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第3章 平和な日常
36-レモンと巫女
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セルリアに、その村らしき場所まで飛んでもらった。
村の入り口はカラドリウスの山の方にあると思うので、反対側に降りてもらう。
セルリアが飛んでるのを村に人が見たら、パニックになりそうだからな。
予想通り、カラドリウスの山に面した方に村の入り口が有った。
ここにも二人の門番が居る。やっぱり、着ている物は和服っぽい。
僕はヴァミリオを肩に乗せ、レモンを抱えて、セルリアと並んで近付いて行った。
これ、凄い絵のような気がするけど……。
「止まれ。何者だ!」
「僕は冒険者です。」
門番に、ギルドカードを見せる。
「確かに冒険者だが、何しに来た。」
「巫女様にお会いしたいと思いまして……。」
「巫女様に?駄目だ!帰れ!」
埒が空かないな。カラドリウスに来てもらうかな。
『ヴァミリオ、カラドリウスを呼んで来てくれる?』
『わかった。』
ヴァミリオが飛んで行き、しばらくするとカラドリウスと一緒に戻って来た。
「地狐さん、お久しぶりです。封印解けたんですね。」
「カラドリウス様!お久しぶりです!」
「「地狐!?」」
門番の二人が驚いている。そりゃそうだろうな。
「神竜さんも。」
「久しぶりだな。」
「ところで、どうかしましたか?」
「巫女様にお会いしたいのですが、通してもらえなくて……。」
「何と!」
カラドリウスが門番二人を睨んだ。
「申し訳ございません!地狐様とは存じ上げず……。」
「すぐ、巫女様の所に案内します!」
態度変わりすぎだろう。
「カラドリウスさん、わざわざありがとうございます。」
「いえいえ。こちらこそ、地狐さんの封印も解いてもらえたようで、ありがたいです。」
カラドリウスさんと別れ、門番の一人に巫女さんの所へ案内してもらった。
「ここが巫女様が居られるお社です。」
「巫女様!地狐様がお越しになりました。」
「何!?」
服からしていかにも巫女という感じの女性が出て来た。かなり慌てた様子だ。
「では、私はこれで。」
「カラドリウスさん、ありがとうございました。」
「いえ。こちらこそ、失礼いたしました。」
門番は、そう言うと門の方へ戻って行った。
「地狐様がお越しになったと聞きましたが……。」
「はい。こちらです。」
抱えていた、レモンを差し出す。
「ユウマ、下ろしてもえるか?」
「あ、ごめん。」
確かに、人に抱えられていては、威厳も何もないか……。
レモンは、地面に降りると元の大きさに戻った。
元の大きさのレモンは、大きめの馬位あるので、巫女様を見下ろす形になる。
「そなたが、今の巫女か?」
話し方がいつもと全然違うんだが……。
「そうです。地狐様にお目にかかれて光栄です、ところで……。」
巫女様が僕の方に視線を向ける。
「地狐様と一緒にいらっしゃるとは、あなたは何者ですか?」
「ユウマは、私の主だ。」
僕が答える前に、レモンが答えた。
僕とか言っとけば良いのに、変なところで正直だな。
「ユウマです。レモンが言った様に、従魔の契約主をさせてもらってます。あ、レモンというのは、この地狐のことです。」
「本当に地狐様の主なんですね。そこにいらっしゃるのは、もしかして……。」
「神竜と不死鳥だ。」
また、レモンが答えた。
「やっぱり!神獣三体に会えるとか、私って超ラッキー!」
「えっ?」
何かキャラ崩壊してるんだけど……って、こっちが素かな?
レモンを見ると、口あんぐりになっていた。
僕が見ているのに気付くと、レモンは小さくなって、また僕の腕に収まった。
威厳を保つのも馬鹿らしくなったらしい。
「あ……申し訳ございません。お見苦しい所をお見せしました。」
「い、いえ……。」
「祖母が『生きているうちに神獣に会いたい』ってずっと言ってたので。でも、祖母は神獣を見ずに亡くなってしまって……。」
あ、涙を流し始めた。感情の起伏激しすぎだろう!
