27 / 81
2/14 バレンタインデー編
ミキの入れ知恵①
しおりを挟む
「は……」
”はい”とまで言いかけて。アオイはなぜか不機嫌さを匂わせるキュリオの堅い表情に親友の言葉を思い出した。
『もうすぐバレンタインデーだねー』
昼食が終わり、教室へと戻ってきたミキとアオイはそれぞれの椅子に座る。
いつも元気なシュウは欠伸(あくび)を繰り返しながら"寝不足だ"と、人気の少ない体育館裏で昼寝を決め込んでしまったためふたりだけで戻ってきた。
『バレンタインデーってなぁに?』
親友の口からさらりと出た言葉にアオイが興味を持ったように問いかける。
『……ん? それってボケてる? それとも渡す相手のいないあたしをからかってる?』
『……渡すってなにを?』
きょとんと首を傾げているアオイの様子を見たミキは、その身を乗り出して彼女に迫る。
『でたっ!! 箱入り娘っ!!』
ミキは参った! とはばかりに右手で顔を覆っているが、それでも楽しそうに世間知らずなアオイにいろいろな事を教えてくれる。
『――だからバレンタインって今じゃ友達にあげる友チョコとかあるくらいだし、本命にあげる以外はお世話になってますー! って感じで義理チョコあげちゃえばいいって!!』
『友チョコ、と……本命、義理? あげるチョコレートにも意味があるの?』
『そうそうっ! 本命がメインで、それはたったひとつ♪ 元々の意味はちょっと違うみたいだけどさ、女性が愛を伝えるには最良の日! って……大好きなお父様にもあげたことないんだよね? 言葉知らなかったくらいだし……』
『う、うん。私あまり家から出たことなくて、そういう日があることも知らなかったから……』
『家庭教師ずっとついてたんだっけ? そういうことは流石に教えてくれないかー! じゃあお父様はその日になにか貰ってくるとかなかった? 職場の人からとかは?』
普通の一般家庭であり、父子家庭と……と嘘を貫いている親友に、父親の仕事は王であるなどとは口が裂けても言えない。嘘が苦手なアオイは慎重に言葉を選びながら会話を続ける。
『……どうだろう……皆に聞けばたぶん少しはわかるかも?』
ふと、城に従事する女官や侍女の顔を思い浮かべたアオイ。
『皆って?』
『……え!? ……えっと、……お父様のお仕事仲間の皆……? とかっ……』
『同僚かー。あんたのお父様ってすごくカッコイイんでしょ? 子持ちでも絶対モテてると思うし……もらってると思うよ? チョコ』
『……それってお父様が皆の"本命"になるのかな……』
ミキの言葉に自然と心が沈んでいくアオイ。
それは表情にも表れて――
『アオイからもらえるチョコが一番うれしいに決まってるって!! あっっ! それと!! 他の誰かにも渡すなんてことは言わないほうがいいからねっっ!!』
『他の人にも渡すって言っちゃいけないの?』
『そりゃあそうでしょ! 可愛い娘が他の男にもチョコ渡すなんて知ったら……父親は絶叫もんだからね!』
『……そんなことはないと思うけど……』
『あるのっ! いいからあたしの言うこと聞きなさいっ!! なんか聞かれたら友チョコ用意してるっていいなよ!?』
『う、うん。わかった』
(友チョコって言葉……お父様わかるかな?)
”はい”とまで言いかけて。アオイはなぜか不機嫌さを匂わせるキュリオの堅い表情に親友の言葉を思い出した。
『もうすぐバレンタインデーだねー』
昼食が終わり、教室へと戻ってきたミキとアオイはそれぞれの椅子に座る。
いつも元気なシュウは欠伸(あくび)を繰り返しながら"寝不足だ"と、人気の少ない体育館裏で昼寝を決め込んでしまったためふたりだけで戻ってきた。
『バレンタインデーってなぁに?』
親友の口からさらりと出た言葉にアオイが興味を持ったように問いかける。
『……ん? それってボケてる? それとも渡す相手のいないあたしをからかってる?』
『……渡すってなにを?』
きょとんと首を傾げているアオイの様子を見たミキは、その身を乗り出して彼女に迫る。
『でたっ!! 箱入り娘っ!!』
ミキは参った! とはばかりに右手で顔を覆っているが、それでも楽しそうに世間知らずなアオイにいろいろな事を教えてくれる。
『――だからバレンタインって今じゃ友達にあげる友チョコとかあるくらいだし、本命にあげる以外はお世話になってますー! って感じで義理チョコあげちゃえばいいって!!』
『友チョコ、と……本命、義理? あげるチョコレートにも意味があるの?』
『そうそうっ! 本命がメインで、それはたったひとつ♪ 元々の意味はちょっと違うみたいだけどさ、女性が愛を伝えるには最良の日! って……大好きなお父様にもあげたことないんだよね? 言葉知らなかったくらいだし……』
『う、うん。私あまり家から出たことなくて、そういう日があることも知らなかったから……』
『家庭教師ずっとついてたんだっけ? そういうことは流石に教えてくれないかー! じゃあお父様はその日になにか貰ってくるとかなかった? 職場の人からとかは?』
普通の一般家庭であり、父子家庭と……と嘘を貫いている親友に、父親の仕事は王であるなどとは口が裂けても言えない。嘘が苦手なアオイは慎重に言葉を選びながら会話を続ける。
『……どうだろう……皆に聞けばたぶん少しはわかるかも?』
ふと、城に従事する女官や侍女の顔を思い浮かべたアオイ。
『皆って?』
『……え!? ……えっと、……お父様のお仕事仲間の皆……? とかっ……』
『同僚かー。あんたのお父様ってすごくカッコイイんでしょ? 子持ちでも絶対モテてると思うし……もらってると思うよ? チョコ』
『……それってお父様が皆の"本命"になるのかな……』
ミキの言葉に自然と心が沈んでいくアオイ。
それは表情にも表れて――
『アオイからもらえるチョコが一番うれしいに決まってるって!! あっっ! それと!! 他の誰かにも渡すなんてことは言わないほうがいいからねっっ!!』
『他の人にも渡すって言っちゃいけないの?』
『そりゃあそうでしょ! 可愛い娘が他の男にもチョコ渡すなんて知ったら……父親は絶叫もんだからね!』
『……そんなことはないと思うけど……』
『あるのっ! いいからあたしの言うこと聞きなさいっ!! なんか聞かれたら友チョコ用意してるっていいなよ!?』
『う、うん。わかった』
(友チョコって言葉……お父様わかるかな?)
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる