突き入れた。バチリ!と先ほど電流を流した時のような音がする。
「♥ガッ♥♥♥ッ!?……はーっ!はーっ!はーっ!」
どうやら綾香嬢が蘇生したらしい。一度震えてから、全力で空気を取り入れていた。
「こうやってディルド経由で心臓に電流を与えられると、蘇生アクメ出来るんですね~。……どうでした?綾香さん?蘇生アクメ、気持ち良かったですか?」
「は、はひ♥気持ち良かったれす♥♥♥」
完全に心が折られているのだろう。綾香嬢は顔を涙やよだれ、鼻水などあらゆる体液でぐちゃぐちゃにしながら、媚びた笑みを浮かべて答える。
「は?これは貴方がやらかしたリッ君への非道に対する復讐ですよ?なに気持ちよくなってるんですか?」
そしてそのまま突き入れられたままのディルドに、セリア女史は一切容赦をせずに膝蹴りを叩き込んだ。
「オゲッ♥!?……い、ぎゃああああああああ!?!?!?!?♥♥♥♥痛い!痛い!!痛い!!!痛い!!!!痛い!!!!!!あし?あしの!?わたくしの足が!?」
鈍い音と共に、ミシリという音が背骨から聞こえ、痛みと快楽がないまぜになった叫びが上がる。そして先ほど同様、上半身はめちゃくちゃに暴れているにも関わらず、下半身はまるで力を失ったかのようにプラプラと揺れていた。
「あ!いけないけない!今脊椎を痛めちゃいましたね。このままでは半身不随です!!!『せめて五体満足で返してくれ』って厳勝氏から言われてるんでした。てへぺろ☆ごめんなさいね綾香さん。今治して差し上げますから……【魂殻構成探査術式起動】【対象:脊椎構成部】並行して、【身体精査術式起動】【患部傷害深度測定】」
セリア女史が言うなり、綾香女史の全身を、立体的かつ精緻な記号、数式が信じられない密度で記載された球状の魔術式陣が包み込む。
その魔術式陣を睨みつけながら、セリア女史が何かを探るように右手の人差し指をその魔術式陣へと翳している。人差し指が動くたび、それに従い術式の構成も、僅かに変化する。
「よし、患部状態確認……当該患部の、健常時の神経、脊椎の構成を魂殻より【転写】……完了。それに従って、【概念式回復魔術式起動】……はい!治りましたよ!」
そう言うなり魔術式陣が消失するなり、陸に打ち上げられた魚のように、ビクビクと綾香嬢の脚が動くようになった。
「はっ!?あれ!?足、足が!?」
あまりの事態に、綾香嬢は己の身に起こったことを処理しかねているようだった。
「おお……こ、こんな事が」
「えへへ。凄いでしょう?まだ損傷した直後なら、身体の状況が魂殻に反映されていないので、魂殻に記載された体の状態をロードマップにして概念式回復術式を起動すれば、簡単に損傷した神経を治す事が出来るんですよ。即席の魂殻構成探査術式が高度過ぎて今の所、私か『賢者』(※後日確認したところによると、女史曰く『六人』の内の一人、『賢者』との事)しか使えませんけどね」
「え、似非マッチョ眼鏡……?」
取材当初は理解しきれていなかったが、なるほど、『六人』の内二人しか使えないとなれば、まだまだ一般化は先なのだろう。
「けれどこれで、『~が治る』という事象を叩きつける事で、自然治癒能力を高める賦活式回復魔術式では治す事の出来ない傷病を治療できる代わりに、むりやり患部以外の身体と整合性を取らない形の治癒になってしまう為、長期的には致命的な後遺症が発生してしまうリスクが存在する概念式回復魔術式の安全性が向上しますよ!何せ、魂殻に記載された情報を活用、干渉する事で、患者の体にとって自然な形の治癒状況指定が出来るので」
それはつまり、今まで治癒が困難だった様々な傷病が治癒されるという事であり、宇宙進出の時代にあって人類の寿命もまだまだ伸びそうであった。
セリア女史の見せた絶技にこれからの医療現場の明るい未来を夢想して、何とはなしに著者とセリア女史が浸っていた緩い空気を切り裂いたのは、綾香嬢の叫びだった。
「お待ちくださいローゼンタール師!!その、先ほど、厳勝、という名前が出たように思えたのですが……」