「それは、お気の毒に……。」
「あ、これは私としたことが……どうぞ、お入りください。」
「ど、どうも。」
もう気を取り直したようだ。ダメだ。付いていけない。
門を入ると中庭が有り、その先に神殿らしき物が有った。
そこに祀られてるのは、狐の彫刻の様だ。多分、レモンの先祖だと思う。
レモンは、黙ってそれを見つめていた。
「ところで、地狐様は、どうしてこちらに?」
「昔、この村の巫女には良くしてもらったのよ。代替りしてるのはわかってたけど、お礼を言おうと思ったの。」
話し方も、普通になってるし。
「そうなんですか?わざわざ、ありがとうございます。」
「ううん。長い間来なかったのに、忘れられてなかったのは嬉しいわ。ありがとう。」
「えっ?地狐様にお礼を言われた!ど、どうしよう!」
「巫女さん、落ち着いてください。」
思わず、声を掛けてしまった。
「あ、失礼しました。地狐様、ありがとうございます。私の先祖も喜んでいると思います。」
「そ、そう?」
レモンが若干引いている。
レモンを引かせるとか、只者ではないな。
「戻ったばかりで悪いんだけど、私はここを離れないといけないから、村のことはよろしくね。」
「えっ?行っちゃうんですか?」
「私はこの人と一緒に行かないといけないから……。」
僕の顔を見上げるレモン。一緒に行けとは言ってないんだけど……。でも、そう言ってくれるのは嬉しい。
「何か有ったら、カラドリウス様に言ってね。私たちにも伝わるから。」
「はい。わかりました。」
村を出て、テレポートポイントに向かいながら、僕はレモンに話し掛けた。
「レモン、村に居なくて良かったの?」
「これまでも居なかったんだから、同じでしょう?」
「それはそうだけど……。」
「私は、ユウマに付いて行くと決めたの。」
「それは嬉しいけど、なぜ?」
「何となく、そうしないといけない気がしたのよ。」
「何それ?」
「我もそれはわかるぞ。」
「ボクも!」
セルリアとヴァミリオも同意している……何か呪いでも掛かってるのか?
「恐らくだけど、封印が解けたことと関係があるんじゃないかしら?」
確かに、封印が解けた理由も不明だし、考えても仕方ないのかな。
「ただいま。」
「「おかえりなさい!」」
「何ここ!?」
家に帰り、ルナたちが迎えに出て来たら、いきなりレモンが叫んだ。
「レモン、どうしたの?」
「ここ牧場か何か?どうして馬がこんなに居るの?」
いや、普通の馬は一頭も居ないから……。
「これ皆ユウマの奥さんなの?……ユウマって、相当変態なのね。」
それぞれ自己紹介をし合った後、レモンは呆れたように言った。
「酷いなぁ。まあ、自覚してるけど……。」
~~~
翌朝は、珍しく雨が降っていた。
この世界って、雨が少ないのだろうか。
「このくらいの時期が、一番雨が降るみたい。」
「そうなの?」
クレアがそう説明してくれた。
日本の様に四季がはっきりしてる訳ではないが、ある程度の変化はあるようだ。
実際、先月と比べると少し涼しくなってるし。
レモンを抱えて、セラネスにテレポート。
レモンを連れて来たのは、ギルドで従魔登録するためだが、その前に乗馬施設に寄った。
受付に行くと、ベルタスさんが受付の人と話をしていた。
「ベルタスさん、おはようございます。」
「あ、ユウマさん、おはようございます。」
「すみませんが、今日は雨なのでレッスンを休ませてください。」
「大丈夫ですよ、基本雨の時は通常のレッスンも休みにしますので。今、ちょうどそのことについて話していたところです。」
「そうなんですか。それは良かったです。」
「もちろん、厩舎スタッフは休めないですけどね……。」
そりゃあそうだろう。元の世界では、僕も雨だからって休まなかったし。
「申し訳ないです。」
「いえ。ユウマさんはレッスン専用だし臨時スタッフですから、問題ないですよ。」
「ご配慮いただき、ありがとうございます。」
「そう言えば、ユウマさん傘さしてないのに濡れてないですね。」
「私もなぜ雨に濡れないのか不思議なんです。あ、ルナは濡れてしまうんですけどね……。」
「雨の中でも気にせず行動できるのは、羨ましいです。」
MP消費防御は攻撃以外は防御しないはずだし、更に服は防御対象ではないはずだが……。
まあ、考えても結論が出るとは思わないし、役に立ってるから、こういうものだと思っておこう。
ギルドは、いつもより人が多く、ざわついている感じだった。
気にする程でもないかなと思い、お金を預けるためノアさんの所に向かった。
ルミネアの角を売ったため、家の代金を差し引いても大金が残ってしまったためだ。
手持ちは1万Gもあれば十分過ぎる程なので、20万G預けた。
「この娘の従魔登録もお願いします。」
「可愛いですね!種族は何ですか?」
「アース・ヴィクセンです。」
「えっ!……失礼しました。カードをお願いします。それから、こちらに手を……登録完了しました。カードをお返しします。」
「ありがとうございました。」
「登録料はいつも通り預金から差し引かせていただくということでよろしいですか?」
「はい。それでお願いします。……あと、今日もボルムさんにお話しがあるのですが。」
「少々お待ちください。」
いつも、お手数をお掛けします。
『レモン、これから会う人は大事な人だから、挨拶しておいてね。』
『わかったわ。』
