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御崎(みさき) 朧(おぼろ)

暴かれた乙女

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 パジャマのウェスト部分を口に咥えた焔の顔が下がり、徐々にズボンをずりおろされていく。

(……翼くんのパジャマ!)

「へ、へんなことしないでっ!! それに、翼くんがそんなことするわけなっ……」

 腹部が露わになってしまい、それ以上はなんとしても阻止しなければとズボンを力強く握りしめる。
 さらには卑猥なことを口走られ、再び翼との行為をもろに思い出してしまったまりあ。

"……ここ、気持ち良いでしょう?"

「……っ!」

(やだっ……こんなときにっ!)

 体の中心がじんわりと熱を持ち、いまにも泉が溢れだしそうな勢いで湿り気を帯びる。
 すると無意識に下半身をくねらせる少女を見た焔は――

「……何思い出してんだよ……」

「思い出してなんかっ……!」

「黙れっ!!」

 湧き出す感情を持て余し怒鳴る焔に全身が凍りつく。
 まりあは抵抗する腕を顔のわきで抑えつけられ、疼く下半身を焔の膝がさらに追いつめる。

「ぁあっっ!」

「生意気に感じてんのか? あ?」

「……っふぁ!」

(く、悔しいっ! こんなやつにっ!!)

 あまりに酷い扱いと暴言に悔し涙が滲む。
 一度でも焔に気を許してしまったことを今さらに後悔し、煮え繰り返ったはらわたを抱えながら唇を噛んで声を押し殺す。

「雌の匂いが強くなってきたな……」

 腹部でニヤリと笑みを浮かべた悪魔の顔はゆっくりと上方へ移動し、それと同時に拘束する力から解放されたまりあ。

「……はっ、ぁっ……」

(……? た、たすかっ……)

 解放されたと思い、肩の力を抜いた次の瞬間――……

「……なっ!?」

 突然焔の全体重がまりあの体に重なり、一瞬でその身の動きを封じられてしまった。
 亀が仰向けで身動きがとれぬのと同じように自由な手先足先のみをバタつかせるが……

「……やっ、苦し……っ……」

 胸部を圧迫され、ギリギリの浅い呼吸を繰り返すなかで焔が囁いた。

「……確かめさせてもらうぞ」

「!?」

 大きく目を見開いたまりあのその動作よりも速く、パジャマのズボンへと手をかけられる。
 下げられるかと思いきや、それはそのままショーツの中へ侵入を果たし、何者も受け入れたことのない乙女の中心へと焔は己の指を突き立てた。

「……ぁっぁあああっっ!!」

 ぎゅっと体が委縮するような激しい痛みに涙が零れ落ちる。
 焔をどかそうとする手が無意識に暴れ、意図せぬ青年の端整な頬を引っ掻いた。

 だが、頬に生まれた熱にも焔は眉ひとつ動かさず、むしろその行為にすら"クックック"と喉を鳴らして楽しんでいるように見える。

「そうだまりあ……もっと俺を傷つけてみろ」

「……くっぁああっっ!」

 さらに侵入しようとした焔の指にまりあが苦痛の声を上げる。
 浅い呼吸を幾度も繰り返し、涙に濡れた頬に張り付いた髪。

「いやぁああっ!!」

 いつもの勝気なまりあとは違い、身を守ろうと頑なに男を拒絶するその姿と涙に焔の胸がズキリと痛む。

「……っ!」

 密着した体から伝わってくるのは怯えからくる体の微動だった。
 快感とは到底かけ離れた場所に彼女がいるのだとようやく気づき、翼への強い嫉妬心から自我を失いつつあった彼はかろうじて自制心を取り戻すと、まりあの苦痛の原因を探ろうと試みた。

 指先に感じる柔らかく熱く潤んだその先――
 固く閉じられた蕾、それがまりあの純潔の証だった。

「おまえ、処女か……?」

「……最低……っあんたなんか、大嫌い……っ!!」

 涙に瞳を濡らしながらきつく睨みつけてくる少女。
 嫉妬に駆られ……軋ませながら無理矢理こじ開けたそこが、たかが指ひとつの侵入さえままならないほどにきつく締め上げていることに安堵している自分がいる。

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