「あら、脊椎損傷の激痛の中でもちゃんと大好きなお父様の名前は聞いてるんですね。はい、出しましたよ。そもそも、リッ君を慰めて復讐を依頼されて真っ先に行きましたからね?。リッ君の保護者として、相手の保護者の管理不行き届きは追及するのは当たり前ですから」
いつの間にか『リッ君の保護者』にランクアップしていたセリア女史が、何を当たり前の事を?と小首をかしげる。それを聞いた綾香女史の反応は、激烈だった。
「いや、いや!いや!!いやいやいやいいやぁああ♥♥♥お父様♥おがあざまぁぁぁ♥♥♥」
「悲鳴を上げたまま絶頂するなんて忙しい人ですねぇ」
絶望と絶頂がないまぜになった叫びがあがり、それを見てセリア女史はしたり顔で大きく頷く。
「ともあれ、そうでしょうそうでしょう。聞けばお父様が大好きで、お母さまを心から尊敬しているみたいですものね、綾香さん。だからこそ、『たかが孤児』に負けて、千勝院という家名と、『朱炎の娘』という肩書に泥がついて、ひいてはお父様とお母様の名に傷がつくことを恐れるあまり、どんどん行為がエスカレートしていっちゃったんですよね。分かります分かります」
うんうん頷き、
「まぁそれで許される事ではありませんが……焼け焦げたアミュレットから、貴方が魔術を使用した痕跡を見つけるなり、土下座しましたよ。お二人とも」
「いやあああああ♥♥♥♥おがっ♥♥♥おがああ♥♥♥♥♥」
もはやセリア女史はディルドを握っていなかった。代わりに、弓なりになって魚のように震える綾香嬢が、その臍膣圧でディルドをヒリ出すのを見て、手を叩いて笑っていた。
「ごべ!ごべん”な”ざい”♥♥お父様♥♥お母さま♥♥ばがな”♥♥♥お”ろ”がな”む”ずめ”でぇ”♥♥♥ごべんなざいぃぃぃ♥♥♥♥ゆ”る”じでぇぇぇぇ♥♥♥も”う”♥じないがらゆるじでぇぇぇ♥♥♥」
「とか言いながらはしたなくイってるんだからしょうがないですねぇ。少しでも謝意があるならイクの我慢したらどうですか?まぁ無理でしょうけど。そんな意志だけでどうにかなるよなやわな解し方、してませんし」
そう言いながら、セリア女史がおもむろに手を叩く。そうするといきなり綾香女史を拘束していた拘束が外れ、地面に投げ出された。
べちゃり、と音がした。
「んべっ♥」
「さて、そういう訳で、貴方の所業は大好きなお父様とお母さまの知る所となりました。彼らは、『娘が本当に取り返しのつかない事をして申し訳ない。我々としては天藤君に最大級の謝意を示すし、便宜を図る。そして、ローゼンタール師の怒りを買った以上、もはや娘がどうなろうとも我々にはどうしようもない。それでもどうか、どうか娘の命だけは勘弁して頂けないか』と土下座してきました」
その言葉に、完全に力の抜けきった体で言葉なく、さめざめと綾香嬢は涙を流していた。
「まぁ私としては、仮に私の両親の形見が焼かれた日には、怒りのあまり本人だけでなく一族郎党皆殺しですが。とはいえ、リッ君にも殺さないで欲しい、って言われましたし、千勝院財閥の当主とその妻にも土下座されてしまったわけで。これは殺すわけにはいきません。もしそうでなければ、四肢を切り落とし、内臓も肺と心臓だけにして、余命三日の死ぬまで謝罪を叫ぶマシーンになって貰おうかと思ってましたが」
びくりと、綾香女史の体が震え、チョロチョロと、もはや絞りだされたかと思われた尿が漏れた。
「うわばっちぃ!さておき、そう言ったら土下座しながら二人とも涙を流して『刺し違えても貴方を止める』と言ってましたし、隣のリッ君もドン引きして再度止めて来たんですよね」
もぅ、リッ君は甘いです。頬に手を当てながらセリア女史は話を続ける。
「そこは流石に冗談です、とお茶を濁しました。いやぁ、ご両親は実際にお話しすると、中々の人格者でした。まぁ、娘の教育には失敗したようですが」
「う……う”う”……ぐすっ」
憧れ『だった』魔術師の頂から、絶対零度の視線を受けて、ただ綾香嬢は蹲り、震えるばかりだ。
