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ふたりで辿る足跡
変わり始めたあいつの印象1
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(あ、そうだっ……お母ちゃんさメールしとかねと……)
妄想の真琴と話し合った結果など大事なことを思い出し、手早く実家の母へメールを送ると程なくして了解したとの返事が届いた。
「よし! 瑞貴センパイも戻ってくることだし!! 今日は残業なしで帰ってご飯の準備っ!」
鼻息荒く腕まくりしたちえりは昨日に引き続き、敏感肌用と記された洗顔フォームを泡立てて顔を洗いあげる。
「……なんか肌の調子いいかも……気のせい?」
タオルで顔を拭きながら鏡のなかの自分を覗いてみる。
なんとなく表情が明るいのは、水分をたくさん吸い込んだ肌に張りがあるからかもしれない。
「触った感じも凄くしっとりしてる。化粧水だけでも欲しいけど高いんだべなぁ……」
切ないため息を零しながら洗面台の脇へ手をつくと、カタッと何かにぶつかり視線を下げた。
そこには以前と同じクリアピンクの未使用の歯ブラシが置かれていた。
「そっか、前のは捨てたって言ってたっけもんね。また用意してくれたんだ……お礼言わなきゃ」
こう何度も新しい歯ブラシを使わせてもらうからには念入りに歯を磨かなくてはと時間をかけた。
(ん? これってゴミ箱に捨てるのが常識なんだべか……
で、でも……なんかそれって結構失礼に値するような気が……)
「任せればいっか?」
図々しくも思ったが、鳥居愛用の歯ブラシの隣に立てかけさせてもらう。
そして並べて気づく。
「あいつ……クリアブルー使ってるんだ」
(そういえば妄想のなかの真琴も言ってたっけ)
”自分が自信もって勧められるものなら喜んでくれるって!
口にしたこともない見栄えばっかりのを選んでると案外マズイのが多いのよこれがっ!!”
歯ブラシはスイーツじゃないけれど、確かに自分が愛用しているものを勧めるのが一番良いかもしれない。
最初の最悪なイメージから日を追うごとに少しずつ変わり始めた鳥居隼人の印象。
それらは彼を間近で見ているからこそわかるものかもしれないが、ちえりの変化に最も敏感な瑞貴の目にどう映るかは……まもなくはっきりしてしまう。
ビリングに戻ると深みのある味噌と焼き魚の香りが出迎え、脳と胃袋を心地良く刺激しながら食欲を呼び覚ます。
「瑞貴先輩なんだって?」
すでにブルーのワイシャツ爽やかに着こなした鳥居が朝食の準備を完璧に整えて待っていた。
「うんっ! おいしそ……じゃなくてっ……、午前中に会社戻って来れそうだって」
律儀にも手をつけず待っていてくれた彼に頭が下がる。
「ふーん。で? ホテルに泊まったって言ったのか?」
「うん、シティホテルに泊まったって伝えた。……色々ありがとね」
「……別に。バレそうになったら俺に言え」
「そんな、そこまで迷惑かけられないって! それに瑞貴センパイだってそこまで……」
「先輩がどう思うかはそのうちわかるだろ。さっさと食って出かけるぞ」
「……うん、……?」
(瑞貴センパイがどう思うかってなに?)
なんとなく詳細を聞きそびれてしまったあげく、いつもの近寄りがたいオーラを出されては口を噤むしかない。
そして朝食や身支度を終えて部屋を出る際、もらったサンプルをバッグに詰めるのに必死で大事なものを置き忘れたちえりは新たなる火種を作ってしまうのだった。
妄想の真琴と話し合った結果など大事なことを思い出し、手早く実家の母へメールを送ると程なくして了解したとの返事が届いた。
「よし! 瑞貴センパイも戻ってくることだし!! 今日は残業なしで帰ってご飯の準備っ!」
鼻息荒く腕まくりしたちえりは昨日に引き続き、敏感肌用と記された洗顔フォームを泡立てて顔を洗いあげる。
「……なんか肌の調子いいかも……気のせい?」
タオルで顔を拭きながら鏡のなかの自分を覗いてみる。
なんとなく表情が明るいのは、水分をたくさん吸い込んだ肌に張りがあるからかもしれない。
「触った感じも凄くしっとりしてる。化粧水だけでも欲しいけど高いんだべなぁ……」
切ないため息を零しながら洗面台の脇へ手をつくと、カタッと何かにぶつかり視線を下げた。
そこには以前と同じクリアピンクの未使用の歯ブラシが置かれていた。
「そっか、前のは捨てたって言ってたっけもんね。また用意してくれたんだ……お礼言わなきゃ」
こう何度も新しい歯ブラシを使わせてもらうからには念入りに歯を磨かなくてはと時間をかけた。
(ん? これってゴミ箱に捨てるのが常識なんだべか……
で、でも……なんかそれって結構失礼に値するような気が……)
「任せればいっか?」
図々しくも思ったが、鳥居愛用の歯ブラシの隣に立てかけさせてもらう。
そして並べて気づく。
「あいつ……クリアブルー使ってるんだ」
(そういえば妄想のなかの真琴も言ってたっけ)
”自分が自信もって勧められるものなら喜んでくれるって!
口にしたこともない見栄えばっかりのを選んでると案外マズイのが多いのよこれがっ!!”
歯ブラシはスイーツじゃないけれど、確かに自分が愛用しているものを勧めるのが一番良いかもしれない。
最初の最悪なイメージから日を追うごとに少しずつ変わり始めた鳥居隼人の印象。
それらは彼を間近で見ているからこそわかるものかもしれないが、ちえりの変化に最も敏感な瑞貴の目にどう映るかは……まもなくはっきりしてしまう。
ビリングに戻ると深みのある味噌と焼き魚の香りが出迎え、脳と胃袋を心地良く刺激しながら食欲を呼び覚ます。
「瑞貴先輩なんだって?」
すでにブルーのワイシャツ爽やかに着こなした鳥居が朝食の準備を完璧に整えて待っていた。
「うんっ! おいしそ……じゃなくてっ……、午前中に会社戻って来れそうだって」
律儀にも手をつけず待っていてくれた彼に頭が下がる。
「ふーん。で? ホテルに泊まったって言ったのか?」
「うん、シティホテルに泊まったって伝えた。……色々ありがとね」
「……別に。バレそうになったら俺に言え」
「そんな、そこまで迷惑かけられないって! それに瑞貴センパイだってそこまで……」
「先輩がどう思うかはそのうちわかるだろ。さっさと食って出かけるぞ」
「……うん、……?」
(瑞貴センパイがどう思うかってなに?)
なんとなく詳細を聞きそびれてしまったあげく、いつもの近寄りがたいオーラを出されては口を噤むしかない。
そして朝食や身支度を終えて部屋を出る際、もらったサンプルをバッグに詰めるのに必死で大事なものを置き忘れたちえりは新たなる火種を作ってしまうのだった。
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