「これは、アース・ヴィクセンのレモンです。」
「レモンです。よろしくお願いします。」
「レモンさん、よろしく。ユウマ、レモンさんはまだ奥さんにしてないんだな。」
まだって……。
「ボルムさん、僕を何だと思ってるんですか?」
「雌獣と見れば見境なく攻略する変態、というところかな?」
「酷い!それは違います!」
「すまん。冗談だ。」
「見境ないわけではありません!」
「そこか……。」
僕は、ボルムさんにカラドリウスのことを含め、レモンの所に辿り着いた経緯を説明した。
「なるほどな。これで神獣も残り一体となった訳だが、その一体は厳しそうだな。」
「封印された場所がエラスの中にあるというのは確からしいですか?」
「情報が少ないので何とも言えないが、エラスはかなり西まで開拓して領地を拡げてるようだからな。」
「一度西側に回り込む方が良いですかね?」
「そうだな。取り敢えず、エラスの北東にある街に行ってみるか?手掛かりがあるかどうかわからないが、ここよりは可能性があるだろう。」
「そうですね。そうしてみます。」
「その街は、エラスからしか道が作られてないが、北の海岸沿いに行けばわかるはずだ。」
「ありがとうございます。」
「ところで、異世界からの侵略者だが、このところ出現頻度がかなり下がっているようだ。」
「そうなんですか?」
「勇者のサポートとして、セラネスの高ランク冒険者も対応しているのだが、一部戻って来る。」
ボルムさんが難しそうな顔をしている。
「それは、良いことではないんですか?」
「そこだけ見れば良いことだがな……。詳しいことは、いずれ他の冒険者を含めて話をしようと思っている。」
「わかりました。その話を待ちます。」
「それで、戻ってくる冒険者の中にSランクの竜人パーティーが居る。もしかすると、ロビーで噂を聞いたかも知れないが。」
「ああ、それでざわついているんですね?」
「多分そうだろう。ユウマもこの竜人パーティーには挨拶しておいた方が良いだろう。明日戻ってくる予定だから、ユウマも明日ギルドに来てみてくれ。」
「はい。私も是非お会いしたいと思います。」
村の入り口はカラドリウスの山の方にあると思うので、反対側に降りてもらう。
セルリアが飛んでるのを村に人が見たら、パニックになりそうだからな。
予想通り、カラドリウスの山に面した方に村の入り口が有った。
ここにも二人の門番が居る。やっぱり、着ている物は和服っぽい。
僕はヴァミリオを肩に乗せ、レモンを抱えて、セルリアと並んで近付いて行った。
これ、凄い絵のような気がするけど……。
「止まれ。何者だ!」
「僕は冒険者です。」
門番に、ギルドカードを見せる。
「確かに冒険者だが、何しに来た。」
「巫女様にお会いしたいと思いまして……。」
「巫女様に?駄目だ!帰れ!」
埒が空かないな。カラドリウスに来てもらうかな。
『ヴァミリオ、カラドリウスを呼んで来てくれる?』
『わかった。』
ヴァミリオが飛んで行き、しばらくするとカラドリウスと一緒に戻って来た。
「地狐さん、お久しぶりです。封印解けたんですね。」
「カラドリウス様!お久しぶりです!」
「「地狐!?」」
門番の二人が驚いている。そりゃそうだろうな。
「神竜さんも。」
「久しぶりだな。」
「ところで、どうかしましたか?」
「巫女様にお会いしたいのですが、通してもらえなくて……。」
「何と!」
カラドリウスが門番二人を睨んだ。
「申し訳ございません!地狐様とは存じ上げず……。」
「すぐ、巫女様の所に案内します!」
態度変わりすぎだろう。
「カラドリウスさん、わざわざありがとうございます。」
「いえいえ。こちらこそ、地狐さんの封印も解いてもらえたようで、ありがたいです。」
カラドリウスさんと別れ、門番の一人に巫女さんの所へ案内してもらった。
「ここが巫女様が居られるお社です。」
「巫女様!地狐様がお越しになりました。」
「何!?」
服からしていかにも巫女という感じの女性が出て来た。かなり慌てた様子だ。
「では、私はこれで。」
「カラドリウスさん、ありがとうございました。」
「いえ。こちらこそ、失礼いたしました。」
門番は、そう言うと門の方へ戻って行った。
「地狐様がお越しになったと聞きましたが……。」
「はい。こちらです。」
抱えていた、レモンを差し出す。
「ユウマ、下ろしてもえるか?」
「あ、ごめん。」
確かに、人に抱えられていては、威厳も何もないか……。
レモンは、地面に降りると元の大きさに戻った。
元の大きさのレモンは、大きめの馬位あるので、巫女様を見下ろす形になる。
「そなたが、今の巫女か?」
話し方がいつもと全然違うんだが……。
「そうです。地狐様にお目にかかれて光栄です、ところで……。」
巫女様が僕の方に視線を向ける。
「地狐様と一緒にいらっしゃるとは、あなたは何者ですか?」
「ユウマは、私の主だ。」
僕が答える前に、レモンが答えた。
僕とか言っとけば良いのに、変なところで正直だな。
「ユウマです。レモンが言った様に、従魔の契約主をさせてもらってます。あ、レモンというのは、この地狐のことです。」
「本当に地狐様の主なんですね。そこにいらっしゃるのは、もしかして……。」
「神竜と不死鳥だ。」
また、レモンが答えた。
「やっぱり!神獣三体に会えるとか、私って超ラッキー!」
「えっ?」
何かキャラ崩壊してるんだけど……って、こっちが素かな?