「とはいえ、私自身も貴方の所業に、かつて親を失ったものとして、単純に腹が立っていました。不快だったんですね。ですので、ご両親の対応を加味して、『命は取らない。五体満足のままにするし、廃人にしないけれど、社会的に殺す。ただし、千勝院ブランドについては利する事も行う』と宣言し、それで同意を得ました」
「そういう訳なので記者さん、今日の事は、私の住んでいる場所の住所以外はすべて記事にしていいですからね?」
「……そういう事ですか」
だから取材に応じたと、そういう事だった。
「ですがそれでは、まぁ旧首都の教育行政が爆発して、恐らく綾香嬢は退学になって立場は失うでしょうが、千勝院財閥にも大きなダメージが入るのでは?……貴方の風評も悪くなる恐れがありますよ?」
「アハハ。復讐の魔女が願われて復讐を行っただけですよ。それで下がる風評なんてさして興味がないですね。あと、千勝院についてなんですが、これはリップサービスでなく全く事実であるですけど、実は私、以前からSENSHOユーザーなんですよね。言ってなかったですけど」
そう言って右手を伸ばすと、その手に壁に立てかけてあった魔女の箒が収まる。柄の先端をこちらに見せれば、そこには確かにSENSHOの文字が刻印されていた。
「いやぁ、正直『六人』レベルになると、本当は魔術発動補助媒体なんて必要ないんです。けれど、昔から使ってるからか、ある方が『しっくり』来る。そのしっくり来る中でも、SENSHO製が使い心地が一番良いんですよ。だから愛用しています。これからもこの品質を保ってくれるなら、末永く使っていきたいですし、そうある事を願ってます。これも、記事に書いちゃってください」
なるほど、『六人』の内の一人が愛用する魔術発動補助媒体メーカーともなれば、それは確かに大きな宣伝になるだろう。
「あとは、『姫様』と、『勇者』もSENSHOお勧めしたら気に入ってくれましたよ」
「なんと。『勇者』女史はそういった、女性向けのものをお使いになるんですね。お洋服などは『姫様』の御趣味で可愛らしいのを着ているというのは有名ですが」
「あははは。確かに、もう50年も女の子やってるのに、偶に『俺は男なんだ!』と主張してますけど、そのたびに『姫様』が、『もう!不可逆なのはわかってございましょう?それに、オナペットがどれだけ素敵な女の子で、私の心とお腹の奥とお股を熱くさせるか、ベットで教えて差し上げます!』って言って二晩位ギシギシアンアンして勇者君ちゃんがもう立派なオンナノコだって教え込んでるんですよね。だからちゃんと、二人とも使ってくれるんです」
「……それは、記事にしていいやつですか?」
思わず苦笑いが浮かぶ。
「いいですよ。あの二人がおしどり婦妻なのは積極的に発信していきたいですし。『人類最強の比翼連理に陰り無し』って」
「それもそうですね。ありがとうございます」
「はい。さて、聞いてましたね?綾香さん」
そういって、セリア女史が綾香さんの所にしゃがみこんで、先ほどと同様の術式を行使し、身なりだけは整えて、徐に仰向けにさせた。
手にはいつの間にかコルセットが。ちょうど、臍に当たる場所に、ディルドが固定されている。
「そういう訳で、千勝院財閥は、『愚かにも創星級魔術師の身内に手を出した財閥当主の娘』という生贄をささげる事で、創星級魔術師と明確なつながりを持てるので、これからも安泰です。娘を放逐してもいいくらいには。良かったですね?」
「……はい」
「そして今までの一連の流れは、先に宣言しておきましょう。これから行われる、天藤 律が貴方に行う復讐の下準備兼、私のうっぷん晴らしでした」
「ふく、復讐なら……」
「はい?」
綾香女史が、かすれた声でセリア女史に問いかける。
「な、なんでここに、天藤 律が。いないんです……の?」
「それはこんなもの見たら絶対優しいリッ君は途中でやめさせますからね。私の鬱憤晴らしも兼ねてるんです。途中でやめさせられたら、私が不完全燃焼になっちゃいますもの」
その言葉に、綾香嬢は、ただ体を震わせて、
「あ……あく、あく、ま……」
涙を流した。
