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鳥羽翼
翼の想い
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「ただいま戻りました。……あ、僕のパジャマ着て下さったんですね! とても似合ってます!」
小さな手押しのワゴンに二人分の食事を載せた翼が柔らかい笑みをたたえて入室してきた。
「お帰りなさい翼くん。遅かったね? お風呂も……その、パジャマもありがとう」
パタパタと近寄り、恥ずかしそうに頭を下げたまりあに翼は愛らしい上目遣いでこちらの顔を覗き込んでくる。
「遅くなってしまってすみません。……先輩方にちょっとお灸を添えて来たんです」
「先輩方?」
(つ、翼くん可愛いが過ぎるっ!!)
「いいえ、こっちの話です。さぁ食事にしましょうか」
「うんっ」
――なかよくテーブルへ料理を並べていくも、食事を初めてまもなくフォークを置いてしまったまりあへ翼が伺いをたてる。
「……お口に合いませんでしたか?」
「ううん。すごくおいしいよ」
「……?」
「ごめんね、私と一緒にいても楽しくないでしょ」
「どうしてそう思うんです?」
「私には……何もないから……」
話題もなければ気のきいた話も出来ない。それっきり口を閉ざしてしまった彼女に翼は飲み物を注ぎながらテーブルに置かれたまりあの手に己の手を重ねる。
「……えっ……あ、あの……」
驚き、咄嗟に引いた手を強く握りしめられて緊張が走る。
「僕も同じです。幸せだった思い出だけで生きてきたようなものですから」
「翼くん……?」
彼の短い言葉に深い傷が潜んでいるような気がしてならない。
そして傷の舐めあいではないが少なくとも幸せな過去がある翼の場合、それを聞くことによって互いの気分が浮上するなら……と、まりあは心のままに翼の手を強く握り返し言葉を添える。
「よかったらその思い出、私にも聞かせてもらえるかな?」
小さな手押しのワゴンに二人分の食事を載せた翼が柔らかい笑みをたたえて入室してきた。
「お帰りなさい翼くん。遅かったね? お風呂も……その、パジャマもありがとう」
パタパタと近寄り、恥ずかしそうに頭を下げたまりあに翼は愛らしい上目遣いでこちらの顔を覗き込んでくる。
「遅くなってしまってすみません。……先輩方にちょっとお灸を添えて来たんです」
「先輩方?」
(つ、翼くん可愛いが過ぎるっ!!)
「いいえ、こっちの話です。さぁ食事にしましょうか」
「うんっ」
――なかよくテーブルへ料理を並べていくも、食事を初めてまもなくフォークを置いてしまったまりあへ翼が伺いをたてる。
「……お口に合いませんでしたか?」
「ううん。すごくおいしいよ」
「……?」
「ごめんね、私と一緒にいても楽しくないでしょ」
「どうしてそう思うんです?」
「私には……何もないから……」
話題もなければ気のきいた話も出来ない。それっきり口を閉ざしてしまった彼女に翼は飲み物を注ぎながらテーブルに置かれたまりあの手に己の手を重ねる。
「……えっ……あ、あの……」
驚き、咄嗟に引いた手を強く握りしめられて緊張が走る。
「僕も同じです。幸せだった思い出だけで生きてきたようなものですから」
「翼くん……?」
彼の短い言葉に深い傷が潜んでいるような気がしてならない。
そして傷の舐めあいではないが少なくとも幸せな過去がある翼の場合、それを聞くことによって互いの気分が浮上するなら……と、まりあは心のままに翼の手を強く握り返し言葉を添える。
「よかったらその思い出、私にも聞かせてもらえるかな?」
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