レモンを見ると、口あんぐりになっていた。
僕が見ているのに気付くと、レモンは小さくなって、また僕の腕に収まった。
威厳を保つのも馬鹿らしくなったらしい。
「あ……申し訳ございません。お見苦しい所をお見せしました。」
「い、いえ……。」
「祖母が『生きているうちに神獣に会いたい』ってずっと言ってたので。でも、祖母は神獣を見ずに亡くなってしまって……。」
あ、涙を流し始めた。感情の起伏激しすぎだろう!
「それは、お気の毒に……。」
「あ、これは私としたことが……どうぞ、お入りください。」
「ど、どうも。」
もう気を取り直したようだ。ダメだ。付いていけない。
門を入ると中庭が有り、その先に神殿らしき物が有った。
そこに祀られてるのは、狐の彫刻の様だ。多分、レモンの先祖だと思う。
レモンは、黙ってそれを見つめていた。
「ところで、地狐様は、どうしてこちらに?」
「昔、この村の巫女には良くしてもらったのよ。代替りしてるのはわかってたけど、お礼を言おうと思ったの。」
話し方も、普通になってるし。
「そうなんですか?わざわざ、ありがとうございます。」
「ううん。長い間来なかったのに、忘れられてなかったのは嬉しいわ。ありがとう。」
「えっ?地狐様にお礼を言われた!ど、どうしよう!」
「巫女さん、落ち着いてください。」
思わず、声を掛けてしまった。
「あ、失礼しました。地狐様、ありがとうございます。私の先祖も喜んでいると思います。」
「そ、そう?」
レモンが若干引いている。
レモンを引かせるとか、只者ではないな。
「戻ったばかりで悪いんだけど、私はここを離れないといけないから、村のことはよろしくね。」
「えっ?行っちゃうんですか?」
「私はこの人と一緒に行かないといけないから……。」
僕の顔を見上げるレモン。一緒に行けとは言ってないんだけど……。でも、そう言ってくれるのは嬉しい。
「何か有ったら、カラドリウス様に言ってね。私たちにも伝わるから。」
「はい。わかりました。」
村を出て、テレポートポイントに向かいながら、僕はレモンに話し掛けた。
「レモン、村に居なくて良かったの?」
「これまでも居なかったんだから、同じでしょう?」
「それはそうだけど……。」
「私は、ユウマに付いて行くと決めたの。」
「それは嬉しいけど、なぜ?」
「何となく、そうしないといけない気がしたのよ。」
「何それ?」
「我もそれはわかるぞ。」
「ボクも!」
セルリアとヴァミリオも同意している……何か呪いでも掛かってるのか?