「……っはー!身勝手なガキですね。いいですか小娘。私は、『六人』は、私達以外の多くの人の努力と協力もあったうえで、世界大戦という状況と、その裏にある極少数の人間が主導する悪意と戦いました。それは、この地獄のような戦争が終わって、世界が平和になり、皆が幸せになる事を願ったからです」
「そしてどうにか魔術師協会首領による、星喰らいの創世魔術を打ち破り、実力行使で戦場を停戦させ、どうにか各国の利害をお互い痛み分けの状態に調整し、終結させたんです。そのうえで、少なくとも向こう数百年は戦争に目が向かないように、宇宙という新天地の可能性も示して。そして実際人類は今、復興と宇宙開発の追い風を受けて繁栄の階に手を掛けている状態です。平和なんですよ。あの時、世界の誰もが望み、願った、平和です」
「勿論、そうはいっても、世界には悪意や不条理が確かにあります。それは仕方ない。それどころか。世界に蔓延るそれと今もなお戦っているんです。だから、その戦いの羽休めが出来るカフェのひと時くらいは、救われてありたい。……そして、確かに状況は違うとはいえ、両親を失いながら、私のようにその死に拘泥して、復讐に狂う事もなく、両親の死を死として受け入れ、過去のものとしながら、確かにそれを糧として正道を歩くリッ君は、救いそのものでした」
「救いを多少なりとも穢したのは、貴方ですから。だから、全力で無様に踊ってくださいね?」
そう言いながら、絶頂に次ぐ絶頂で、くたくたになった綾香嬢に、セリア女史はコルセットを取り付けた。そうすれば、ちょうどディルドが臍性器に挿入された状態になる。
もはや、綾香嬢はされるがままだ。
「うっ♥くっ♥……これ以上、私にどうしろというのですの?」
「あはは。そんな投げやりにならないでもっと頑張りましょう?今体力も回復させてあげますから」
そう言うなり、どうやらセリア女史は賦活式回復魔術を使ったようだ。荒かった綾香嬢の息も、整ってゆく。
「さて、綾香さんの体力が回復したところで、気付いてますか?今綾香さんの魂を縛るように、術式が展開しているのが」
「えっ……!?ウグッ♥」
「さっき、半身不随を治療する際にちょちょいっと掛けさせて貰いました♪」
徐に、寝込んだ状態から座り込んで、綾香嬢は、己の腹をのぞき込む。座り込む際に腹筋を駆使したからだろう。臍性器がディルドを咥え込み、それで体に衝撃が走ったらしく、艶めかしい声も出る。そして、徐にのぞき込んだままの姿勢で、震えだした。
「な……なん?なんなのです、これ……は。うそ、この術式陣、個々の術式自体は精緻で意図が……術式の意図と効果は、分かるのに……わ、わか。わから、ない……!個々の術式を組み合わせて陣として、組みあがったら、何を、どのような効果になるのか分からないっ!まるで……何もッ!ほっ♥」
顔を真っ青にして、綾香嬢は叫び、それでディルドが臍膣によって咥え込んでしまったのだろう。絶頂した。都立高等魔術院の才女とはいえ、流石に世界最高最強の魔術師には足元にも及ばないようだった。
「簡単ですよぉ。単純な効果を解術されないようにデコイを沢山噛ませてるから分からなくなってるだけなんです。綾香さん、そのまま臍おま……フン~ンフが気持ち良かったら日常生活も送れないでしょ?だからその術式は、プレゼントです。なんと、特定の状況を除いて、臍性器の感覚をセーブしてくれるんですよ!」
「それで、どんな恐ろしい条件なんですか……?」
「もう!ノリが悪いですね綾香さん!簡単です!『ご主人様に対して精神的、性的な興奮を得た時』です!」
その言葉を聞いて、どこか冷めた顔で、綾香嬢は頷いた。
「つまりそのご主人様を、天藤 律にすることが、復讐だと?」
「はぁ~!!!もう!重ね重ねノリが悪いですよ綾香さん!!!綾香さんが人間卒業するか人間のままでいられるかの瀬戸際なんですから、ちゃんと聞いてください!!!」
「は……?」
人間卒業という不穏なワードに、流石にこれまでの責め苦でどこか擦り切れていた綾香嬢も、耳を傾けざるを得なかった。
「いいですか、その『術式』には、ご主人様登録が必要なんです。そうすると機能が発揮されます。だから今も綾香さんはディルドが臍の中を刺激して、気持ちがいいでしょう?」
