異世界で普通に死にたい

翠雲花

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後編

2夢





「そう言えば、ジルは父様が僕に性欲が落ちたって言ってる事についてどう思う?」

「いきなりどうしたの?」

「いや、父様は何か隠してると思うんだよ。」

  僕がそう言うと、ジルは一瞬引き攣った表情をした。


「ハル、私からも言うべきだとは思うけど、最初はショーンさんから直接聞いた方がいいと思うよ。だから、少し話し合ってごらん。」


   え、ジルは何か知ってるのか?じゃあなんで隠してるの?もしかして病気とか……


「ハル、そんな青い顔をしなくても、病気とかではないから、安心しな。」

   ……じゃあ、何?なんで隠すんだろう。


「私はそろそろ仕事に戻るよ。ショーンさんもそろそろ来るんじゃないかな?その時にでも話を聞いてごらん。」


「……分かった。」

   僕は、ジルが出て行った扉を見つめながら、少し考え込み、聞くのが少し怖いと思った。


  しかし、聞くかどうしようか迷う時間もなく、父様は僕の部屋に来てしまった。


「ハル、入るぞ。」

「…父様。」

   僕は今どんな顔をしているんだろうか。父様は、慌てて僕のもとに来た。


「どうしたハル!!具合が悪いのか!?それともどこか怪我でもしているのか!?」


「違うよ。どこも悪くない。でも……父様はどこか悪いの?」


「……さっきすれ違った時にジル殿下に言われたのはこの事か。」

  父様はボソッ呟いた。

「ハル、私は決して病気とかではない。まあ、恋の病にはかかってはいるがな。」


  えっ、もしかして父様好きな人が!?

「ハル、恋の病ってのはお前の事だ。……ったく。」

  父様は呆れる様に言うと、話を続けた。

「ハルは私が性欲が落ちた事について知りたいんだろ?確かに、性欲が落ちたというのは嘘だ。」


「っ……じゃあ、どうして。」


「ずっと言わなかった私も悪いな。……ハルが結婚したら、私はハルを手放すつもりだった。元々親子だしな。だが、ジル殿下は私とハルがお互いを求めている限り、遠慮はしないで欲しいと言ってきてな。確かに嬉しかった。しかし、この事がいつ誰に知られるか分からない。それが王族ともなれば尚更だ。ハルは王族になるのだから、私はハルの側に居れればそれでいいと思っている。ハルはどう思う?」


   ……確かに王族になったらきっと大変だろう。親子で愛し合っていると知られたら、ジルの評価も全てがドン底に落ちてしまう。でも、ならなんで……父様は僕を抱いたんだ!こうなると分かっててなんでっ。


「ハルの言いたい事は分かる。私はハルと心が繋がったと思ったら、いけないと分かっていても、身体を繋ぐ事を止める事はできなかった。あの時の私はハルの事を考えていなかったな。」


  僕は悲しくなり、涙が溢れてきた。止めようと思っても溢れてくる涙を止めることはできなかった。


「……ハル。私はこの屋敷では一緒住むつもりだ。それにハルを好きな事は変えようがない。」


  僕も、僕も父様のことが好きだ。でも、好きだと思っていても、ジルを好きだという事とは何かが違う気もしている。それが僕にはなんなのか分からない。恋なんて前世ではしてこなかった。僕は僕が嫌いだ。


   どうして僕は泣いているの?
   (悲しいからだよ。)

   悲しい?どうして?
  (君は自分を知らないから悲しいんだ。)

  僕は僕を知っている。
  (いいや、知らないね。何も知らない。)

  どうしてそんな事言うの?
  (だって、君はあの時の約束も覚えてないでしょ?)

   ……約束?


  頭に響くそれは、僕の問に勝手に答えてくる。まるで念話のようだが、少し違う。ネットリとした感覚で気持ちが悪い。

   (そう、約束。さあ、こっちにおいで)


   僕の意識はそこでプツンと途絶えてしまった。


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