「恐らくだけど、封印が解けたことと関係があるんじゃないかしら?」
確かに、封印が解けた理由も不明だし、考えても仕方ないのかな。
「ただいま。」
「「おかえりなさい!」」
「何ここ!?」
家に帰り、ルナたちが迎えに出て来たら、いきなりレモンが叫んだ。
「レモン、どうしたの?」
「ここ牧場か何か?どうして馬がこんなに居るの?」
いや、普通の馬は一頭も居ないから……。
「これ皆ユウマの奥さんなの?……ユウマって、相当変態なのね。」
それぞれ自己紹介をし合った後、レモンは呆れたように言った。
「酷いなぁ。まあ、自覚してるけど……。」
~~~
翌朝は、珍しく雨が降っていた。
この世界って、雨が少ないのだろうか。
「このくらいの時期が、一番雨が降るみたい。」
「そうなの?」
クレアがそう説明してくれた。
日本の様に四季がはっきりしてる訳ではないが、ある程度の変化はあるようだ。
実際、先月と比べると少し涼しくなってるし。
レモンを抱えて、セラネスにテレポート。
レモンを連れて来たのは、ギルドで従魔登録するためだが、その前に乗馬施設に寄った。
受付に行くと、ベルタスさんが受付の人と話をしていた。
「ベルタスさん、おはようございます。」
「あ、ユウマさん、おはようございます。」
「すみませんが、今日は雨なのでレッスンを休ませてください。」
「大丈夫ですよ、基本雨の時は通常のレッスンも休みにしますので。今、ちょうどそのことについて話していたところです。」
「そうなんですか。それは良かったです。」
「もちろん、厩舎スタッフは休めないですけどね……。」
そりゃあそうだろう。元の世界では、僕も雨だからって休まなかったし。
「申し訳ないです。」
「いえ。ユウマさんはレッスン専用だし臨時スタッフですから、問題ないですよ。」
「ご配慮いただき、ありがとうございます。」
「そう言えば、ユウマさん傘さしてないのに濡れてないですね。」
「私もなぜ雨に濡れないのか不思議なんです。あ、ルナは濡れてしまうんですけどね……。」
「雨の中でも気にせず行動できるのは、羨ましいです。」
MP消費防御は攻撃以外は防御しないはずだし、更に服は防御対象ではないはずだが……。
まあ、考えても結論が出るとは思わないし、役に立ってるから、こういうものだと思っておこう。
ギルドは、いつもより人が多く、ざわついている感じだった。
気にする程でもないかなと思い、お金を預けるためノアさんの所に向かった。
ルミネアの角を売ったため、家の代金を差し引いても大金が残ってしまったためだ。
手持ちは1万Gもあれば十分過ぎる程なので、20万G預けた。
「この娘の従魔登録もお願いします。」
「可愛いですね!種族は何ですか?」
「アース・ヴィクセンです。」
「えっ!……失礼しました。カードをお願いします。それから、こちらに手を……登録完了しました。カードをお返しします。」
「ありがとうございました。」
「登録料はいつも通り預金から差し引かせていただくということでよろしいですか?」
「はい。それでお願いします。……あと、今日もボルムさんにお話しがあるのですが。」
「少々お待ちください。」
いつも、お手数をお掛けします。
『レモン、これから会う人は大事な人だから、挨拶しておいてね。』
『わかったわ。』
「これは、アース・ヴィクセンのレモンです。」
「レモンです。よろしくお願いします。」
「レモンさん、よろしく。ユウマ、レモンさんはまだ奥さんにしてないんだな。」
まだって……。
「ボルムさん、僕を何だと思ってるんですか?」
「雌獣と見れば見境なく攻略する変態、というところかな?」
「酷い!それは違います!」
「すまん。冗談だ。」
「見境ないわけではありません!」
「そこか……。」
僕は、ボルムさんにカラドリウスのことを含め、レモンの所に辿り着いた経緯を説明した。
「なるほどな。これで神獣も残り一体となった訳だが、その一体は厳しそうだな。」
「封印された場所がエラスの中にあるというのは確からしいですか?」
「情報が少ないので何とも言えないが、エラスはかなり西まで開拓して領地を拡げてるようだからな。」
「一度西側に回り込む方が良いですかね?」
「そうだな。取り敢えず、エラスの北東にある街に行ってみるか?手掛かりがあるかどうかわからないが、ここよりは可能性があるだろう。」
「そうですね。そうしてみます。」
「その街は、エラスからしか道が作られてないが、北の海岸沿いに行けばわかるはずだ。」
「ありがとうございます。」
「ところで、異世界からの侵略者だが、このところ出現頻度がかなり下がっているようだ。」
「そうなんですか?」
「勇者のサポートとして、セラネスの高ランク冒険者も対応しているのだが、一部戻って来る。」
ボルムさんが難しそうな顔をしている。
「それは、良いことではないんですか?」
「そこだけ見れば良いことだがな……。詳しいことは、いずれ他の冒険者を含めて話をしようと思っている。」
「わかりました。その話を待ちます。」
「それで、戻ってくる冒険者の中にSランクの竜人パーティーが居る。もしかすると、ロビーで噂を聞いたかも知れないが。」
「ああ、それでざわついているんですね?」
「多分そうだろう。ユウマもこの竜人パーティーには挨拶しておいた方が良いだろう。明日戻ってくる予定だから、ユウマも明日ギルドに来てみてくれ。」
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