「んっ♥まぁ、そうですが……」
そう言って、どこか切なそうに綾香嬢は腰をくねらせた。くねらせるたびに、ビクリビクリと腰が跳ね上がる。
それを身ながら満足げにセリア女史は頷いて、
「で、ご主人様登録ですが、単純です。『子宮に初めて精液を受け容れた対象の系譜』となってます。前提として、性交の際ですね。射精と同時に、射精した側の魂殻は僅かに己を構成する霊糸を解し、精子をマーカーに、射精された側の魂殻に接触しようとします。そして接触すると、接触された側の魂殻が反応して、そこから新たな魂が形成されるんです。まるで肉体における、精子と卵子の関係です。面白いですね~」
「それで、です!現在魂を覆うように展開している術式は、最初に綾香さんの魂殻に接触しようとした魂殻の形質を認識します!そして、今後はその魂殻の形質を持った対象とした精神的、性的な興奮を感じた場合のみ、恒常的に発動している綾香さんの臍性器への【感覚鈍化】を解除。性感を感じて、絶頂出来るようにしてくれます」
そういって両手を合わせ、セリア女史は我が事のように喜んだ。
「良かったですね綾香さん!これで、男に媚びて気持ちよくなって精子を恵んでもらう事しか考えていない。雑魚雑魚な、変態雌性器を臍の穴に抱えててもちゃんと社会生活を送れますよ!!けれど、気を付けてくださいね?」
そう言いながら、座り込んだままの綾香嬢へと近付き、セリア女史はコルセットを小突く。
「んぃ♥」
「綾香さん、コルセットを透視してディルドをよく見てもらっていいですか」
「?はい……え」
もはや擦り切れて投げやりになり、あらゆる不条理も受け入れるといった雰囲気だった綾香嬢の体が、ガタガタと震えはじめ、ゆっくりと白い顔を持ち上げセリア嬢へと質問した。
「で……ディルドの中、内部に……せい、精子が…‥精子と、魂殻が……これ、しかもこれ。に、人間の、じゃない……一体なんの……せい、し……」
「あら!ちゃんと人間のものじゃないのは認識しているんですね。魔術的観点による魂の差異を基準とした生物の分類自体は、大学レベルの内容ですが、高等魔術院の知識でも、しっかり予習と復習をしていれば分かる事。ちゃんと勉強されている証拠です」
そうして慈愛の笑みを浮かべて、セリア女史は宣言した。
「豚さんの精液です。ご存じですか?魂は、たとえ種族が違ったとしても、精子と共に子宮内に運ばれたに魂殻に、ちゃんと魂は反応するんですよ?」
「ひっ♥……ハッ♥♥いっ♥♥じゃ、じゃあディルドの上部にある、このデジタル数字はっ……!」
ガタガタガタと震えながら、綾香嬢はさらなる答え合わせをした。
「はい!ディルドから豚さんの精液が発射されるまでのタイムリミットを表示してくれるタイマーです。ちょうど3時間ですね。三時間後、封時凍結された豚さんの精液が、凍結解除されて、綾香さんの子宮へ発射。ご主人様登録されるんですね!あ、ディルド、というかコルセットが外れる条件は、『豚さん、またはリッ君の精液が子宮に入り込んだら』です。あ、ディルドを固定してるコルセットは現在の宇宙船の外壁にも使われてる素材で作ってますし、その留め金は私特性の魔術式陣で幾重にも封印してます。だから、物理的魔術的にも3時間で正規の方法では外せませんからね?」
「じゃ……じゃあ天藤 律に会って……」
「あっ!そこの話に行くのはまだ早いですよ綾香さん!まずはもし3時間の間にリッ君の精液が注がれず、豚さんがご主人様登録された場合についてお話しますね?そうなると、綾香さんはもはやお相手の豚さんで精神的、性的な興奮を感じた場合のみ絶頂出来る訳ですが……【感覚鈍化】」
どうやら性器からの快感が遮断されたらしい、むしろどこかしら違和感を感じる様子で、綾香嬢は座りなおした。
「そのお相手の豚さんですが……じゃ~ん!!こうなってます!!」
そう言って両手を広げれば、そこには画像が展開された。美味しそうな、とんかつだ。
「……は?」
「はい!もう食べちゃってます!!いやぁ!美味しかったですよ!最高級の豚肉でしたから!!」
大変なんですよ?死んだ対象の魂を一部だけ保存して生殖可能な状態で保存するなんて、ニコニコと笑いながら、魔女は己の技術を誇示した。
「……え?それじゃあ、もう。私は、もし天藤 律に会えなかったら、もう一生……」
「絶頂も出来ないし、性感も感じる事が出来なくなりますね!!」
「あ……アハ。アハハハ。あ、あれ?さむ、寒い……寒いですわ。いや、いや……ど、どうし、どうして……」
そう言いながら、快感を鈍化された綾香嬢はボロボロと涙を流しながらガタガタと座り込んだまま両肩を掻き抱いて、震え出した。それはさながら薬物中毒患者が中毒に苦しんでるかのよう。
「アハハ、もう実は綾香さんの体は、脳が駄目になってるんですよ。知ってました?さっきから頭のおかしくなるような、というか私が術式で生命維持してないと廃人か心停止するようなめちゃくちゃな気持ちよさを感じて、脳が、体が快楽中毒になってるんですね。例えば、ほら【感覚鈍化一部解除】」
徐に、セリア女史が綾香嬢のスカートの中へと手を突っ込む。そして、クチュリと音がして、
「あっ…‥やめッ……あれ?」
「ちゃんと処女ですね……それはさておき、おかしいでしょ?気持ちいいかはともかく、クリトリスも、Gスポットだって、本当はもっと鋭い感覚を寄越して来ていい筈です。けれどそれがすごい鈍い。得られる快楽なんて、以前の性感帯から得られる気持ちよさに比べて、10分の1もないんじゃないですか?鈍化を解除した状態でこれですから、平時は快感なんて一切感じませんよ?痛覚と触覚は認識されますが」
「な……なんっ……」
「もう、終わってるんですよ。臍性器の気持ちよさに、心核が、魂殻が、慣れちゃったんです。『こっちの方が気持ちいい』って。だから『女性器なんていらない。これはおしっこの穴だ』って、認識しちゃってるんです。通常の雌の穴ほぐしでは、そういった部分もちゃんと配慮して施術してますが、そんなの今回は関係ないですからね」
「い……いや。いやぁ」
ガチガチガチ、少女の体が今日この場で何度も見たように、震え出した。見れば、炎のような朱の髪に。僅かに白いものが混じっているのが見て取れる。白髪だ。
「それだけ激烈な反応を起こしてるくらいだから、もう脳のシナプスが一部壊れちゃって、雌性器の快楽がないと生きていけないですよ。今ですら綾香さん、『もう気持ちよくなれない』って思っただけで、不安で不安で怖くてしょうがないですよね?それが中毒反応なんです。あ!でも安心してくださいね?」
その豊かな胸をはって、魔女は宣言する。
「さっき言いましたが、ご主人様は『受け入れた精子の系譜』です!つまり、既に死んだこの豚さんですが、ちゃんと食用に繁殖していますから、子孫の方々がいらっしゃいます!その方々の豚ちんぽなら気持ちよくなれますよ?」
解決策を提示して、魔女は微笑み、綾香嬢の耳元で囁く。
「だからもし豚精子を子宮に浴びて、獣姦でしか気持ちよくなれない変態さんになっても安心してください。運命の王子様はいますから。その時は……そうですね。私の食べた豚さんが、どの地方産の豚か、教えて差し上げます。頑張ってその地方の畜舎の豚さんのお、おち……おチンポを咥え込んで、運命の王子様を探してくださいね♪」
顔を赤らめながら、セリア女史が楽し気に宣言する。
「お…‥‥げええええええ!!!!うぶぇぇぇぇえ!!!!!」
たまらず、綾香嬢は吐いた。
「あっ、もう!ばっちぃですね!」
言葉と共に手を一つ叩けば、お嬢様の醜態は一瞬で消え去ってしまうのだった。
「でも、それは嫌ですよね?」
コクリと、綾香嬢は頷く。
「じゃあ、もうリッ君の精子を膣から射精してもらって、一生リッ君でしか気持ちよくなれない女になるしか、ないですね?大丈夫です。ご両親から許可は貰ってますから。安心してリッ君の雌奴隷になっていいんですよ」
それは、地獄に垂らされた蜘蛛の糸だった。まるでかつての宗教的指導者のように、敬虔で厳かな雰囲気を漂わせながら、セリア女史は綾香嬢へと言葉を擦り込んでいく。
「……!は……い。なります。天藤 律の……」
そう、そもそも、千勝院 綾香に選択肢など在りはしないのだ。豚の花嫁か、天藤 律の雌奴隷か。人以下か、せめて人か。選ぶまでもない。
「天藤 律様」
雌奴隷志望の至らない呼称を、ぴしゃりとセリア嬢が訂正した。
「っ!は、はい!天藤、てんどう りつさまの、雌奴隷に」
「うんうん、よく言えました」
その様子に、セリア女史は満足したように優し気な笑みでセリア女史は綾香嬢の頭を撫でた。まるで母が愛する我が子にするような優しい手付き。今日これまで、セリア女史から綾香嬢にもたらされたのは苛烈な性拷問のみだ。砂漠に降った慈雨のように染み渡ったのだろう。潤んだ瞳で、感動に打ち震えながら綾香嬢はその手付きを受け容れた。
「けれど、頑張ってくださいね。もう性器ではほとんど快楽なんて得られないんです。その状態で破瓜して、射精に導いたら、とても、とっても痛いですよ……!」
頭を撫でながら、セリア女史は哀れで愚かな少女を励ます。その言葉に、ぶんぶんと頭を縦に振って、幼児退行しかながら綾香嬢は、宣誓する。
「っはい。はいっ!けど頑張りますっ!」
そしていきなりクシャっと顔を歪め、
「豚は、豚は、豚はいや。ぶたのおよめさんは、いやぁ……!」
抑えきれない涙声で感情を吐露した。
「それは良い覚悟です、綾香さん。ところで……」
撫でていた手でそのまま白髪が混じりだした綾香嬢の髪をひっつかみ、徐に顔を上向かせながら、セリア嬢が綾香嬢を上から睨みつける。
何度かセリア女史の冷たい声は今回何度か聞いたが、それに比してもなお冷たい声が、綾香嬢へと浴びせかけらた。
「小娘、貴様なんでリッ君に射精してもらえる前提で話しているんだ?」
「……ぇ」
か細い、声だった。
「リッ君は私に復讐を願いました。そして、私は『どのような復讐をする』とは言ってません。命を取らない事は貴方のご両親リッ君共通の願いなので、それは分かっているでしょうが。さて、リッ君は今自分の部屋にいます。今、私が綾香さんへと復讐している事は教えています」
「そのうえで、いきなり部屋に転がり込んでくる、発情臭たっぷりの綾香さん。どうしたと思いますよね?当然、綾香さんは状況を説明せざるを得ませんよ?だってリッ君には訳が分からないんだから……あ、いや『射精されなければ死ぬ』とか嘘を言われても困りますね。……えい!【魂縛魔術式追加条件付与】。今付与してる術式に1個付け足しました。これで綾香さんは正確かつ詳細な説明をしてしまいますね。大変ですね……ともかく、リッ君は聞くわけです。聞いたうえで」
「うぐっ……ぐぇ……ヒッ!」
コテン。可愛らしく首を傾げて、凄絶な笑み魔女は、蜘蛛の糸を切られて絶望に沈む少女へとトドメを刺した。
「なんで、いじめられてた子が、いじめっ子の処女を奪うんだ。触れるのも嫌に決まってるだろう。それどころか、自分がNoと言うだけで目の前の女は人間失格豚花嫁確定だぞ?そっちを選ぶに決まってるだろうが」
「あ……あははははは☆あひゃ!!いひひひひ!!!!……ひぃー!!ひぃー!!!いやああああああああああああああ!!!!!!」
「きゃあ!!」
いきなり綾香嬢がセリア女史を突き飛ばし、ここから逃げようと立ち上がり、著者とセリア女史が入って来た階段へと向かい、
「な……なんで!?どうしてなの!?どうしてよぉ!!!もう!!!もういやぁ!!!!!やぁ!!!!!どうして!!!!!」
まるで見えない壁にぶつかったかのように、階段の前で立ち止まった。
「そこは『綾香さん用の出口』じゃないですからね。本物は別です。それにしても……案外冷静。いや、土壇場でも判断力がありますね。実は魂に展開する術式陣は、まだ起動していません。あ、そうか。ディルドのタイマーの数字が動いてない事から推察しましたね?それでなくてもタイマーさえ動いてなければ豚精液が射精されないからどうにかなると踏んだのか」
どちらにせよ無駄ですけど。突き飛ばされた衝撃で口の端を切ったのか、僅かに流した血をぬぐいながら、黒衣の魔女は立ち上がった。
「ヒッ……ひぃ!!!」
「ともあれ、自分から壁に追いつめられるなんて、綾香さん、殊勝な方です。それに免じて、久々にやってあげましょう。いやぁ、懐かしいですねこれ!」
そう言いながら、見えない壁を背にして怯える綾香嬢へと、セリア女史は向かってゆく。その様に、思わず著者も興奮を抑えきれなかった。
それは、世界で最も有名な心核翻訳の一つ。かつての大戦を終わらせた『六人』の一人。『復讐者』の代名詞。
『賢者』が導き、『英雄』が切り開いて、『騎士』が守り、『姫』と『勇者』が駆け抜けた光の道にて、取りこぼされた悲劇の当事者へ、常に女がかけた言葉。
一度、誰かを虐げ、理不尽をもたらしたのならば、その言葉から逃れ得る術はない。
「さぁ、綾香さん。貴方の傲慢を、愚かさを清算しましょう。天藤 律の願いを受け容れて、復讐の魔女が、ここに宣言します」
「あ……ああ、いや」
もはや逃れえぬものではない。綾香嬢はただ、眼前の少女のような女性を見下ろして震えるのみだ。
そして、セリア・ドリット・ローゼンタールは、千勝院 綾香の胸に、人差し指を突き付け、終わりの言葉を放つ。
「【魔術式陣起動】――― 【復讐するは、我にあり】」
「はい!わかりましたね綾香さん!!!私の行きつけのカフェは、この近くです。頑張ってカフェの場所を三時間以内に探し出して、二階にいるリッ君に会って、誠心誠意謝って土下座して無様にゆるしを請うて、トイレの紙屑程の価値もない処女を破って貰って、快楽奴隷奴隷宣言してきてくださいね……【鈍化解除】」
「あおぅ♥♥うぅぅう♥♥♥♥」
「お帰りはあっちです」
鈍化が解除されて、快楽が走るのだろう。よたよたと頼りない足取りで、それでも必死に綾香嬢は、階段を上っていった。そしてそのまま、街に出て必死に件の『リッ君』を探すのだろう。
しかしそれは、
「いずれにせよ、貴方の大切な『リッ君』に彼女の人生の責任を押し付ける事になるのでは?」
「それはもう。復讐の魔女に、復讐を依頼したのです。私はあくまで執行者。意志の代行者であって、復讐者そのものではないですから。己の意志の責任は、己で取るほかありませんから」
「それは……そうですね」
しばし、二人だけの時間が流れる。
「ところで」
口火を切ったのは、セリア女史だった。
振り向けばいかなる魔術か、当初のニットセーターにロングスカートに変じていた。
「この後お暇ですか?」
「え……ええ。まだ時間はありますが……」
「でしたら実は、ちょっと私もオンナノコですから、気持ちいいのを見てちょっと昂ってしまって……」
そういう年ではないだろう、というツッコミは口の中で飲み込んだ。
「記者さんも、そこ。苦しいですよね?」
少女は、悲惨だった。自業自得とはいえ、悲惨だった。だが、痴態でもあった。確かに、著者の一物は、膨れ上がって苦しさすら感じている。
ススっと、ニットセーターのお腹が、まくり上げられる。するとそこには、花が咲いていた。僅かに開いた臍の、穴。そこから覗く、肉厚なヒダと、肉輪。蠢いている。先ほどの少女のそれと比べてもえげつのない、食蟲植物のような、それ。
思わず唾を呑みこむ。
「えへへ……当然、人体実験は、自分の体でもやってるんですよ。……どうです?ちょっとばかり、休憩でも」
頷かない以外の理由は、無かった。
―――結局、内容が内容だったことと、天藤 律氏の要請もあり、この記事はお蔵入りとなった。
とはいえ、セリア女史との交流はこのまま続き、『六人』とのコネを得た事で、その年のボーナスは信じられない額になったし、何より社内でのポジションが三段ほど一足飛びに上昇する事となった。
その代わり、彼女と、天藤氏が巻き込まれる世界の騒乱に、私も関わらざるを得ない事となるわけだが。
さらには、この取材の後、著者の泡姫通いは、『雌の穴ほぐし済み嬢』一択となってしまい、今までの泡風呂のランクから、3段階は上でないと満足できなくなってしまった。畜生め。
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